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文化・芸術(音楽など)・歴史

2016年9月27日 (火)

ハリウッド、中国での観客動員増を狙う配役!

映画「ジュマンジ」のリメークを手掛けているプロデューサーたちはこの夏、作品に中国人の俳優を出演させるべく複数の芸能プロダクションに連絡を取りました。しかし、役が男性になるか女性になるかはまだ決まっていないといいます。それどころか作品のストーリーも固まっておらず、その俳優がどのような役回りになるのかすら未定の段階です。

 

 中国が数年後には世界最大の映画市場になるとされている中、米映画界では、作品に中国人の俳優を起用し、同国の観客にアピールをするやり方が広く浸透しています。ハリウッドの大作に重要な役どころで起用された中国人俳優を中国の映画ファンは喜んで応援します。今夏も上海生まれの歌手アンジェラベイビーが映画「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」に出演し、話題を呼んだばかりです。 

 

 「まだ何をしたいかは決まっていませんが、製作側としてはとにかく中国の要素を入れたい考えだろう」――。あるエージェントは「ジュマンジ」のリメーク版についてこう話しています。

 

こびを売った配役は批判の的に

 

 ただ、この方法が必ずうまくいくとは限らず、あからさまに観客にこびを売っている配役は批判を受けることもあります。中国で大人気を誇るファン・ビンビンが2014年の映画「X-MEN:フューチャー&パスト」に出演した際は、セリフが「もう時間よ」の一行しかありませんでした。欧米映画に端役で出演する女優のことを中国の映画ファンは「花瓶」と呼んで批判しますが、国営メディアである北京日報もビンビンのその配役が「物議を醸した」と報道しました。

 

 調査会社エントグループによると、世界第2位の映画市場である中国の今年の映画興行収入は現時点で50億ドル(米国は81億ドル)。急速な成長を続けてきた中国映画市場ですが、今年はやや失速が見られます。

 

 中でも注目されるのが、興行収入に占める海外映画の比率低下です。昨年の上半期は興収全体の53.3%が輸入作品であったのに対し、今年はその割合が46.9%となっています。映画館に観客をどう呼び込むか、そこがハリウッドの映画会社にとってポイントとなっているのです。

 

スター・ウォーズ最新作も中国配慮

 

 北京でコンサルタントとして働くティナ・ユーさんは、中国人が出演しているからというだけで映画を見に行こうとは思わないと話します。「そういう映画に出演する中国のスター、特に女優は、花瓶として写っているだけか端役の場合が多い」ため、「見る映画はストーリーで決める」といいます。

 

 その一方、今後公開が予定されている「God Particle(原題)」や「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」などは、欧米の観客には無名でも中国では多くのファンを持つ俳優陣が登場します。

 

 中国で活躍する俳優にとって、ハリウッド映画でいい役に起用されることは「欧米での名声を手に入れるきっかけになる」。そう話すのは米ユナイテッド・タレント・エージェンシー(UTA)でエージェントを務めるダレン・ボゴジアン氏です。ボゴジアン氏はアンジェラベイビーやビンビンといった女優のマネジメントを行う。UTAや他のハリウッドのエージェンシーは、中国人の俳優を担当するための部署を設立し広くマネジメントを手掛けています。

 

 「中国で有名であっても、市場は中国に限定されます。しかし米国で有名になれば、世界で有名になったのと同じだ」とボゴジアン氏は話します。

 

規制かいくぐり歌手でマーケティング

 

 映画「グランド・イリュージョン」の続編を製作した米娯楽大手ライオンズゲート・エンターテインメントは、作品の脚本がまとまる前に中国の人気歌手ジェイ・チョウを配役できるよう話し合いをしたといいます。そのチョウを推薦したのが、同作を中国で配給したレオマス・ピクチャーズ・インターナショナルのチウ・ジエ氏です。

 

 「映画に中国人俳優を出演させる場合、適切でなおかつストーリーにとって重要な役でないといけないと強調した」と同氏は話します。「中国人の俳優が主役にならないのは理解できる。でもこれさえ守れば、地元の観客も批判をしたりはしない」と。

 

 2013年に公開された「グランド・イリュージョン」は中国で2300万ドルの興行成績を収めましたが、今年公開された続編は9700万ドルに到達。ライオンズゲートの作品としては中国で最高の結果を出した作品となりました。

 

 中国人俳優を起用する場合、大切なのは役がストーリーに自然に組み込まれているかどうかだと製作会社の多くは話します。「より自然な流れでストーリーに登場させれば、作品に幅が出るし世界的にもヒットする」と説明するのは、米メディア大手タイム・ワーナー傘下の映画会社ワーナー・ブラザースでキャスティング部門の副部長を務めるローラ・ケネディ氏です。同社は来年、中国人女優ジン・ティエンが出演する「Kong: Skull Island(原作)」を公開します。

 

 最近では映画のテーマ曲をソーシャルメディアのフォロワーが多い人気歌手に歌わせる手法もとられています。映画のマーケティングに関してさまざまな規制がある中国においても、曲がラジオで流れるたびに実質的に映画の宣伝を展開できるからです。「グランド・イリュージョン」の続編に出演したチャウもテーマ曲を担当しました。

 

 米メディア大手バイアコム傘下パラマウント・ピクチャーズのロブ・ムーア副会長は、「このやり方も中国市場でマーケティングを展開するひとつの方法だ」と話しています。ただし俳優をビール缶のような商品として劇中に登場させることには注意をしなければならない、とも同氏は話しています。(ソースWSJ

2016年9月11日 (日)

「シン・ゴジラ」が描く日本のナショナリズム!

