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政治(国内・海外)

2016年10月17日 (月)

トランプ氏、事実上の無所属候補に!

全米を回って大統領選のことを話していると、こんな質問に出くわすことが多いそうです。「無所属の候補が本気で大統領選に出馬することはできるのか」。われわれは今、事実上の無所属候補を目の当たりにしています。その人物の名はドナルド・トランプです。

 

 となれば新たな質問は「無所属で大統領選に勝つことはできるのか」となります。恐らく同じくらい重要な問いは「仮に勝つことができたとして、政権を効果的に運営できるのか」です。

 

 トランプ氏はその中核的な支持層とともに、共和党上層部からの決別の度合いを強めています。トランプ氏自身は共和党全国委員会から大きな組織的支持を得ており、10日も全米各地の委員会メンバーの多くが同氏の味方に付きました。しかし同時に、共和党幹部や議員の多くはトランプ氏から離れつつあります。トランプ氏は移民や貿易、財政赤字、給付金改革といった政策面で同党の党是に挑戦しただけでなく、そうした党是を形成してきた人々のことを笑いものにすることも時折ありました。

 

 先週末、この不和はついに離婚に発展しました。トランプ氏が既婚の女性に性的な関係を迫ったことがあるなどと語る録音が公開されたことを受け、党の重鎮らが次々とトランプ氏支持を翻意したのです。トランプ氏も共和党のエスタブリッシュメント(主流派)に別れを告げました。同氏はツイッターへの投稿で、同党の要人らを「独善的な偽善者」と呼び、「彼らの支持率が落ち、選挙で落選するところを見ようではないか!」と言い放ちました。

 

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCニュースが週末に実施した世論調査によると、共和党支持者を自認する回答者の3分の2が共和党はトランプ氏を支持すべきだと回答しました。党主流派をやっつけるよう、あからさまに同氏をけしかける支持者も多いといいます。このような状況は極端に異例であり、大統領選やその後の政権運営に関するこれまでのシステムに対する挑戦となっています。

 

 歴史をひもとけば、見劣りはするものの同じような先例はあります。1972年の大統領選の民主党候補ジョージ・マクガバン氏は同党を左傾化し、党員の多くは不満を抱えていたものの、上層部の大半は名高い現職議員だった同氏の支持で結束しました。

 

 現在の状況に最も近いのは1964年の共和党候補バリー・ゴールドウォーター氏のケースかもしれません。同氏は筋金入りの保守派で、同党候補の指名獲得はリベラル派――そう、当時は共和党内にリベラル派がいた――を怒らせました。このため同氏は指名受諾演説の中で、党員に「何も考えていないバカというレッテル」を拒否するよう呼びかけ、自分に反発する党員にやんわりと苦言を呈したのです。

 

 そして次の言葉を発するのだが、恐らくこの発言が対立候補のリンドン・ジョンソン大統領に勝つチャンスを失わせることになりました。ゴールドウォーター氏は「自由を守るために過激であることは悪徳ではない。正義を求めるために中庸であることは美徳ではない」と述べたのです。

 

 ゴールドウォーター氏は自身を党の主流派と対立する過激主義者として描いてみせました。そして大敗を喫したのです。しかし、同氏は当時、現職の上院議員であり、党内の緊張は現在のような亀裂には達していませんでした。

 

 現在に話を戻すと、激戦州でトランプ氏が選挙活動を行う際に、その州の上院議員選で再選を狙う共和党議員が同氏に同行する姿が多く見られると期待してはいけません(そもそも同行する議員がいればの話だが)。加えて、トランプ陣営は同氏に反発する共和党員に対して攻撃をしかけるとも遠回しに脅しています。こうした状況下で選ばれた大統領にとって統治という職務はどのようなものになるのでしょうか。

 

孤独なニクソンとの共通点

 

 米国の連邦議会は各党の党員が全員一致で共同歩調をとるような議会ではなく、リーダーの存亡は議員の中のまとまった支持に左右されます。とはいえ、大統領が大きな仕事をする際には、出発点として自分の党の議員からの強固な支持に大きく依存します。大統領を支持する議員は大統領の政策に利害関係があり、そうした政策の実現を手助けし、実現した暁にはそうした政策を擁護する強い動機をもっています。

 

 もちろん、規模の大きな仕事については単に党という線引きによる支持を上回るものが必要になります。オバマ大統領と与党・民主党は、例えば医療保険制度改革(オバマケア)のように、その成功に野党・共和党が関心を持たない大きなプロジェクトを持続させることの難しさを痛感しています。

 

 しかし、そうしたプロジェクトの推進プロセスは党派による政治的支持という頼れる土台を確保することから始まります。通説に反して、大統領というものは組織的な支持なしに物事を成功裏に進められるほど力を持っているわけではありません。そうした支持を失った大統領は行き詰まり、孤独になることもあります。在職中に辞任を決めたリチャード・ニクソンの最後の日々がそうでした。

 

 ただニクソンの場合は辞任前の最後の時期でした。トランプ氏は、当選の暁には就任早々から与党内の大部分と対立する大統領になるという印象を事実上広めています。

 

 現在のシステムは党に対する忠誠心を強調しすぎているのかもしれません。だが一方で忠誠心がなさすぎれば、その報いを受けることにもなります。今当選すると仮定して、トランプ氏にとって肝心なことは、ワシントンで失われた党への忠誠心を穴埋めするために、一般国民から多くの支持を得なければならないということです。(ソースWSJ

2016年10月 5日 (水)

米大統領選、選挙広告の勝者はフェイスブック!

米フェイスブックが政治広告からの収入で、今年中にアルファベット傘下のグーグルを越える可能性がある――。金融大手シティーグループはこう予測しています。献金やボランティアを得るには今もサーチエンジンを使った広告が絶大な力を持っていることを考えると、この逆転の意味は大きいと言えます。

 

 理由はフェイスブックの巨大なリーチ力と、より細かい相手を対象に広告を投入できる同社のツールのおかげです。「マイクロ・ターゲット」と呼ばれるこの方法は、有権者からの支持を拡大し、彼らを投票場に向かわせたい選挙陣営にとって天からの恵みといえます。そして一般的な広告と同様、今は政治の世界でもこの手法が広範かつ緻密に使われています。

 

 政治におけるデータ分析が「過大評価されている」としていた共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏でさえ、その可能性に注目しています。トランプ氏のデジタル戦略の責任者を務めるブラッド・パースケイル氏によると、トランプ陣営は8月にフェイスブックで広告を展開し、選ばれた利用者らに対して10万にもおよぶウェブサイトへのリンクを送信。パースケイル氏によると各ページは利用者それぞれに合わせた内容だったとしています。民主党ヒラリー・クリントン候補の陣営も同じような戦略を展開しているといいます。

 

 選挙戦略に詳しいジャーナリストのサーシャ・イッセンバーグ氏は、もし可能であるならば選挙陣営は国内全ての有権者を調査し、まだ投票先を固めていない人を抜き出し、彼らから支持を得られるような政策を練り、自らへの1票へと結びつけようとするだろう話しています。まだそこまでは実現できていないものの、細分化はそれに近い状況を作り出しているといえます。

 

消費傾向や銃所有の記録と照らし合わせる方法も

 

