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健康・医療・スポーツ

2016年9月30日 (金)

iPhoneのライトがヒント、安価な内視鏡!

安全な外科治療を手頃な価格で受けられない人は世界人口の3分の2のおよそ50億人。ある外科医が靴下を探しているときに思いついた85ドルの機器が、この状況を変えるかもしれません。

 

 ユタ大学医療イノベーションセンターのトップで外科医のジョン・ランゲル氏がこの機器を考え出したのは、ある日の深夜、急患で呼び出されたときのことです。眠っている妻を起こさないように服を探そうとiPhone(アイフォーン)のライトをつけると、「腹腔鏡の光と同じくらい明るい」と思ったそうだです。

 

 ランゲル医師は大学で担当していたバイオイノベーションのクラスの学生に伝えました。携帯電話の部品を使って低価格の腹腔鏡を作り、コストのせいでこの機器を使った低侵襲手術(身体への負担が少ない手術)が利用できない地域に広めるのはどうだろうと。

 

 開腹手術の代わりに腹部に開けた小さな穴から体内にカメラや手術器具を入れる腹腔鏡手術の機器の価格は通常、2万ドル(約200万円)を超えます。画像処理システムや高精細のビデオスクリーンを含む補助機材にも70万ドルもの設備投資が必要です。これに年間サービス契約が付加されるケースが多く、さらに数千ドルが上乗せされています。

 

 これに対し、ランゲル医師のチームが考案した腹腔鏡「ゼノスコープ」の製造コストは1台当たり約85ドル。大きな画像処理システムやビデオスクリーンも必要ありません。画像は普通のノート型パソコンやスマートフォン上で見られるうえ、パソコンから腹腔鏡に必要な電力を最大8時間確保できます。このシステムを使えば、医師は病院や安定した電力供給がないところでも低侵襲手術を行うことができるのです。

 

 ランゲル医師のチームが設立した企業ゼノコアによると、販売価格は300ドルから500ドルになる見込み。設備投資やサービス契約は不要です。ゼノスコープは「非常に安価なので壊れたら捨てられる」とランゲル氏は話しています。

 

 資金も安定した電力もきれいな水も十分にはない地域で生かそうと、大学院生を中心に超低価格の医療機器が考案されています。大学は技術者や科学者、設計技師、ビジネス専攻の学生の協力を募り、医療の提供に関わる課題を突き止めて、外科治療への差し迫ったニーズへの対応など低価格かつ現実的な解決策を編み出そうとしています。

 

 「世界的な外科手術に関するランセット委員会」の推計によると、多くの低・中所得国では基本的な外科治療の不足により、盲腸の破裂や胆のうの病気、腫瘍、外傷など治療可能な症状で年間1800万人以上が死亡しています。世界保健機関(WHO)と世界銀行は世界全体の医療と経済の水準の引き上げには外科的能力の向上が欠かせないと指摘しています。

 

世界では50億人が安全な手術を手頃な価格で受けられていません。毎年1860万人が手術関係の不備で死亡し、3300万人が手術費用のために破産、14300万人が追加手術を必要としています。2030年までにこうした不備が解消されなければ、失われるGDPは推定123000億ドルに上ります。ゼノスコープにはナイジェリア、ガーナ、中国、モロッコの外科医に加え、将来、宇宙での外科手術を想定する米航空宇宙局(NASA)も関心を示しています。

 

 ただ課題も残っています。ランゲル医師のチームは米食品医薬品局(FDA)と欧州連合(EU)に対し、ゼノスコープを実質的に既存の技術と同等な機器として指定するよう要請しています。要請が認められれば、長期におよぶ臨床試験を実施せずに済みます。ランゲル医師はFDAEUのお墨付きを得てからゼノスコープを本格展開するつもりです。

 

 ゼノコアは製造の準備に向けて、第1回の資金調達で500万ドルを調達する必要があります。同社は発展途上国でゼノスコープの組み立てと流通を担える現地企業との提携を希望していて、米国でも、感染の危険がない使い捨て機器として販売したい考えです。

 

 ユタ州ソルトレークシティのインターマウンテン・ヘルスケアに所属するレイ・プライス医師と近隣の3病院の医師は、ゼノスコープの品質を既存の腹腔鏡機器と比較する試験を行うよう提案しています。製造コストが85ドルの機器と非常に高価な既存の機器の性能が同じであれば、「低侵襲手術のコストが下がり、高額医療が混乱するかもしれない」が、「そうなることを期待する」とプライス氏は語りました。(ソースWSJ

2016年8月20日 (土)

体操の抗議に手数料、リオで米チームも支払う!