日本で公開中のゴジラ映画最新作「シン・ゴジラ」。東京湾に現れ、街を押しつぶすゴジラはいつも通りの破壊的な存在として登場します。しかしシリーズ誕生から62年、29作目の本作品で描かれたゴジラと戦う官僚たちの姿はこれまでとは全く違います。

 

 過去の作品では日本政府は地味な役回りを演じることが多く、政府の頼りない反撃などゴジラはものともしなかった。しかし最新作では官僚は日本の能力を誇示し、戦後の軍事的制約を棚上げすることをいとわない、祖国を守る勇敢なヒーローとして登場します。放射能を吐き出すゴジラを前に政府は延々と対応策の法的根拠を議論するが、結局は攻撃ヘリコプターや戦車、F-2戦闘機などを投入することとなる。これは国民の意識に変化があったことを如実に示しています。

 

 ゴジラはこれまでも国民の意識を映し出す存在でした。核実験による突然変異で誕生したというゴジラの出自は第2次世界大戦中の原爆投下によって日本が受けた苦しみや、米国が戦後、太平洋で行った水爆実験への不安を反映したものです。1970年代になり日本中で公害が問題になると、ゴジラは光化学スモッグを象徴する怪獣ヘドラと戦いました。日本と米国の貿易摩擦が激化した1990年代初めには、外国人のような風貌の未来人が日本の経済大国化を阻止するために送り込んだ、3つの頭を持つ怪獣キングギドラと対決しました。

 

 最新の「シン・ゴジラ」――「シン」には「新」「神」「真」などの意味があるが、製作者はどれを意図したかを明らかにしていません――は安倍晋三首相の下で生まれた新たなナショナリズムを思い起こさせます。安倍氏は国としてのプライドを取り戻すため、さらには自衛隊の海外での活動の拡大が可能となるよう憲法改正に向け努力を続けています。これに対し、中国など一部のアジア諸国は懸念を示しています。

 

 政治思想史が専門でゴジラに関するエッセイを書いたこともある片山杜秀・慶応義塾大学教授は映画について、「今の日本の状況とあまりにも重なるところが多い」と話します。

 

 「シン・ゴジラ」のエクゼクティブ・プロデューサー、山内章弘氏は政治的主張がある作品ではないと言います。しかし、東日本大震災後に東京電力福島第1原子力発電所で起きた原発事故への日本政府の対応に着想を得たと語っています。山内氏は「政府は(対応の)まずさばかりが批判されましたが、そこで力を発揮して立ち回った人たちがいた。その人たちがいたおかげで今の日本がある」 と話します。映画では政府を「象徴というか、日本の代表として」描いたといいます。

 

 1954年に登場し、 ポップカルチャーの象徴として世界中に知られるようになったゴジラですが、製作会社の東宝は2004年、28作でゴジラシリーズを終了すると発表しました。その10年後、ハリウッドの映画会社が使用権を取得して製作した14年公開の「Godzilla ゴジラ」は興行収入52900万ドル(約550億円)の世界的大ヒットとなりました。

 

 この成功はすでに東宝が決めていたゴジラシリーズを復活させる計画に弾みをつけたのです。「シン・ゴジラ」は7月末の封切から1カ月で5000万ドルを超える興行収入を稼ぎ出しました。東宝から米国での「シン・ゴジラ」の権利を獲得した配給会社ファニメーション・フィルムスは10月に北米の一部の映画館で公開する予定を明らかにしています。

 

 映画では官僚は自衛隊による武力行使をめぐる制約について検討しながら、暴れ回るゴジラの攻撃をかわそうとする。こうしたシーンは原発事故――自衛隊はメルトダウン(炉心溶融)を起こした原子炉の冷却作業に当たった――や世界の紛争における自衛隊の役割についての論争を思い起こさせます。

 

 映画を見た人たちに話を聞いたところ、日本という国を支持する気持ちが高まったそうです。学生のマエダ・ヒナコさん(22)は国家権力が無能に描かれているエンターテインメントは好きではなく、「頭のいい人たちがやるべきことを一生懸命やっている」のを見るのが好きだそうです。 母親は自衛隊の宣伝のような映画という感想だったそうですが、マエダさんは映画の中の「自衛隊がかっこよかった」と語っています。

 

 前出の片山教授は「シン・ゴジラ」が「日本がんばれ、まだまだいけるとか、アメリカの属国でもあくまで日米手を携えてがんばっていきましょう」というような感情をかき立てたと話します。そうした感情は「岸・安倍路線」に通じると片山氏は言います。岸・安倍路線とは、安倍首相と祖父の岸信介元首相のナショナリスト的傾向を指します。

 

 映画の序盤はドキュメンタリー作品のようにリアルな描写が続きますが、次々に事件が起きて官僚が日本を救うために従来の制約と決別せざるを得なくなる後半では、リアリズムは影を潜めます。片山教授は後半のシーンについて、憲法改正により緊急時に政府に特別な権限を与えるべきとの保守派の主張を支持することになりかねないと話します。この映画には「危機的なときに民主的手続きをやっていたら間に合わないというメッセージがある」 と片山氏は語っています。(ソースWSJ

2016年7月18日 (月)

ハリウッド、中国企業の影響力が増大!