 有権者の投票心理などに関連するデータ分析を行うケンブリッジ・アナリティカは、共和党予備選挙ではテッド・クルーズ上院議員の陣営に協力していましたが、今はトランプ氏と組みます。データに関する最高責任者のアレキサンダー・テイラー氏によると、同社は米国成人22000万人のデータベースを所有し、それぞれに対して4000から5000にもおよぶデータ要素を習得しているというのです。ケンブリッジ・アナリティカはこのデータベースを他社の大量のデータとつなぎます。情報サービス会社のエクスペリアンやアクシオムなどから得られる有権者登録の情報、購買パターン、そして銃所有の記録などと照らし合わせるといいます。

 

 フェイスブックでもクレジットカードさえあれば同様のサービスを受けられます。利用者の政治思想に対して同社が持つ影響力についてはさまざまな意見がありますが、フェイスブックの選挙広告における影響力についてはまだあまり注目されていません。

 

 「2008年がフェイスブックの選挙だったと言う人もいますが、個人的には今年こそがフェイスブックの選挙だと感じる」と話すのは、2012年の大統領選に出馬したミット・ロムニー氏の陣営でデジタル戦略を担当したザック・モファット氏です。「ひとつのプラットフォームで全人口の4人に3人を見つけることができるのえす。フェイスブックの価値は、その大きさと規模だ」です。

 

デジタル広告費は前回の大統領選から3

 

 広告を打つ側が狙ったオーディエンスに的確にメッセージを届けられるよう、フェイスブックもいくつかのツールを提供しています。例えば「カスタム・オーディエンス」と呼ばれるツールを使えば、候補の支持者グループのリストに含まれたユーザーのみに広告を届けることができます。2012年の大統領選でロムニー氏やオバマ大統領も利用したツールです。

 

 フェイスブックでは地域ごとのキャンペーンなどのためでも、ケンブリッジ・アナリティカが行っているように他のデータ会社から得た情報も併用して使うことを許可しています。また「ルックアライク・オーディエンス」は、一定のグループと似たような特徴を持つ人を狙って広告を打つことを可能にしています。再生された曲から自動的に音楽を勧めてくれるスポティファイなどのサービスのように、ユーザーの特徴から支持者になりうる人を推薦してくれるツールです。

 

 広告調査を行うキャンター・メディアによると、今回の選挙期間中にはテレビ向けの広告費用として44億ドルが使用されます。調査会社ボレル・アソシエーツによればデジタル広告は約10億ドルなので、その差はまだ大きい。しかしデジタル広告は、前回2012年の大統領選から実に3倍の伸びています。 

 

 フェイスブックを使った狙い撃ち広告と多額な広告費に対しては、不安の声もあがっています。不明瞭なアルゴリズムがすべてをコントロールすることの危険性について「ウェポンズ・オブ・マス・デストラクション(原題)」を執筆した作家のキャシー・オニール氏もその1人です。

 

 「選挙陣営は、グーグルやフェイスブックのどの利用者にどの情報を伝えるのが効率的かを考えるようになる」とオニール氏は言います。「しかし選挙陣営にとって効率がいい話であっても、民主主義にとってはそれは不都合だ」ということもあります。

 

 クリントン陣営の関係者はマイクロ・ターゲットを利用した戦略が重要だと認識する一方、候補者のメッセージそのものが最重要であることは変わらないし、友人や近隣の人と交わす会話の方がSNSで得られる情報よりも影響力があると指摘しています。

 

 しかし選挙を控えた政治家やその側近らは、新たな手法に一気に流れ込みます。ケンブリッジ・アナリティカのテイラー氏は、「これまでの政治的な知恵は破壊され、データ科学や事実に基づいた情報に取って代わった」と主張すると言っています。 

 

 ジャーナリストのイッセンバーグ氏も、ターゲットを絞り込むことで選挙戦をより効率的に展開できる点は大きいと話す。仮にクリントン氏がデジタル広告に1億ドルを使う場合、ターゲットを絞り込めばそのうち1000万ドルの無駄を削減できるし、ボランティアや陣営の時間を他の課題に回せるメリットも出てきます。接戦の選挙では、そのような小さな差が激戦州において数千票の違いになり、最終的に選挙結果に影響を与えることすら考えられるのです。(ソースWSJ

2016年9月29日 (木)

空の軍拡競争、中ロが膨大な予算投入!

米国や欧州の同盟国が展開する戦闘機は、過去20年にわたり世界の制空権を握り続けてきました。しかし今はロシアと中国が兵器開発に膨大な予算を投入しているため、欧米の優位性が脅かされ、新たな軍拡競争が始まりかねない状況です。

 

 ロシアが東ヨーロッパや中東などで存在感を高め、中国も南シナ海に進出を続ける中、両国が開発する新たな戦闘機や対空兵器が数年後にも登場すると考えられています。この動きに対抗するかたちで、西側諸国も自国の次世代戦闘機開発を急がざるを得ない状況です。

 

西側の無関心を突くロシアのウクライナ政策

 「米空軍にとって喫緊の問題は、米軍に匹敵する最新の軍事技術を競争相手が開発していることだ」。6月、就任を目前に控えたデビッド・ゴールドファイン米空軍参謀総長は米国議員らにこう述べました。その2カ月後、米空軍は最新鋭の統合打撃戦闘機F35を認証しました。1990年代に展開されたボスニア紛争での作戦以降、敵地の正確なピンポイント攻撃が西側諸国の軍事作戦の柱となっていますが、F35にはそのための最新ステルス機能が搭載されています。

 

 戦闘機のフェラーリと称される米軍のF222005年に配備されたばかりでまだ比較的新しい戦闘機です。音速の倍のスピードで飛行しながら敵機を攻撃します。最近は爆撃機としても利用されるほか、敵地上空で情報収集活動を行うこともあります。

 

 しかし、米軍の戦闘機の75%以上は1970年代から継続して使われている種類のものです。F15戦闘機は1975年、F16戦闘機は1979年から展開。海軍のF/A18戦闘機も1978年から配備されています。これらの機体はフランスのラファールや欧州4カ国共同開発のユーロファイターと並び、アジアや欧州の同盟国の軍では戦闘機として今も重要な役目を果たし続けています。

 

ロシアと中国の台頭

 

 ロシアは2018年にも同国初となるステルス戦闘機のT50を配備する予定です。双発機のT50は操作性が高く、遠方の敵機を早期発見できる最新機能もあります。同国は最近、最新型の高性能戦闘機「スホーイ35Su35)」やSu34爆撃機をシリアに展開する動きも見せています。ロシア国防省からはコメントを得られませんでした。

 

 中国は長年にわたり戦闘機をロシアに頼り、ライセンス契約をして国内で製造するなどしていました。しかしそれも現状では変わりつつあります。米軍のF22に似た中国の新型戦闘機J20(殲20)は、まだ配備はされていないものの2011年から飛行を開始しました。2012年には米軍のF35に似た次世代機FC-31の飛行試験も始まっています。 

 

 米国防総省(ペンタゴン)は今年、中国軍の分析の中で「西側諸国の空軍との差を、さまざまな性能面で素早く埋めつつある」と評価。中国の国防省はペンタゴンのこの発表に不快感を示し、米軍が中国の兵器開発について「不適切なコメント」をしたと批判しています。

 

 レーダーを回避する技術は米国がロシアや中国をまだリードしています。しかし制空権を巡る激しい競争は、地上でも展開されているのです。

 

 ロシア政府によると同国はより高性能なミサイル防衛システムS400を開発。これまでの倍となる約380キロ離れた飛行機をミサイルで撃ち落とすことが可能になったといいます。同国国防省は8月、ウクライナとの関係が緊迫する中、併合したクリミアにこのS400を配備すると発表しました。ロシアは同防衛システムを他国に輸出しようと売り込んでいます。元米空軍中将のデビッド・デプチュラ氏は、S400が「軍事作戦の展開を大幅に難しくする」と話しています。

 

 中国は今年、ベトナムと主権問題を抱える南シナ海の西沙諸島に地対空ミサイル「HQ9(紅旗9)」を配備しました。

 

 対抗する米空軍は、こうした防空システムの範囲が届かない距離から敵地を攻撃できる長距離ミサイルなどを飛行機向けに開発することを目指します。航空戦闘軍団の指揮をとるハーバート・J・カーライル将官によると、これら新型の戦闘機は2030年には配備できるよう計画を進めているといいます。米海軍は、現在の攻撃機F/A-18E/Fスーパーホーネットの後継機を2035年に配備すべく準備中だそうです。(ソースWSJ

2016年9月25日 (日)

米大統領選TV討論、戦況一変のチャンス!

