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2016年8月

2016年8月31日 (水)

ヒラリー氏が築いた「米クリントン省」!

ヒラリー・クリントン前国務長官の私用メール問題は五月雨式に詳細が明らかになってきましたが、ここにきて豪雨に変わりました。クリントン氏がなぜ私的な通信設備を使用していのか、そこには何が隠されていたのかが、先週ようやく判明したのです。悪名高い同氏の私用サーバーは、クリントン氏が3年間クリントン財団の「長官」を務めていたことを隠すために設置されていたことが明らかになったのです。

 

 3月に本欄で、クリントン氏の秘密情報の不用意な扱いは重要な問題ではあるが、より重要なポイントが別にあると指摘しました。クリントン氏は国家秘密を暴露しようと思って私用サーバーを設置したわけではありません。それは偶発的な出来事にすぎません。同氏がサーバーを設置したのは、私生活の細部が明るみに出ないようにするためだったのです。すなわち、入念で広範囲に及ぶ資金調達や自己プロモーションのための組織、クリントン財団を取り巻く生活を秘密にしておくためだったというわけです。

 

 クリントン氏が――明確な倫理基準にのっとって――国務長官時代に財団と距離を置いていれば、私用サーバーや私用メールなどそもそも必要なかったはずです。そうであれば、クリントン氏の電子通信の大部分は国務省の職務に関連したものにとどまり、たまにヨガのスケジュールに関わるものが混じる程度だったはずです。連邦情報公開法当局者がのちに国務省のメールを精査したときも、明らかな「私用」メールをさほど苦労することなく選別し公表できたはずです。普通ならこうなっていたはずです。

 

 クリントン氏の私用サーバーのアカウントでやり取りされた同氏の側近、ヒューマ・アベディン氏のメールが先週公表されました。その内容から分かる通り、クリントン氏の問題は公私の区別がなかったことです。同氏にとって国務省と一族の基金であるクリントン財団は一体化された組織だったのです。同じスタッフを雇い、スケジュールを照らし合わせていたほか、財団の献金者が国務省に接近できるようにもなっていました。秘密のサーバーを保持していたのも、本来政府に提出すべき15000通のメールを削除したのもそのためです。

 

財団献金者の優遇を働きかけ

 

 先週公表されたアベディン氏のメールで最も注目されているのが、クリントン財団幹部のダグ・バンド氏が財団献金者を優遇するよう国務省に働きかけていたという憂慮すべき事実です。メールは保守系の行政監視団体「ジュディシャル・ウオッチ」が国務省を相手取った訴訟で公表したもので、その725ページに及ぶメールからは、メールのやり取りの頻度やその大半がいかに陳腐な内容であったかもうかがい知ることができます。バンド氏はクリントン氏にこの会議はできるか、あの会合は開けるか、いつブラジルを訪問するのかといったことを尋ねていました。アベディン氏の返事は、クリントン氏はそれに取り組んでいる、これに関する回答やあれに関する回答を得るだろうといったものでした。これらは単なるちょっとした知り合い同士のメールではありません。彼らはあいさつの言葉や署名は省いていました。これらは同じ目的に従事する2人の間で交わされたメールです。その目的とは、国務省とクリントン財団が1つになった組織のために働くことだったのです。

 

 今回もう1つ明らかになった重要な点は、マスコミの目の付けどころが間違っていたことです。マスコミが焦点を当てているのはクリントン氏が削除したメールです。確かに連邦捜査局(FBI)が復元した15000通のテキストの中に価値ある情報も含まれているでしょう。しかし、クリントン氏は忙しい人であり、国務省と財団を取り巻く日々の生活の細かいことの大半は信頼する側近が処理しています。彼らも私用メールを持っていたのはそのためです。初めからアベディン氏のファイルに目をつけていたジュディシャル・ウオッチは大したものです。次に急いで調査する必要があるのは、クリントン氏が国務長官時代に首席補佐官を務めていたシェリル・ミルズ氏の同様のメールです。

 

 今回明らかになった最も重要なことは、クリントン財団の問題が利益相反「のように見える」というだけにとどまらないことです。これは紛れもなく見返りを求める献金でです。バンド氏はクリントン氏に「われわれの親しい友人」であるバーレーンの皇太子と会談するよう求めるメールを送っていました。これは皇太子がクリントン財団の奨学金制度に数百万ドル寄付することで面会時間を買ったと言っているようなものです。疑いの余地はありません。

 

点と点がつながらない

 

 この点は先週のAP通信の報道でも明らかにされていました。AP通信は、クリントン氏が国務長官1年目に会った外部関係者154人のうち半数以上がクリントン財団の献金者だったと報じました。新興ウェブメディア「Vox Media」のコラムニスト、マシュー・イグレシアス氏らクリントン氏の擁護派は、154という数字には外交当局者や米政府当局者との数千回に及ぶ会合は含まれていないため、その数字は誇張されていると主張しています。

 

 確かにそうでしょう。国家の外交トップとしてクリントン氏は多くの外交当局者や米政府当局者と会う義務がありました。しかし、それ以外の人とはその義務はなかったのです。多忙な国務長官との面会にこぎつけたのは一部の幸運な人たちであり、驚くべきことに、そのほとんどがクリントン財団の献金者だったのです。

 

 クリントン氏にとって幸いなのは、(汚職疑惑は往々にしてそうだが)点と点を線で結ぶことが依然、難しいことです。「もらったもの」(財団への献金)と「見返り」(バーレーンの武器取引)はあちこちに見つけることができますが、それらを結びつける確固たる証拠は見当たりません。

 

 しかし、そこは重要でしょうか。今回発覚したのは、政府高官の1人が設置した私用サーバーの中に、倫理規定があるにもかからず高官が一族の基金とひそかに関わりを持ち続け、公的記録を破壊したことを示す証拠が保存されていたということです。これだけでも、クリントン氏を大統領候補として失格にするには十分ではないでしょうか。(ソースW

2016年8月30日 (火)

中国の人気ドラマが映す「中間層の不安」!

中国で人気急上昇中のテレビドラマ「小別離」は子供たちを外国に留学させている3家族の物語を描いています。そこで浮き彫りになっているのは、中間所得層の将来への不安です。

 

 魯引弓氏の小説を原作とするこのドラマは先週から放送が始まり、リオデジャネイロ五輪と時期が重なったにもかかわらず世間の注目を集めた。映画やドラマなどの文化情報サイト「douban.com」によると、このドラマの平均評価点は10点満点中8.2点です。

 

 このドラマには中間層に広がる不安感が反映されていると批評家たちは指摘しています。この層の人々は絶え間なく不安を感じており、子供たちが良い暮らしをするための唯一の方法は中国を離れ、よその国で夢を追い求めることだと考えています。ドラマが契機となり、試験偏重の教育システムや教育熱心な「タイガーマザー」、父親、教師を巡る議論が巻き起こっています。ドラマに描かれている家庭内の衝突は主に子供たちの試験の点数が原因です。

 

 ソーシャルメディアで拡散されたあるエピソードの中で、中学3年の娘が父親に向かってこう叫ぶシーンがある。「私に尊敬してもらいたい? あなたは私のことを試験を受ける機械のようにしか思っていない!」

 

 大学入試の高い競争率に対するストレスが、外国に子供たちを留学させるひとつの理由になっている。

 

 ドラマの中で母親がこの娘に言った言葉はこうです。「いま上位100番までの中に確実に入ることができなければ、良い高校には入れない。良い高校に入らなければ良い大学には入れない。良い大学に入らなければ、あなたの人生は終わる」と。

 

 中国では年に1度の入試を受けなければ大学に入れない。競争率がとても高いため、子供が集中して試験を受けられるよう親はあらゆる努力をします。昨年の夏には、四川省のある母親が娘の受験に影響が出るのを恐れ、父親の死を2週間近く知らせていなかったというニュースが大きく報じられたそうです。

 

 作家の黄佟佟氏はチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」で公開しているアカウントへの投稿で、このドラマは中間層の「集団的な不安」を反映していると述べていました。

 

 黄氏は「自分がいま持っているものはすべて壊れやすいものだと感じることはないだろうか。今のような暮らしは運が良かっただけだと感じることはないだろうか。子供たちは良い暮らしができるという確信はあるだろうか。これらは私たち一人一人が向き合わなければならない問題だ」と書いています。

 

中信銀行などが富豪458人を対象に実施した調査によると、子供たちを外国の高校に通学させる計画を持っていると回答した人の割合は30%でした。中信銀行などが富豪458人を対象に実施した調査によると、子供たちを外国の高校に通学させる計画を持っていると回答した人の割合は30%でした。硬直化した教育システムに不満を感じ、腹立たしさを募らせている富裕層の中で、子供たちを外国に留学させる親が増えています。教育省によると、留学するために出国した中国人の数は昨年52万人に達したそうです。2014年から14%近く増えています。

 

 中信銀行などが中国人富豪458人を対象に実施した調査によると、子供たちを外国の高校に留学させる計画を持っていると回答した人の割合は30%でした。中学校から留学させるべきだと考えている親も14%いました。

 

 米国では、外国人の中高生約6万人と小学生約6000人のうち、ほぼ半数が中国人だ(201511月現在)です。

 

 ツイッターの中国版「微博(ウエイボー)」で、あるユーザーはこう書いた。「このドラマを見ると悲しくなる。私もかつては試験の点数を巡って両親と口論をした。勉強、勉強で愛も気遣いもなかった」と。(ソースWSJ

2016年8月29日 (月)

世界初の自動運転タクシー、記者の乗車体験記!

おしゃべりなタクシードライバーに商業地区のワンノースで降ろしてもらったとき、彼にここに来た理由を教えるのは残酷だろうかと考えた。なぜなら、世界初の自動運転タクシーに試乗するためだったからです。

 

 自動運転車向けソフトウエアを手掛けるヌートノミーは25日、シンガポール中心部からさほど遠くないこの大学構内のようなエリアで、一般客を乗せた初の公道試験を開始しました。

 

 新興のハイテク企業やバイオテクノロジー会社がオフィスを構えるワンノース地区の道路は他のエリアよりも交通量が少ないので、ヌートノミーなどが運用する自動運転車を試験走行するにはうってつけなのです。ヌートノミーは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者2人が設立したシンガポールの会社です。

 

 同社の自動車にはハイテクコンピューターが搭載されていますが、スター・トレックに登場する乗り物のような見た目でもなければ、テスラ・モーターズの車のように洗練されてもいません。車体後部にはコンピューターシステム用にドリルで開けた穴をふさいだ跡があり、それを除けばごく普通の小型車です。サイドにはヌートノミーのロゴが入っています。

 

 また、全ての隅にセンサーが設置され、屋根ともう1カ所にカメラが搭載されているほか、通常の車のバックミラーがある場所にはレーザーが設置されています。同社はワンノースのどこでも試験車を利用できる許可を政府から受けています。同地区のさまざまなルート――最長でもわずか4マイル(約6.4キロ)弱――を走行し、安全に停止できる場所で乗客を拾うようプログラムされています。

 

 記者が試乗した三菱自動車の電気自動車(EV)「i-MiEV(アイミーブ)」は走り出しが静かでした。安全性は感じられたが慎重すぎる走りで、アクセルの踏み込み方がまだよく分かっていない初心者ドライバーのような感じでした。

 

 後部座席にはコンピューター一式が搭載され、ヌートノミーの研究者が監視しています。研究者は万一に備えて前の座席に待機したドライバーと口頭でコミュニケーションを取り、コンピューターから見える映像と実際の状況を比較しています。ドライバーが運転を代わる必要がある場合は、2つある赤い停止ボタンの1つを押すか、ダッシュボードの上のコントロールパネルで手動モードに切り替えます。コントロールパネルの下には電子道路地図が表示され、現在地や周囲の物体が表示されています。

 

 ヌートノミーのダグ・パーカー最高執行責任者(COO)は、初期のテストでは予期せぬ事態にソフトウエアが対処しなくてはならなかったと話します。違法駐車している配達の車や子供たちを降ろすスクールバス、道路脇で着ぐるみ姿でレストランの宣伝をする男性などに遭遇したといいます。

 

シンガポールで25日、世界初の自動運転タクシーのサービスが始まりました(英語音声、英語字幕あり)

 残念ながら記者が乗っている間はそんな楽しい光景にはお目にかかれなかったのですが、駐車した車や信号無視をする多くの歩行者を避けなければならなかったのです。試験車はうまく対処しており、むしろ大げさなくらい危険を避けようとしていました。パーカー氏によると、システムは歩行者などの物体を特定・分類し、信号無視などの行動に先手を打っているといいます。そのため各状況にどう対処するかを判断する際に、動きが鈍くなることがありました。

 

 ワンノースの交通はおおむねどこも混雑しており、試験車が時速20マイルを超えることはなく、右折や左折、車線変更も数回でした。加速と減速は多少改善の余地があると感じました。乗り物酔いしやすい人は車内で長い間新聞を読まない方がいいでしょう。

 

 ハイテク製品好きの人であれば、自動運転車の試乗は楽しいでしょう。ただし、しばらくすると無人走行電車(シンガポールでは実際に運行している)に乗っているのと変わらない気分になってきました。すぐに日常生活の一部ように感じられたからです。

 

 ワンノースの短い乗車でも自動運転車の可能性を知るには十分でした。科学は大きな進歩を遂げたが、あの話好きのドライバーはまだしばらくは仕事を失わずに済むかもしれませんね。(ソースWSJ

2016年8月28日 (日)

自動運転車がハッカーに乗っ取られる日!