ハリウッドで中国企業の影響力が増しています。不動産や娯楽などを手掛ける中国の複合企業、大連万達集団(ワンダ・グループ)は、米映画製作会社パラマウント・ピクチャーズの少数株式の取得に向けて交渉中だと報じられました。万達は世界で最も支配的な娯楽企業の一社になるという目標の達成に近づきつつあります。

 

 膨大なチャイナマネーの流入は、ハリウッドに再編をもたらしているだけではありません。西側の映画とその関連企業に対し、世界最大の映画興行市場にいずれなろうとしている中国に参入する機会を与えることになります。

 

 中国では中間層の消費者が急増しており、娯楽への需要も膨らんでいます。これは世界中の映画会社や映画館チェーンにとって、利益の主要なけん引役の一つになるとみられています。

 

 アジアの買い手への資産売却について助言しているキャッスルヒル・パートナーズのピーター・シュロス最高経営責任者(CEO)は「これまでにハリウッドという複雑な暗号をうまく解くことができた外国企業はほとんどない」と指摘し、中国の買い手はこの目標の達成に近づきつつあると述べました。

 

 関係者によると、万達はパラマウント株49%の購入を目指し、パラマウントを傘下に持つ米メディア大手バイアコムと交渉中です。関係者の1人によれば、別の企業(社名は非公表)も株式取得に食指を動かしているといいます。バイアコムはパラマウントの企業価値を80億〜100億ドル(約8500億〜10600億円)と評価するような取引を目指しているといいます。

 

 万達は近年、映画製作や資金調達を手掛ける米レジェンダリー・エンターテインメントや米映画館チェーンのAMCエンターテインメント・ホールディングスを買収してきました。AMCは今週、欧州最大の映画館チェーンであるオデオン・アンド・UCIシネマズを買収することで合意したと発表しました。この買収が実現すれば、AMCは世界最大の映画館チェーンになるほか、万達は2020年までに世界の映画興行市場の20%を支配するという目標の実現に近づくことになります。

 

 これほど大規模な世界的映画館チェーンになれば、自身の配給元になる可能性があります。傘下の映画館での上映を確約し、世界公開を事実上保証するような配給元です。また、これほどの規模になると、世界の消費者の映画観賞の仕方をコントロールできるようになります。世界中のライバルが万達の慣行を採用するようになってきているからです。実際、AMCは多額の資金を投じて映画館の改装に取り組み、リクライニング式の座席を導入したり、飲食物のメニューを拡大したりしています。ライバルはこの戦略をまねており、AMCはこれを欧州のオデオンにも持ち込む計画です。

 

 ハリウッドへの投資を検討している中国企業には、阿里巴巴集団(アリババグループ)や騰訊控股(テンセントホールディングス)などがあります。

 

 キャッスルヒルのシュロス氏は「ハリウッドの幹部が大挙して資金集めのために飛行機で中国を訪れており、グローバル化が進む中、状況に変化が起こっている」と話しました。

 

 中国の映画興行市場が活況なのは、あらゆる規模の都市で映画館が急ピッチで建設されていることも一因です。同国では、シネマコンプレックス(複合型映画館)が初めてつくられる都市も多い。こういった動きは、カナダのIMAX(アイマックス)や米ドルビー・ラボラトリーズといった映画館関連会社に恩恵をもたらしており、これら企業の中国部門の収入はかなり伸びています。

 

 ハリウッド幹部は中国が信頼できる収益源になることを願っていますが、乗り越えるべきハードルは残っています。中国では、大半の映画製作会社がチケット収入の約25%しか受け取っていません。ちなみに米国や他の西側諸国では、チケット収入を折半するのが一般的です。また、中国は依然として1年間に公開できる外国映画の本数に制限を設けています。現在は年間34本だが、ハリウッド幹部の多くは、現行の契約が切れる来年にこの数が増えることを期待しています。

 

 中国企業によるハリウッドへの投資が増えるのに伴い、同国の影響力も強まっています。

 

 レジェンダリーが製作した「ウォークラフト」や「パシフィック・リム」といった映画は、商業的には米国でより中国での方が成功しました。パシフィック・リムについては、米国での興行成績が期待外れだったにもかかわらず、続編の製作が発表されました。

 

 ハリウッドの作品に中国の俳優や商品が出てくるケースも増えています。例えば、今年公開のSF映画「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」では、俳優たちが中国の「蒙牛」ブランドの牛乳を飲んだり、テンセントのメッセージングアプリ「QQ」を使ったりしています。

 

 北京に本拠を置く特殊効果会社、Base FXのクリストファー・ブレンブルCEOは「中国の商業的関心がますます西側の映画に入り込んできているのを感じる」と述べました。

 

 中国企業とハリウッドとの連携は、芸術としての映画製作について優先順位が互いに異なる2つの文化を結びつけています。

 

 中国のメディア大手、湖南電広伝媒の最高コンテンツ責任者(CCO)を務める周石星氏は「中国市場は特別な状況にあるため、われわれが映画を選ぶ際には『前向きなエネルギーが感じられる』作品を選ぶ。つまり、われわれがある映画に投資するとき、優先するのは映画の政治的・政策的なリスクを評価することで、その次に商業的な見通しを評価する」と述べました。同社はライオンズゲート・エンターテインメントの一連の作品に共同で出資しています。(ソースWSJ

2016年4月28日 (木)

プリンスさん死去、楽曲の行方は?!