米大統領選候補者の直接討論会は重要ではありますが、既存の流れを確認する結果になることが多いようです。1976年に行われた共和党候補のジェラルド・フォード大統領と民主党候補のジミー・カーター・ジョージア州知事の討論会では、フォード氏がソ連の東欧支配を否定するという過ちを犯しました。しかし、フォード氏は討論会以前から既にカーター氏との差を縮めつつあり、その後も接戦が続きました。

 

 1980年にも同じことが起きた。カーター大統領と共和党候補のロナルド・レーガン元カリフォルニア州知事との直接討論会前に行われた世論調査では、レーガン氏がカーター氏をリードしていました。レーガン氏が大統領にふさわしい人物だという見方は討論会での同氏のパフォーマンスによって裏付けられ、レーガン氏は選挙で圧倒的勝利を収めました。

 

 例外は1984年です。その年に行われた第1回目の直接討論会では、当時73歳のレーガン大統領は混乱し、心ここにあらずという感じでした。その結果、レーガン氏の支持率は8ポイント低下しました。しかし、第2回目の討論会では、対立候補の56歳のウォルター・モンデール前副大統領を相手に驚くべき挽回を見せました。レーガン氏は「相手の若さと経験の少なさを政治的目的に利用するつもりはない」と発言したのです。失った8ポイントをすぐに奪い返し、その後さらに支持率を伸ばして49州で勝利を収めました。

 

 26日、3回にわたる直接討論会の第1回目が開かれ、共和党候補のドナルド・トランプ氏と民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官が顔を合わせます。討論会は両者にどの程度影響するのだろうか。両者に満足していない有権者が多いため、いずれの候補の大きなミスも戦況を一変させる可能性があります。しかし、それを当てにすべきではありません。

 

トランプ氏の方が簡単

 

 両候補とも、国民が良くも悪くも自分たちをどう見ているかを理解した上で壇上に立つべきです。そして自らの強みを前面に出し、相手の弱みを突き、自らの欠点を極力目立たないようにすることです。

 

 トランプ氏の方が、やることは簡単だ。彼はアウトサイダーであり、有権者は変化に飢えています。とはいえ、ほとんどの国民は彼には大統領にふさわしい人格と気質が欠けているとみています。トランプ氏は有権者を安心させる必要があるのです。彼は短く、力強い言い回しが得意で、それが強みです。加えて、より大統領らしい口調で話すべきでしょう。メキシコシティーで開いた記者会見のときのように。そこではトランプ氏は怒ったり無礼な態度を取ったりせず、控え目で謙虚でした。

 

 トランプ氏は、26日の討論会は予備選の討論会とは大きく異なることを理解しておくべきだ。予備選の討論会では多くの候補者が壇上に立つ。そのため基本的に連続して記者会見が行われるようなもので、候補者は短い発言を順に行うことになる。深い政策論争に入り込んだときは、他の候補者がわれ先にと発言する中、トランプ氏は黙り込むか、普段よりもさらに短い答えをすれば済んだ。

 

 それに引き換え、26日の討論会は政策に関する2候補間の議論の応酬が中心になります。トランプ氏は知識の深さではクリントン氏に対抗できません。しかし、既存の支持基盤以外にもアピールするためには、無知で底が浅いという印象を与えないようにする必要があります。

 

 相手を過剰に攻撃しないようにも気をつけたほうがいいでしょう。トランプ氏は、私用メールサーバーや健康状態、クリントン財団の利益相反、国務長官時代の実績についてクリントン氏を追及し、同氏の大統領としての適格性を問いただしていくと表明しています。しかし、攻撃的すぎるとみなされれば、クリントン氏に同情が集まる可能性があります。

 

クリントン氏がすべきこと

 

 クリントン氏は、トランプ氏より議論にたけていますが、より難しい課題に直面しています。有権者はクリントン氏には大統領職をこなせる経験や能力、気質があるとは思っています。しかし、その点を強調すれば、自分が現状維持の象徴であることを際立たせることになります。クリントン氏は「第3期オバマ政権」にすぎず、新しいものを何も提供してくれないと考える有権者が増えれば、勝利への道は一段と険しくなってしまいます。

 

 クリントン氏は、合理的だが広範囲に及ぶ変化を望んでおり、それを達成できるだけの経験が自分にはあると有権者を納得させる必要があります。だが、言うはやすく行うは難です。クリントン氏はさまざまな政策を提示することはできますが、優先順位をつけたり、ビジョンを分かりやすく説明したりすることは得意ではありません。とはいえ、クリントン氏にはトランプ氏よりも楽観主義的で調和を重んじる人物という印象があります。今回の失望感の強い大統領選では、それは重要な強みになります。

 

 クリントン氏はトランプ氏に事実確認するチャンスが多々ありそうですが、その際、優越感が出ないようにする必要があります。トランプ氏を挑発し、冷静さを失わせて個人攻撃を仕掛けさせるよう仕向けるべきです。それができれば、ソーシャルメディアで話題に上るようになり、討論会後のマスコミ報道で優位に立てるでしょう。

 

 優れた議論よりも雰囲気作りが重要な場合もあります。2000年の第1回目の直接討論会を見た人の中で、どの政策論争でどちらの候補が優位に立ったかを覚えている人はほとんどいないでしょう。しかし、その場の雰囲気を味方につけ、議論にも勝ったのは共和党候補のジョージ・W・ブッシュ氏です。民主党候補のアル・ゴア副大統領が威嚇するようにブッシュ氏に体を近づけたとき、ブッシュ氏が素っ気なく軽蔑するようにうなずいたことが決め手になりました。身ぶりや口調、見た目が発言内容よりも結果に影響する場合があります。リチャード・ニクソン氏はジョン・F・ケネディ氏との対決で身をもってそれを知ったのです。

 

 討論会が3回あるということは、第1回目の出来が悪くても巻き返せるということです。ジョージ・W・ブッシュ氏もバラク・オバマ氏も第1回目の直接討論会ではいまひとつさえなかったのですが、当選を果たしました。しかし、26日の討論会は1億人が視聴するとみられ、欠点の多い今年の候補者にとっては、この対決がレースの主導権を握るための絶好の機会になるのえす。(ソースWSJ

2016年9月19日 (月)

5分でわかる「トランプ氏ではダメな理由」!

共和党候補トランプ氏は、なぜ米国の大統領には不向きなのか。WSJコラムニストがQA形式で持論を展開します。

 

Q: あなたは今回の米大統領選で民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官を応援しているようだが、それで保守的なコラムニストと自称することができるのか?