五輪の体操競技で抗議にお金がかかることはほとんど知られていません。体操競技は複雑な採点制度に支配されており、コーチは手数料を支払わなければ異議を唱えることができないのです。

 

 国際体操連盟が定めた規則によると、訴えが認められなかった場合はチームに手数料が課されます。狙いは根拠のない申し立てを防ぐことですが、リオデジャネイロ大会では最初の抗議が300ドル(約3万円)、2回目が500ドル、3回目が1000ドルとなっています。

 

 前回の五輪では、コーチは抗議を始める前に現金を支払ったのですが、同連盟によると、現在は事後の支払いに同意する旨の書類を提出するだけだそうです。

 

 リオの体操競技では、判定に対する「質問」が1ダースほど出されている。19日に始まる新体操で増える可能性もあります。規則によれば、異議が出されると独立委員会がビデオでその演技を見直し、異議が認められた場合、手数料は請求されません。

 

平均台で多くの手数料発生

 

 リオでは平均台が多くの手数料を生んでいます。多くの抗議が出され、却下されているからです。点数の変更につながった抗議はほとんどありません。

 

 ローリー・ヘルナンデスについても、コーチのマギー・ヘイニー氏が平均台の点数に異議を唱えました。ヘイニー氏は、米国体操協会のロンダ・フェン氏と米代表チームのコーディネーターであるマーサ・カーロイ氏の助言を受けて見直しを求めたと話しています。

 

 ヘイニー氏は「ロンダとマーサがそれを入れるようわめいていた」と述べました。2人はヘルナンデスが0.1ポイント減点されたとみられる部分についてどうしても知りたがったが、ヘイニー氏は0.1ポイント増えたとしてもヘルナンデスの銀メダルが金に変わることはないとわかっていたといいます。結局、異議は却下され、点数は変わりませんでした。

 

 ヘイニー氏は「手数料が私の口座から引き落とされないことを希望する。それだけは確かだ」と話しました。請求書は米国体操協会に送られ、手数料は国際体操連盟の基金に回ります。

 

 同基金によれば、集まった資金は病気やけがの体操選手の支援、体操選手の健康に関する調査の支援、体操器具を必要とする国への寄付、途上国での体操競技促進に充てられるといいます。(ソースWSJ

2016年8月12日 (金)

ファンが戸惑う女子体操の新技名!

五輪で金も銀も銅も得られなかった体操選手が得られるかもしれない報奨があります。体操の歴史で初めての新技を成功させた選手は、その技に自分の名前をつけてもらえるのです。

 

 例えば昨年、足を交差させて開脚座の姿勢で平均台に飛び乗る技が国際体操連盟に認定されました。しかし、この技は、本人がインスタグラムの動画でそう呼んでいたせいもあって、体操界では既に考案者の姓で知られていました。

 

 トリニダード・トバゴ代表(カナダ生まれ)のマリーサ・ディックは昨年の世界選手権で「ザ・ディック」(訳注:ディック=dick=は男性器の俗語)を披露しました。この大会では平均台の成績こそ74位だったが、自身の名前が体操の公式規則集に残るという栄誉にあずかることになったのです。

 

 ディックは先週、新技の名前が「体操の世界で永遠に生きる」と話しています。ただ今回リオ五輪にも出場しましたが、7日の予選は突破できませんでした。

 

 

マリーサ・ディックの新技「ザ・ディック」

 この技で唯一の問題は、挑戦する体操選手がほとんどいないことです。ファンが恥ずかしがる技は珍しい。礼儀正しい人たちとの会話では、舌がもつれそうな「ザ・ザモロドチコワ」のほうがまだ口に出しやすい。ディックの体操人生で最も誇らしいはずの瞬間が、人々を困惑させているのです。

 

 新技に関するあらゆるジョークを聞いたというディックは、自身の名前のおかげで「皆にとってすごくわかりやすくなった」と話しています。「何しろビーム(訳注:平均台、お尻の意味もあり)の上の技だし、開脚して乗っかるわけだから」と話しています。(ソースWSJ

2016年8月11日 (木)

怪物フェルプスがリオで見せた鬼の形相!

マイケル・フェルプスがリオ五輪の会場で見せた表情がネットで話題になっています。

 

 8日夜、男子競泳200メートルバタフライの準決勝のレース直前。会場の様子を中継する米NBCのカメラが競泳選手らの控室を映し出すと、そこには「スター・ウォーズ」のオビ=ワン・ケノービのようにフードをかぶったフェルプスの姿がありました。レース前の選手らが準備をしたり、時には極度の緊張状態に陥ったりしているこの部屋で、彼は座ったまま堅く口を結び、顎に力を入れ、何かを威嚇するような視線を放っていました。

 

 そのフェルプスの前に映っていたのが彼の宿敵チャド・レクローです。南アフリカ代表のレクローは笑顔で腕を回したり、「シャドーボクシング」をしたり、足をほぐしながら動き続けています。多少緊張気味であるものの、まるでスターバックスの店内でトイレが空くのを待っているかのようなカジュアルな様子です。一方のフェルプスには和やかな雰囲気は全くなく微動だにせず前方をにらみ続け、まるでレクローの存在を消し去ろうとしているか、あるいは念力で鉄板でも曲げようとしているかのようなオーラです。

 