デジタル世界の情報セキュリティー問題を扱う専門家は悪夢のシナリオを思い描くのが大好きです。私たちの401K(確定拠出年金)を空っぽにしてしまうドローン。冷蔵庫を爆発させる電子メールの添付ファイル。映画をハッキングし、出演している豪女優マーゴット・ロビーの映像をすべてCG(コンピューターグラフィックス)のドクター・フィル(米で人気のトーク番組で司会を務める精神科医)に置き換えてしまうソフトウエア――。

 

 8月上旬にラスベガスで開催された情報セキュリティーの専門家による毎年恒例の国際会議「ブラックハット」とハッカーの技術力を競う「デフコン」で、こんな悪夢のシナリオが話題に上りました(ラスベガス自体がある意味、悪夢のような街ですが)。ブラックハットのようなイベントではすでに、自動運転車を狙ったランサムウエア(身代金要求ソフト)の話が専門家の間で取り沙汰されています。ドライバーがお金を支払わない限り、車内から出られないという悪意あるソフトのことです。また、自動運転車の操縦を乗っ取り、ドライバーが望まない場所、例えばラスベガスのような場所へ強制的に連れて行くというシナリオも考えています。

 

 あらゆる悪夢のシナリオの中で、自動運転車を標的にしたランサムウエアが最も悪質のように聞こえます。加害者は車の中に被害者を閉じ込めて、カネを支払うまで待つだけでなく、被害者を拷問のような状態に置くこともあり得るからです。車載ラジオが操作され、野球の指名代打者制度の廃止を巡るトーク番組をずっと聞かされ、その後、オクラを食べてどれだけ人生が変わったかについて本を書いた女性にNPR(公共ラジオ局)がインタビューした番組を24時間にわたって聞かされ続けることもあり得るというわけです。そうなれば、あなたは耳をそろえてカネを払うことになるでしょう。きっとそうなります。

 

 払わなければ、ハッカーたちはさらにヒートアップするでしょう。スポティファイ(スウェーデンの音楽配信大手)のアカウントから、あなたが運転中にどんな音楽を好んで聴いているのか、どんな音楽をひどく嫌っているのかを彼らは正確に把握しています。そして容赦なく攻撃するのです。

 

 自動運転車に閉じ込めたまま、ドライバーを望まない場所へ連れて行くことも想定できます。カナダ西部のアルバータ州。母親の家。職場。フーリガン(過激なファン)が自動運転車の操縦を奪えば、はるばるカリフォルニア州サンディエゴまでメジャーリーグ(MLB)のパドレスとブリュワーズの試合に無理やり連れて行かれるかもしれません。

 

 しかし、良い面もあります。ランサムウエアは適切な扱われかたをすれば、社会のニーズに応えて、暮らしをより快適にすることもできるのです。

 

 ランサムウエアに政治家の自動運転車を乗っ取らせ、長い間苦しめられてきた国民による遅すぎた報復を味わわせることができます。車内に閉じ込められた政治家はトーク番組で自分の口から出てきた発言を聞かされ続けます。もう二度と空虚な約束はしないと誓うまでそれは終わりません。そしてすべてがうまく運んだら、アイドル歌手のジャスティン・ビーバーや、シンガーソングライターでギタリストのデイブ・マシューズ、そしてロックバンドのフィッシュにモーツァルトの「レクイエム」を車内で聞かせ続けることができます。永遠に。全員が同じ車内にいれば尚のこといいでしょう。(ソースWSJ

2016年8月27日 (土)

米株市場、年内利上げなら銀行株上昇も!

米連邦準備制度理事会(FRB)が年内に利上げすれば、銀行株は上昇する可能性が高い。つまり、昨年12月の利上げ時とは対照的な動きとなるだろうということです。

 

 12月にFRBが利上げへと踏み切った際、銀行株は大方の予想に反し下落しました。この利上げは、圧縮されていた融資利ザヤの万能薬にはならなかったのです。今年初頭、世界経済見通しが悪化したことも銀行株の足かせとなりました。SP500種指数は年初から6.4%上昇しているのに、KBWナスダック銀行株指数は3.9%安の水準にとどまっています。

 

 バーンスタインのアナリスト、ジョン・マクドナルドは、その理由の一部は利上げ前に織り込まれていた銀行株の上昇期待と関係があるかもしれないと指摘しています。昨年末の利上げ発表前後ですら、そうした期待は崩れる兆候はありました。同氏が25日発表したリポートによると、利上げ発表の前日、SP500の銀行株のパフォーマンスはSP500種指数を2ポイント上回っていたのですが、利上げ発表当日はこれを1.5ポイント下回わりました。

 

 それから8カ月を経た現在、トレーダーは年内利上げの確率をほぼ五分五分とみており、一部のエコノミストは、イエレン議長が26日にジャクソンホール会合の演説で利上げ時期について何らかのシグナルを送り始めると予想しています。アトランティック・トラスト・プライベート・ウェルス・マネジメントの投資責任者、デビット・ドナビーディアン氏は「銀行は正直なところより高い金利構造を望んでいると思う」と述べました。

 

 しかし、今だから分かることですが、投資家は銀行株についてそれほど大きな上昇を織り込んではいなかったのです。マクドナルド氏は、銀行の株価は収益の低下見通しもあってより低下していましたが、全体の株価がより割高となる中、魅力を増しているように思えると指摘しています。

 

 利上げペースについては依然として、緩やかなものとなると予想されているため、予想外にこれが速まるとの示唆が少しでも見られれば、銀行株の上昇は勢いを増す可能性があります。昨年12月と現在ではもう一つ違いがあります。現在、原油価格は落ち着いている兆しがあり、投資家は銀行のエネルギー関連エクスポージャ―について以前ほど懸念していないことえす。

 

 ただ、マクドナルド氏は、一回の利上げだけで融資利ザヤについて見通しが一変するわけではないとみています。銀行株の反発が持続するには、多くの投資家にとって、「銀行融資の利ザヤ拡大が継続するとの見立てで銀行株を買うため、一貫した利上げサイクルに入りつつあるという何らかのシグナル」が必要となるだろうと指摘しました。(ソースWSJ

2016年8月26日 (金)

北朝鮮の潜水艦ミサイル成功「けん制」以上!

北朝鮮が政治的な失態から世間の耳目を逸らすために軍事的な挑発行為に出ることはよくある。そのため、在英北朝鮮大使館のテ・ヨンホ公使が韓国に亡命するという世間を騒がせた先週の「事件」の後、同国が何かしでかすのではないかと考えた向きは多かったのです。しかし24日に潜水艦から弾道ミサイル(SLBM)を発射したのは、けん制以上のものがありました。しかもこの発射実験は成功し、金正恩氏の武器が明らかに進化していることを物語っています。

 

 米国と韓国の当局によると、潜水艦から発射された弾道ミサイル「KN-11」は北朝鮮の東海岸沖から日本へ向けて約300マイル(約480キロ)飛行したあと海に落下しました。2014年に北朝鮮がSLBMの発射実験を開始して以降、最も飛行距離が長く、今年に入って2回発射実験が行われたSLBMよりも大幅に距離が伸びています。この2回の実験ではいずれも約30キロ飛行したあとに空中で爆発しています。

 

 北朝鮮は核兵器やミサイルの開発プログラムに相当なリソース(資源)を注ぎ込んでおり、その両方で進歩をみせています。韓国のアナリストはこれまで北朝鮮の能力をしばしば過小評価してきましたが、彼らは今、北朝鮮は2020年までに戦闘に即応可能なSLBMを配備できる可能性があるとみています。

 

 ユーゴスラビアの古い潜水艦の設計をベースにした北朝鮮の「鯨」級の潜水艦は構造が比較的単純で音も大きいのですが、KN-11を搭載した潜水艦が北朝鮮の海岸沿いに配備されるだけで、韓国や日本、さらには数万人の駐留米軍にとって脅威となり得るのです。

 

 24日のSLBMの発射実験に先立ち、北朝鮮は別のミサイル開発プログラムでも一里塚に達していました。6月に、新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」の移動式発射台からの発射に初めて成功したのです。

 

 このミサイルが到達した高度も過去最高で、これは特に懸念すべきことです。北朝鮮が開発中の大陸間弾道ミサイル(ICBM)――推定射程距離は1万マイル(約16000キロ)で米国本土の半分近くに達する――は最初の加速段階にムスダン型の推進エンジンを使用するとみられているためです。

 

 移動式発射台から打ち上げられるムスダンは迎撃が難しいのです。また、北朝鮮の兵器開発プログラムは中国から助力を得ていることも物語っています。移動式発射車両(TEL)は北朝鮮が2011年に中国の国有防衛企業から入手した中国製トラックです。この事実は、核不拡散に取り組んでいるという中国の主張と矛盾しています。

 

 米国は北朝鮮の武器取引や金正恩政権の持続を手助けしている中国企業のただの1社に対しても制裁を発動していません。米国、韓国、日本は地域のミサイル防衛システムを拡大・統合させつつあります。しかし、防衛は最後の手段であり、高度な技術への金氏のアクセスを元から断つという「拡散対抗戦略」の代わりにはなり得ません。(ソースWSJ

2016年8月25日 (木)

テスラ、航続距離500キロのEV電池を発表!

米電気自動車(EV)メーカーのテスラモーターズは23日、1回の充電での走行距離が315マイル(約507キロメートル)のEV用電池を発表しました。

 

 テスラは、この容量100キロワット時の電池「P100」を搭載するセダン「モデルS」と多目的スポーツ車(SUV)「モデルX」の発売を明らかにしました。同社の有名な「ルディクロス(ばかげた)モード」で走行する「P100」バージョンの販売が開始します。

 

 大手自動車メーカーとしてはこれほどの距離を走るEVを提供するのは初めてだとしています。

 

 既存のテスラ車の航続距離は210270マイル。

 

 テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は電話説明会で、同社が「世界最速の車」を提供するとした上で、それがEVだという事実は自動車業界の将来を暗示する画期的なことだと語りました。テスラは、停止状態から時速60マイルまでセダンで2.5秒、SUV2.9秒で加速できると説明しました。

 

 価格設定はセダンの「P100D」が134500ドル、SUV135500ドル。(ソースWSJ

2016年8月24日 (水)

ソニー、PS4の新製品2種を来月発表へ!

ソニーは9月に家庭用ゲーム機「プレイステーション4PS4)」の高性能モデルとともに、標準モデルの新製品を発表する計画です。PS4は好調な販売が続いており、この勢いを維持することを目指します。事情に詳しい関係者が明らかにしました。

 

 アナリストらによると、ソニーは2つの新製品を追加し、熱狂的なファンと一般的なユーザーの両方をPSに引きつけたいと考えているようです。同社は、定額制サービスとソフトウエアのダウンロード販売から安定した収入が得られるように、ユーザーコミュニティーを構築しようとしています。

 

 ソニーは、97日にニューヨークのプレイステーションシアターで記者会見を開くと発表しており、広報担当者によると、同社はそこでPS4事業について話すといいます。

 

 同社は6月、グラフィック機能を高めたPS4の高性能モデルを発表する計画を明らかにしましたが、標準モデルの更新についてはこれまで公表してきませんでした。

 

 マッコーリー・セキュリティーズのアナリスト、ダミアン・ソング氏は標準モデルの新製品について、350ドルの既存製品よりスリムになり、価格も安くなるとの見方を示しました。また、ソニーは今まで一度に1機種しか発売せず、一定の間隔で値下げすることで需要を維持しようとしてきたことからすると、今回の計画はソニーの戦略転換を示すと指摘しています。

 

 ソニーによると、2013年に発売されたPS4の世界累計販売台数は4000万台を突破しています。これは、米マイクロソフトが同年に発売した「Xbox One(エックスボックスワン)」を上回ります。アナリストらによれば、Xbox Oneの累計販売台数は推定2000万台です。また任天堂によると、12年に発売された「Wii U(ウィーユー)」の累計販売台数は1300万台となっています。

 

 日本でのPS4の売れ行きは米国より鈍いようです。テレビゲーム専門誌「ファミ通」によると、日本でのPS4販売台数はここ数週間、やや減少しています。ただソニーはPS4の生産を抑制しているため、同機種は在庫切れになる可能性が高いといいます。 

 

 エース経済研究所のアナリスト、安田秀樹氏は近く発表される新製品について、10月に発売予定のバーチャルリアリティー(VR、仮想現実)ヘッドセット「プレイステーションVRPS VR)」を含むPS事業に拍車をかけるための大掛かりな取り組みの一環だと指摘しました。ソニーは、クラウドベースのテレビストリーミングサービス「プレイステーション・ヴュー(PS Vue)」といったゲーム以外のコンテンツを追加することでPSネットワークにさらに視聴者を呼び込もうとしています。 

 

 ソニーは、173月期のPS4販売台数は前年度の1770万台を上回り、2000万台以上に達すると見込んでいます。(ソースWSJ

2016年8月23日 (火)

米中戦争の偶発リスク、情勢楽観は禁物!

米国と中国が最後に戦火を交えたのは1950年に始まった朝鮮戦争で、両国は休戦に至るまで戦いを続けました。

 

 その後、1950年代に冷戦が深刻化したことで、米中は再び衝突に近づきました。台湾を巡る緊張が高まるにつれ、当時のアイゼンハワー大統領は繰り返し、「レッドチャイナ(赤色中国)」に対して核の脅威をちらつかせた。

 

 現在、米中間には途方もなく大きな利害が絡み合っているため、多くの人は2つの大国が武力衝突を起こすことはないと決めつけています。両国はお互いが最大の貿易相手国です。軍事衝突が起これば膨大な通商の流れのみならず、学生交流や科学分野での協力、テクノロジー面での共同プロジェクトなど、数え切れないほどのことが脅かされるでしょう。そこでは世界1位と2位の経済大国と、それぞれの国民の運命と繁栄が切り離せないほど強く結びついているのです。

 

米中戦争「あり得ないと考えることはできない」

 

とはいえ、中国が南シナ海と東シナ海で力を誇示する中、空か海で偶発的な衝突が発生する危険性は日に日に高まっています。米国のシンクタンク、ランド研究所の最新調査リポートは、こうした危機が誘発する米中戦争を「あり得ないと考えることはできない」と指摘しています。

 

 同リポートは、暴力は一瞬で火が付く恐れがあると警告しています。なぜなら、両国とも精密誘導兵器を配備し、サイバー技術と宇宙開発技術も持っているため、中国が陸上に設置したミサイル発射台や米軍の空母など、相手側の軍事資産に壊滅的な打撃を与えることができるからです。このため、両国には「使わなければやられる」という判断の一環として、最初に大規模な攻撃を仕掛ける強い動機があるのです。

 

 米陸軍の支援を受けて行われたランド研究所の調査では、いったん制御が効かなくなれば、核兵器の利用までは行かないものの、戦闘が長引く可能性が示唆されています。両国は軍事、産業、人口動態の面で、大きな損失を吸収しながらも前進するリソースを保有しています。朝鮮戦争のように、明確な勝者が出ない可能性もあります。

 

 ランド研究所はリポートで、米中政府が「激しく、長く、制御できなくて壊滅的な、それでいて決着のつかない紛争の可能性を熟慮する必要」があると指摘しています。

 

仲裁裁判決で高圧的態度を強化

 

 国際仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が先月下した判決に中国が示した反抗的な態度を見ると、これは気がかりです。仲裁裁判所の仲裁人(判事に相当)らは、南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶという中国政府の主張を退けたばかりか、軍用に転換可能な滑走路が建設された人工島の建設を非難しました。こうした人工島は、ベトナムやフィリピンなど領有権を主張する他の国々を脅かしています。