 

A: 私が応援している理由は、共和党候補のドナルド・トランプ氏が反保守的かつ反米国的で、道徳心がなく、危険だからだ。

 

Q: ではクリントン氏は、米国民としてわれわれが大切にする資質を備えた保守派であり、政治経験がきわめて豊富だということか?

 

A: いやそうではない。彼女は昔からリベラル派で、政治的には日和見主義だし、倫理観に欠けるところもある。

 

Q: それでも彼女を支持するのか?

 

A: そうでなければ良かったが、ほかに選択肢があるだろうか?

 

Q: 選択肢なら、共和党候補がいる。貿易や移民問題をめぐっては、彼はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の正統派の論調に沿わないだろうが、それ以外では減税や規制緩和、国防の強化、保守派判事の任命といった主張をしている。共和党副大統領候補のマイク・ペンス・インディアナ州知事や、ポール・ライアン下院議長の助言も聞くだろう。

 

A: われわれの選択肢は政策メニューに基づくと思っているようだが、私がトランプ氏に反対する根本的な理由は、彼が大統領には不向きな人間だからだ。

 

Q: ちょっと待ってくれ。少々荒削りなのは認めるが、それは彼が政治家ではないからだ。また、巨万の富を築いたすばらしい実業家でもある。

 

A: もしトランプ氏が納税申告書を公開するつもりなら、あるいは彼のビジネスのうち6事業が破綻しておらず、4000件を超える訴訟を抱えていなかったら、さらに納入業者に対して常に不当な扱いをし、慈善資金を出し惜しみすることがなかったら、その主張を信用してもよいのだが。

 

Q: 会社を経営するのがどういうことかを知らないエリート階級のような話しぶりだ。

 

A: 私の知る限り、成功した起業家は節度を持ち、情報を公開し、誠意ある経営を行っている。

 

Q: それでも彼の成功には異論がないだろう。

 

A: トランプ氏が手に入れたのは成功ではなく、悪評だ。彼と共通点が多いのは、カジノ王のスティーブ・ウィンよりも、世間をにぎわすラッパーのカニエ・ウエストだ。それに、彼はただ荒削りなだけでなく芯まで腐っている。

 

Q: おや。彼が時に無分別なことや政治的に不適切なことを言って物議を醸すからか? あとで後悔するような失言は誰にでもある。クリントン氏はウソをついてばかりだ。

 

A: 違いはこうだ。クリントン氏が自らを政治的に守る戦術としてウソをつくのに対し、トランプ氏は自分を大きく見せ、弱い立場の人々を軽んじるために衝動的にウソをつく。相手が障害のある記者であろうと、家族を亡くした母親であろうとお構いなしだ。

 

Q: 両候補者ともに人格に問題がある。だがわれわれが選ぶのはローマ法王ではなく、米大統領だ。そして保守派としては、彼の意見のほうが私の考えにはるかに近い。

 

A: だけどリベラリズムの本流にいるクリントン氏より、移民排斥を掲げるトランプ氏のほうが、保守主義とかけ離れているのでは。

 

Q: では保守主義をどのように定義する?

 

A: 原則として小さな政府、自由市場、憲法が保障する権利、機会均等、個人の責任、多くの州からなる国家、パックス・アメリカーナ(米支配による平和)を堅持すること。

 

Q: トランプ氏はその大半を信じている。

 

A:  そうだとしても憲法の問題がある。生まれながらの市民権を認めない彼の案は、合衆国憲法修正第14条に抵触する。自身への批判を封じ込めるため「名誉毀損(きそん)法の可能性を広げる」との考えは、報道の自由への脅威となる。「メキシコ系」の連邦地裁判事であるゴンザロ・クリエル氏への攻撃は、米国人の信条に対する挑戦だ。

 

Q: まさしくトランプ氏がいつもまくし立てていることだ。

 

A: 「まくし立てていること」こそ、トランプ氏の内面を見抜くカギだ。直感的にリベラリズムに背を向けている。だから彼は、仏右派政党「国民戦線」のジャン・マリー・ルペン前党首や、米白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」の元指導者デビッド・デューク氏から絶賛されている。だから彼は、ロシアのプーチン大統領に称賛を送り続けている。

 

Q: トランプ氏がプーチン大統領を称賛するのは、国民の人気が高く、海外では尊敬され、実行力があるからだ。アイゼンハワーなど歴代の米大統領もそうだったが、オバマ現大統領には当てはまらない。そろそろ有能なリーダーが登場すべきではないか?

 

A: プーチン氏は尊敬されるどころか、恐れられている。思慮深い保守派ならば、効率的な独裁国家より、何もできない民主主義国家をすぐにでも選ぶだろう。

 

Q: わが国は19兆ドルの借金を抱え、殺人率は上昇し、過激派組織「イスラム国」に翻弄(ほんろう)され、数百万人に上る労働年齢の男性が仕事探しをあきらめている。申し訳ないが、今はまともな時代ではない。

 

A: 米国はもっと悪い時期を乗り切ってきた。1970年代を考えてみよ。まともじゃないのは、おどけたリーダーが過激な解決策を説くという唐突な状況だ。フィリピンではドゥテルテ大統領が就任したが、同じタイプの米国人が自由主義世界のリーダーになるのは全く別の話だ。

 

Q: ここは米国だ。幅広い権限をもつ大統領に対し、抑制と均衡をもたらす制度を備えている。制度について言えば、最高裁判事の後任人事で「リベラル派に1世代譲る」事態について言うべきことはあるか?

 

A: 合衆国憲法の厳密な解釈を軽蔑するような人物が、厳格なコンストラクショニスト(法律の解釈者)を指名すると思うか?

 

Q: いいかい。クリントン氏についてはよく知っているし、それはひどいものだ。トランプ氏なら、公約を守る可能性があるうえ、就任後の伸びしろもある。

 

A: 君が米国の制度を心から信頼しているならば、オバマ政権と同様、クリントン氏の任期を乗り切れるはずだ。トランプ氏は候補者から大統領に上り詰めたとたんに虚栄心をむき出しにし、大きな権力を求めるだろう。彼自身が好んで口にするように「私が変わると思うか? 絶対に変わらない」。彼がこの約束を守るのは間違いない。(ソースWSJ

2016年9月18日 (日)

イスラム国の崩壊後に待ち受けている世界!