 米プロバスケットボール協会(NBA)の名将グレッグ・ポポビッチに歌手テイラー・スウィフトとタレントのキム・カーダシアンの確執について質問したら、こんな表情を浮かべるだろうか。画面に映ったフェルプスのオーラに比べれば、米プロフットボールリーグ(NFL)のペイトリオッツの監督ビル・ベリチックですらかわいく見えます。

 

 リオ五輪では上半身裸で開幕式の旗手を務めたトンガのピタ・タウファトファ選手がツイッターなどで話題になりました。またバスケットボール選手ディケンベ・ムトンボからインスパイアされたような競泳選手リリー・キングの指のジェスチャーも、広くネットで共有されています。スポーツ中継ではお目に掛かることのなかった、このフェルプスの五輪史上まれに見る勝負師の表情もネット上で瞬く間に拡散しました。

 

 父親となったフェルプスはデビュー当時と比べて性格も円くなった印象があり、メディアの前に立っても自然体でいられるようになりました。しかしその一方で、彼は史上最も成功した五輪アスリートであり、5度目の出場となる今回もトップ選手として参加しています。あの控室で見せた形相こそが、マイケル・フェルプスがマイケル・フェルプスたるゆえんなのかもしれません。(ソースWSJ

2016年8月 2日 (火)

リオ五輪:夢舞台と暗い現実の狭間で!

 85日開幕のリオ五輪に出場する女子ボート競技米国代表のミーガン・カルモーが、自身のブログでメディアの報道姿勢を痛烈に批判しました。カルモーは、大会開幕を前にネガティブな情報(具体的には排泄物などが浮いているとされるボート競技会場の不衛生さ)ばかりが伝えられていると苛立ちを隠さず、「米国のためなら何が浮かんでいる会場であっても私はボートを漕ぐ」と宣言しました。その発言は様々な場でピックアップされています。

 

 リオ五輪開幕まで1週間を切った今、カルモーの苛立ちは充分に理解できます。大会に参加するアスリートのほとんどは無名の選手で、競泳のマイケル・フェルプスやケイティ・レデッキー、男子バスケットボールのケビン・デュラントといったスーパースターはほんの一握りに過ぎません。そんな中でカルモーのような選手が大会に向けて必死に準備を続ける中で、報道はリオの経済情勢や環境問題、さらにはテロに対する懸念といったことにフォーカスを当て続けています。2014年のソチ冬季五輪を含む最近の大会におけるメディアの傾向でもあるが、アスリートからすれば五輪は一世一代の晴れ舞台。例えて言うならば、結婚式の当日に空が雨雲で覆われているような気分でしょう。

 

 しかし、これが21世紀の五輪の姿であることも事実です。リオ五輪でも、過去の大会と同じように感動的なシーンや共感を呼ぶアスリートのストーリーがいくつも生まれるでしょう。その一方で、現実は夢舞台にもついて回ります。それにまつわる報道は読んでいて楽しいものではないかもしれません。しかし、それは重要な情報でもあるのです。

 

五輪のイメージと現実の違い

 

 我々は2年ごとにやってくる夏季五輪と冬季五輪を華やかなショーとして注目しますが、当然のことながら表に見える部分と実際の現場の状況には常に乖離した部分があります。

 

 五輪規模の大会を開催するとなると、政治や文化から人権、さらには環境問題への配慮といったさまざまな問題が複雑に絡みます。しかしメディアやテレビはその小さな一部を切り取る形でしか伝えることしかできません。過去には1972年のミュンヘン五輪でテロ攻撃があり、その約20年後のアトランタ五輪では公園での爆発事件が起きるなど、夢舞台においても悲劇的な出来事は起きてきていました。しかし報道する側としては五輪を人間ドラマとして描き、アスリート達の希望や挫折や栄光を見る側に届けることに力を注ぎ続けてきました。それがこれまでの流れです。

 

 このやり方は見る側を魅了し、熱狂させ、やがてスポーツ報道のあり方すらも変えました。テレビで目にする五輪はよりドラマティックなものになるよう色づけをされ、そして必要とあらば放送枠を移動させてでも視聴者に一番インパクトを与えられるように制作されます(1980年のレークプラシッド冬季五輪においては、米国対ソ連のアイスホッケーの試合が3時間遅れで録画放送された。氷上の奇跡とも言われたこの試合がそれでもなお3000万人の視聴者を釘付けにしたのは、驚異的だ)。

 

 こうした報道のあり方は、長年成功を収めてきたと言えるでしょう。

 

 しかしインターネットが発達した現代で、この「色づけバージョン」のみを観る側に届けるのは困難です。信頼あるメディアは情報を伝えるひとつの担い手ですが、今やスマホさえ持っていれば誰もが実況を行えます。デジタル化が進み情報の運び手が蔓延する中で、リアルタイムであるかどうかが重要になります。情報は瞬時に、そして生々しいままに世界に伝わるのです。そしてやがて伝えたい以上の情報が漏れ、放送における紳士協定は破られるのです。これはもはや五輪だけの問題ではなく、世界中で行われるどんなイベントについても言えることでもあります。

 