 

人工島の造成が進むスビ礁の航空写真

 

 中国は後退するどころか高圧的な戦略を強化しています。同国はフィリピンから実質的に奪い取り、実効支配を強めているスカボロー礁の上空に爆撃機を飛ばし、ロシアとの合同軍事演習を発表し、日本と領有権を争う海域に多数の公船を派遣しました。

 

 米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は人工島に格納庫が突然現れたことを示す衛星写真を公開した。これは明らかに空からの攻撃への抵抗力を強化するものです。

 

 今のところ、中国人民解放軍が人工島に軍用機を駐機させた形跡はない。

 

 来月には中国が初めて主催する20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれます。西側専門家の一部は、中国がそれを台無しにしないよう時間稼ぎをしている可能性を指摘。G20終了後、米大統領選(11月)までには、中国がさらに激しい動きを起こす可能性に注意すべきだとしています。

 

控えめな米国、勢いづく中国

 

 仲裁裁判所の判決に対する米政府の対応は明らかに抑制されています。米政府当局者は、「航行の自由」作戦の一環として人工島の周辺海域に軍艦を派遣するといった挑発的な発言や行動を控えれば、次第に中国政府がスムーズに判決に従う方法を見つけやすくなると期待しているようです。

 

 米国にとって、上手にバランスを取りながら懐柔と決意を表明することが極めて重要になります。ランド研究所のリポートが主張したように、米中戦争は、周到に計画された攻撃よりも、東アジアの同盟国を守る米国の意志を中国が読み誤ったり、米国が同盟国に行きすぎた行為を促したりする結果起こる可能性の方が高いと言います。

 

 実際、外交政策で一流の現実主義者である中国の指導者らは、今や勇気付けられたと感じているかもしれません。人工島は既成事実化され、仲裁裁判所には判決を執行する力がありません。東南アジアは沈黙を保っています。欧州は相変わらずもがいており、中国からの投資が活性化しないかと気をもんでいます。

 

 米ダートマス大学で東アジア情勢を専門とするジェニファー・リンド氏は「どの国も(中国を)押し返していない」と話します。リンド氏は中国の戦略が成功してきたと考えています。「中国はより広い領域を支配下に置き、以前よりも影響力を増している」

 

 困ったことに、ランド研究所のリポートでは中国の軍事戦略家たちが自信を深め、短期集中型の勝ち目のある戦争に打って出る可能性があると指摘されています。

 

見込み薄い「コミュニケーションの拡大」

 

 リポートは、米国が中国への先制攻撃を望んでいないことを明示し、「平時、危機時、戦争時において中国とのコミュニケーションを拡大」すべきだと提案しています。

 

 ただ、コミュニケーションの拡大について、歴史は励みになりません。2001年に起こった「海南島事件」では中国の戦闘機と米国の偵察機が空中で衝突し、中国のパイロットは行方不明になり、損傷を負った米軍機は海南島に緊急着陸せざるを得ませんでした。当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領はホットラインで中国の江沢民国家主席と連絡を取ろうとしましたが、江氏はなかなか応答しようとしなかったのです。(ソースWSJ

2016年8月22日 (月)

日銀、来月「大胆な」行動の公算!

日本銀行は来月、「大胆な」行動をとる可能性が高いといいます。前内閣官房参与の本田悦朗駐スイス大使はウォール・ストリート・ジャーナルの単独インタビューでこのような見通しを示し、92021日の金融政策決定会合で予定している政策の総括的な検証において、今後、金融緩和を縮小する道筋をつけるとの観測を否定しました。

 

 本田氏は「どのように検証するにしても、既に答えはある。これまでの金融緩和は不十分であった、ということだ」とし、「あるいは、金融緩和はそれなりの効果を出したが、財政緊縮や、外的な要因が重なりあって、金融政策のプラス効果を打ち消してしまった。そういう答えしかないはずだ。その答えから導き出されるのは、より一層の金融緩和をしよう、という政策インプリケーションしかないはずだ」と語りました。

 

 日銀が2%のインフレ目標を達成する前に緩和縮小を始めるならば、「デフレからはもう二度と戻れない」ことになると指摘しています。6月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年同月比0.4%の低下で、20133月以降では最も大幅な下落となりました。

 

 本田氏は、日銀が7月の決定会合で明らかにした総括的な検証の必要性に疑問を投げかけ、日銀の姿勢が円高を招いたと指摘しました。「明らかに円高が行き過ぎている。その理由は、これ以上金融緩和は無理だと思われてしまっていることだ」と述べ、「避難通貨として円が選らばれているというが、それは全くの嘘だと思う。円が避難通貨であるわけがない。やはり金融政策だ」と語りました。

 

 その上で、「米国が何といおうと、もっと思い切った政策をとっていいと思う」との見解を示したのです。

 

 日銀当局者らはおしなべて、円高の理由は日銀の政策ではなく、米国の金融政策経路に対する不透明感にあるのではないかとみています。また、検証は公平かつ厳格に行われ、予断を抱くことはないとしています。

 

 本田氏は、一般のインフレ期待の低下に対処するには、金融緩和の強化と財政政策の組み合わせが緊急に求められると語りました。そして、9月の決定会合で「大胆な金融緩和を打ち出す可能性は5割超あると思う」と述べています。「これでやらなかったら、本当に国民は『やっぱりだめか』と感じてしまうのではないか」と語っています。

 

 本田氏は、日銀がマネタリーベースの目標を、25%増やし100兆円とするべきとの考えを示しました。この目標を達成するために、主に長期国債の買い入れを現行の年間約80兆円よりも早めるべきだとしました。詳細は明らかにしなかっませんでしたが、日銀は新たな株式買い入れ枠を設けることも可能との見方を示しています。

 

 日本の金融政策は限界に達したとの見方が高まりつつありますが、安倍晋三首相はそのようには「感じていないと思う」と本田氏は語りました。量的緩和の効果は数年前と比べると薄れているかもしれないが、「『効果がうすくなってきたからもっとやろう』。それがアベノミクスの精神だ」と指摘しました。また、日銀が当座預金のうち政策金利残高に適用しているマイナス0.1%の金利は、金融システムの健全性に対する懸念が高まる可能性があるので、深掘りすべきではないとの見方を付け加えました。

 

 さらに、日銀は四半期ごとの「経済・物価情勢の展望」で2%のインフレ目標達成の見通しを引き続き示すべきだと指摘しました。日銀内部の議論を知る関係者によると、日銀上層部ではインフレ期待の形成に影響することを避けるために、見通しの公表はやめるべきかとの議論があるといいます。(ソースWSJ

2016年8月21日 (日)

株式市場の「メルトアップ」、中銀が主導者!

2015年の8月にメルトダウン(大暴落)した株式相場ですが、16年の8月はこれから一気に上昇するかのような「メルトアップ」の気配を見せ始めています。

 

 米株式市場では11日に三つの主要指数がそろって最高値を更新し、メルトアップの様相を帯びてきました。メルトアップとは、株価が上昇するとは考えられない理由が十分あるにもかかわらず、大幅な株高が進む状況を指します。15日終値の時点でナスダック総合指数は月初来1.9%高、ダウ工業株30種平均は同1.1%高、SP500種指数は同0.8%高、ラッセル2000種指数は同1.8%高です。SP500種指数は英国の欧州連合(EU)離脱決定後の安値から約7.1%上昇しており、これは年初来の上昇率7.3%にほぼ等しいのです。

 

 これらの数字が必然的なものに見え始め、トレーダーや投資家が一斉に市場に参入し始めたときに起きるのがメルトアップです。足元の市場はまだそこまでには至っていないようですが、メルトアップという言葉を口にする市場関係者が増えていることを鑑みると、この直近の上昇相場の背景を考察する価値はあります。

 

 まず、この「メルトアップ」は株式市場そのものが主導しているものではありません。ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏は日次リポートで、「株式市場のメルトアップは引き続き債券相場のメルトアップにけん引されており、その債券市場のメルトアップに油を注ぎ続けているのは世界の主要中央銀行だ」と述べました。日本銀行と欧州中央銀行(ECB)は資産の買い入れを増やし、バランスシートを拡大させており、英中銀イングランド銀行はこのほど独自の量的緩和(QE)政策を再始動させたところです。こうした中銀の緩和政策で市場には大量の資金が流れ込み、それが資産価格に表れているのです。上昇しているのは米国の株価だけではありません。ドイツの代表的株価指数であるDAX指数は一時、年初からの下落率が20%を超えましたが、今や下げ幅を全て解消しています。新興国株もメルトアップが進行中です。

 

 10年物米国債利回りが1.50%前後で推移しているにもかかわらず、株価は上がり続けています。あるいは、むしろ皮肉なことに、債券利回りがこれほど低いから株価の上昇が止まらないと言った方が良いかもしれません。市場をいま動かしているのは成長見通しを巡る高揚感ではなく、低金利がいつまでも続くという期待感です。ヤルデニ氏は「結果として世界中の債券市場で途方もない規模のメルトアップが起きており、投資家が利回りを求めざるを得ない中でこのメルトアップが拡大している」と指摘しました。債券利回りの低下を受け、投資家は利回りを求めて他の市場に目を向けており、株式に帰着するのは当然の流れです。

 

 こうしたメルトアップはいつまで続き得るのでしょう。確かに、ヤルデニ氏は足元の株価が現在の上昇局面のピークに近いことを認めています。しかし、企業の収益「見通し」も上昇しており、買いの裾野は広いのです。7月の米小売売上高が前月並みにとどまったにもかかわらず、個人消費が近いうちに急減速する様子はありません。ヤルデニ氏はこれこそがメルトアップの構造だと指摘しました。

 

 とは言うものの、誰が株式を買っているのでしょうか。買い手は、資本市場に資金を投入していることをわれわれが知っている機関、すなわち中銀と自社株買いを進める企業です。例えば、日経平均株価指数を構成する企業225社のうち90%で、日銀が大株主上位10位以内に入っています。ECBは社債の買い入れを行っています。イングランド銀行が9日に実施した国債買い入れオペは目標額に届きませんでした。米企業の自社株買いは過去最高を記録した昨年から減速したとはいえ、依然として速いペースを維持しています。SPダウ・ジョーンズ・インディシーズのデータによると、SP500種指数構成企業の約25%が自社株買いによって1株当たり利益(EPS)を少なくとも4%増やしました。

 

 株式を買っていないのは誰か。少なくとも一般の個人投資家はあまり積極的ではないでしょう。バンク・オブ・アメリカのデータによれば、グローバル株式ミューチュアルファンドの運用資産残高は年初来1.8%減少しました(先週は資金流入超だったが)。つまり、この「メルトアップ」は、投資家が良い投資先に殺到しているから実現したのではなく、中銀が金融緩和開始から7年が経過した今もなお、われわれがかつて知っていた素晴らしい市場環境に非常によく似た状況を作り上げようとしている中で生まれたものだということです。(ソースWSJ

2016年8月20日 (土)

体操の抗議に手数料、リオで米チームも支払う!

五輪の体操競技で抗議にお金がかかることはほとんど知られていません。体操競技は複雑な採点制度に支配されており、コーチは手数料を支払わなければ異議を唱えることができないのです。

 

 国際体操連盟が定めた規則によると、訴えが認められなかった場合はチームに手数料が課されます。狙いは根拠のない申し立てを防ぐことですが、リオデジャネイロ大会では最初の抗議が300ドル(約3万円)、2回目が500ドル、3回目が1000ドルとなっています。

 

 前回の五輪では、コーチは抗議を始める前に現金を支払ったのですが、同連盟によると、現在は事後の支払いに同意する旨の書類を提出するだけだそうです。

 

 リオの体操競技では、判定に対する「質問」が1ダースほど出されている。19日に始まる新体操で増える可能性もあります。規則によれば、異議が出されると独立委員会がビデオでその演技を見直し、異議が認められた場合、手数料は請求されません。

 

平均台で多くの手数料発生

 

 リオでは平均台が多くの手数料を生んでいます。多くの抗議が出され、却下されているからです。点数の変更につながった抗議はほとんどありません。

 

 ローリー・ヘルナンデスについても、コーチのマギー・ヘイニー氏が平均台の点数に異議を唱えました。ヘイニー氏は、米国体操協会のロンダ・フェン氏と米代表チームのコーディネーターであるマーサ・カーロイ氏の助言を受けて見直しを求めたと話しています。

 

 ヘイニー氏は「ロンダとマーサがそれを入れるようわめいていた」と述べました。2人はヘルナンデスが0.1ポイント減点されたとみられる部分についてどうしても知りたがったが、ヘイニー氏は0.1ポイント増えたとしてもヘルナンデスの銀メダルが金に変わることはないとわかっていたといいます。結局、異議は却下され、点数は変わりませんでした。

 

 ヘイニー氏は「手数料が私の口座から引き落とされないことを希望する。それだけは確かだ」と話しました。請求書は米国体操協会に送られ、手数料は国際体操連盟の基金に回ります。

 

 同基金によれば、集まった資金は病気やけがの体操選手の支援、体操選手の健康に関する調査の支援、体操器具を必要とする国への寄付、途上国での体操競技促進に充てられるといいます。(ソースWSJ

2016年8月19日 (金)

進化する超高速取引、光速の領域に踏み込む!