201474日、黒いターバンを巻いた過激派組織「イスラム国」(IS)のアブ・バクル・アル・バグダディ容疑者は、イラク第2の都市モスルで、カリフ(予言者ムハンマドの後継者)を最高指導者とするイスラム国家を樹立すると宣言しました。シリア東部とイラク西部を制圧し、自らカリフと名乗る同容疑者はイスラム教スンニ派の同胞に向かって「尊厳、権力、権利、リーダーシップ」を取り戻すと告げました。

 

 しかし今や、イスラム国は台頭したのと同じスピードで退潮に転じているように見えるあす。戦闘では一連の敗北を喫し、制圧した都市を一つずつ失っているにもかかわらず、各地でテロ攻撃の頻度を高めています。一時は英国ほどの大きさがあった支配地域は、イラクでもシリアでもこの1年間に縮小の一途をたどり、イラクの要衝ラマディやファルージャ、シリアの古都パルミラやトルコとの国境地帯も失いました。また本部を置くリビア中部の都市シルテからも撤退しつつあります。残る重要拠点であるイラクのモスルとシリアのラッカを失うのも時間の問題です。

 

 では、イスラム国が崩壊したら何が起きるのかという疑問が持ち上がります。その空白を埋めるのが誰になるかで中東地域の未来が決まるでしょう。地上に残された空白はもちろん、より重要なのは、世界中のジハーディスト(イスラム聖戦主義者)の観念上の間隙(かんげき)をどう埋めるかです。

 

アルカイダの復活

 

 2001911日の米同時多発テロから15年たった今、イスラム国崩壊の結果として考えられる可能性の一つは、ライバル関係にある国際テロ組織「アルカイダ」の復活です。イスラム国の残党と同様、アルカイダも存在意義を主張するため、一連の新たなテロを西側諸国などで仕掛けるかもしれません。

 

 オバマ政権下で国務省テロ対策調整官を務めたダートマス大学のダニエル・ベンジャミン氏は「ISIS(イスラム国)を追い払ったからといってジハーディストが消滅するわけではない」とし、「カリフ制の排除は一定の成果だが、それは終わりの始まりではなく、おそらくは始まりの終わりにすぎない」と指摘しました。

 

 バグダディ容疑者が世界のイスラム教徒に自身への忠誠を誓うよう求めたとき、他のジハーディストのリーダーや聖職者らは正当性を認めず、その企てが破綻するのは避けられないと警告しました。アルカイダの最高指導者アイマン・ザワヒリ容疑者は中でも最も敵意に満ちた批判を展開した一人です。

 

「最後のあがき」に警戒

 

 イスラム国が破竹の勢いだった間はこのような批判をものともしなかったのですが、今日のように劣勢続きでは、イスラム国の理論的な土台が危うくなってきます。パリ政治学院のイスラム専門家、ステファン・ラクロワ氏は「領土支配が2014年のカリフ制宣言の根拠となっていたため、領土を失うことは重大な問題だ」と指摘しました。

 

 ただ、領土をすべて失ったとしても、イデオロギー集団またはテロ組織としてイスラム国が完全に消えるわけではありません。むしろ存在感を誇示するように本拠地や西側諸国で世間の関心を引く大量虐殺に打って出る可能性があり、テロ対策専門家は「最後のあがき」に警戒を促しています。

 

顕在化する利害の対立

 

 またこの2年間、イスラム国に対抗するため、西側の民主主義国家からロシア、イラン、シーア派武装勢力、トルコ、クルド民兵組織、スンニ派の湾岸諸国に至るまで異例とも言える協力体制が構築されてきましたが、イスラム国が弱体化すれば、こうしたあり得ないパートナーの間で利害が対立し始めると考えられます。事実、シリア北部ではイスラム国から最近奪還した領土を巡って、米同盟国で北大西洋条約機構(NATO)に加盟するトルコと、米国が支援するクルド人勢力がすでに衝突しました。

 

 ヨルダンのジハーディスト研究者、ハッサン・アブ・ハニエ氏は「ISISが直面している挫折はこれまでより多くの問題を生み出す」と指摘。「ISISとの戦いという大義名分で中東全体の衝突や抗議デモが抑えられてきた面があり、ISIS を排除すればあちこちで衝突が再び勃発する。政府に対する改革要求も活発化するだろう」と述べました。

 

 こうした状況すべてを、ザワヒリ容疑者率いるアルカイダが利用する可能性があります。アルカイダはイスラム国の血なまぐさい攻撃や陰惨なビデオのかげに隠れていましたが、決して手をこまぬいていたわけではなく、同容疑者の下で組織を見直し、より穏健な組織とも手を結ぶなど、現実的な路線への転換を進めてきました。

 

 ここ数週間、ザワヒリ容疑者はイスラム国に対して一段と激しい非難を浴びせています。同容疑者がネット上に公開した演説では、アルカイダがスンニ派を一致団結させることに注力するのと対照的に、イスラム国は底知れない過激思想をもつ異端者であり、禁断の血を流していると断じました。

 

 元駐シリア米国大使でシンクタンク中東研究所の上席研究員であるロバート・フォード氏によると「特に印象深いのは(アルカイダの指導者が)イラクでの失敗やつらい経験から多くを学んだことです。シリアでは残忍さが消え、ジハーディスト以外の宗派とも協力している」といい、「彼らの戦術はつかみ所がなく、地元の大きなサポートもあります。こうした組織を封じ込めるのははるかに困難だろう」と指摘しました。

 

 イエメンや北アフリカにあるアルカイダ関連組織も、イスラム国の衰退に乗じて活動を活発化させることが考えられます。ヨルダンのアナリストで元軍人のマームド・イルダイサト氏は「モスルやラッカをISISから奪還しても、気を緩めることなく、緊張を保ち続けなければならない。油断すれば彼らは必ず復活する」と警告しました。

2016年9月16日 (金)

5分でわかる「トランプ氏ではダメな理由」!

 共和党候補トランプ氏は、なぜ米国の大統領には不向きなのか。WSJコラムニストがQA形式で持論を展開します。

 

Q: あなたは今回の米大統領選で民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官を応援しているようだが、それで保守的なコラムニストと自称することができるのか?

 

A: 私が応援している理由は、共和党候補のドナルド・トランプ氏が反保守的かつ反米国的で、道徳心がなく、危険だからだ。

 

Q: ではクリントン氏は、米国民としてわれわれが大切にする資質を備えた保守派であり、政治経験がきわめて豊富だということか?

 

A: いやそうではない。彼女は昔からリベラル派で、政治的には日和見主義だし、倫理観に欠けるところもある。

 

Q: それでも彼女を支持するのか?

 

A: そうでなければ良かったが、ほかに選択肢があるだろうか?

 

Q: 選択肢なら、共和党候補がいる。貿易や移民問題をめぐっては、彼はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の正統派の論調に沿わないだろうが、それ以外では減税や規制緩和、国防の強化、保守派判事の任命といった主張をしている。共和党副大統領候補のマイク・ペンス・インディアナ州知事や、ポール・ライアン下院議長の助言も聞くだろう。

 

A: われわれの選択肢は政策メニューに基づくと思っているようだが、私がトランプ氏に反対する根本的な理由は、彼が大統領には不向きな人間だからだ。

 

Q: ちょっと待ってくれ。少々荒削りなのは認めるが、それは彼が政治家ではないからだ。また、巨万の富を築いたすばらしい実業家でもある。

 

A: もしトランプ氏が納税申告書を公開するつもりなら、あるいは彼のビジネスのうち6事業が破綻しておらず、4000件を超える訴訟を抱えていなかったら、さらに納入業者に対して常に不当な扱いをし、慈善資金を出し惜しみすることがなかったら、その主張を信用してもよいのだが。

 

Q: 会社を経営するのがどういうことかを知らないエリート階級のような話しぶりだ。

 

A: 私の知る限り、成功した起業家は節度を持ち、情報を公開し、誠意ある経営を行っている。

 

Q: それでも彼の成功には異論がないだろう。

 

A: トランプ氏が手に入れたのは成功ではなく、悪評だ。彼と共通点が多いのは、カジノ王のスティーブ・ウィンよりも、世間をにぎわすラッパーのカニエ・ウエストだ。それに、彼はただ荒削りなだけでなく芯まで腐っている。

 

Q: おや。彼が時に無分別なことや政治的に不適切なことを言って物議を醸すからか? あとで後悔するような失言は誰にでもある。クリントン氏はウソをついてばかりだ。

 

A: 違いはこうだ。クリントン氏が自らを政治的に守る戦術としてウソをつくのに対し、トランプ氏は自分を大きく見せ、弱い立場の人々を軽んじるために衝動的にウソをつく。相手が障害のある記者であろうと、家族を亡くした母親であろうとお構いなしだ。

 

Q: 両候補者ともに人格に問題がある。だがわれわれが選ぶのはローマ法王ではなく、米大統領だ。そして保守派としては、彼の意見のほうが私の考えにはるかに近い。

 

A: だけどリベラリズムの本流にいるクリントン氏より、移民排斥を掲げるトランプ氏のほうが、保守主義とかけ離れているのでは。

 

Q: では保守主義をどのように定義する?