米人気歌手プリンスさんの急死を受けて、彼が残した多数の未発表曲をめぐりさまざまな臆測が飛び交っています。未発表曲はどのくらいあるのか、公にされるとしたらいつになるのか、誰が決定権を持つのか――。

 

 一方で、発表済みの曲の行方も同様に不透明です。曲の大半はスポティファイやアップル・ミュージックといった人気音楽配信サービスで聴くことができない。

 

 プリンスさんは21日にレコーディング・スタジオ兼自宅で意識のない状態で見つかり、その後死亡が確認された。彼には配偶者や子どもなど明確な相続人がいない。このため、一緒に仕事をしてきた人々は、誰が彼に関する今後のビジネスなどを管理するのか見守っています。その管理者が、楽曲のデジタル権などをめぐりプリンスさんが取ってきた強硬なスタンスを和らげるのかも注目されています。

 

 プリンスさんと仕事をしてきた人々によると、彼は生前、さまざまな弁護士やその他のアドバイザー・グループに依頼し、ビジネスに自らの希望を反映させていました。そうしたグループのメンバーは頻繁に入れ替わっっており、本人が亡くなったことで、今後の見通しが一層不透明になっています。

 

 プリンスさんの広報担当者にコメントを要請したが、返答はなかった。

 

事情に詳しい関係者らによると、彼が長年所属していたレコード会社のワーナー・ブラザーズ・レコードが「パープル・レイン」などの大ヒットアルバムを流通させる権利を持つものの、プリンスさんは自らの音楽に関して異例なほど大きな権限を保持していました。その権限はおおむねパブリッシング(出版)権を通じたものだったといいます。

 

 ミュージックパブリッシャー(音楽出版社)は、楽曲の歌詞とメロディーの権限を持ち、例えば、それを楽譜にすることなどができます。楽曲を商業利用する際には、たいていの場合、音楽出版社と録音の権利を持つレコード会社から別々に許可を取る必要があります。プリンスさんは自らがパブリッシャー(出版者)という異例の立場にあったため、配信サービスなど音楽の流通を希望する会社に対して強硬な姿勢で臨むことで知られていました。

 

 昨年7月、スポティファイなどの多くのデジタル音楽サービスからプリンスさんの楽曲が消えました。スポティファイは、突如消えたプリンスさんのページに次のようなメッセージを載せた。「プリンスのパブリッシャーから全てのストリーミングサービスに対し、彼のカタログを削除してほしいとの要請があった。当社はその要請に応じたが、彼の音楽をできるだけ早期に復活できるよう願っている」。

 

 事情に詳しいある人物によると、プリンスさんはスポティファイのほかアップル・ミュージックともライセンス契約を結ぼうとしたが、できなかったといいます。

 

 プリンスさんは2013年には、彼のカタログの利用に関してデジタル音楽サービスとの交渉に入っていました。ある大手ストリーミング会社の幹部によると、プリンスさんは詳細について決定権を欲しがっていました。楽曲のどのバージョンを入手可能にするのか、それがどのような状況で掲載されるのかといったことだったといいます。

 

 例えば、プリンスさんは1980年代の自らのヒット曲が、他の80年代の曲と一緒にプレイリストに入ることを望まなかった。同幹部によると、この件に関しては、使用料(ロイヤルティー)を上げることがプリンスさんの優先事項ではなかった。「彼は自らのカタログでもうけようとしていたのではない。彼は自らの芸術性をコントロールしたいと思っていたほか、業界の自分の立場を利用して、どうしたら自ら信頼する他のアーティストを手助けできるかを模索していた」。

 

プリンスさんの交渉スタイルは型破りでした。電話をかけてくるのは調整係の人物(これも入れ替わりがあった)だったが、協議自体はプリンスさんと直接行われました。同幹部は、1時間前後に及んだ2回の電話について「わたしも彼も弁護士をつけなかった。彼はわたしが直接交渉したことのある唯一のアーティストだ」と話しました。

 

 このストリーミング会社はプリンスさんの技術的な要求に応えられなかったため、プリンスさんは手を引いた。ストリーミングサービスからの撤退とともに、彼は自らの音楽をめぐる権限を統合し、パフォーマンス権(著作権の一種)の有力仲介組織であるAscapBMIから脱退しあした。これらの組織は会員の代わりにライセンス料を徴収しています。

 

 プリンスさんは、ミュージシャンのジェイ・Zさんが所有するストリーミングサービスの「タイダル」上では自らのカタログを入手可能にしました。タイダルによると、同社は音楽所有者に他の競合ストリーミング会社より高い使用料を支払っている。プリンスさんを含む何人かの主要アーティストは、タイダルの株式を保有しているといいます。プリンスさんはここ数カ月の間に2枚のニューアルバムをタイダルに独占配信していました。

 

 タイダルにはスポティファイと違い、無料で契約できる選択肢がありません。プリンスさんは雑誌「エボニー」とのインタビューで、「スポティファイからなくなった音楽を入手するためには、(カネを払ってタイダルの)会員にならなくてはならなくなった。スポティファイがカネを払わないというなら、楽曲を引き揚げるまでだ」と話していました。

 

 プリンスさんの死を受けて、タイダル以外のストリーミングサービスに彼の楽曲が復活するのか、復活するとしたらいつになるのかは不透明です。前出のストリーミング会社幹部は「これらの決定を誰が下すのかが不明だ。プリンスは全てを自分で決めていた、もしくはそのように見えていた」と話しています。(ソースWSJ

2016年2月28日 (日)

アカデミー賞、俳優も製作者も白人ばかり!