金融市場では取引速度を競うレースが依然として活発ですが、世界で最も強力な証券会社や取引所に対して光速に匹敵する速度で株式取引を処理できるというスイッチを提供しているのは、フィンテック(IT技術を使った新たな金融サービス事業)を手掛ける一握りの新興企業です。

 

 豪シドニーに本拠を置くメタマコとエクサブレイズ両社や、シカゴに本拠を置くエクセロア社は、取引所から電子トレーダーに送るデータなど、メッセージを一方から他方に送るのに約4ナノ秒(1ナノ秒=10億分の1秒)しかかからないスイッチを製造しています。

 

 注文を集めてそれを取引所に送るプロセスを含めると、新しいスイッチが一つの動作を完了するのに要する時間は、光が野球の本塁から一塁までの距離を進む時間とほぼ同じです。これは取引所のサーバールームで現在使われている多くのスイッチよりも数倍も速い。超高速取引(HFT)の世界では、まばたきの間に富を獲得したり失ったりする行為が何度も繰り返されているのです。

 

  メタマコの共同創設者デービッド・スノードン氏は「われわれは物理学の限界に挑んでいる」と述べています。同社は、シスコシステムズやアリスタネットワークスのような企業が製造している在来型のネットワークスイッチを、いわばレーシングマシンに変えつつあると言えます。

 

 こうした超高速スイッチは、1秒間で何千回もの取引を送り出すコンピューター取引プログラムを使う会社からの需要に見合うように設計されています。これらのスイッチは宅配ピザの箱とほぼ同じ大きさの黒色の装置で、通常は銀行やヘッジファンドが証券取引所のデータセンターで動かしている巨大なサーバー群の上に置かれています。

 

 超高速スイッチは、膨大な量の株式市場データを同時に何十もの取引サーバーに送っていす。その後、金融機関など企業の持つアルゴリズムによってこの情報が消化されると、買いあるいは売り注文を電光石火で執行します。

 

 ますます進む取引の高速化は、通常の投資家を犠牲にし、HFTトレーダーらを有利にしていると批判されています。それは、取引システムを運営する新興企業IEXグループが、取引速度を意図的に遅らせる仕組みを導入したことにもつながりました。

 

 しかし超高速スイッチメーカー各社は、注文の執行が光速に近いスピードになれば、実際には市場はより公平になると主張しています。なぜなら、あらゆるデータが可能な限り迅速に進むシステムでは、トレーダーが悪用できるような技術的抜け道はなくなるからです。 

 

 もちろん、取引ネットワークを構成するのはスイッチだけではありません。コンピューター専門家は、超高速スイッチのスピードは、ネットワークカードなどのハードウェアが同じように追随できた時にのみ意味を持ってくると指摘しています。前出のエクサブレイズのマシュー・チャップマン最高技術責任者(CTO)は「こうした超高速スイッチはもはやボトルネックではない。つまり、レイテンシ(遅延)は今やシステム内の他のあらゆるところにある」と語っています。

 

 新しいスイッチはまた、大きな勝利も保証しません。コンピューター工学で博士号を持つメタマコのスノードン氏は「速く、かつ賢くなければならない」とし、「愚かなトレーディング戦略では結局のところ儲けることはできない」と語っています。

 

 それでも、通信会社から証券会社にいたるまで、各企業は、この新スイッチ技術に関心を寄せています。一方、多くのコンピューター取引トレーダーは優位に立つべくこのようなスイッチを購入しつつあるのです。先月、オーストラリア証券取引所(ASX)は、メタマコのハードウェアを使用していることを認めました。メタマコは、米国のHFT会社の半分以上が既に同社の装置を使用していると推計しています。

 

 新しいスイッチはデータをほとんど解析せずにそのまま転送するため、シスコ製などのスイッチよりもスピードが速くなっています。シスコ製などのスイッチは、情報を解析した後でそれを送る場所を決定しています。

 

 世界最大級の銀行やヘッジファンドなどが会員になっている「セキュリティーズ技術分析センター(STAC)」(米イリノイ州ウォーレンビル)の試験によれば、メタマコの装置は、トラフィック量とは無関係に4ナノ秒という一定の速度を記録しました。これは、データの殺到時にサーバーが遅くなるのを懸念する金融機関にとって重要な特徴です。

 

 メタマコとエクセロアは両社製のスイッチについて、注文を取引所に送り返すなどもっと複雑なタスクを含むメッセージング全体の作業を約85ナノ秒で完了していると述べました。シスコのウェブサイトによれば、シスコの最速スイッチでは同様の作業に少なくとも240ナノ秒を要するといいます。

 

 シドニー郊外に拠点を持つメタマコは、シカゴからアムステルダムまで世界各地の顧客に超高速スイッチを月間約100台販売しています。1台当たり約2万ドル(約200万円)で、米国のコンサルタント会社タブ・グループによれば、米国株式取引の半分近くを占める高速トレーダーたちにとって最も入手しやすいスイッチの一つとなっています。

 

 ロンドンに本拠を置くネットワークサービス会社FXエコシステムは最近、メタマコ製スイッチを導入してデータセンターの一部を拡充しました。同社のジェームズ・バニスターCEOによると、速度を重視するトレーダーや銀行にとって魅力的に映るようにするのが狙いです。

 

 英国が欧州連合(EU)離脱の是非を決める国民投票を実施した623日の夜、英通貨ポンドに関するさまざまな憶測が飛び交い、通常の10倍もの量のデータがFXエコシステムのネットワークに殺到しました。

 

 スイッチが不具合を起こすリスクが高まったのですが、その日徹夜したバニスター氏は「投票結果が飛び込んできた時、われわれは固唾をのんでいたが、(スイッチの)技術は素晴らしかった」と述べていました。(ソースWSJ

2016年8月18日 (木)

中国、世界初の量子通信衛星を軌道に!

ゴビ砂漠から16日未明に打ち上げられた量子通信衛星「墨子」搭載のロケット長征2Dは、科学の最も挑戦的な一分野の最前線に中国を押し上げる見通しです。

 

 それによって中国は、喉から手が出るほどに欲しい通信技術を求めて競争しているサイバースパイの時代に世界のライバルを大きく引き離す態勢を確保できます。それは「ハッキング(盗聴)不能な通信」という資産です。

 

 国営メディアは、中国が16日午前140分(日本時間午前240分)ごろ、内モンゴルの人工衛星打ち上げ基地から世界で初めての量子通信衛星をロケットに搭載して軌道に乗せたと報じました。準備から5年経過しているこの量子通信衛星プロジェクトは、世界中の科学者や安全保障専門家らが注視しています。

 

 この量子通信衛星プログラムは、ハードサイエンス(自然科学)研究で西側に追い付き追い越すため、中国が過去20年間にわたって何十億ドルものカネを注ぎ込んできた戦略の一部です。

 

 ジュネーブ大学のニコラス・ギシン教授(量子物理学)は「中国は、量子衛星レースに勝利する公算が極めて大きい」と述べ、「それは、中国が大規模で野心的なプロジェクトを計画・実現する能力を持っていることを改めて示している」と語りました。

 

 米国、欧州、日本、その他諸国の科学者は、亜原子粒子(原子よりも小さい粒子)にある奇妙で潜在的に強力な特性を競って探究していますが、中国の科学者たちのように大規模な国家支援を受けている科学者は少数だ、と研究者らは言います。量子技術は、今年3月に公表された中国の5カ年経済発展計画における最優先の戦略的研究課題です。

 

 中国政府は量子研究にどれだけの資金を配分したのか、あるいは重さ1400ポンド(約635キログラム)の量子通信衛星を製造するのにいくらかかったか公表していません。しかし量子物理学を含む基礎的研究予算は2015年に1010億ドルに達しており、05年時点の19億ドルを大幅に上回っています。

 

 科学者や国防・情報などの当局者のグループが7月にまとめた議会報告によると、米国の量子研究に対する連邦予算は年間約2億ドル。同報告は量子科学の発展は「米国の国家安全保障を強化するだろう」と述べていますが、資金規模が変動するため進歩が遅れているとも指摘しています。

 

 中国政府は、中国生まれで外国で教育を受けた量子物理学専門家を中国に呼び寄せるよう努力しました。その中には今回の量子通信プロジェクトを指揮している物理学者の潘建偉氏も含まれています。

 

 潘氏は15日放映された中国国営テレビとのインタビューで、「われわれは世界中の研究室で良い技術をすべて吸収し、(中国に)持ち帰った」と述べました。

 

 潘氏は、中国政府の国家支援を得て、自分の博士号取得の指導教官だったウィーン大学の物理学者アントン・ツァイリンガー教授を追い越すことができました。ツァイリンガー教授は2001年以降、同様の衛星を打ち上げるよう欧州宇宙機関(ESA)を説得しようと努めてきたといいます。ツァイリンガー教授は「これは困難なプロセスで、長い時間がかかる」と述べ、同教授は現在、自分の元学生である潘氏の衛星に協力しています。

 

 潘氏も、量子衛星プロジェクトを推進している中国科学アカデミーも、コメント要請に応じませんでした。ESAと、米国の基礎的科学研究に連邦資金を手強している米国科学財団(NSF)も、コメントの求めに応じていません。

 

 シンクタンク「ニュー・アメリカ」(本部はワシントンD.C.)のフェロー、ジョン・コステロ氏は、この量子衛星分野への中国の投資について、米国のサイバー能力への恐怖によって駆られているという側面もあると述べ、米国が中国のネットワークに深く侵入していたことが2013年に暴露された点を指摘しました。また同氏は、米国の研究機関は強力な量子コンピューターをいかに構築するか研究していると述べました。それは数学ベースの暗号(通信の安全確保のため現在世界的に使用されている)を理論的に解読できるコンピューターだといいます。同氏は「中国政府は、電子スパイ活動に中国がとりわけぜい弱になっていることに気付いている」と述べています。

 

 しかしコステロ氏は、量子通信は本質的に防御的なものだと指摘し、米国は中国の動きを国家支援のハッキング(盗聴)計画と認識していますが、その計画から中国は恩恵を受けないだろうと述べています。

 

 量子暗号は、どんな種類の計算力(コンピューターの持つ能力)からも安全です。それは、量子に暗号化された情報は「測定」されるや否や破壊されるからです。ジュネーブに本拠を置く量子暗号会社IDクアンティーク社の共同設立者グレゴワール・リボーディ氏は、それを、せっけんの泡の表面に書き込まれたメッセージにたとえた。同氏は「送信中のそれ(量子暗号化情報)を誰かが傍受しようとして触れると、破裂してしまうのだ」と語っています。

 

 量子物理学者らは近年、地上の短距離間で安全に通信するため、光子(光量子)を利用する方法を発展させました。今回の中国の量子通信衛星は、もし成功すれば、ハッキング不能な通信の距離を飛躍的に拡張できるようになるとみられています。

 

 潘氏は国営メディアに対し、量子通信が地球規模で実現するかどうか実験するため、同氏のチームは「量子暗号鍵(キー)」を北京からウィーンまで照射するつもりだと述べました。

 

 南京大学の馬小松教授は、この実験が成功すれば「すごいことになるだろう」と述べており、馬氏はウィーンで訓練を受けた量子物理学者で、中国の衛星プロジェクトの初期段階に協力しました。

 

しかし量子暗号は完全無欠ではありません。例えばハッカーは、量子レセプター(受容体)に強烈なレーザーを照射することによって、不注意なレシピエント(受容者)を欺くことが可能だろう、と量子技術センター(シンガポール)の主任研究官アレクサンダー・リング氏は言います。

 

 米国のセキュリティー専門家も、量子通信のもつ複雑さを十分に簡素化できるかどうか疑問だとしています。

 

例えばジェームズタウン財団で中国の情報活動を研究しているピーター・マティス研究員は「不可避的に、この種の技術には問題がある。このため集中的なトレーニングを経ない人々がそれを使うと、状況を混乱させてしまう」と述べています。

 

 しかし前出のウィーン大学のツァイリンガー教授は、どんな難題があっても、今回の衛星によって中国と量子力学分野は技術的突破口の入口に立つと述べました。同教授は「長期的には、この技術がわれわれの現在の通信技術に代わる大きな機会が存在している」と述べ、「そうならないとみる基本的理由は見当たらない」と語りました。(ソースWSJ

2016年8月17日 (水)

衝突リスク高まるアジア、緊張続いた1週間!

 アジアで軍事衝突のリスクが高まっていることは周知の事実です。あまりにも良く知られているため、オブザーバーらは数年前なら警告を発していたイベントを目にしてもあくびをするほどになったそうです。では、今週の展開を振り返ってみよう。

 

 ロイター通信は10日、複数国が領有権を主張する南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で、ベトナムが5カ所の岩礁などにロケット弾発射装置を設置したと報じました。このロケット弾発射装置の最大射程は150キロメートルほどで、周囲にある中国の人工島がターゲットとなりうる。これら人工島には滑走路などの建造物が築かれており、貿易の要所である南シナ海における中国の海洋覇権を確立する要塞(ようさい)と化しています。

 

 国際仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)は先月、南シナ海における中国の主権を認めない判決を下しましたが、中国は引き下がる気配を見せていません。このため、ベトナムの行動は今回が最後とはなりそうになく、他国がこれに追随する可能性もあります。

 

 北に目を向けると、日本政府は8日、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備え、自衛隊に常時迎撃できる態勢を整えるよう命じました。これまで、政府がこうした破壊措置命令を出すのは発射が目前に迫っている兆候を把握した時に限られていました。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は核実験だけでなく、1月から複数回にわたりロケットやミサイルを発射してきましたが、こうした挑発行為は次第に日本の領土に届きつつあります。先週発射された中距離弾道ミサイル「ノドン」は日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下しました。北朝鮮を支えている中国は、同国を抑えつける役割を果たしていません。

 

 日本政府は7日、中国が東シナ海の公海上に建設したガス田開発のための構造物にレーダーを設置したとの見解を表明、このレーダー設備を違法だと指摘しました。同日、外務省は中国大使館に対し、レーダー設置を「受け入れられない」と伝えたほか、中国海警局の公船や民間船舶が尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺海域への侵入をエスカレートさせていることに抗議しました。尖閣周辺には6日、230隻ほどの中国漁船が侵入しています。

 

 こうした緊張を高める行為をつなぐ共通点は、太平洋の西側で独占的な支配者になるという中国の野心です。中国政府が自由な国際秩序に挑戦する中、東アジアと東南アジアではさらに緊張が高まり、軍事展開が広がることが想定されます。(ソースWSJ

2016年8月16日 (火)

カミナリ上司、結果よければ英雄に!

職場でこのような場面に出くわしたことがあることでしょう。ある人は部下を怒鳴りつけ、至る所でしかり飛ばすものの、優れた上司としての評価を高めている。別の上司も同じことをするが、こちらは横暴だとのレッテルを貼られる。なぜでしょうか?

