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2016年7月

2016年7月31日 (日)

つまずく百度、将来に暗雲!

百度(バイドゥ)は長らく中国の検索エンジンでほぼ独占的な地位を享受してきました。しかし最近は、将来の展望に影を落とすさまざまな問題で知られるようになっています。

 

 ある若者が百度に広告掲載されたがん治療法を試みた後死亡したことを受け、当局は調査に乗り出しました。株価が年初来で約15%下落する中、百度は4-6月期(第2四半期)の売上高予想を10%近く下方修正しました。4-6月期決算は29日に発表する予定。

 

 トムソン・ワン・アナリティクスがまとめたアナリスト予想では、純利益が前年同期比42%減の34500万ドル(約360億円)と見込まれています。

 

 「グレートファイアウオール(防火長城)」と呼ばれる中国のインターネット監視体制下で、百度が検索エンジンを主導しているのは明らかです。7億人のインターネット利用者を擁する中国市場で80%ものシェアを誇っています。2010年に中国から撤退した米グーグルの米検索エンジン市場でのシェアは64%です。

 

 しかし百度は、中核とする検索エンジン以外への業容拡大で成長することに失敗しました。電子商取引大手の阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング)や、インターネットサービス大手の騰訊控股(テンセントホールディングス)に比肩すると見なされていた時期もあったのですが、これらの企業は時価総額を約4倍に伸ばしています。アナリストらによると、アリババとテンセントは事業基盤の拡大で百度より大きな成功を収めました。

 

 一例を挙げると、アリババとテンセントはいち早くモバイル決済システムの構築に動きましたが、百度はアリババの「支付宝(アリペイ)」に10年遅れ、2014年にようやく「百度銭包」(百度ウォレット)を立ち上げたのです。百度ウォレットの利用者が4500万人にとどまっているのに対し、アリペイは45000万人を超えています。

 GGVキャピタルのマネジング・ディレクター、ジェニー・リー氏は「百度に有能な人材が不足しているわけではないのに、市場の先頭に立ったことがない」と話しています。戦略計画で常に長期的な見通しを据えるとは限らないことも指摘しています。つまり、百度にとってはいまだに検索エンジンの重要度が高いというわけです。

 

 百度のある幹部は公に発言することを禁じられているとしつつも、「バーチャルリアリティー(仮想現実)やドローン(小型無人機)の研究で先頭を走っているべきだ」と述べました。「しかし当社は検索エンジンに集中しすぎている」といいます。

 

 201512月期は100億ドル(約1兆円)の売上高のうち94%を、主に検索エンジンと連動する広告で稼ぎ出しています。アナリストの推計では、医療関連広告が特に好調で、広告収入全体の2030%を占めています。

 

 しかし医療関連広告には注意も要します。希少がんを患う大学生が百度の広告で見つけた31000ドルの代替療法を試して死亡したことから、同社は4月、厳しい批判にさらされました。

 

 李彦宏・最高経営責任者(CEO)はこの時珍しく、百度が道に迷ったかもしれないと認めました。510日付の従業員宛ての書簡では「百度が設立されたばかりの当初を思い出すと、グーグルなどの競合と利用者を奪い合う闘いが主だった」とし、「(今や)上級エンジニアが商業的な利益と利用者の使い勝手のはざまでためらい、妥協さえしている」と記しています。

 

 検索エンジンは百度の柱となる事業ですが、多くの場合に情報は限られています。政府の検閲だけが理由ではありません。グーグルで「がん」をキーワードに検索すれば、米国がん協会(ACS)などの優れた団体を見つけられます。しかし百度の利用者は、がん患者同士がアドバイスを交換し合うフォーラムのようなものしか見つけられないのです。

 

 百度は、中国の検索エンジンで独占的な地位に立つだけの努力をしてきたとし、「卓越した使いやすさ」を実現するための信頼性の高い検索システム構築へ力を尽くしていると述べました。がん患者の大学生の死亡を巡る政府の調査にも協力しているといいます。

 

 百度の内情に詳しい関係者の1人は、インターネットが絡むあらゆる分野に進出しようとしているわけでも、すべての研究分野で収益を上げられるわけでもないと語りました。この関係者は、百度を代表して取材に応じる権限を与えられていないものの、中核技術やデータを活用できる投資に集中していると述べました。具体的にはオンライン旅行会社を例に挙げています。

 

 百度が検索エンジンに一見関係がない自動運転車などの分野へも進出しようとしているのは確かです。しかしそこにはデータという関連があります。グーグルの人工知能(AI)研究部門を立ち上げた後に百度へ引き抜かれたアンドリュー・ング氏が技術担当トップとして果たすべき使命は、百度が持つ膨大なデータの集積を新たな収益源に変えることです。

 

 それでも、新たな取り組みが検索エンジンに代わる成長けん引役となるまでには時間がかかるでしょう。利用者がより洗練され、検索の規制が強化される中、百度は利益が少なくなる検索エンジン事業での優位な地盤にしがみつき続けるかもしれません。 

 

 モーニングスターのアナリスト、マリー・サン氏は「百度は世評上の危機に直面しているが、近いうちに(中国で)別の検索エンジンに地位を奪われるとは思わない」との見方を示しています。「中国政府がグーグルを中国本土から閉め出している限り、百度は主導的な立場を維持するだろう」と述べています。(ソースWSJ

2016年7月30日 (土)

フェイスブックに死角なし-成長の限界は?