米アカデミー賞授賞式は28日に迫っていますが、多様性、もっと言えばその欠如が米映画業界で今、議論を引き起こしています。業界のリーダーたちはこの問題への対応方法を検討し始めているところえすが、なかなか複雑です。

 

 例えば、コムキャスト傘下のユニバーサル・ピクチャーズは、「ストレイト・アウタ・コンプトン」や「ワイルド・スピード」シリーズといった最近の映画に出演している主演俳優の人種的多様性という点で、他社よりも進んでいると考えられています。それにもかかわらず、映画の製作に関わる同社の幹部たちは、米映画業界の主要製作スタジオ中のどこよりも人種の多様性に乏しいといいます。

 

 アカデミー賞の演技部門の賞にノミネートされたのは2年連続で全員白人な上、プロデューサーや監督までもがほぼ全員白人です。このことが明らかになると、「oscarssowhite(オスカーは真っ白)」というハッシュタグ付きでソーシャルメディアで大騒ぎとなり、米国の大衆文化を代表する映画の俳優や製作者の人種的多様性が、その観客の多様性に比べなぜ低いのかをめぐり論争が巻き起こっているのです。

 

 映画業界自体があらゆるレベルで一段と多様にならない限り、アカデミー賞候補者の多様化は難しいという点では、映画関係者の大半が同意しています。21日に公表された南カリフォルニア大学(USC)の調査で、2014年に公開された109本の映画の主演俳優のうちマイノリティー(人種的少数派)は22%だったことが分かりました。またこの映画のうち、監督が白人以外だったのは13%に過ぎなかったのです。

 

米国映画協会(AFI)によると、同年の映画館入場者のうち白人以外の人々は46%でした。また、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の分析によると、7大映画製作会社の全米公開映画で、製作に関する権限を有する約150人の幹部のうち白人以外は約20%でした。

 

 この7社、つまりウォルト・ディズニー、メディア大手タイム・ワーナー傘下のワーナー・ブラザーズ、21世紀フォックス傘下の20世紀フォックス、ソニーの米子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、ユニバーサル・ピクチャーズ、メディア大手バイアコム傘下のパラマウント・ピクチャーズ、ライオンズゲート・エンターテインメントのバイスプレジデント以上のポストの幹部約100人のうち、白人以外の人種は16%にとどまっています。

 

 特にヒスパニック系が少ないのです。USCの調査によると、映画の主演俳優のうちヒスパニック系は2.7%にとどまっているほか、主要な製作会社の製作幹部では5%を割り込んでいます。米国民全体ではヒスパニック系は17%。14年の映画館入場者の23%がヒスパニック系と、人種別の分類で最大でした。

 

 米国で人種の多様化が急速に進んでいる上、映画の市場がグローバル化しているため、映画事業にとって多様性が重要だという点では、業界の大半の人々の意見が一致しています。米アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは「オスカーは真っ白」論争に対し、賞の投票権を持つ会員について、2020年までに女性や白人以外のマイノリティーの数を倍増する計画を明らかにしています。

 

 米映画業界の第一線で働き、何年も人種の多様化をめぐる議論が燃え上がっては大した変化もなくくすぶっているのを目の当たりにしてきたマイノリティーの中には、今回の議論の進展に対しても懐疑的な見方が広がっています。

 

 しかし、多様性が高まっている若い層があまり映画館に足を運ばなくなっているため、映画製作会社はこれまで以上に大きなプレッシャーにさらされているという声もあります。(ソースWSJ

2016年1月19日 (火)

世界最大級の恐竜、米国自然史博物館で公開!

Tレックスやバロサウルスよ、ちょっとどいて場所を空けてくれ。新しい前史の巨大恐竜がニューヨークの町にやって来る。今週、アメリカ自然史博物館で公開されます。

 

 ティタノサウルスという用語で知られるこの恐竜は、週末15日に一般公開されます。同博物館で展示される最大の恐竜であり、これまで発見された世界最大級の恐竜です。全長は122フィート(約37メートル)、背丈は20フィート(約6メートル)で天井に届くほどです。地球上を闊歩していた1億年近く前の体重は推定約70トン。アフリカ象の少なくとも10頭分です。

 

 復元骨格模型と並んで、最近発見されたティタノサウルス化石から最も良く保存されている骨の一部も展示されます。それには長さ8フィート(約2.4メートル)の大腿骨も含まれています。

 

 ディエゴ・ポル氏は、2014年にアルゼンチンでこれまで知られていなかった恐竜を発掘した古生物学者の1人です。同氏は「あらゆるものが極端に大きかった」と述べ、「作業を開始して数日後、それが巨大だと気付いた」と語っています。

 

 ティタノサウルスの最初の発見は、ある農民からの電話で始まりました。彼はアルゼンチンのパタゴニアにある遠隔の砂漠地域で化石を発見しました。ポル氏と、同国トレレウ市の古生物博物館の同僚たちが急いで調査した結果、相当重要な発見ではないかと考えました。ポル氏は「時には何の成果にもつながらない断片の発見があるし、時には、幸運にも素晴らしい一連の骨を見つける場合もある」と述べています。

 

発掘チームの別の古生物学者ホセ・ルイス・カルバリド氏によれば、この恐竜が完全に輝かしい姿を現すにはしばらく時間がかかったといいます。同氏は「(発見場所への)最初の訪問はエキサイティングで、大腿骨を発見した」と述べました。しかし同時に、「この発見の重要性を本当に知るのは、2度目ないし3度目の訪問の時だった」と語っています。

 

 ポル氏によると、現場から発掘された200個以上の化石は、これまでに知られていない種(しゅ)のものだったのです。それらは、これまで発見されていなかった史上最大の生き物の存在についての手掛かりを提供するといいます。この恐竜は、発見されてまだ新しいため、正式な名前が付けられていません。

 

 ニューヨーク古生物学会の会長で、ニューヨーク大学の講師を務めるドン・フィリップス氏によると、「ティタノサウルス」という言葉は、実は同じような構造や大きさを持つ巨大な恐竜の一群のことを指すといいます。フィリップス氏は「これらは、皆さんが良くご存じのように、長い首と尾を持つ極めて大きい恐竜だ」と述べ、「これまでに存在した中で最大の地上動物だ」と話しました。

 

 ティタノサウルスは草食動物だったと考えられています。このためフィリップス氏は「われわれがその時代に戻って生きていたとしても、彼らは恐らくあまり脅威ではなかっただろう」と述べました。ただし「上から足で踏みつけられない限りはだ」とも付け加えました。(ソースWSJ

2016年1月17日 (日)

金融でも先駆者だったデビッド・ボウイ!