 

 多くの場合、それは結果と関係があります。米ジョージタウン大学マクドノー経営大学院のロバート・ビアス教授(経営学)によると、明確な動機を伝え、チーム内に信頼感を醸成し、成功実績に裏付けられた指導者であれば、押しが強くて非常に要求の多いスタイルであっても好意的に見られる傾向が強くなります。

 

 ビアス氏は、横暴なリーダーであるかどうかは見る側によって決まるといいます。人使いの荒いマネジメント手法に対する従業員の見方は、指示を出している人物、そうしたやり取りが行われる状況によって変わってくるのです。

 

 同氏の研究では、かなり高圧的な指導スタイルを採用し、総じて大成功を収めてきた「成果にうるさい」指導者の例として、アメリカンフットボールのコーチ、ビンス・ロンバルディ氏、体操競技で米国代表のコーチを務めたこともあるカーロイ・ベーラ氏、カリスマ主婦として知られ、メディアと商売を操るのにたけたマーサ・スチュワート氏の名前を挙げています。

 

 ビアス氏は共著で、「これらのリーダーは大声を自身の『ブランド』にしていますが、成績の良いチームと出来のいい部下を輩出することで称賛を浴びてきた」と書いています。「実際、彼らは人々を鼓舞して大きな手柄を勝ち取らせるため英雄視されることが多いのです。つまり、『動機付けのマスター』と見られているのだ」です。

 

 米アップルの共同創業者、故スティーブ・ジョブズ氏も今では粗暴な振る舞いの代名詞的存在になっています。周囲の人たちの間で、ジョブズ氏があくまで完璧を追求する人間であることは有名でした。

 

 ビアス氏はジョブズ氏のどこに注目したのか。ビアス氏は「私がMBA(の学生)に教えようとしていることは、彼(ジョブズ氏)を良い指導者そして悪い指導者に仕立てているのが何なのかを見極めさせることだ」と説明しています。「指導者とは、複数のシグナルを同時に送る複雑な人物です。ジョブズ氏に関しては、横暴だった証拠がいくらでもあります。ただ、士気を高める人物だったと見ることも可能です。彼は最高の製品を求めて限界に挑んでいたのだ」と話しました。

 

 ビアス氏は厳しい職場を擁護しているわけではありません。ただ、同氏の研究では、時に「大声を張り上げて(従業員の)才能を引き出す」指導者がもたらす恩恵を確かに認めています。

 

 適切な流れで注意深く適用されれば、強く発破をかけることが人々にやる気を起こさせる効果的な方法になり得ると、ビアス氏は指摘しています。なぜなら「あなたを落としめようとではなく、高めようとしているのだから」だと。(ソースWSJ

 

2016年8月15日 (月)

AI企業買収、インテルとアップルの参戦で加速!

ハイテク大手は人工知能(AI)分野の新興企業を競うように次々と買収しています。この流れに最近加わったのがインテルです。

 

 インテルは9日、ナーバナ・システムズを買収する計画を発表しました。ナーバナは従業員48人の企業で、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれるAI技術を活用すべく、半導体やソフトウエア、およびサービスの開発に取り組んでいます。インテルは買収提案金額は明らかにしていません。

 

 先週5日には、アップルがシアトルに本拠を置くAI関連企業、トゥリを買収するとの発表があったばかりです。ベンチャー投資を追跡する調査会社CBインサイツの集計によると、大手企業によるAI関連の新興企業買収は2011年以降31件ありました。今回のインテル、アップルによる2件の買収はそれに続くものです。CBインサイツによれば、これまでの買い手リストには、アルファベット傘下のグーグル、ツイッター、ヤフー、IBM、セールスフォース・ドット・コムなどが名を連ねています。

 

昨年実績を超える勢い

 

 コンサルティング大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、より小規模な買い手企業を含めると、年初来のAI関連の買収は29件に上ると指摘。16年通年では昨年実績の37件を超えるとみています。

 

 業界幹部らは相次ぐ買収の背景について、AIの応用が急速に拡大している点を指摘しています。AIに対する関心は1980年代に高まり始め、その後勢いがなくなっていましたが、近年また盛り返しています。「機械学習(マシンラーニング)」の分野、とりわけディープラーニングという領域で突破口が開かれたことが理由です。

 

 例えば、機械に人間の顔を認識させたい場合、従来はそれを機械に明示的にプログラミングする必要がありました。しかし、ディープラーニングでは、コンピューター自身が膨大な顔の画像データを分析することによって学習し、タスクを実行することが可能です。

 

各業界を次から次に変貌

 

 例えば、アップルは音声アシスタント機能「Siri(シリ)」に発せられた音声をディープラーニングの技術を使って分析しています。このほか、クレジットカード詐欺を検出する、医療画像を判読する、作物の成育具合を調べる、ドローン(無人機)や自動運転車の運転を可能にするといった分野でもAIは応用されています。

 

 ディープラーニング分野の先駆者であるアンドリュー・ウン氏は、「AIは各業界を次から次へと変貌させつつある」と話しています。同氏は中国の検索エンジン大手、百度(バイドゥー)のチーフサイエンティストであり、スタンフォード大学の准教授も務めています。

 

 一連のAI企業買収では、全体的な金額も個々の案件の金額も知ることは困難です。なぜなら、ハイテク大手は、公表を迫られるほど新興企業の市場価値が大きくなる前に当該企業を買収してしまうからです。

 

求めるのは製品より頭脳

 

 ウン氏によると、買収する側が求めているのは技術よりも人材の方です。AI製品自体はすぐに陳腐化してしまうからです。

 

 前出のCBインサイツによれば、AI企業の買収件数ではグーグルが9件と他社を上回ってトップです。グーグルは2013年にDNNリサーチを買収してAIの研究者たちを取り込みました。DNNリサーチは影響力のあるAI研究者、トロント大学のジェフリー・ヒントン氏が率いていました。

 

 グーグルは翌14年にはディープマインド・テクノロジーズを買収。同社はロンドンを拠点とする新興企業で、ケンブリッジ大学の卒業生らが設立したものです。一部報道によれば、買収金額は4億ドル(約400億円)を超えたといいます。ディープマインドのチームはAIソフトウエア「アルファ碁」を開発し、韓国の世界的な囲碁棋士を破ったとして今年話題になりました。

 

 昨今のAIブームを引き起こすきっかけの1つは、アップルによる2010年のシリ買収でした。アップルは今回、トゥリの買収で同社を率いるカルロス・ゲストリンCEOの専門知識を手に入れます。ゲストリン氏はアマゾン・ドット・コムの寄付でワシントン大学に設けられた機械学習の教授職ポストに就いています。(ソースWSJ

2016年8月14日 (日)

米経済、生産性低下という新たな危険信号!

4-6月期の米労働生産性が低下したことを受け、各方面でやや悲観的な見方が広がっています。どんな悪材料も株式を買う口実になると考えている連邦準備制度理事会(FRB)中毒のトレーダーも例外ではありません。

 

 労働省が9日発表した4-6月期の労働生産性指数(速報値)は前期比年率換算で0.5%低下しました。低下は3四半期連続。前年同期比では0.4%低下と、3年ぶりのマイナスを記録しました。これは米国全体の企業活動が、労働者の賃金と経済成長のいずれにとっても都合の悪い圧力にさらされていることを物語っています(過去3四半期のGDP=国内総生産成長率が1%程度で推移していることは、偶然の一致ではない)。

 

 キャピタル・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、ポール・アシュワース氏は、今回の統計で「すでに悲惨な生産性の伸びが、われわれの当初の見方よりもさらに悪化していることが明らかになった」と述べました。

 

 一方、同時に発表された4-6月期の単位労働コストは、前期比2.0%増、前年同期比2.1%増となっています。生産性全体の伸びを上回ったことで、収益が伸び悩む中、あらゆる手段を尽くしてコスト削減を続けてきた雇用者は窮地に立たされています。

 

 生産性は労働者1人の時間当たりの財・サービスの生産量をします。一般的に生産性の上昇は経済成長を、生産性の低下は経済減速をそれぞれ示します。FRBのイエレン議長は6月、現在の経済状態に関して生産性が重大な謎の一つになっていると述べています。

 

 生産性の低さから経済の一部が不完全燃焼を続けている姿が浮かび上がっています。2007年以降の生産性の伸びは平均1.3%と、2000年〜07年の伸び(2.6%)の半分にとどまります。3%を記録していた1990年代の好況期との差はもっと大きくなります。その上、米経済はまたしても、雇用統計とそれ以外の大半の指標が示す方向性が食い違うという状況に置かれています。

 

 現在の景気回復期は全体として、第2次世界大戦以降で最も力強さを欠いています。GDP成長率は3四半期連続で1%程度にとどまっています。企業の設備投資も3四半期連続で落ち込みました。賃金上昇率は上向いていますが、経済が健全であることを示す水準にはまだ届いていません。しかも、4-6月期の生産性統計は賃金の伸びが抑えられる可能性を示しています。個人消費は前年比で増えていますが、先のリセッション(景気後退)終了後に伸び率が5%を超えたことはありません(現在は3.7%程度)。リセッション期以外でこれほど低い伸びにとどまるのは、1960年代以降では初めてです。インフレ率を計測する方法はいくつもありますが、過熱感を示す指標は一つもありません。

 

 その一方で、雇用者数は着実に伸びており、失業率は低いのです。 これはちょっとした謎だとの声が上がってもおかしくはありません。

 

 MFRセキュリティーズのチーフ米国エコノミスト、ジョシュア・シャピロ氏は「今のところ、生産性統計は停滞状態にあるかのようだ」と語りました。つまり、賃金がさらに伸びたとしても、落ち込む利益率の確保に懸命な企業にさらに圧力を掛けるにすぎないということです。また、熟練労働者をつなぎとめるために賃上げする必要が生じれば、新規採用者の減少につながる可能性が高くなります。

 

 これは企業利益にとっても何か意味するところがありそうです。市場はこれまで、全ての経済指標がFRBの金利判断にどう影響するかを主に心配してきましたが、今後もそれは変わらないでしょう。ただ4-6月期の生産性は、いわゆる「収益不況」が人々の期待に反して終わらない可能性を警告しています。リンゼー・グループのマネジングディレクター、ピーター・ブックバー氏は「今後1年間で企業収益が伸びるとの期待はあまりにも楽観的すぎます。名目GDP成長率が低迷する中、企業収益はほとんど伸びず、利益率が低下しているため、収益不況は続くはずだ」と述べていました。(ソースWSJ

2016年8月13日 (土)

資生堂、お肌の奥に潜む問題!

 ここ数年間は円安が日本企業を多少見栄えの良いものにしていましたが、今ではしわが目立ち始めています。

 

 円相場が今年は上昇する中、資生堂の運命は逆転しました。同社は円高の進行による売上高の目減りを見込み、201612月期の営業利益見通しを下方修正しました。市場にとっては予想外の動きで、株価は10日、7.5%安で引けました。

 

 資生堂は売上高の約半分を国外で稼いでいるため、円高が売上高を圧迫します。しかし問題は為替相場だけではありません。「ローラ メルシエ」「レヴィーブ」といった米国ブランドの買収や、2010年に買収した米化粧品メーカー「ベアエッセンシャル」の事業再編にかかる費用も重しとなっています。日本企業の海外進出には強力な実行力が伴うことをあらためて浮き彫りにしているが、米国での売上高は、為替変動の影響を受けないドル建てでも2%しか増えていません。

 

 それほど目立たないのですが、日本でも打撃を受けています。過去2年間では円安を背景に、中国人観光客が3倍余りに増加しました。日本への旅行が割高になれば、この流れは変わる可能性があります。円は人民元に対して今年20%余り上昇し、直近の数カ月で既に中国からの訪問ペースは減速しました。

 

 さらに重要なことに、「爆買い」の勢いにも陰りが見られます。観光庁の調査によると、4-6月期の中国人観光客1人当たりの支出は前年同期比22%減少しました。回答者の4分の3が購入したという化粧品・香水は比較的好調ですが、ピークに差しかかった様子もあります。

 

 資生堂にとって悪い材料ばかりではありません。不安定な為替変動の裏では中国経済全体が力強い成長基調にあり、1-6月期の資生堂の中国売上高は現地通貨ベースで16%近く増加しました。最も利益率の高い分野とされる空港免税店での営業利益は3倍近くに達しています。

 

 しかし10日の株価急落後も、資生堂の予想PER(株価収益率)は30倍を超えています。フランスの競合ロレアルは27倍、米エスティーローダーは29倍です。急成長する韓国のアモーレパシフィックの方が魅力的とも言えます。アモーレパシフィックの「雪花秀(ソルファス)」や「ラネージュ」といったブランドは中国人買い物客の人気が高い上、為替変動に左右される度合いが低いのです。

 

 資生堂には加齢に伴うしわが表れています。(ソースWSJ

2016年8月12日 (金)

ファンが戸惑う女子体操の新技名!

五輪で金も銀も銅も得られなかった体操選手が得られるかもしれない報奨があります。体操の歴史で初めての新技を成功させた選手は、その技に自分の名前をつけてもらえるのです。

 

 例えば昨年、足を交差させて開脚座の姿勢で平均台に飛び乗る技が国際体操連盟に認定されました。しかし、この技は、本人がインスタグラムの動画でそう呼んでいたせいもあって、体操界では既に考案者の姓で知られていました。

 

 トリニダード・トバゴ代表(カナダ生まれ)のマリーサ・ディックは昨年の世界選手権で「ザ・ディック」(訳注:ディック=dick=は男性器の俗語)を披露しました。この大会では平均台の成績こそ74位だったが、自身の名前が体操の公式規則集に残るという栄誉にあずかることになったのです。

 

 ディックは先週、新技の名前が「体操の世界で永遠に生きる」と話しています。ただ今回リオ五輪にも出場しましたが、7日の予選は突破できませんでした。

 

 

マリーサ・ディックの新技「ザ・ディック」

 この技で唯一の問題は、挑戦する体操選手がほとんどいないことです。ファンが恥ずかしがる技は珍しい。礼儀正しい人たちとの会話では、舌がもつれそうな「ザ・ザモロドチコワ」のほうがまだ口に出しやすい。ディックの体操人生で最も誇らしいはずの瞬間が、人々を困惑させているのです。

 

 新技に関するあらゆるジョークを聞いたというディックは、自身の名前のおかげで「皆にとってすごくわかりやすくなった」と話しています。「何しろビーム(訳注:平均台、お尻の意味もあり)の上の技だし、開脚して乗っかるわけだから」と話しています。(ソースWSJ

2016年8月11日 (木)

怪物フェルプスがリオで見せた鬼の形相!