瞬時に全てが生で伝わる大会

 

 今回のリオ五輪の場合はニューヨークと時差が1時間しかないため、米国の視聴者は録画中継に頼る必要はない。間違えて競技結果を聞いてしまうのを防ぐため、オフィスで耳栓をしたり「五輪の結果を教えないで」と自分の周りに意思表示をする必要もなさそうだ。

 

 しかし少しでも現地から届く報道を耳にしているのなら、リオからのニュースが悲惨な状況を伝えるものばかりだということに気付くでしょう。経済や財政危機の話題もあれば、人手不足に関する懸念もあります。さらにはリオ市が非常事態宣言を発令したことも、暗雲立ち込める話題です。毎日のように何かしらのトラブルが報じられる中、一足先に現地入りしたアスリート達から聞こえてくる選手村の評判もあまりよくありません。

 

 たしかに中には物事を大げさに伝えるメディアや、不正確な情報も存在するでしょう。しかし、その多くは実話でもあります。

 

 21世紀になり、五輪の神話は崩れたと言っていいでしょう。そして今後もこういった報道は儀式のように毎回繰り返されるでしょう。大会の負の部分を誰もが知るようになり、五輪開催を望む国や都市も二の足を踏むようになります。昨年の夏には、2024年大会の誘致に立候補していたボストンが逃げるかのように立候補を撤回したのは記憶に新しいことです。

 

 夏季五輪ならばまだ一般に対するアピールはあります。しかし冬季五輪となると、新鮮味もなければ需要もありません。

 

 五輪を開催することが国威を示したり、あるいは商業的な成功が約束されていた日々は遠い記憶となってしまいました。500億ドルをかけて建設されながらもわずか2年でゴーストタウンと化したソチ冬季五輪関連の建築物。残ったのはそんなイメージです。

 

五輪自体への不信も

 

 五輪精神そのものに対する不信感も強いのです。大会を「純粋」なスポーツイベントとして捉えるのはもはや錯覚です。先日、国際オリンピック委員会(IOC)は国家ぐるみでのドーピングが明らかになったロシアに対して処分を下すことを拒否し、官僚的なやり方でその対処を各競技団体に一任するとしました。その他の問題(例えば冒頭で触れた深刻な水質汚染の件など)も無視されるか触れられることはほとんどなく、治安への懸念や人手不足に関しても同様の状況です。唯一真剣に語られるのは大会としてどう収入を増やせるか、ということだけのようにも見えます。

 

 もちろん、こういった事実がメーガン・カルモーのような選手個人の努力を汚すようなことがあってはいけません。五輪開幕前のメディアのあり方や、特に大げさな報道に関しては、カルモーが憤りを感じるのは理解できます。五輪も実際に競技が始まりさえすれば、それまでとは違ってネガティヴな情報は消えていくでしょう。そしてリオから感動や共感を得られるような素晴らしい名場面が毎日たくさん届けられることは間違いないでしょう。

 

 しかし、現代の五輪は夢や希望だけではなく、常に現実的な問題もついてまわり続けるでしょう。情報は増え、それに対する意見も増え、疑問も増え、五輪の舞台裏に関する報道も伝えられます。そして、例えそれらが醜いものであったとしても、それが事実であることに変わりはないのです。(ソースWSJ

2016年7月26日 (火)

鈴木はどのようにイチローになったか!

米大リーグ(MLB)マイアミ・マーリンズのイチローが米国でプロ野球選手としてのキャリアをスタートさせていたら、どのような記録を打ち立てていたかを想像してほしい。

 

 2001年に27歳でシアトル・マリナーズに移籍するまで、日本の9シーズンで1278安打を記録したことを考えると、可能性は果てしない。比較してみると、大リーグ通算安打記録を持つピート・ローズが27歳までに記録した安打数は903本です。現役の好打者であるアレックス・ロドリゲスは27歳までに1257安打を放っています。

 

 21日時点でメジャーでの安打数が3000本まで残り「4」となっている42歳のイチローですが、もし日本で10年近くプレーしていなければ、メジャーで4000本安打に近づいていたのはほぼ確実だろう。4256本というローズの記録にも迫っていたかもしれません。

 

 仮定の話に興味を持っていない人物はイチロー本人です。

 

 イチローはインタビューで、自分が自分の経験の産物でしかないと述べています。また、日本での経験がなければ今の自分はなかっただろうとし、米国にもっと早く来ていたら安打数が増えていたと考えるのは的外れだと指摘しました。

 

 イチロー自身と、日本で彼を観察したり一緒にプレーしたりした人々にとって、これはゆがめられた仮定であるだけではありません。彼らによると、日本での9年間は、才能はあるが小柄な有望選手をスーパースターに開花させるカギとなりました。イチローは野球には自慢げな米国人に非凡な流儀で挑む自信があったのです。

 

 高卒ドラフトでプロ入りした後、イチローは有望選手の一人として春季キャンプに参加しました。打席でのイチローは他の大半の選手よりも大きく投手寄りに体重を移動させ、時にはバッターボックスからはみ出てしまうこともありました。当事の打撃コーチだった新井宏昌氏は、イチローの一風変わった打撃スタイルをもっと理解してやりたかった。