 

A: 原則として小さな政府、自由市場、憲法が保障する権利、機会均等、個人の責任、多くの州からなる国家、パックス・アメリカーナ(米支配による平和)を堅持すること。

 

Q: トランプ氏はその大半を信じている。

 

A:  そうだとしても憲法の問題がある。生まれながらの市民権を認めない彼の案は、合衆国憲法修正第14条に抵触する。自身への批判を封じ込めるため「名誉毀損(きそん)法の可能性を広げる」との考えは、報道の自由への脅威となる。「メキシコ系」の連邦地裁判事であるゴンザロ・クリエル氏への攻撃は、米国人の信条に対する挑戦だ。

 

Q: まさしくトランプ氏がいつもまくし立てていることだ。

 

A: 「まくし立てていること」こそ、トランプ氏の内面を見抜くカギだ。直感的にリベラリズムに背を向けている。だから彼は、仏右派政党「国民戦線」のジャン・マリー・ルペン前党首や、米白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」の元指導者デビッド・デューク氏から絶賛されている。だから彼は、ロシアのプーチン大統領に称賛を送り続けている。

 

Q: トランプ氏がプーチン大統領を称賛するのは、国民の人気が高く、海外では尊敬され、実行力があるからだ。アイゼンハワーなど歴代の米大統領もそうだったが、オバマ現大統領には当てはまらない。そろそろ有能なリーダーが登場すべきではないか?

 

A: プーチン氏は尊敬されるどころか、恐れられている。思慮深い保守派ならば、効率的な独裁国家より、何もできない民主主義国家をすぐにでも選ぶだろう。

 

Q: わが国は19兆ドルの借金を抱え、殺人率は上昇し、過激派組織「イスラム国」に翻弄(ほんろう)され、数百万人に上る労働年齢の男性が仕事探しをあきらめている。申し訳ないが、今はまともな時代ではない。

 

A: 米国はもっと悪い時期を乗り切ってきた。1970年代を考えてみよ。まともじゃないのは、おどけたリーダーが過激な解決策を説くという唐突な状況だ。フィリピンではドゥテルテ大統領が就任したが、同じタイプの米国人が自由主義世界のリーダーになるのは全く別の話だ。

 

Q: ここは米国だ。幅広い権限をもつ大統領に対し、抑制と均衡をもたらす制度を備えている。制度について言えば、最高裁判事の後任人事で「リベラル派に1世代譲る」事態について言うべきことはあるか?

 

A: 合衆国憲法の厳密な解釈を軽蔑するような人物が、厳格なコンストラクショニスト(法律の解釈者)を指名すると思うか?

 

Q: いいかい。クリントン氏についてはよく知っているし、それはひどいものだ。トランプ氏なら、公約を守る可能性があるうえ、就任後の伸びしろもある。

 

A: 君が米国の制度を心から信頼しているならば、オバマ政権と同様、クリントン氏の任期を乗り切れるはずだ。トランプ氏は候補者から大統領に上り詰めたとたんに虚栄心をむき出しにし、大きな権力を求めるだろう。彼自身が好んで口にするように「私が変わると思うか? 絶対に変わらない」。彼がこの約束を守るのは間違いない。(ソースWSJ

2016年9月12日 (月)

「トランプ大統領」まだあり得るか!

ちまたでは米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏が当選を確実にしたような空気が流れています。統計分析サイト「ファイブサーティエイト」やニュース専門放送局CNN、そして米マイクロソフトのリサーチプロジェクト「PredictWise(プリディクトワイズ)」も、クリントン氏が70%の確率でホワイトハウスを勝ち取ると予測しています。逆に共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝つと話すコメンテーターは少数派です。

 

 しかしさまざまな数字を見ていくと、追い風はトランプ氏に吹いていることが分かります。彼が大統領の座に着くこともまだ十分あり得る情勢です。

 

 まずは世論調査の傾向を見ていくと、政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RCP)」がリバタリアン党のゲーリー・ジョンソン氏と「緑の党」のジル・スタイン氏を含めた候補者4人の支持率を調べたところ、クリントン氏のリードはわずか2.4ポイントとなっていました。民主党全国大会後の8月にインターネット世論調査会社YouGovとエコノミスト誌が行った共同世論調査では、クリントン氏は6ポイントのリードを保持していました。またABCニュースとワシントンポスト紙が同時期に共同実施した世論調査でも、同氏は8ポイントも先行していました。クリントン氏のリードはわずか1カ月で大幅に縮小したことが分かります。

 

 二大政党以外の候補を含まない調査では、クリントン氏がトランプ氏よりもわずかに優位に選挙戦を進めています。RCPの調査ではその差は3.3ポイント。ただしそのリードもわずか1カ月で半分以上も下がってきました。ましてや二大政党の候補に対する不満が投票者の中で広がれば広がるほど、一対一での世論調査の結果は意味を持たなくなります。リバタリアン党のジョンソン候補は数カ月にわたって7%程度の支持を獲得しており、緑の党のスタイン候補も3%程度の支持を安定的に得ているのです。

 

クリントン氏に不吉な兆候

 

 最新の世論調査も、クリントン氏にとって不吉な兆候を示すものです。この1週間に発表されたほぼ全ての調査でトランプ氏が選挙戦をリードしているか、互角か、誤差の範囲内で劣勢でした。CNNと調査機関ORC6日に発表した調査では、トランプ氏が2ポイント優勢だったのです。1日に公表されたラスムッセンの調査では、トランプ氏が40%の支持を獲得していたのに対し、クリントン氏は39%だった。2日のロイター/イプソスの調査結果も同様の結果。米紙ロサンゼルス・タイムズと南カリフォルニア大学(USC)の共同調査は両者を互角としました。インベスターズ・ビジネス・デーリー紙とTIPPによる共同調査ではクリントン氏が1ポイントのリードをしていましたが、誤差の範囲は3.4ポイントでした。

 

 両者への支持の差が再び縮まってきた背景には何があるのか。もっとも分かりやすい点から挙げると、民主党全国大会の盛り上がりの反動が今クリントン氏を襲っているということでしょう。しかし選挙情勢を変えたのはそれだけではありません。8月末に発表されたABCニュースとワシントンポスト紙の世論調査では、同氏のイメージがこれまでにないほど悪化していることが判明しています。その調査ではクリントン氏に対して悪い印象を持つ人が56%、良い印象を持つ人が41%でした。8月上旬には悪い印象が52%、良い印象が46%だったことを考えると、わずかな期間で彼女のイメージが打撃を受けたこと分かります。

 