マイケル・フェルプスがリオ五輪の会場で見せた表情がネットで話題になっています。

 

 8日夜、男子競泳200メートルバタフライの準決勝のレース直前。会場の様子を中継する米NBCのカメラが競泳選手らの控室を映し出すと、そこには「スター・ウォーズ」のオビ=ワン・ケノービのようにフードをかぶったフェルプスの姿がありました。レース前の選手らが準備をしたり、時には極度の緊張状態に陥ったりしているこの部屋で、彼は座ったまま堅く口を結び、顎に力を入れ、何かを威嚇するような視線を放っていました。

 

 そのフェルプスの前に映っていたのが彼の宿敵チャド・レクローです。南アフリカ代表のレクローは笑顔で腕を回したり、「シャドーボクシング」をしたり、足をほぐしながら動き続けています。多少緊張気味であるものの、まるでスターバックスの店内でトイレが空くのを待っているかのようなカジュアルな様子です。一方のフェルプスには和やかな雰囲気は全くなく微動だにせず前方をにらみ続け、まるでレクローの存在を消し去ろうとしているか、あるいは念力で鉄板でも曲げようとしているかのようなオーラです。

 

 米プロバスケットボール協会(NBA)の名将グレッグ・ポポビッチに歌手テイラー・スウィフトとタレントのキム・カーダシアンの確執について質問したら、こんな表情を浮かべるだろうか。画面に映ったフェルプスのオーラに比べれば、米プロフットボールリーグ(NFL)のペイトリオッツの監督ビル・ベリチックですらかわいく見えます。

 

 リオ五輪では上半身裸で開幕式の旗手を務めたトンガのピタ・タウファトファ選手がツイッターなどで話題になりました。またバスケットボール選手ディケンベ・ムトンボからインスパイアされたような競泳選手リリー・キングの指のジェスチャーも、広くネットで共有されています。スポーツ中継ではお目に掛かることのなかった、このフェルプスの五輪史上まれに見る勝負師の表情もネット上で瞬く間に拡散しました。

 

 父親となったフェルプスはデビュー当時と比べて性格も円くなった印象があり、メディアの前に立っても自然体でいられるようになりました。しかしその一方で、彼は史上最も成功した五輪アスリートであり、5度目の出場となる今回もトップ選手として参加しています。あの控室で見せた形相こそが、マイケル・フェルプスがマイケル・フェルプスたるゆえんなのかもしれません。(ソースWSJ

2016年8月10日 (水)

パスワード盗難続出、対応急ぐIT各社!

ハッカーたちはここ数カ月の間に、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)、グーグルのサンダー・ピチャイCEO、それにツイッターのジャック・ドーシーCEOのソーシャルメディアアカウントを相次いで乗っ取りました。

 

 こうした問題を受け、あらゆるハイテク主要企業や多くの中小企業のセキュリティーチームがユーザーに被害を出さないようにするための対策を急いでいます。

 

 盗難に遭ったハイテク企業幹部の一部は、リンクトイン、マイスペースなどのサイトが以前ハッキングされた際に盗まれたパスワードを再利用していたようです。古いパスワードを使って新しいパスワードを予測するソフトウエアの犠牲になった幹部もいるとみられます。

 

 匿名の人物が運営する「リークトソース」と呼ばれるデータベースでは、わずか2ドル(約200円)出せば、古いパスワード20億個近くを閲覧できます。捜査当局は、リンクトインのユーザー名とパスワードのうち最大8%が他のサービスで使えると推定しており、ハッカーがこれを使って他サービスのアカウントを乗っ取れる状態になっているとみています。リンクトインは、2012年にデータが盗まれたことを受け、ユーザーのパスワードをリセットし、セキュリティーホールを修復しました。同社はマイクロソフトが262億ドル(約26700億円)で買収する手続きを進めており、今年末までに完了する見通しです。

 

人気サイトのジレンマ

 

 ハッキング問題で人気ウェブサービスはジレンマに直面しています。全ユーザーにパスワード変更を強制すると、一部のユーザーを失うリスクがあります。パスワード変更を強制しないと、ユーザーのアカウントがハッキングされかねないのです。

 

 「ユーザーのためにパスワードを変更する場合、どんなにうまく説明したとしてもユーザーの認識が全くついてこないこともある」。こう話すのはホールド・セキュリティー社の創業者で、最高情報セキュリティー責任者を務めるアレックス・ホールデン氏です。同社はハッキングサイトに掲載されている盗まれたパスワードを企業が特定するのを支援しています。「たとえパニックになったユーザーが全体の0.1%だとしても、彼らが同じ日に顧客サービスに電話をすれば、悪夢のような事態となる」と。

 

 オンライン・バックアップサービスを提供するカーボナイト社は、150万人のユーザー全員のパスワードをリセットすることを選択しました。同社はハッキングされたデータを分析し、パスワードがデータベースに表示されていた顧客については、身元確認をしないとアカウントにアクセスできないようにしたのです。

 

 ツイッター、フェイスブック、ヤフーなどの企業は、違う道を選択しました。全てのパスワードをリセットするのではなく、盗まれたパスワードを分析して、影響を受けたユーザーにパスワードのリセットを促す、または強制するという対応を取りました。

 

ヤフーが導入した分析・警告システム

 

 ヤフーなどの企業は過去数年の間に、データ分析と顧客への警告のためのシステムを導入しました。これにより、膨大な量のデータを整然と処理できるようになったほか、パスワードを再利用する顧客をこうしたデータ流出から保護できるようになりました。

 

 ヤフーのセキュリティーチームは先週、同社を利用する2億人のユーザー名とパスワードがハッカー向けフォーラムで売られているという報道を受けて動きました。ヤフーの広報担当者は、同社がこの報道を認識しているとし、「事実関係を確認するための調査を行っている」と述べました。

 

 個人情報保護サービスのインフォアーマー社は先週、問題になっているデータベースを検証し、これがヤフーのパスワードの最新のデータベースではないとの見方を示しました。同社のアンドリュー・コマロフ最高情報責任者は「第三者の膨大なデータダンプの寄せ集めにすぎない」と話しています。

 

 データの詳細な分析には時間がかかります。ヤフーには10億人のユーザーがいます。同社セキュリティーチームは518日にリンクトインのデータベースの調査を始め、一部のアカウント名とパスワードは暗号化されていました。スタッフはアカウント名とパスワードを非暗号化し、ヤフーのユーザーと合致するかを調べなければならなかったのです。8日後の526日、同社は影響を受けたユーザー(数は非公表)に電子メールの通知を送り、パスワードをリセットするよう告げました。(ソースWSJ

2016年8月 9日 (火)

モバイルゲーム、アプリ内課金の巧みな手法!

モバイルゲーム業界で最近起きた2件の巨額買収の背後には、巧みな収益化の技術が隠されています。アプリを購入したプレーヤーに販売される99セント(約102円)程度の安いバーチャル(仮想)グッズです。

 

 この「アプリ内課金」によってプレーヤーはリアルマネー(現実の通貨)を支払い、広告を通さずにゲームキャラクターのスキルを獲得したり、成長を早めたりするといった特典を得ることができます。この「アプリ内」「ゲーム内」という言葉は、ゲーム購入時に支払いをするのではなく、ゲームを進める中で課金が発生するという意味です。

 

 かつてアプリ内課金はあか抜けない収益化の手法と見られていましたが、今では無料のモバイルゲームに引き寄せられた人々から年に数百億ドルを引き出すほどに洗練されてきました。ゲーム市場調査会社ニューズによると、内訳の大半をアプリ内課金が占めるモバイルゲーム関連の売上高は2016年に21%増加して3687000万ドル(約37700億円)になり、19年には525億ドルに達する見込みだといいます。

 

 ここに目を付けたのが、株式会社ポケモンや任天堂のような会社です。両社が拡張現実(AR)技術を開発する米ナイアンティックと共同開発した新作「ポケモンGO」は米国などで76日に配信がスタートしましたが、それは1日でランキングのトップに踊り出ました。米調査会社スーパーデータ・リサーチの試算によると、ポケモンGOは現在までにアプリ内課金で総額12030万ドルを稼ぎ出したといいます。

 

 フィンランドのスーパーセルもこの課金技術を習得した一握りのゲーム開発会社の一つで、同社は歴史ストラテジーゲーム「クラッシュ・オブ・クラン」など3作品から、2015年に20億ドルの売り上げを計上しました。中国のインターネットサービス大手、騰訊控股(テンセントホールディングス)は、その収入が増え続けることを期待し、スーパーセルの株式84%を86億ドルでソフトバンクなどから取得すると発表しました。これはモバイルゲーム業界で過去最大の買収となります。

 

 多くのアプリ内課金に隠された秘密はカウントダウン機能です。これはゲーム再開や動きをスピードアップさせるアイテムにお金を払わない限り、農作業や燃料補給といった任務が完了していなくても強制的にゲームを中断させるという、いわば「イライラ税」のことを指します。

 

 クラッシュ・オブ・クランでは、プレーヤーは部隊を訓練するのに必要な「エリクサー」と「ゴールド」を少しずつ獲得していきますが、リアルマネーを投じればそれらを素早くため込むことが可能となります。プレーヤーはお金を使わずに待つこともできるが、レベルが上がるにつれてゲームを進めるための時間は長くなることが多くなります。

 

 スウェーデンのゲーム開発会社、キング・デジタル・エンターテインメントの人気パズルゲーム「キャンディークラッシュ」では、ゲームが終了すれば、しばらく待たないと同じレベルから再開することができなくなります。ただ、お金を払えばすぐに再開することができるのです。米アクティビジョン・ブリザードは今年、キング・デジタルの買収に59億ドルを支払いました。アクティビジョンは1-3月期(第1四半期)の調整後売上高にキング・デジタルが約23%貢献するとしています。

 

 プレーヤーに少額のお金を何度も使わせる代わりに、ゲームメーカーはゲーム内で利用できる「ジェム(宝石)」などの仮想通貨を販売しているのです。これは、実際のお金を使うよりも仮想通貨を使う方が効率的にゲームを進められるというアイデアです。

 

 ポイントはゲームへの熱意を冷めさせないようにしながらお金を使わせることです。プレーヤーは長い間、無料ゲームのことを「プレーは無料、勝つのは有料」とあざけっていた。しかし、開発者はだんだん抜け目なくなってきています。プレーヤーがお金を出し始めるまで、無料でできることを増やしてゲームに引きつけるようになってきました。

 

 ポケモンGOでは、プレーヤーは数週間にわたり、無料でポケモンを捕獲することができます。ただ、プレー時間が長くなると、プレーヤーは例えばより多くのアイテムを集めたりポケモンを進化させたりするのにお金を使いたくなってくるのです。(ソースWSJ

2016年8月 8日 (月)

韓国ミサイル防衛、中国はKポップに報復!

中国の強い不満にもかかわらず、韓国が地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の配備を決めた結果、韓国にとって最大級の「主力輸出品」が危険にさらされることになりました。Kポップの若手スターたちです。

 

 ここ数日、中国政府は国内で人気が高まりつつある韓国人の若手俳優や歌手がプロモーションイベントで訪中するのを密かに阻止しています。

 

 その結果、韓国のタレント事務所の株価は急落。中国の哀れなファンたちの目からは涙があふれ出ているそうです。

 

 韓国と米国はサードについて、北朝鮮による軍事的脅威の拡大に備えるものだと説明。一方、中国とロシアは国家の安全を危険にさらすとしてサード配備に反対しています。

 

 韓国がサード配備を決定したと発表してから数時間のうちに、中国は韓国に対して何らかの影響があると警告していました。韓国は貿易面で大きく中国に依存しています。

 

 事情に詳しい関係者によると、中国のメディア規制当局はサード配備の報復として、韓国人スターを標的にしています。今のところ、当局からの命令は政府関連機関とその下部組織にのみ出されているといいます。

 

 Kポップとして知られる韓国のポップカルチャーは同国の「主力輸出品」であり、アジア全域で幅広くファンを獲得しています。とりわけ中国での人気は高いのです。

 

 韓国の大手芸能プロダクション、YGエンターテインメント所属の「BIGBANG(ビッグバン)」や、SMエンターテインメントの「EXO(エクソ)」といった男性グループのコンサートのチケットは中国では瞬く間に完売します。また、韓国テレビ番組のフォーマットを真似たテレビのバラエティー番組は中国で高視聴率をあげています。

 

 韓国の昼ドラで今最も人気のある2人の俳優、キム・ウビンさんとペ・スジさんは6日に北京でファンとの交流イベントを開催する予定だったのですが、無期延期になってしまいました。翌7日には人気俳優のイ・ジュンギさんが新作恋愛映画の中国プレミアに姿を見せることになっていますが、欠席となる可能性が高いといいます。

 

 エンタメ業界関係者によると、その原因はいずれも中国側にあります。中国の規制当局がイベントの主催者に中止の圧力をかけていたり、ビザ(査証)発給の承認を遅らせていたりするためです。中国の外務省と国家新聞出版広電総局からはコメントが得られなかったようです。

 

 韓国人スターの中国での活動が制限されるとの懸念を受け、韓国芸能プロダクションの株価は急落しています。仏高級ブランド「ルイ・ヴィトン」の親会社が出資するYGエンターテインメントの株価は今週、約11%下落。SMエンターテインメントとJYPエンターテインメントはいずれも6%余り下げました。韓国最大級のコングロマリット、CJグループの芸能部門であるCJ EMの株価も7.2%安となり、韓国総合株価指数(KOSPI)は1%近くの下落となったのです。

 

 韓国の大手芸能事務所はアイドルグループに中国語や日本語を話せるメンバーを加え、ファン層の拡大を図っています。ただ、こうした多様性により、Kポップは地域のもめ事の影響を受けやすくなってもいます。今年は台湾の総統選挙の数日前に、韓国の女性アイドルグループに所属する台湾生まれのメンバーが韓国のバラエティー番組で小さな台湾の旗を振り、一大騒動が起こりました。台湾の立場を巡り、中国本土と台湾の両側で激しい議論が勃発したのです。

 

 最近では韓国観光公社(KTO)のウェブサイトから、スポークマンを務めていた韓国スターが姿を消しました。この女性スターは韓国が日本の統治下にあった時代に伊藤博文を暗殺した安重根の名前を言うことができず、騒動が巻き起こったためです。韓国では、安重根は国家的なヒーローとして称賛されているのです。(ソースWSJ

2016年8月 7日 (日)

リオ五輪を楽しむ「究極のハイテク観戦ガイド」!