英国の世界的ロック歌手で10日に死去したデビッド・ボウイさんは音楽やファッションの新境地を開いたことで人々の記憶に残るだろう。だがそれだけでなく、ボウイさんは金融面での先駆者でもあった。

 

 ボウイさんは1997年に、作品の将来の売り上げに対する権利を売却し、5500万ドル(約65億円)の資金を調達した。いわゆる「ボウイ債」と呼ばれるこの債券の画期的な発行は、ミュージシャンが作品の知的財産権の使用料(ロイヤルティー)を証券化した初めての例だった。他の多くのアーティストと違い、ボウイさんはロイヤルティーを完全に所有していた。

 

 そのタイミングは絶妙だった。米金融業界ではちょうど、変わった金融商品に対する人気が急騰していた。しかも、音楽ファイル共有サービスのナップスターなどによってCD販売額が地に落ちる前だった。

 

 ボウイ債の発行後、ロックのロイヤルティー証券化というニッチ分野を築き上げた投資銀行家のデービッド・プルマン氏は、「デビッド(ボウイさん)は最初、自身の楽曲の売却を検討していた。しかし、楽曲は自分の子供たちのようなもので、売りたくないと悟った」と話す。

 

ボウイさんがマンハッタンのミッドタウン地区にあるプルマン氏のオフィスを訪れたとき、同氏は斬新な金融工学の一つを提案した。ボウイさんの最初の25のアルバムからの売上高を一つの金融ビークルとして発行する債券の担保とするやり方だ。つまり、自身の作品に対する権利を譲り渡すが、それは一時的だ。

 

 プルマン氏は「彼(ボウイさん)の最初の反応は『証券化とは何だ?』というものだった」と話す。「しかし、私が説明すると彼は一瞬たりとも躊躇(ちゅうちょ)しなかった。彼は新しいことにトライすることが重要だということを自ら具現化してみせた」と振り返る。

 

 米金融・保険大手のプルデンシャル・ファイナンシャルがプルマン氏の会社から直接この債券を購入した。10年債で利回りは7.9%だった。私募だったため、金額的な条件ははっきり分かっていない。

 

 需要はものすごかったとプルマン氏は思い出す。そして、同氏の会社にも同様な案件が幾つも舞い込んだ。中には、ジェームス・ブラウンさんやマーヴィン・ゲイさんといったアーティストもいた。

 

 ボウイ債の営業では、通常とは違った質問も多かった。

 

 「投資家会議で、投資会社や保険会社、格付け会社から決まって最初に聞かれる質問は『デビッドに会ったのか?』というものだった」とプルマン氏は話す。「その次には『(ボウイさんの妻でスーパーモデルの)イマンさんに会ったのか?』と聞かれた」という。

 

ボウイ債は、資産担保証券という急成長市場の記念碑ともいうべき存在になった。資産担保証券は石炭工場からスポーツチームに至るまで、あらゆる主体が生み出す資産を裏付けとして発行される証券。

 

 資産担保証券へ投資するファンドのポートフォリオマネジャーで、ボウイさんのファンでもあるロンドン在勤のロブ・フォード氏は「革新的だった」とし、「最終的には、全ての種類の資産に関連する証券化の基本形になった」との見方を示した。

 

 ボウイさんは、楽曲のダウンロードがCD販売を侵食し始めた時期に、過去の作品を利用して利益を得た。ボウイさんは2002年のニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、10年後に著作権が存在しているとは思わないと話していた。音楽は「水道や電気のような」ありきたりのものになっている可能性が高いだろうとも語っていた。(ソースWSJ

2015年12月27日 (日)

ハッピーホリデイとなり死に絶えたクリスマス、様変わりのNY繁華街!

12月の「ホリデーシーズン」に差し掛かかったころ、テネシー大学のダイバーシティー推進オフィスは、「ホリデーパーティーがクリスマスパーティーに見えないようにする」ための指針を公表しました。

 

 「これでは偽物のクリスマスパーティーを開かなくてはならなくなる」。仰天したテネシー州議会がこの指針を撤回させましたが、最後に笑ったのはクリスマスを抹殺しようとする人々だったようだ。実際、反クリスマス派が勝利を収めています。今年、米国では国民のイベントとしてのクリスマスが死に絶えてしまいました。

 

 米国民にとって歴史的にクリスマスの中心地となってきたニューヨークの5番街を歩いてみると、それを実感できます。

 

 米国民は何世代にもわたって12月になれば一家でニューヨークを訪れ、クリスマスのお祝いムードに浸ってきました。商店やレストラン、ブラウンストーンの建物、パークアベニューの常緑樹、そして何と言っても5番街のショーウインドーはクリスマスであふれていました。そこはクリスマスから逃れられない場所で、第一、逃げたいなどと思う人は誰もいなかったのです。

 

 たとえ自分以外のどの神も信じていないとしても、12月のニューヨークと言えばクリスマス一色に染まり、街は華やいでいた。

 