 これらはクリントン氏の私用メールサーバー問題を巡る新たな報道や、クリントン財団の資金集めに関する疑惑の影響でしょう。米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官はクリントン氏の極秘情報の取り扱いが「極めて不適切だった」と話していますが、FBI2日に公開した捜査内容もそれを裏付けるものでした。11月までにはこの問題と関連して少なくとも15000通のメールが新たに公表される可能性があります。クリントン財団の問題については、クリントン氏と夫のビル・クリントン元大統領が即刻理事を辞任し、財団の日頃の運営には関わるべきではないことは既に明らかな状況です。

 

トランプ氏のイメージ向上

 

 一方のトランプ氏は、ここにきてやっと選挙戦に集中して取り組んでいるように見えます。メディアや共和党の身内とけんかをするのは控え、移民政策や経済政策、そしてテロ対策に関する演説をするようになりました。彼のイメージは上向き始めています。わずか1カ月ほど前にブルームバーグが行った調査では、トランプ氏に対して良いイメージを持っている回答者は33%にとどまり、63%の人が悪いイメージを持っていると答えていました。先週行われたロイター/イプソスの調査では、良いイメージが44%、悪いイメージが56%と盛り返しています。

 

 ただトランプ氏は、着実に点数を稼げる「変化」と「政治腐敗」の二つのテーマを十分に活用しきれていません。YouGov/ハフィントン・ポストが6月に行った調査によると、56%の人が米国を「これまでとは違う方向に導いてほしい」と答えています。またAP通信が行った7月の調査では、56%の人がクリントン氏による私的メールサーバーの利用は違法行為であると考えていると答えました。トランプ氏にとってこの調査結果は大きなチャンスを意味しています。

 

 クリントン氏は自分の主張を明確に伝えることに苦労しているように見えます。メディアからの注目を避けるかのように資金集めに集中しており、先月には自身の選挙戦と民主党のために14300万ドルにのぼる記録的な資金を集めました。トランプ氏を批判する広告を展開したことでトランプ氏に多少のダメージを与えたかもしれませんが、それが彼女のリードを確かなものにしたとは言い切れません。

 

 クリントン氏は自分が大統領になるべき理由を示す決定的なビジョンをいまだに見せていません。夫のビル氏は党大会で彼女のことを「変化をもたらすことができる人」と表現したが、今の彼女が必要としているのはその程度のフレーズではない。具体的なビジョンを示すことが難しいならば、支持率が上昇しているオバマ大統領の実績や、場合によってはクリントン元大統領の実績と自身を関連付けて選挙を戦い抜くのもひとつの手段かもしれません。

 

 しかし大統領候補としての明確な方向性も示せず、信頼できない人物で恐らく腐敗しているだろうと世間から見られている以上、クリントン氏は今以上のことをしなければならないことは明らかです。

 

 では、トランプ候補は勝てるのか。獲得できそうな選挙人の数では確かに遅れをとっていますが、当選できることを示すデータはあります。ミシガン、ウィスコンシン、オハイオの各州で先週行われた世論調査では、2人の支持率が拮抗(きっこう)してきていることが分かっています。フロリダ州でも誤差の範囲で争っています。一時は勝てる見込みのなかったノースカロライナ州や、場合によってはアリゾナ州も、予断を許さない情勢になってきました。(ソースWSJ

2016年9月 1日 (木)

ヒラリー氏が築いた「米クリントン省」!

ヒラリー・クリントン前国務長官の私用メール問題は五月雨式に詳細が明らかになってきましたが、ここにきて豪雨に変わりました。クリントン氏がなぜ私的な通信設備を使用していのか、そこには何が隠されていたのかが、先週ようやく判明したのです。悪名高い同氏の私用サーバーは、クリントン氏が3年間クリントン財団の「長官」を務めていたことを隠すために設置されていたことが明らかになったのです。

 

 3月に本欄で、クリントン氏の秘密情報の不用意な扱いは重要な問題ではあるが、より重要なポイントが別にあると指摘しました。クリントン氏は国家秘密を暴露しようと思って私用サーバーを設置したわけではありません。それは偶発的な出来事にすぎません。同氏がサーバーを設置したのは、私生活の細部が明るみに出ないようにするためだったのです。すなわち、入念で広範囲に及ぶ資金調達や自己プロモーションのための組織、クリントン財団を取り巻く生活を秘密にしておくためだったというわけです。

 

 クリントン氏が――明確な倫理基準にのっとって――国務長官時代に財団と距離を置いていれば、私用サーバーや私用メールなどそもそも必要なかったはずです。そうであれば、クリントン氏の電子通信の大部分は国務省の職務に関連したものにとどまり、たまにヨガのスケジュールに関わるものが混じる程度だったはずです。連邦情報公開法当局者がのちに国務省のメールを精査したときも、明らかな「私用」メールをさほど苦労することなく選別し公表できたはずです。普通ならこうなっていたはずです。

 

 クリントン氏の私用サーバーのアカウントでやり取りされた同氏の側近、ヒューマ・アベディン氏のメールが先週公表されました。その内容から分かる通り、クリントン氏の問題は公私の区別がなかったことです。同氏にとって国務省と一族の基金であるクリントン財団は一体化された組織だったのです。同じスタッフを雇い、スケジュールを照らし合わせていたほか、財団の献金者が国務省に接近できるようにもなっていました。秘密のサーバーを保持していたのも、本来政府に提出すべき15000通のメールを削除したのもそのためです。

 

財団献金者の優遇を働きかけ

 

 先週公表されたアベディン氏のメールで最も注目されているのが、クリントン財団幹部のダグ・バンド氏が財団献金者を優遇するよう国務省に働きかけていたという憂慮すべき事実です。メールは保守系の行政監視団体「ジュディシャル・ウオッチ」が国務省を相手取った訴訟で公表したもので、その725ページに及ぶメールからは、メールのやり取りの頻度やその大半がいかに陳腐な内容であったかもうかがい知ることができます。バンド氏はクリントン氏にこの会議はできるか、あの会合は開けるか、いつブラジルを訪問するのかといったことを尋ねていました。アベディン氏の返事は、クリントン氏はそれに取り組んでいる、これに関する回答やあれに関する回答を得るだろうといったものでした。これらは単なるちょっとした知り合い同士のメールではありません。彼らはあいさつの言葉や署名は省いていました。これらは同じ目的に従事する2人の間で交わされたメールです。その目的とは、国務省とクリントン財団が1つになった組織のために働くことだったのです。

 

 今回もう1つ明らかになった重要な点は、マスコミの目の付けどころが間違っていたことです。マスコミが焦点を当てているのはクリントン氏が削除したメールです。確かに連邦捜査局(FBI)が復元した15000通のテキストの中に価値ある情報も含まれているでしょう。しかし、クリントン氏は忙しい人であり、国務省と財団を取り巻く日々の生活の細かいことの大半は信頼する側近が処理しています。彼らも私用メールを持っていたのはそのためです。初めからアベディン氏のファイルに目をつけていたジュディシャル・ウオッチは大したものです。次に急いで調査する必要があるのは、クリントン氏が国務長官時代に首席補佐官を務めていたシェリル・ミルズ氏の同様のメールです。

 

 今回明らかになった最も重要なことは、クリントン財団の問題が利益相反「のように見える」というだけにとどまらないことです。これは紛れもなく見返りを求める献金でです。バンド氏はクリントン氏に「われわれの親しい友人」であるバーレーンの皇太子と会談するよう求めるメールを送っていました。これは皇太子がクリントン財団の奨学金制度に数百万ドル寄付することで面会時間を買ったと言っているようなものです。疑いの余地はありません。

