最近のトラックバック

無料ブログはココログ

« 衝突リスク高まるアジア、緊張続いた1週間! | トップページ | 進化する超高速取引、光速の領域に踏み込む! »

2016年8月18日 (木)

中国、世界初の量子通信衛星を軌道に!

ゴビ砂漠から16日未明に打ち上げられた量子通信衛星「墨子」搭載のロケット長征2Dは、科学の最も挑戦的な一分野の最前線に中国を押し上げる見通しです。

 

 それによって中国は、喉から手が出るほどに欲しい通信技術を求めて競争しているサイバースパイの時代に世界のライバルを大きく引き離す態勢を確保できます。それは「ハッキング(盗聴)不能な通信」という資産です。

 

 国営メディアは、中国が16日午前140分(日本時間午前240分)ごろ、内モンゴルの人工衛星打ち上げ基地から世界で初めての量子通信衛星をロケットに搭載して軌道に乗せたと報じました。準備から5年経過しているこの量子通信衛星プロジェクトは、世界中の科学者や安全保障専門家らが注視しています。

 

 この量子通信衛星プログラムは、ハードサイエンス(自然科学)研究で西側に追い付き追い越すため、中国が過去20年間にわたって何十億ドルものカネを注ぎ込んできた戦略の一部です。

 

 ジュネーブ大学のニコラス・ギシン教授(量子物理学)は「中国は、量子衛星レースに勝利する公算が極めて大きい」と述べ、「それは、中国が大規模で野心的なプロジェクトを計画・実現する能力を持っていることを改めて示している」と語りました。

 

 米国、欧州、日本、その他諸国の科学者は、亜原子粒子(原子よりも小さい粒子)にある奇妙で潜在的に強力な特性を競って探究していますが、中国の科学者たちのように大規模な国家支援を受けている科学者は少数だ、と研究者らは言います。量子技術は、今年3月に公表された中国の5カ年経済発展計画における最優先の戦略的研究課題です。

 

 中国政府は量子研究にどれだけの資金を配分したのか、あるいは重さ1400ポンド(約635キログラム)の量子通信衛星を製造するのにいくらかかったか公表していません。しかし量子物理学を含む基礎的研究予算は2015年に1010億ドルに達しており、05年時点の19億ドルを大幅に上回っています。

 

 科学者や国防・情報などの当局者のグループが7月にまとめた議会報告によると、米国の量子研究に対する連邦予算は年間約2億ドル。同報告は量子科学の発展は「米国の国家安全保障を強化するだろう」と述べていますが、資金規模が変動するため進歩が遅れているとも指摘しています。

 

 中国政府は、中国生まれで外国で教育を受けた量子物理学専門家を中国に呼び寄せるよう努力しました。その中には今回の量子通信プロジェクトを指揮している物理学者の潘建偉氏も含まれています。

 

 潘氏は15日放映された中国国営テレビとのインタビューで、「われわれは世界中の研究室で良い技術をすべて吸収し、(中国に)持ち帰った」と述べました。

 

 潘氏は、中国政府の国家支援を得て、自分の博士号取得の指導教官だったウィーン大学の物理学者アントン・ツァイリンガー教授を追い越すことができました。ツァイリンガー教授は2001年以降、同様の衛星を打ち上げるよう欧州宇宙機関(ESA)を説得しようと努めてきたといいます。ツァイリンガー教授は「これは困難なプロセスで、長い時間がかかる」と述べ、同教授は現在、自分の元学生である潘氏の衛星に協力しています。

 

 潘氏も、量子衛星プロジェクトを推進している中国科学アカデミーも、コメント要請に応じませんでした。ESAと、米国の基礎的科学研究に連邦資金を手強している米国科学財団(NSF)も、コメントの求めに応じていません。

 

 シンクタンク「ニュー・アメリカ」(本部はワシントンD.C.)のフェロー、ジョン・コステロ氏は、この量子衛星分野への中国の投資について、米国のサイバー能力への恐怖によって駆られているという側面もあると述べ、米国が中国のネットワークに深く侵入していたことが2013年に暴露された点を指摘しました。また同氏は、米国の研究機関は強力な量子コンピューターをいかに構築するか研究していると述べました。それは数学ベースの暗号(通信の安全確保のため現在世界的に使用されている)を理論的に解読できるコンピューターだといいます。同氏は「中国政府は、電子スパイ活動に中国がとりわけぜい弱になっていることに気付いている」と述べています。

 

 しかしコステロ氏は、量子通信は本質的に防御的なものだと指摘し、米国は中国の動きを国家支援のハッキング(盗聴)計画と認識していますが、その計画から中国は恩恵を受けないだろうと述べています。

 

 量子暗号は、どんな種類の計算力(コンピューターの持つ能力)からも安全です。それは、量子に暗号化された情報は「測定」されるや否や破壊されるからです。ジュネーブに本拠を置く量子暗号会社IDクアンティーク社の共同設立者グレゴワール・リボーディ氏は、それを、せっけんの泡の表面に書き込まれたメッセージにたとえた。同氏は「送信中のそれ(量子暗号化情報)を誰かが傍受しようとして触れると、破裂してしまうのだ」と語っています。

 

 量子物理学者らは近年、地上の短距離間で安全に通信するため、光子(光量子)を利用する方法を発展させました。今回の中国の量子通信衛星は、もし成功すれば、ハッキング不能な通信の距離を飛躍的に拡張できるようになるとみられています。

 

 潘氏は国営メディアに対し、量子通信が地球規模で実現するかどうか実験するため、同氏のチームは「量子暗号鍵(キー)」を北京からウィーンまで照射するつもりだと述べました。

 

 南京大学の馬小松教授は、この実験が成功すれば「すごいことになるだろう」と述べており、馬氏はウィーンで訓練を受けた量子物理学者で、中国の衛星プロジェクトの初期段階に協力しました。

 

しかし量子暗号は完全無欠ではありません。例えばハッカーは、量子レセプター(受容体)に強烈なレーザーを照射することによって、不注意なレシピエント(受容者)を欺くことが可能だろう、と量子技術センター(シンガポール)の主任研究官アレクサンダー・リング氏は言います。

 

 米国のセキュリティー専門家も、量子通信のもつ複雑さを十分に簡素化できるかどうか疑問だとしています。

 

例えばジェームズタウン財団で中国の情報活動を研究しているピーター・マティス研究員は「不可避的に、この種の技術には問題がある。このため集中的なトレーニングを経ない人々がそれを使うと、状況を混乱させてしまう」と述べています。

 

 しかし前出のウィーン大学のツァイリンガー教授は、どんな難題があっても、今回の衛星によって中国と量子力学分野は技術的突破口の入口に立つと述べました。同教授は「長期的には、この技術がわれわれの現在の通信技術に代わる大きな機会が存在している」と述べ、「そうならないとみる基本的理由は見当たらない」と語りました。(ソースWSJ

« 衝突リスク高まるアジア、緊張続いた1週間! | トップページ | 進化する超高速取引、光速の領域に踏み込む! »

宇宙・サイエンス・科学技術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 中国、世界初の量子通信衛星を軌道に!:

« 衝突リスク高まるアジア、緊張続いた1週間! | トップページ | 進化する超高速取引、光速の領域に踏み込む! »