 多くの人にとって、12月にはサックス・フィフス・アベニューやロード・アンド・テイラー、バーグドーフ・グッドマンといった百貨店めぐりをするのが当たり前の行動だったのです。天気が良かろうが悪かろうが、人々は38丁目から59丁目にかけてぶらぶら歩き、華やかなクリスマスの飾りにあふれたショーウインドーを見ようと歩道を埋め尽くしたそうです。

 

 ところが、今年は家にいたほうがましだったそうです。今年の12月の5番街と言えば、クリスマスらしさはほとんどかけらも見られないし、それどころかもっと悪くなっているといいます。

 

 確かにロックフェラー・センターの見事なクリスマスツリーは今年も健在で、ロックフェラー・センターから5番街を渡った向かい側にあるセントパトリック大聖堂では正面が洗い清められ、大きな緑のリースが飾られています。しかし、今週、5番街を歩くと、目にするものはクリスマスらしくないばかりか、反クリスマスとしか言いようがないほどです。

 

 5番街では今年、伝統のサンタクロースさえ見当たりません。サンタの小人たちもいません。今までのクリスマスは死に絶えてしまったかのようです。

 

 サックス・フィフス・アベニューのショーウインドーの光景は何とも表現しがたいそうで、サックスはこれを「ザ・ウィンター・パレス」(冬の宮殿)と呼んでいるのですが。

 

 バーグドーフ・グッドマンのいわゆる「ホリデー向け」ウインドーの飾りは、「ザ・フロスティー・タージ・マハル」(霜の降りたタージ・マハル)になっており、手相占い師とローマ神話に登場する神キング・ネプチューンが愛人と座っています。

 

 まさか、ロード・アンド・テイラーの象徴的なクリスマスディスプレーのショーウインドーに聖ニコラウスが飾られていないことはなかろうと思ったそうですが、何と見当たらなかったのです。その代わり、小グマやカップケーキ、ジンジャーブレッドマン、カナダガンが並んでいました。

 

 クリスマスに背を向けていないところが1カ所だけありました。メーシーズのショーウインドーの一角には、テレビアニメ「ア・チャーリー・ブラウン・クリスマス」のキャラクターたちがクリスマスらしくはしゃいでいました。

 

 クリスマスが失われた時代には、生まれたばかりのキリストとサンタクロースは初期キリスト教徒の地下墓地「カタコンベ」に戻ることになるのです。そこでは誰に対しても(「メリークリスマス」の代わりに)「ハッピーホリデーズ」と言わずに済むからです。われわれの知っているクリスマスは死に絶え、1225日は感謝祭の小型版のようになることでしょう。

 

 米国でクリスマスを祝うことが、旧ソ連のように告訴に値する犯罪にならない限り、キリスト教徒の家族はクリスマスの朝、教会に行き、自分たちの信仰の始まりを再確認し、一日中家でクリスマスソングを聴きながら過ごすことでしょう。(ソースWSJ)

2015年10月18日 (日)

コロンブスに勝てなかった“新大陸発見者”とは?

米国にはレイフ・エリクソンデーという記念日があります。毎年109日、北米へ最初に到達したヨーロッパ人ともいわれるアイスランド人探検家、レイフ・エリクソンを記念する日です。

 

 ところがこの日は、10月第2週のコロンブス・デーの陰に隠れて、ほとんど注目されていません。現在、コロンブス・デーは連邦政府の祝日で、学校や民間企業の多くがこの日を休日としています。

 

 しかし、19世紀から20世紀初めごろ、クリストファー・コロンブスはある論争の標的になっていました。多くの人々が、北米大陸を最初に発見したのはコロンブスより500年も前にこの地へやってきたエリクソンであると主張したのです。

 

 1892年、米国はコロンブスの米大陸到達400周年を祝いました。当時、多くのイタリア系米国人が、イタリア人であるコロンブスの功績を米国が認めたことを誇りに思っていました。一方で、北欧をルーツに持つ人々は、コロンブスではなくエリクソンをたたえるべきだと感じていました。

 

 当時、米国各地で反移民・反イタリア人感情が高まっていたことも、エリクソン支持に拍車をかけました。「米大陸へ最初に到達したヨーロッパ人が、南欧出身ではなかった」という主張が受け入れられやすかったと、アイルランド国立大学メイヌース校の歴史講師ジョアン・マンシーニ博士は語っています。バイキングが北米に定住していたことを裏付ける考古学的証拠は見つかっており、今後も新たな証拠が出てくるだろうとみられています。

 

 エリクソンが支持された理由はほかにもありました。マンシーニ氏によると、19世紀の米国では、非カトリック教徒はカトリック教会に対して強い懐疑を抱いていたといいます。そうした時期にコロンブスが注目を浴びたため、反移民・反カトリック主義者たちが、国をあげて記念するならコロンブスよりもむしろエリクソンだと言い出し、多くのアングロサクソン系プロテスタント教徒も、エリクソンを新大陸の真の発見者とする意見を支持したのです。

 

 コロンブス400周年の前後、ローマカトリックの団体「コロンブス騎士会」はイタリア系米国人の団体と協力して、コロンブス・デーの制定を議会へ働きかけました。1907年、コロラド州初のイタリア系新聞社を創設した人物の活動により、コロンブス・デーは同州で初めて公式の祝日となったのです。それから数年のうちに15州がこれに続き、1971年に連邦政府の祝日となった頃には、既にほとんどの州がコロンブス・デーを祝っていました。

 

 レイフ・エリクソンデーを祝うようになったのも20世紀初頭ですが、コロンブス・デーほど広く浸透することはありませんでした。20世紀半ばには米国の記念日(大統領がその日にちなんだ告示を発する日)となったものの、多くの人は何の日であるかすら知らないのです。