 

 練習メニューの一つだったトスバッティングをしていた時、新井氏はこの若者が何かを持っていると確信するようになったといいます。

 

 新井氏は当事のイチローの特異性を指摘し、その本質を理解しようとしたと話しました。同氏はトスのテンポと位置を調整するという実験に打って出たのです。大半の選手は素早い調整を求めるためこうしたトスを見逃しがちですが、イチローはあらゆる球をスイングし、ほぼ全てのトスを芯で打ち返したのです。

 

 新井氏はトスのスピード、位置、タイミングは問題ではなかったと語ったのです。同氏によると、大半の選手はボールを見ようとするが、イチローはそれを打とうとするのだと。

 

 その後、新井氏は監督に対し、このひょろりとした若者にはもっと華やかな名前の方がふさわしいと進言しました。ユニホームには「SUZUKI」の刺しゅうが入っていたが、これは米国では「スミス」と同じ位ありふれた名前だ。イチロー本人からの提案はほとんどないまま、チームは登録名を「イチロー」に変更しました。

 

 オリックス・ブルーウェーブ(現バファローズ)の1軍登録選手として初めてフルシーズンを過ごしました1994年、イチローは当事の日本プロ野球記録となる210安打(130試合)をマーク。また、打率も385厘と、当事のパリーグ記録を打ち立てました。

 

 福岡ダイエー(現ソフトバンク)ホークスの監督を務めていた王貞治氏は、イチローのオリックスと1シーズンに20試合以上対戦する機会がありました。王氏によると、投手はイチロー対策としてさまざまな戦略を試したのですが、イチローは独自の対抗策を展開したといいます。

 

 王氏はイチローがシーズン200本安打で選手としてのキャリアをスタートさせた点に言及。イチローが20歳の時にはすでにあらゆる対戦相手が彼をマークしていたと話しました。ただ、現実的には高い技術を持つ打者に単純な戦略は通用しないとも、王氏は指摘しています。

 

 オリックスでイチローのチームメートだった田口壮氏は、イチローがアプローチと準備の面で揺らぐことはなかったと語っています。

 

 MLBでもセントルイス・カージナルスなどでプレーした田口氏は、イチローの最も印象的な資質として自分の信念に確信を持っていることを挙げています。田口氏は、イチロー自身がどんな状況でも自分を変えることを許さないため、誰も彼を変えることはできないと話しました。

 

 田口氏は、日本で10年近くスター選手として活躍してなければ、イチローが米国で変化を求める圧力に抵抗などできなかった可能性を示唆しています。同氏によると、日本での経験が試合に臨む際の並外れたアプローチに対する信念を固めたのだというのです。

 

 イチローは正しいのかもしれません。間近に迫った3000本という記録に、あと何本のヒットを上積みできていたかと考えるのではなく、単純に彼の生み出してきた3000本を楽しむのがベストなのだろう。(ソースWSJ

2016年7月24日 (日)

ドーピング内部告発した「ロシアのスノーデン」!

リオデジャネイロ五輪の開幕まで2週間あまりに迫る中、ロシアのドーピングをめぐるドラマがスポーツ界を揺るがしています。ロシアでその主な悪役を演じているのが、元ドーピング検査機関所長のグリゴリー・ロドチェンコフ氏です。

 

 ロドチェンコフ氏は、ロシア高官がドーピング検査の不正を知っていたと内部告発し、その後米国に事実上亡命しました。同氏は、国を裏切ったとロシア政府の怒りを買い、ロシアのリオ五輪参加の可能性を妨げる陰謀に加わったと非難されています。

 

 世界反ドーピング機関(WADA)は18日、ロシアがソチ五輪中にドーピング検査で組織的に不正を働いていたとする報告書を発表しました。報告書は、5月にニューヨーク・タイムズ紙にドーピング不正操作の詳細を暴露したロドチェンコフ氏の主張を裏付けるものとなりました。プーチン大統領はWADAの報告書公表を受けてロドチェンコフ氏を「評判の悪い人物」と批判し、「こうした人物の主張だけを基にした議論にどの程度の信頼を置くことができるのか疑問が生じる」と述べました。

 

 ロシア・オリンピック委員会も19日発表した声明で、「ロドチェンコフ氏はロシア選手の経歴や運命だけでなく、国際五輪運動の高潔性を危うくする犯罪計画の中心人物だった」と厳しく批判。ロシアの男子ボクシング代表チームのコーチを務めるアレクサンドル・レブジアク氏も、同国のスポーツ関係のウェブサイトで、「ロドチェンコフ氏はロシア生まれだが、祖国はない。彼のただ一つの動機はカネである」とし、米国に魂を売った売国奴だと酷評しました。

 