五輪の標語は「より速く、より高く、より強く」です。これに加え、今年の大会は「より鮮明に、より大きく、より近く」なるでしょう。

 

 自宅で競技を観戦する人は、競泳女子のメリッサ・フランクリン選手が水しぶきを上げながら泳ぐ姿を超高精細「4K」テレビで驚くほど鮮明に見ることができます。これは今大会で初めて実現することです。スマートフォンだけでも全競技の全試合、つまり4500時間におよぶリオ五輪のドラマをライブで楽しむことができます。さらに、仮想現実(VR)で飛び込み台にテレポートし、目と鼻の先で高飛び込み代表のデービッド・ボウディア選手がジャンプするのを見ることまでできるのです。

 

 リオ五輪は5日に開幕しましたが、私たちにできることは自宅で特等席を確保するだけではありません。テクノロジーの躍進のおかげで、リオデジャネイロにも存在しない座席まで確保できるようになったのです。

 

 ホームエンターテインメント機材は急速に変化していますが、五輪大会はこれをリアルタイムでテストする多くの機会を提供します。過去数年間、私たちは「ウルトラHD 4K」や「HDR(ハイダイナミックレンジ)」対応テレビ、「スープドアップケーブル」「ストリーミング(逐次再生)ボックス」「VRヘッドセット」など、格好良く聞こえますが、すぐには役に立ってこなかった機材を買わされてきました。五輪に夢中になれる間は、これらすべての機材を有効活用することができるでしょう。

 

 ケーブルテレビの契約者、ケーブルテレビをやめた人、仕事中にこっそり観戦したい人、写真動画共有アプリのスナップチャットで感動のハイライトを見たい人――今大会はさまざまな人のための五輪が用意されています。さらに、NBCは五輪をテーマにした絵文字キーボードまで作ってしまいました。

 

 少し圧倒されそうな気もしますが、ここでは五輪を最大限に堪能するのに必要な機材一式、アプリ、会員契約に関する「虎の巻」を紹介します。

 

•仕事中(あるいは休暇中)に観戦する

 

 五輪ファンなら即座にダウンロードすべきアプリの一つが「NBCスポーツ」です。このアプリは五輪のスポーツイベントとプライムタイム中継を、スマホやタブレット端末を通じて余すことなくライブストリーミング配信します。

 

•ケーブルテレビを介さない観戦方法

 

 ケーブルテレビの契約から解放されたのであれば五輪観戦は簡単でなくなりますが、それでも可能です。残念ながら、「ネットフリックス」や「HBOナウ」と異なり、NBCは「NBCスポーツ」アプリでストリーミング配信のみ利用できるサービスを販売していません。アプリにログインするにはケーブル契約が必要になりますが、あなたが契約していなくても他の契約者から「借りる」ことができます。

 

 このほか、8月だけストリーミング配信のみのテレビサービスを購入する方法もあります。居住地によって異なりますが、30ドルから40ドルを負担すれば、セットトップボックス「ロク(Roku)」、アマゾン・ドット・コムの「ファイアーTVFire TV)」、そしてもちろんプレイステーションでも、クラウドベースのテレビサービス「プレイステーション・ヴュー(PlayStation Vue)」を使うことができます。これにはNBCのケーブルチャンネルが入っており、ストリーミング配信アプリ「NBCスポーツ」にもアクセスできます。

 

 リオ五輪は旧式の高精細(HD)画質の4倍の解像度を誇る「ウルトラHD 4K」で視聴すべき、最初の特大イベントになるでしょう。金メダルと銅メダルがほんのわずかな差で決まってしまうことが多い水泳といった競技では、重要な細部を見逃さないために超高解像度が生きてきます。4Kでは陸上のウサイン・ボルト選手の汗まで見ることができ、スタジアムで有名選手の顔を見分けることもできるでしょう。

 

 4Kを視聴するには4Kテレビが必要です。米国では昨年、600万台の4Kテレビが販売されました。この数字は今年、倍増すると見込まれています。ただ、4Kテレビだけでは五輪競技を4K画質で視聴することができないかもしれません。米国で4K映像が視聴できるケーブル会社はコムキャスト、ディッシュ・ネットワーク、ディレクTV3社だけです。

 

 とてもクールな技術をもう一つ紹介しましょう。意匠を凝らした新型テレビの中には、明るさ情報の幅を拡大させる高画質化技術「HDR」に対応したものがあります。これは生きているような輝度(明るさ)の高低を使って色を表現する、欲しがるに値する技術です。4KHDRに対応するテレビを使えば、五輪大会を映す画面が現実とほぼ同じくらい明るく見えることが保証されます。

 

 それほど長くVRを試したことがない人にとって、リオ五輪は絶好の機会になるでしょう。想像してみよう。3メートルの高さの飛び込み台から、10メートル高飛び込みの選手が一瞬で通り過ぎるのを見ることができるのです。また、ボクシングの試合をリングのコーナーから観戦できるかもしれません。審判でさえ、そこまで近づくことはできないでしょう。

 

 こうしたテレポーテーションに参加するには、韓国サムスン電子のスマホ「ギャラクシー」シリーズの最近のモデルとVR端末「ギアVR」が必要になります。ギャラクシーで「NBCスポーツ」アプリを開けば、スクリーンをVR向けに切り替えることができます。この映像を使えばイベントを360度見回すことができるので、回転椅子が欲しくなるかもしれません。ただ、全てのVR映像は1日遅れで利用できる運びです。

 

 競技における最高の視点はアスリートの目線かもしれません。五輪の規定により、アスリートは競技場から動画を配信することができません。ただ、有名選手の多くはフェイスブックやツイッターなどを利用しているため、世界クラスのアスリートとはどういうものかを垣間見る機会はあります。

 

 体操女子のシモーネ・バイルズ選手は、スナップチャットでフォロワーを選手村内部にいざなってくれます。男子競泳のライアン・ロクテ選手は最近、画像共有アプリのインスタグラムに「信頼するコーチ」とのミーティング風景を投稿しました。

 

 このほか、NBCは五輪シリーズ枠を開設するため、コムキャストが出資する新興ネットニュースメディアのバズフィードとタッグを組んだりしています。(ソースWSJ

2016年8月 6日 (土)

金融庁長官、「日本の二の舞」になるなと世界に警告!

欧米が金融危機に陥るはるか前に日本はそれを経験した。その20余年後、金融庁の森信親長官はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、過剰な危機対応は景気回復の腰を折りかねないと世界の金融当局者に警告した。

 

森金融庁長官との一問一答

 日本のバブル崩壊以降の経験から得られた教訓については、「バランスシートのクリーンアップに重点を置いた監督には副作用もあったかもしれない」とし、「現在から振り返ってみると、経済の成長を確保するという側面にももう少し注意を払った別のやり方を工夫できなかっただろうかという気もする」と述べた。

 

 財務省(旧大蔵省)でキャリアの大半を過ごした森氏は2006年に金融庁に異動。1年前に同庁の長官に就任した。

 

 就任以来、危機後の政策立案者にはほとんどみられない市場寄りの姿勢で業界幹部を引きつけ、ベテラン検査官を戸惑わせてきた。米国の金融関係者やプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の幹部に対し、日本の資産運用の強化に協力を請う一方、当局者に検査基準を緩和するよう指示した。

 

 森氏は「one-size-fits-all (画一的なアプローチ)」型の単一の規制がはらむ危険性について、米国の爆撃で撃沈した戦艦「大和」にたとえて説明した。大和は海からの攻撃に耐える分厚い装甲を備えていたが、空からの攻撃には脆弱(ぜいじゃく)だった。「常に過去の危機に対応して、その防止に努めている。従って、次の危機は予期しない所からやってくるようになる」としている。

 

 日本の銀行は不動産バブルの崩壊後、1990年代に自らの危機に直面した。長期の財務体質の強化でバランスシートも改善、2008年に世界金融危機が発生するまでにレバレッジが低下させていたことから、傷は比較的浅くて済んだ。それでも、日本の金融業界が旺盛なリスクテイク姿勢を取り戻すことはなく、融資や利益の伸びは停滞している。

 

 就任以来、過剰な規制について欧米の金融当局に警鐘を鳴らしてきた森氏は「規制に頼れば頼るほど、ゆがみや非効率性も大きくなる」と述べた。

 

 こうした考えがどこから来ているのかについて聞くと、森氏は規制緩和の全盛期だった200306年にニューヨークで過ごした経験を挙げた。市場関係者、エコノミスト、規制当局者と頻繁に議論したことが、市場の力を評価することにつながったという。

 

 日本の当局者は現在の優先事項について、大手銀行を締め付けることではなくリスクテイクを促すことだと話している。京都文教大学の野崎浩成教授は、森氏が2013年の検査局長時代に、検査局のトップとして銀行に小口の資産査定をある程度自由に判断させるという大転換を図ったと述べた。「当時の検査官にとってはカルチャーショックで、反発もあったようだ」と野崎教授は語った。

 

 目立たず従来の方針を踏襲する傾向にあった前任者らと違い、森氏は劇的な変化を望んでいると話す。金融庁が9月までに公表する年次ガイドラインの中で、この方針を強調する予定だという。

 

 森氏は、不振にあえぐ地銀に大変革を促し、銀行員が顧客の生産性改善コンサルタントの役割を果たす新たなビジネスモデルの開拓を促す計画だ。日銀は成長促進に向けてマイナス金利を導入したが、より急がれるのは弱い銀行が事業を強化することだという。金利が低いと銀行が融資で利益を得ることが難しくなることから、「シンプルなビジネスモデルは大きな変化に直面している」という。

 

 新たなガイドラインの主な注目点として、個人金融資産の分散の流れを進めるよう資産運用会社に呼びかけている。米英の個人金融資産はかなりの部分が投資信託や株式なのに対し、日本の個人金融資産約1700兆円の半分以上は現金や銀行預金だと森氏は言う。ブラックストーン・グループやKKRなど欧米の大手PE投資会社の幹部は頻繁に日本を訪れており、森氏のオフィスにも頻繁に足を運んでいる。

 

 森氏は「洗練されたバイサイド・プレイヤーの存在は、我が国における資産運用業界の発展にもつながる」との考えを示した。(ソースWSJ

2016年8月 4日 (木)

南シナ海の仲裁判決が描く中国のサンゴ礁破壊!

海軍の護衛を受けた中国の漁船団が、フィリピン周辺海域の広大で透き通ったサンゴ礁を荒らし回っています。サンゴ礁に埋もれた巨大な二枚貝オオシャコガイを違法に収穫するため、漁船はプロペラを刃物の代わりに使っていました。

 

 カメ、サメ、ウナギ、カキ――中国による大規模な乱獲の犠牲となり、脅威にさらされている種は他にもいます。当局は見て見ぬ振りです。

 

 オランダ・ハーグの仲裁裁判所が全会一致で下した判決によると、こうした全ての行動はさらなる破滅の序章にすぎません。南シナ海ではぜい弱な生態系と重要なつながりがある環礁システムがすでに傷つけられていますが、中国はさらにスプラトリー(南沙)諸島に位置する7つの大きな島で浚渫(しゅんせつ)作業を行っています。

 

判決文が記すサンゴ礁破壊の惨状

 

 500ページ近くにおよぶ判決文の中の大々的に報じられた部分では、南シナ海のほぼ全域を覆う「九段線」の内側に関して、中国が歴史的に領有権を持つという主張が無効だと断定されています。ただ、中国によるサンゴ礁の破壊を記述した箇所は、これよりもはるかに悲惨です。

 

 判決文は、国際法に従わず、地域の声に耳を傾けず、航海の伝統を無視した破壊のパワーを描写します。仲裁裁判所の仲裁人(判事に相当)らが示した、一連の科学的証拠に裏付けられた記述には、飢餓のふちにある地域で最もぜい弱な漁業共同体の生命を中国の高圧的な政策がいかに脅かしているかが克明に描き出されています。

 

 オバマ政権は航海と航空に対する中国の脅威に警鐘を鳴らし続けてきましたが、少なくとも現時点において、この危機は机上の議論にすぎません。

 

 中国はまだ、商船や民間機に手を出していません。そうすれば、最も大きな損失を被るのは世界最大の貿易国である中国自身になるからです。

 

あまりにもリアルな生態系の破壊

 

 一方、生態系の破壊は現実の姿です。東南アジアの沿岸部に住む27000万人ほどの人々のうち、数百万人は海に直接関わる仕事(多くは漁業)で生計を立てています。

 

 こうした人々の生活を不安定にしてきたのは中国だけではありません。南シナ海の海洋資源は乱獲に加え、ダイナマイト漁やシアン化合物を海に流す毒物漁法といった漁業慣行、沿岸部の汚染などで枯渇が深刻化しています。同様に、海洋生物のライフサイクルの起点となるサンゴ礁の破壊は数年にわたり続いてきました。

 

 ここに世界最大の漁船団を抱える中国が入ってきたのです。同国は海軍力を急速に増強し、領有権の主張を声高に叫び始めました。また、フィリピンなどの沿岸国の漁村を貧困に陥れる危機を悪化させてきたのです。

 

南シナ海で縮小するサンゴ礁

 

 2013年に公表された科学論文によると、南シナ海の紛争領域にある環礁と群島に占めるサンゴに覆われたエリアの割合は過去1015年間で約60%から20%に縮小したといいます。

 

 中国沿岸部の状況はさらに悲惨です。論文は、過去30年間で裾礁(きょしょう=岸に密着して形成されたサンゴ礁)に生息するサンゴが80%以上減少したと指摘しています。

 

 仲裁裁判の判決文は米マイアミ大学の海洋生物学者、ジョン・マクマナス氏の研究に言及しています。マクマナス氏は巨大な二枚貝のオオシャコガイを収穫するプロペラについて、「サンゴ礁の荒廃を40年調査してきたが、これまで目にしたあらゆるものを上回っている」と述べています。

 

 また、判決文はドイツのブレーメンにあるライプニッツ熱帯海洋生態学センターでサンゴ礁生態学を研究するセバスチャン・CA・フェルゼ氏の言葉にも触れています。同氏は長い時間をかけて形成されたサンゴ礁の複雑な生態系が人工島によって破壊され、向こう数十年(あるいは数世紀かもしれない)は回復できないだろうと述べています。また、フェルゼ氏は中国によるサンゴ破壊が、約360万平方キロメートル及ぶ南シナ海全体に影響を与える「カスケード効果」を引き起こす可能性も指摘しています。

 

中国は環境破壊を否定

 

 中国はこの海域で環境破壊を主導しているとの証拠を真っ向から否定しました。同国はこの海域を自らの湖のように扱うことが多くなっています。

 

 中国は国連海洋法条約の批准国だが、南シナ海を巡る紛争解決は近隣諸国との個別交渉によるべきだと主張しています。仲裁裁判所によると、中国は海洋生物の保護に関する国連海洋法条約の規定を露骨に無視してきました。

 

 多国間交渉による解決が選択肢から外れる中、今後、サンゴ礁はどうなるのか。中国は抗議の意味を込めて人工島建設を加速させるのか、それとも仲裁裁判所の判決に静かに従うのか。世界で最も重要な海域の一つが向かう方向を正確に把握するためには、中国海軍の大言壮語に耳を傾けるのではなく、漁船や浚渫船がやっていることに注意を払うべきです。(ソースWSJ

2016年8月 3日 (水)

米ヤフーの教訓―優れた本質的なサービスにこだわれ!