 

 コロンブスがエリクソンに「勝利」したのは、イタリア系米国人が早くからロビー活動を行ったためもありますが、たとえ最初の発見者でなかったとしても、コロンブスの方がヨーロッパ人の米大陸移住により大きな役割を果たしたことも大きな理由でしょう。

 

 今日、コロンブスかエリクソンかの戦いは影を潜め、それよりもコロンブス・デー自体を祝うべきかどうかに議論の焦点は移っています。サウスダコタ州ではコロンブス・デーの代わりに「アメリカ先住民の日」を設け、ハワイ州とアラスカ州はどちらもコロンブス・デーを祝っていません。

 

 実際のところ、コロンブス・デーに反対する人の間では、コロンブスもエリクソンも自分たちがそれまで知らなかった場所を「発見」したというだけで、米大陸にはヨーロッパ人が来る以前から多くの人々が住んでおり、ヨーロッパ人の米大陸移住にどちらがより貢献したかなどという議論には意味がない、という見方もあります。(ソース ナショナルジオグラフィック)

2015年8月 9日 (日)

マヤ王の石碑を発見、1500年前の「冷戦」語る!

中米グアテマラにあるマヤ文明の遺跡で、時代区分の違う石碑が発見されました。これにより1500年前、マヤ文明の絶頂期に一帯で覇権を争っていた二大勢力の新事実が明らかになり、研究者たちを驚かせています。

 

 グアテマラのペテン地方西部にあるエル・アチオタル遺跡で発見されたこの石碑の断片には「アハウ」と呼ばれる王(地方を治めた)が描かれています。アハウを任命したのは、遠く離れた古代都市テオティワカン(現在のメキシコ市辺り)からやってきた戦士、シヤフ・カック(「火の誕生」の意)です。シヤフ・カック率いる軍勢は378年にマヤ低地に現れると、都市国家ティカルを支配下に置き、マヤ全土に新たな政治体制を敷きました。

 

 石碑の断片を発見したのは、ナショナル ジオグラフィック協会が支援する「ヤング・エクスプローラー」のひとりで、テュレーン大学院生のルーク・オールド=トーマス氏。彼はエル・アチオタル遺跡で、ペテン地方にマヤの都市国家が現れ始めたころの古い建造物を調べていました。先古典期中期から後期(紀元前800〜紀元250年)のものです。

 

「私たちは階段を探すために、いくつか穴を掘っていました。そのとき作業員のひとりが、石碑のようなものを見つけたと言ってきたのです」とオールド=トーマス氏は言います。それはマヤが最も繁栄した古典期(250900年)に特有の、彫刻の施された石碑でした。「穴の中を覗いてみると、こちらをまっすぐに見つめる王の顔がありました。古代マヤ人は、王の顔が入り口に向くよう慎重に配置したのです」

 

 もともと先古典期後期(紀元前400〜紀元250年)の遺跡だとされていたエル・アチオタルで「石碑が見つかるとは思ってもみませんでした」とカヌート氏は言っています。さらに発掘を続けると、石碑の上部と下部から取られたふたつの断片が見つかりました。これらはもとの場所から小さな神殿の中に移されたもので、周囲には陶器、火打ち石、人骨などが祀られていたのです。上部の断片には、支配者の象徴であるヘビの儀仗を持つ男が彫られています。

 

 米テキサス大学でマヤの古代文字を研究しているデビッド・スチュワート氏が石碑の裏に刻まれた文字を解読したところ、これはあるアハウの即位40周年を祝うために造られたものであることがわかりました。石碑には日付も刻まれていますが、非常にあいまいでわかりにくい書き方で、解読作業は困難をきわめたといいます。スチュワート氏は、ここに記された日付はおそらく紀元4181122日ではないかと推測しています。418年の40年前は378年であり、それはシヤフ・カックがメキシコ盆地からこの地にやってきてティカルの新たな支配者となり、マヤの政治制度を次々と改革した年と一致します。

 

「ティカルに現れたシヤフ・カックは、一帯に自分の部下となる支配者たちを置きましたが、エル・アチオタルもその支配下にあったとは」とスチュワート氏は語っています。研究者たちを驚かせたのは、神殿で見つかった供物から、アハウが描かれた石碑の断片が600年〜650年頃まで崇拝されていたと思われることです。この時期は、エル・アチオタルが衰退して100年以上たったころとみられ、しかもこの一帯は当時、ティカルと覇を競った都市国家カラクムルの支配下にあったのです。

 

 6世紀から古典期が終わる9世紀末〜10世紀初頭にかけて、マヤの二大「大国」であるティカルとカラクムルは何度も武力衝突し、配下にある都市同士も小競り合いを繰り返していました。歴史家はこれをマヤの「冷戦」と呼んでいます。カラクムル支配下の土地でティカルの王を崇拝することは、20世紀の米国でレーニンの胸像に供物を捧げるような行為だったろうと言います。

 

 オールド=トーマス氏は来年エル・アチオタルを再訪し、当初の目的だった先古典期の建造物調査を続ける予定です。彼がもともと探していた階段は、どうやら古典期の神殿で封鎖されてしまっているらしいのです。このような神殿や、略奪者によって暴かれた玄室があることは、彼が調査する建物の重要性を物語っています。現地に戻るのが楽しみだと語るオールド=トーマス氏は、冗談めかしてこう付け加えました。「次にアステカの神殿でも見つかったりしたら、事態はさらに混乱するでしょうね」と。(ソース ナショナルルジオグラフィック)

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