 ロドチェンコフ氏は米国の映画製作者、ブライアン・フォーゲル氏を通じ、コメントは差し控えると語りました。フォーゲル氏はロドチェンコフ氏に関するドキュ メンタリー映画の製作に取り組んでいます。ロドチェンコフ氏はソチにあったドーピング検査機関で所長を務めていました。フォーゲル氏は、ロドチェンコフ氏が強要に関与した疑いについてはWADAの報告書を指摘し、ロドチェンコフ氏がロシア政府の命令に従って行動していたと述べ、ロドチェンコフ氏は自らの身の安全を危惧していると思うと付け加えました。

 

 フォーゲル氏は「(ロドチェンコフ氏は)もうロシアに帰れない。ロシア当局は何カ月にもわたって彼が鉄面皮のうそつきだと言い続けています。そして、103ページに及ぶWADAの報告書が出されました。これは彼が打ち明けたことは真実であるという証拠だ」と話しました。

 

 フォーゲル氏はロドチェンコフ氏が米中央情報局(CIA)の元職員のエドワード・スノーデン容疑者のようなものだとしています。スノーデン容疑者は国家安全保障局(NSA)による国内外の通信監視プログラムに関する機密情報をジャーナリストに暴露した後、香港、さらにその後ロシアに逃亡しました。

 

 今もロシアに滞在するスノーデン容疑者は、2013年に情報漏洩罪などの容疑で起訴されましたが、彼による暴露は政府による通信監視について大きな議論を巻き起こしました。彼はプライバシーや市民の自由を擁護する人々にとってのヒーローです。

 

 フォー ゲル氏は「わたしはずっと、彼がスノーデン氏のロシア版だと考えてきた。わたしが彼に代わって彼の動機を話すことはできない。だが、わたしが分かっているの は、真実を打ち明けるために、家族、人生、友人などすべてを祖国に残したまま、祖国を離れたいと思っている男が、名誉や栄光を求めて いるようには思えないということだ」と話しました。

 

 18日に公表された報告書はロシアで波紋を呼び続けています。インタファクス通信による と、同国のムトコ・スポーツ相は19日、WADAによる今回の調査が「スポーツの領域を大幅に超えている」と指摘、「世界のドーピング防止体制は不完全 だ。世界はそれを理解し始めている」と述べました。(ソースWSJ

2016年1月 4日 (月)

腹筋運動は時代遅れ、米軍が体力測定から除外へ!

両手を頭の後ろで組み、肘が膝に当たるまで上体を起こす――このようにジムのマットの上でもがいたことのある全員にとって朗報がある。標準的な運動としての腹筋の支配が終わるかもしれないのです。

 

 著名なインストラクターや軍の専門家らは、体力テストの基本要素である腹筋が背中を痛める非常に大きなリスクを抱えていると論じています。

 

 米海軍専門誌「ネイビー・タイムズ」は最近掲載した論説で、海軍兵士が毎年2回パスしなければならない体力測定から腹筋運動を除外するよう要求しました。論説には「時代遅れの運動は現在、腰回りを痛める主要な原因だと見なされている」と記されていました。また、カナダ軍は最近、けがにつながる可能性と実際の軍の仕事との関連性が低いことを理由に、体力テストから腹筋を除外しました。

 

 米国で人気の高いエクササイズビデオ「P90X」シリーズを制作したトニー・ホートン氏は、もう腹筋やクランチ(腹筋運動の一種)はしていないと話します。同氏は「伝統的で古風となったクランチの時代は去り、今は変化の時だと本当に信じている」と述べました。

 

 カナダのウォータールー大学で脊柱バイオメカニクスを専門とするスチュアート・マッギール教授は、腹筋運動をすれば脊柱に過重な圧力が加わる可能性があると指摘する。同氏は腹筋で加わる力が、屈曲運動の繰り返しと相まって椎間円板(椎間板)を狭める可能性があることを発見しました。この組み合わせが最終的には椎間板の突出を引き起こす原因となり、神経を圧迫して背中の痛みにつながり、潜在的に椎間板ヘルニアを発症させる恐れがあるといいます。

 

 伝統的な腹筋運動の態勢から腹部を鍛えたいという人のために、マッギール氏は自身が開発した「修正カールアップ運動」を提唱しています。これは両手を腰の部分に敷き、両肩を床からわずかに離すというやり方だ。

 

 クランチやバランスボールを使った運動など、腹筋はさまざまな方法で鍛えることができます。こうした腹筋運動でけがをするリスクは正しい動作をしているか、または個人の肉体的制限に依存しています。しかし、インストラクターの中には修正された腹筋運動でさえ捨て去る人もいます。

 

 「プランクポーズ」と呼ばれる動きはヨガ教室から派生したもので、腹筋に代わる運動として広く活用されています。プランクポーズは腕立て伏せの上がった状態に似ており、かかとから肩までの部分を水平に保つ。また、肘を床につけた格好で行われることも多いそうです。専門家によると、プランクポーズは胴体あるいは体幹の前部と側部、背部の筋肉を使うが、腹筋運動は筋肉のほんの一部しか必要としないといいます。

 