 米ヤフーがインターネット業界で大きな存在感を示していたのも今は昔、その中核事業がたったの48億ドルで売却されることになりました。

 

 ヤフーの事業が完全に理にかなっていた時代もありました。1994年のヤフー創業当初、AOL、プロディジー、コンピュサーブなどがすでに提供していた「ポータルサイト」をウェブ上に再現するというのはごく自然なアイデアだったのです。

 

 激動のインターネット黎明(れいめい)期、ユーザーが求めているかもしれないすべてのサービスを1つウェブサイトで提供する「ポータルサイト」は食物連鎖の頂点に君臨していました。その1つであったヤフーは米マイクロソフトのような最大手をも脅かす存在だったのです。2008年にはマイクロソフトが446億ドルでヤフーを買収しようとしたぐらいでした。

 

 面白いのは、ポータルサイトというコンセプトが死に絶えてしまったわけではないというところです。そしてこれこそがヤフーから学ぶべき教訓です。すべてのインターネット大手は結局、最も支配的な立場にあるときに同じような傲慢(ごうまん)さゆえに衰退してしまいます。そうした企業はインターネット上のすべての活動の出発点になれるという考え方の餌食になってしまうのです。

 

 例えば、1998年に「世界の情報を整理する」という使命を掲げ、それ以来その使命を更新してこなかった米インターネット検索大手グーグルです。デスクトップ上でヤフーから王座を奪った後、電子メールや携帯端末向け基本ソフト(OS)から生産性ソフトウエアや数十もの小規模プロジェクトまで、その製品ラインは大増殖しました。

 

 ひところまで、グーグルはすべての人が望むことをすべてかなえてくれる存在になれそうでした。いわばヤフーとマイクロソフトとアップルを合わせたような存在です。ところが、2010年になると、ユーザー当たりの利用時間で米交流サイト(SNS)大手フェイスブックがグーグルを上回りました。その約1年後、グーグルのラリー・ペイジ最高経営責任者(CEO)は社内メモで「より少ない中核事業により多くの資源を注ぐ」という方針を示し、小規模プロジェクトの多くを廃止してうまくいっている事業に焦点を絞ると宣言しました。

 

 その2011年のメモは、グーグルがヤフーの重要な教訓を吸収した転換点を示すものです。それは、ある企業が最も本質的なことを他社よりもうまくやり続けている限り、より機敏な競合相手からの大打撃は避けられないものではない、ということをペイジCEOが公けに言明したといっていいでしょう。

 

 ペイジCEOによる事業再編は第1歩としては良かったのですが、グーグルはまだヤフーの教訓を完全には吸収していなかったのです。そのメモから6カ月と少し後、グーグルは「Google+」というサービスを開始しました。これはフェイスブックと直接的に競争しようとする試みだったのですが、最終的には失敗しています。

 

 今日、売上高ではなく、ユーザー当たりの利用時間で食物連鎖の頂点に君臨しているのはフェイスブックです。ユーザーエンゲージメント、ユーザー数、利用時間などを増やすための絶え間のない効果的な取り組みもあり、フェイスブックはインターネットの新たなホームページのようなものになってきました。ユーザーたちはすでにフェイスブックのサービスに毎日50分を費やしていますが、同社はそれをさらに増やしたいと考えています。同社によるメッセージアプリのワッツアップ――新たなホームページとしてのメッセージサービス――や仮想現実をインターネット上の新たな交流手段と捉えているオキュラスVRの買収でさえ、現代版のポータルサイトになるという同社の野望の一端に過ぎません。

 

 グーグルやフェイスブックが次のヤフーになると言っているわけではありません。創業年数でヤフーよりも4年若いだけのグーグルの時価総額は5000億ドル以上で、昨年の売上高は736億ドルでした。2004年に創業したフェイスブックも売上高と収益の急成長を続けてきました。両社の広告収入の合計はインターネット上の広告収入のかなりの部分を占めています。

 

 そんな両社でも、ユーザーの注意を永遠に引き続けるのは不可能でしょう。フェイスブックが買収したインスタグラムから買収できなかったスナップチャットまで、フェイスブックもグーグルと同様、ユーザーの注意を引こうとする手強い競合相手に次々と直面してきました。今後もそれは続くでしょう。

 

 フェイスブックとグーグルの両社は、過去のすべての脅威に対して、それと競争できるサービスを開始したり、買収するという反応を示してきました。この戦略は奏功する場合もありますが、それには機会費用がかさみます。失敗に終わったグーグルのSNS事業、メディア事業はその費用の大きさを物語っています。

 

 フェイスブックにしても、検索機能「グラフ検索」によってグーグルのお株を奪おうとしたのは、そう昔のことではないのです。(ソースWSJ

2016年8月 2日 (火)

リオ五輪:夢舞台と暗い現実の狭間で!

 85日開幕のリオ五輪に出場する女子ボート競技米国代表のミーガン・カルモーが、自身のブログでメディアの報道姿勢を痛烈に批判しました。カルモーは、大会開幕を前にネガティブな情報(具体的には排泄物などが浮いているとされるボート競技会場の不衛生さ)ばかりが伝えられていると苛立ちを隠さず、「米国のためなら何が浮かんでいる会場であっても私はボートを漕ぐ」と宣言しました。その発言は様々な場でピックアップされています。

 

 リオ五輪開幕まで1週間を切った今、カルモーの苛立ちは充分に理解できます。大会に参加するアスリートのほとんどは無名の選手で、競泳のマイケル・フェルプスやケイティ・レデッキー、男子バスケットボールのケビン・デュラントといったスーパースターはほんの一握りに過ぎません。そんな中でカルモーのような選手が大会に向けて必死に準備を続ける中で、報道はリオの経済情勢や環境問題、さらにはテロに対する懸念といったことにフォーカスを当て続けています。2014年のソチ冬季五輪を含む最近の大会におけるメディアの傾向でもあるが、アスリートからすれば五輪は一世一代の晴れ舞台。例えて言うならば、結婚式の当日に空が雨雲で覆われているような気分でしょう。

 

 しかし、これが21世紀の五輪の姿であることも事実です。リオ五輪でも、過去の大会と同じように感動的なシーンや共感を呼ぶアスリートのストーリーがいくつも生まれるでしょう。その一方で、現実は夢舞台にもついて回ります。それにまつわる報道は読んでいて楽しいものではないかもしれません。しかし、それは重要な情報でもあるのです。

 

五輪のイメージと現実の違い

 

 我々は2年ごとにやってくる夏季五輪と冬季五輪を華やかなショーとして注目しますが、当然のことながら表に見える部分と実際の現場の状況には常に乖離した部分があります。

 

 五輪規模の大会を開催するとなると、政治や文化から人権、さらには環境問題への配慮といったさまざまな問題が複雑に絡みます。しかしメディアやテレビはその小さな一部を切り取る形でしか伝えることしかできません。過去には1972年のミュンヘン五輪でテロ攻撃があり、その約20年後のアトランタ五輪では公園での爆発事件が起きるなど、夢舞台においても悲劇的な出来事は起きてきていました。しかし報道する側としては五輪を人間ドラマとして描き、アスリート達の希望や挫折や栄光を見る側に届けることに力を注ぎ続けてきました。それがこれまでの流れです。

 

 このやり方は見る側を魅了し、熱狂させ、やがてスポーツ報道のあり方すらも変えました。テレビで目にする五輪はよりドラマティックなものになるよう色づけをされ、そして必要とあらば放送枠を移動させてでも視聴者に一番インパクトを与えられるように制作されます(1980年のレークプラシッド冬季五輪においては、米国対ソ連のアイスホッケーの試合が3時間遅れで録画放送された。氷上の奇跡とも言われたこの試合がそれでもなお3000万人の視聴者を釘付けにしたのは、驚異的だ)。

 

 こうした報道のあり方は、長年成功を収めてきたと言えるでしょう。

 

 しかしインターネットが発達した現代で、この「色づけバージョン」のみを観る側に届けるのは困難です。信頼あるメディアは情報を伝えるひとつの担い手ですが、今やスマホさえ持っていれば誰もが実況を行えます。デジタル化が進み情報の運び手が蔓延する中で、リアルタイムであるかどうかが重要になります。情報は瞬時に、そして生々しいままに世界に伝わるのです。そしてやがて伝えたい以上の情報が漏れ、放送における紳士協定は破られるのです。これはもはや五輪だけの問題ではなく、世界中で行われるどんなイベントについても言えることでもあります。

 

瞬時に全てが生で伝わる大会

 

 今回のリオ五輪の場合はニューヨークと時差が1時間しかないため、米国の視聴者は録画中継に頼る必要はない。間違えて競技結果を聞いてしまうのを防ぐため、オフィスで耳栓をしたり「五輪の結果を教えないで」と自分の周りに意思表示をする必要もなさそうだ。

 

 しかし少しでも現地から届く報道を耳にしているのなら、リオからのニュースが悲惨な状況を伝えるものばかりだということに気付くでしょう。経済や財政危機の話題もあれば、人手不足に関する懸念もあります。さらにはリオ市が非常事態宣言を発令したことも、暗雲立ち込める話題です。毎日のように何かしらのトラブルが報じられる中、一足先に現地入りしたアスリート達から聞こえてくる選手村の評判もあまりよくありません。

 

 たしかに中には物事を大げさに伝えるメディアや、不正確な情報も存在するでしょう。しかし、その多くは実話でもあります。

 

 21世紀になり、五輪の神話は崩れたと言っていいでしょう。そして今後もこういった報道は儀式のように毎回繰り返されるでしょう。大会の負の部分を誰もが知るようになり、五輪開催を望む国や都市も二の足を踏むようになります。昨年の夏には、2024年大会の誘致に立候補していたボストンが逃げるかのように立候補を撤回したのは記憶に新しいことです。

 

 夏季五輪ならばまだ一般に対するアピールはあります。しかし冬季五輪となると、新鮮味もなければ需要もありません。

 

 五輪を開催することが国威を示したり、あるいは商業的な成功が約束されていた日々は遠い記憶となってしまいました。500億ドルをかけて建設されながらもわずか2年でゴーストタウンと化したソチ冬季五輪関連の建築物。残ったのはそんなイメージです。

 

五輪自体への不信も

 

 五輪精神そのものに対する不信感も強いのです。大会を「純粋」なスポーツイベントとして捉えるのはもはや錯覚です。先日、国際オリンピック委員会(IOC)は国家ぐるみでのドーピングが明らかになったロシアに対して処分を下すことを拒否し、官僚的なやり方でその対処を各競技団体に一任するとしました。その他の問題(例えば冒頭で触れた深刻な水質汚染の件など)も無視されるか触れられることはほとんどなく、治安への懸念や人手不足に関しても同様の状況です。唯一真剣に語られるのは大会としてどう収入を増やせるか、ということだけのようにも見えます。

 

 もちろん、こういった事実がメーガン・カルモーのような選手個人の努力を汚すようなことがあってはいけません。五輪開幕前のメディアのあり方や、特に大げさな報道に関しては、カルモーが憤りを感じるのは理解できます。五輪も実際に競技が始まりさえすれば、それまでとは違ってネガティヴな情報は消えていくでしょう。そしてリオから感動や共感を得られるような素晴らしい名場面が毎日たくさん届けられることは間違いないでしょう。

 

 しかし、現代の五輪は夢や希望だけではなく、常に現実的な問題もついてまわり続けるでしょう。情報は増え、それに対する意見も増え、疑問も増え、五輪の舞台裏に関する報道も伝えられます。そして、例えそれらが醜いものであったとしても、それが事実であることに変わりはないのです。(ソースWSJ

2016年8月 1日 (月)

アベノミクス、望まれる次の一手とは!

日本は経済を前進させるため、強力な政策の組み合わせを打ち出そうとしているようです。これは過去にも経験があります。問題は再び機能するかどうかです。

 

 日本銀行の黒田東彦総裁と安倍晋三首相の景気活性化に向けた取り組みは、ほとんどの点で針路からそれています。何よりもまず、物価上昇率が依然として日銀目標の2%からかけ離れていること。そして経済は安定した基盤を見いだせず、成長と縮小の間で揺れ動いています。政府は今月、民間投資と消費の低迷を理由に、2016年度の経済成長率見通しをほぼ半分に引き下げる方針を明らかにしました。

 

 アベノミクスで最大の恩恵を受けるとみられる家計は総じて様子見に回っています。問題は、これが賃金に対する個人の期待に影響することです。日本の国内総生産(GDP)の60%を占め、日銀も注目する個人消費は減少しています。

 

 労働市場は売り手優位になっているようです。失業率はというと過去最低水準で、有効求人倍率は1.0倍を超えており、求職者より求人の方が多くなっています。理論上はこれで賃金が上向くはずですが、給与の伸びは依然横ばいで、黒田総裁の物価目標達成を阻んでいます。

 

 試練はあまりに厳しく、克服が難しくなっています。日銀は今年公表したワーキングペーパーで、実質金利の低下を通じた消費押し上げ効果が、実質賃金予想の低下を通じた消費押し下げ効果を上回っているとの見解を示しました。しかし現実の世界では、家計支出が2年前の水準をはるかに下回っているのです。同ペーパーではまた、賃金予想の形成メカニズムを検証したところ、勤め先の業績見通しの影響が大きいことが分かったとされています。しかし、日本企業には再び円高の影響が及んでおり、賃金がいずれ上向くという信頼を呼び起こすには至っていません。

 

 日本が向かっているように思われるのは、必ずしも新しい政策ではなく、過去に取り組んだことがあるものです。アベノミクスの下では2013年と14年下旬の2度にわたり、金融緩和と財政出動の事実上の協調が図られました。いずれの場合も資産価格は持ち直し、インフレは息を吹き返しました。しかし賃金の上昇は定着の機会が得られなかったのです。政策の後押し不足が原因だったかもしれません。13年は後に増税が行われました。14年は後に政府支出が停滞しました。

 

 詳細は不明ですが、政府はかなりの規模の経済対策を打ち出すもようです。安倍首相は27日、事業規模で28兆円を上回る経済対策をまとめる意向を表明しました。これはGDPの約6%に相当する規模です。財政支出がどれだけ速やかにどこへ投じられるか見極めることが重要でしょう。また、マイナス金利で市場の当惑を招いた日銀が、独自の処方箋で信頼を呼び起こせるかどうかも重要になります。(ソースWSJ

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