 

点と点がつながらない

 

 この点は先週のAP通信の報道でも明らかにされていました。AP通信は、クリントン氏が国務長官1年目に会った外部関係者154人のうち半数以上がクリントン財団の献金者だったと報じました。新興ウェブメディア「Vox Media」のコラムニスト、マシュー・イグレシアス氏らクリントン氏の擁護派は、154という数字には外交当局者や米政府当局者との数千回に及ぶ会合は含まれていないため、その数字は誇張されていると主張しています。

 

 確かにそうでしょう。国家の外交トップとしてクリントン氏は多くの外交当局者や米政府当局者と会う義務がありました。しかし、それ以外の人とはその義務はなかったのです。多忙な国務長官との面会にこぎつけたのは一部の幸運な人たちであり、驚くべきことに、そのほとんどがクリントン財団の献金者だったのです。

 

 クリントン氏にとって幸いなのは、(汚職疑惑は往々にしてそうだが)点と点を線で結ぶことが依然、難しいことです。「もらったもの」(財団への献金)と「見返り」(バーレーンの武器取引)はあちこちに見つけることができますが、それらを結びつける確固たる証拠は見当たりません。

 

 しかし、そこは重要でしょうか。今回発覚したのは、政府高官の1人が設置した私用サーバーの中に、倫理規定があるにもかからず高官が一族の基金とひそかに関わりを持ち続け、公的記録を破壊したことを示す証拠が保存されていたということです。これだけでも、クリントン氏を大統領候補として失格にするには十分ではないでしょうか。(ソースWSJ

2016年8月31日 (水)

ヒラリー氏が築いた「米クリントン省」!

ヒラリー・クリントン前国務長官の私用メール問題は五月雨式に詳細が明らかになってきましたが、ここにきて豪雨に変わりました。クリントン氏がなぜ私的な通信設備を使用していのか、そこには何が隠されていたのかが、先週ようやく判明したのです。悪名高い同氏の私用サーバーは、クリントン氏が3年間クリントン財団の「長官」を務めていたことを隠すために設置されていたことが明らかになったのです。

 

 3月に本欄で、クリントン氏の秘密情報の不用意な扱いは重要な問題ではあるが、より重要なポイントが別にあると指摘しました。クリントン氏は国家秘密を暴露しようと思って私用サーバーを設置したわけではありません。それは偶発的な出来事にすぎません。同氏がサーバーを設置したのは、私生活の細部が明るみに出ないようにするためだったのです。すなわち、入念で広範囲に及ぶ資金調達や自己プロモーションのための組織、クリントン財団を取り巻く生活を秘密にしておくためだったというわけです。

 

 クリントン氏が――明確な倫理基準にのっとって――国務長官時代に財団と距離を置いていれば、私用サーバーや私用メールなどそもそも必要なかったはずです。そうであれば、クリントン氏の電子通信の大部分は国務省の職務に関連したものにとどまり、たまにヨガのスケジュールに関わるものが混じる程度だったはずです。連邦情報公開法当局者がのちに国務省のメールを精査したときも、明らかな「私用」メールをさほど苦労することなく選別し公表できたはずです。普通ならこうなっていたはずです。

 

 クリントン氏の私用サーバーのアカウントでやり取りされた同氏の側近、ヒューマ・アベディン氏のメールが先週公表されました。その内容から分かる通り、クリントン氏の問題は公私の区別がなかったことです。同氏にとって国務省と一族の基金であるクリントン財団は一体化された組織だったのです。同じスタッフを雇い、スケジュールを照らし合わせていたほか、財団の献金者が国務省に接近できるようにもなっていました。秘密のサーバーを保持していたのも、本来政府に提出すべき15000通のメールを削除したのもそのためです。

 

財団献金者の優遇を働きかけ

 

 先週公表されたアベディン氏のメールで最も注目されているのが、クリントン財団幹部のダグ・バンド氏が財団献金者を優遇するよう国務省に働きかけていたという憂慮すべき事実です。メールは保守系の行政監視団体「ジュディシャル・ウオッチ」が国務省を相手取った訴訟で公表したもので、その725ページに及ぶメールからは、メールのやり取りの頻度やその大半がいかに陳腐な内容であったかもうかがい知ることができます。バンド氏はクリントン氏にこの会議はできるか、あの会合は開けるか、いつブラジルを訪問するのかといったことを尋ねていました。アベディン氏の返事は、クリントン氏はそれに取り組んでいる、これに関する回答やあれに関する回答を得るだろうといったものでした。これらは単なるちょっとした知り合い同士のメールではありません。彼らはあいさつの言葉や署名は省いていました。これらは同じ目的に従事する2人の間で交わされたメールです。その目的とは、国務省とクリントン財団が1つになった組織のために働くことだったのです。

 

 今回もう1つ明らかになった重要な点は、マスコミの目の付けどころが間違っていたことです。マスコミが焦点を当てているのはクリントン氏が削除したメールです。確かに連邦捜査局(FBI)が復元した15000通のテキストの中に価値ある情報も含まれているでしょう。しかし、クリントン氏は忙しい人であり、国務省と財団を取り巻く日々の生活の細かいことの大半は信頼する側近が処理しています。彼らも私用メールを持っていたのはそのためです。初めからアベディン氏のファイルに目をつけていたジュディシャル・ウオッチは大したものです。次に急いで調査する必要があるのは、クリントン氏が国務長官時代に首席補佐官を務めていたシェリル・ミルズ氏の同様のメールです。

 

 今回明らかになった最も重要なことは、クリントン財団の問題が利益相反「のように見える」というだけにとどまらないことです。これは紛れもなく見返りを求める献金でです。バンド氏はクリントン氏に「われわれの親しい友人」であるバーレーンの皇太子と会談するよう求めるメールを送っていました。これは皇太子がクリントン財団の奨学金制度に数百万ドル寄付することで面会時間を買ったと言っているようなものです。疑いの余地はありません。

 

点と点がつながらない

 

 この点は先週のAP通信の報道でも明らかにされていました。AP通信は、クリントン氏が国務長官1年目に会った外部関係者154人のうち半数以上がクリントン財団の献金者だったと報じました。新興ウェブメディア「Vox Media」のコラムニスト、マシュー・イグレシアス氏らクリントン氏の擁護派は、154という数字には外交当局者や米政府当局者との数千回に及ぶ会合は含まれていないため、その数字は誇張されていると主張しています。

 

 確かにそうでしょう。国家の外交トップとしてクリントン氏は多くの外交当局者や米政府当局者と会う義務がありました。しかし、それ以外の人とはその義務はなかったのです。多忙な国務長官との面会にこぎつけたのは一部の幸運な人たちであり、驚くべきことに、そのほとんどがクリントン財団の献金者だったのです。

 

 クリントン氏にとって幸いなのは、(汚職疑惑は往々にしてそうだが)点と点を線で結ぶことが依然、難しいことです。「もらったもの」(財団への献金)と「見返り」(バーレーンの武器取引)はあちこちに見つけることができますが、それらを結びつける確固たる証拠は見当たりません。

 

 しかし、そこは重要でしょうか。今回発覚したのは、政府高官の1人が設置した私用サーバーの中に、倫理規定があるにもかからず高官が一族の基金とひそかに関わりを持ち続け、公的記録を破壊したことを示す証拠が保存されていたということです。これだけでも、クリントン氏を大統領候補として失格にするには十分ではないでしょうか。(ソースW

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