 米海軍兵学校の体育学部でエグゼクティブオフィサーを務めるデービッド・ピーターソン中佐は、海軍が体幹を鍛える運動を体力測定に残す場合、カールアップの代わりにプランクポーズを取り入れることを提唱しています。2013年に雑誌「ストレングス・アンド・コンディショニング・ジャーナル」に掲載された記事で、同氏はプランクポーズの方がけがにつながる可能性が低く、海軍の実務により関連すると主張しました。

 

米海軍が20歳から24歳までの男女に課している体力測定の科目とその最低ラインは、最長2分間でのカールアップと腕立て伏せの回数、約2.4キロのミニマラソンの完走時間だそうです カナダ軍は昨年から段階的に体力測定の全面改定を行っており、約20キログラムのサンドバッグを3分半の間に30回持ち上げるという実用的な動作に力点を移しています。

 

 米軍兵士1500人を対象に実施したある調査によると、3部門に分かれた軍の体力測定から発生したけがの56%が腹筋運動に関連していたそうで、3.2キロのミニマラソンに絡むけがは全体の32%、腕立て伏せが11%だったそうです。(ソースWSJ

2015年12月14日 (月)

ハトが画像で乳がん発見!

英語で「ハト」と言えばだまされやすい人を指しますが、実はハトは驚くほど賢いのです。

 

 アルファベットの文字を選び出すこともできるし、人間の表情から感情を見分けることも、ピカソの絵とモネの絵を区別することもできます。第2次世界大戦中には、著名な心理学者BF・スキナーがハトにミサイルを誘導する方法を教えました。しかし、実戦に派遣されることはありませんでしたが。

 

 今度はカリフォルニア大学デービス校、アイオワ大学、エモリー大学の研究チームが、ハトがガンも驚くほど上手に発見できることを証明した。研究チームは穀物を報酬に使って、ハトが人間の乳腺細胞の画像で悪性腫瘍を発見できるように訓練した。

 

 エドワード・A・ワッサーマン氏ら研究チームによると、ハトはおよそ85%の確率で正確に悪性腫瘍を見つけることができたそうです。この成績はおそらく新米の医学生を上回るものですが、ベテランの病理学者の域には達していません。さらに、研究チームが1枚の画像を4羽のハトに見せてその判断をまとめたところ、ガンを発見する確率はなんと99%にまで上昇したのです。

 

 一方、乳房X線検査(マンモグラフィー)の画像になると、ハトは混乱しました。しばらくすると、X線の画像でガンを見つけることを学んだように思われましたが、新しい画像では偶然と同じ程度の確率でしかガンを見つけられなかったのです。つまり、ハトは繰り返し同じX線の画像を見て正しい答えを暗記しただけだったということになります。これに対して、組織標本からガンを見つけることを学んだハトは新しい画像を見せられても、学んだ技術を生かすことができました。

 

 実際の細胞組織の画像ではガンを見つけられたのに、X線の画像では成績が良くなかったのはなぜでしょう。実際の組織の画像には顕微鏡で拡大された乳腺細胞が映っていますが、X線の画像には血管など乳房内の組織が重なって映っており、画像がはっきりしないのです。医者と同じように、ハトも細胞を見たほうが診断しやすいのです。

 

 この研究はスキナーの実験と同じように行われました。体重を通常の85%に抑えた空腹のハトを「スキナー箱」といわれる装置の中に入れて、環境を厳格にコントロールした上で、平らなスクリーン上に画像を表示します。ハトはガンを見つけたらスクリーン上の青い部分を突っつき、ガンがなければ黄色い部分を突っつくように訓練します。答えが正しければ、ハトは報酬として穀物をもらい、間違えれば、同じ画像を見せられて正しい色を突っつくチャンスが与えられます。

 

 ワッサーマン氏は今回の研究に基づいて、いつかコンピューターによる画像診断ができるようになるかもしれないと話します。ひょっとしたら、発展途上国の農村部でハトのチームによる初歩的なガン検診もできるかもしれないと語りました。(ソースWSJ

2015年12月 8日 (火)

原子力の安全性めぐるパラダイムシフト、誇張された被ばくリスク?

オックスフォード大学の物理学名誉教授、ウェード・アリソン氏の地球温暖化対策は、パリで開催中の気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で売り込まれているどの提案よりも現実的です。アリソン氏は国民と原子力発電所の労働者の被ばく許容量を現行の1000倍に引き上げるべきだと主張しています。

 

 パリに集まった政治家たちは国民1人当たりの所得では世界20位のフランスが温室効果ガスの排出量では50位であることに気付くかもしれません。理由は分かっています。フランスは電力の75%を原子力発電でまかなっているからです。一方、世界は核戦争や核実験に対する恐怖から、1950年代以降、放射線被ばくの危険度は被ばく量に正比例するという根拠のない定説にこだわり続けてきました。

 

 これは、秒速1フィートで発射された弾丸で死ぬ確率は秒速900フィート(45口径の自動拳銃で撃ったときの実際の銃口速度)で発射された弾丸で死ぬ確率の900分の1だと言っているようなものです。「しきい値なしの直線」(LNT)仮説として知られるこの理論はロシアのチェルノブイリや福島の原発事故でのがんによる死亡者数の予測の根拠になっていますが、その予測はこれまで一度も実証されたことはないのです。

 

 スウェーデンは数年前になってやっと、チェルノブイリの原発事故後、ほぼ1年分の供給量に相当するトナカイの肉が無駄に廃棄されたことを認めたそうです。2013年に実施された調査によると、福島の原発事故による被ばくを避けるため強制的に避難させられた人のうち、1600人が「避難によるストレス」(自殺や生きる上で欠かせない医療が受けられなかったことによる死を含む)で死亡したことが分かっています。当時の被ばく量はほとんど危険のないレベルで、例えばフィンランドの住民の日常的な被ばく量よりも少なかったのです。

 

 2001年には当時の米国の原子力規制トップが、「チェルノブイリの事故に起因しうる白血病の超過発病は検知されなかった」ことを慎重ながらも認めました。

 

 1980年代には台湾で1700戸のアパートが放射性コバルトで汚染された再生鉄を使って建設されました。2006年の研究論文では、このアパートの住人のがん罹患率が極めて低いことが分かり、執筆者らは米国で危険性の評価が修正されれば、「原子炉運転にかかる多額の資金が節約でき、原子力発電の拡大が促進される可能性がある」ことを示唆しました。

 

 彼らは正しかった。被ばくに対する過度の恐れが、原子力発電の安全コスト、放射性廃棄物の管理コスト、許認可コストを押し上げました。しかし、ついに変化が起きるかもしれないといいます。放射線被ばくリスクに対する考え方にパラダイムシフトが起きつつあるようなのです。

 

 米原子力規制委員会は今年6月、「放射線ホルミシス」説を根拠に安全基準を改定することの是非をめぐって意見募集を開始しました。放射線ホルミシス説とは、自然放射線を浴びた生物は低レベルの放射線量から身を守る細胞性反応を獲得するという理論です。安全基準の根拠の変更を求めた申請者の1人がカリフォルニア大学ロサンゼルス校の核医学教授のキャロル・S・マーカス氏です。マーカス氏はLNT仮説について「科学的に有効な裏付け」がなく、「LNTに基づく規制を順守する」には「巨額の」コストがかかると指摘しました。

 

 これもオックスフォード大学のアリソン氏とマサチューセッツ大学アマースト校の毒物学者エドワード・J・カラブレーゼ氏のおかげです。この2人は何十年も前からLNT仮説と戦い続けてきました。カラブレーゼ氏は学術誌「エンバイロメンタル・リサーチ」の10月号に掲載された最新の論文で、1950年代のマンハッタン計画に関わった放射線遺伝学者たちが自分たちの研究分野の地位を高めるため、恣意的にLNT仮説が採用されるよう促した経緯を明らかにしたのです。

 

 今では多数の論文によってLNT仮説に不利な証拠が示されています。ミュンヘンの放射線生物学研究所が昨年発表した研究論文では、低レベルの被ばくが特定の細胞保護機能に「非直線的な」反応を引き起こす具体的な仕組みが明らかになりました。

 

 LNT仮説は計り知れない影響を及ぼしました。コスト面で優れていたからでもなければ、安全面や効率の点で有利だったからでもないのに、石炭は21世紀初めに世界の主力エネルギー源となったのです。今なら中国もインドも石炭を選ばず、先進工業国で開発された、手頃な価格で容易に入手できる、安全かつ染物物質を出さない原子炉を選ぶでしょう。

 

 私たちはどれほど愚かだったのでしょう。1カ月当たりの採炭による死者数は原子力産業が始まって以降の全ての事故の死者数よりも多いのです。厄介な問題ですが、LNT仮説の基準では石炭は原子力よりも危険でもあるのです。米国肺協会によると、石炭火力発電所から排出される粒子状物質や重金属、放射性物質によって推計で年間13200人が死亡しているといいます。

 

 これにアル・ゴア元副大統領が加わりました。ゴア氏が指導力を発揮して気候変動をめぐる政治が1980年代に登場しましたが、あっという間に、イデオロギーで連帯するには原子力を拒むことが欠かせないという集団心理を生んでしまったのです。原子力発電はいわゆる炭素問題への明確かつ最も容易な解決策であるにもかかわらずです。

 

 少なくともオバマ政権は左派から追及されなければ、冷静に判断することができます。おそらくホワイトハウスは毎日、原子力の安全基準の改定に寛容であることに環境主義者が気付かないようにと祈っていることでしょう。キーストーンパイプラインをめぐる騒ぎも役に立ったのではないでしょうか。

 

 オバマ氏は気候問題で大統領として数少ない有益な意思表示をしているのですが、ニューヨークタイムズが環境派に対する背信行為だと論説記事で派手に書き立てれば、残念ながら、大統領はすぐにそれを引っ込めてしまうでしょう。(ソースWSJ

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