米フェイスブックの成長がいつか止まる日がくるとしたら、それは同社が世界の全人口をユーザーとして囲い込んだ時でしょう。好調な業績を見ていると、その絶対的な限界数のみがフェイスブックの成長を止める要因であるように見えてきます。

 

 同社が27日に発表した決算では、4-6月期(第2四半期)は新たに4100万人の月間アクティブユーザー(MAU1カ月間で1回以上ログインしたユーザー数)を獲得しました。これは過去5年の四半期ごとの平均増加数である4800万人は若干下回る数字です。しかし、この5年間でフェイスブックのMAUは倍増し、いまや17億人に到達しています。世界の全人口の約25%にあたる数字です。

 

 そのうえ同社は、規模を拡大することだけを目的に成長しているわけでもありません。ライバルの米グーグルと同様、フェイスブックは無料のサービスから収益をあげるモデルを確立し、第2四半期の広告収入は前年比63%増の62億ドルに上りました。そのうち84%はモバイル広告です。これらの数字は市場関係者の事前予想を上回っており、同社の株価を一段と押し上げる要因となるでしょう。フェイスブック株はすでに年初来で18%高となっており、大手テクノロジー企業では最高のパフォーマンスとなっています。

 

 ただ、この勢いが永遠に続かないのも確かです。フェイスブックのリーチが届かない人口層は存在し続けるでしょう。そのひとつはネットに繋がっていない後進国の人たちです。またフェイスブックよりもスナップチャットなどのアプリを好むティーンもそれに当てはまるでしょう。

 

 前者はグローバルな野望を持つテック企業ならどこも抱えている悩みです。後者のティーン・ユーザー拡大に関しては、予想PERが約32倍のフェイスブックがどのような手をうつのか注目に値します。ただ規模が物を言うSNSの世界では、一番ビッグなプレーヤーが優位に試合を運ぶことは多いのですが。

 

 かつてフェイスブックにとって脅威とされていたツイッターの成長は、ここにきて停滞気味です。フェイスブックの成長を止める要因は今のところ見えてきません。投資家からすれば、この状況は「いいね!」をクリックし続けたくなるのに充分でしょう。(ソースWSJ

2016年7月29日 (金)

CEOの報酬が高額な企業ほど業績悪い?

最高経営責任者(CEO)が最高水準の報酬を得ている企業は業績が悪い場合が多く、逆の場合も同じであることが、新たな調査で明らかになりました。

 

 コーポレート・ガバナンス(企業統治)の調査などを手掛けるMSCIは、米国の大・中規模企業429社のCEO800人を対象に2014年までの10年間の報酬額を調べました。委任状勧誘書類の報酬内訳を基に累計報酬額を算出し、同期間の当該企業の株主還元(株式価値の上昇と配当金)と比較したものです。

 

 それによると、CEOの報酬が高い企業の上位20%に投資された100ドルは、10年後に265ドルに増えたとみられます。一方、CEOの報酬が低い企業に投資された100ドルは、10年後に367ドルに増えたとみられています。

 

 この結果は、最近のCEOの報酬の基本的な考え方に疑問を投げ掛けるものです。つまり、ストックオプションや制限付き株式の大量付与は、報酬の規模が他の方法で企業業績にも連動している場合は特に、業績向上に役立ち、ひいては株主還元も強化されるという考え方です。米国では現在、CEOの報酬の7割を株式インセンティブ報酬が占めています。

 

 また、同じ業界内でCEOの報酬と業績の相関関係についても調べたところ、同様の結果が得られました。つまり、ある業界内の報酬ランキング上位半分のCEOが経営している企業は同業他社より業績が悪い傾向が強く、下位半分のCEOが経営している企業は同業他社より業績が良い傾向が強かったそうです。

 

 MSCIはこうした結果につながる要因について、毎年の報酬査定と、委任状での情報開示を挙げています。これらのせいで、取締役会と幹部はより長期的な業績を重視しなくなります。MSCIは、より長期的な業績とCEOの報酬を比較できるように、米証券取引委員会(SEC)が長期の累積インセンティブ報酬の開示を義務付けることを提言しました。(ソースWSJ

2016年7月28日 (木)

反発の機熟すアップル株、過去15年で最割安!昨日急騰!

テクノロジー企業への投資家は最近厳しくなっている。そのためアップルの株価は必要以上に圧迫されています。

 

 しかし、市場では高利回りが切望されており、株式の投資家は安定した配当にひかれています。このことがアップルへの追い風になりそうです。以前急騰していた他のテクノロジー銘柄と同様、アップル株も大いに売り込まれています。同社の株価は年初来6%下落、過去1年間では21%急落しています。ただその一部はアップルのスマートフォン「アイフォーン」の販売が鈍っていることで説明がつきますが、売られ過ぎているように思います。同社は26日に4-6月期(第3四半期)決算を発表します。

 

 少なくとも、アップルが乗り越えるべきハードルは低いと思われます。ファクトセットがまとめた4-6月期の1株利益のアナリスト予想は、前年同期比24%減の1.40ドル。昨年11月時点での予想は同2.01ドルでした。売上高予想は15%減の421億ドル。実際に減収となれば、2四半期連続となります。

 

 弱気の見方の大半は、売上高の半分を占めるアイフォーン販売の鈍化を理由にしています。タブレット端末「アイパッド」も以前ほど売れ行きが好調ではなく、腕時計型ウエアラブル端末「アップルウォッチ」についてはまだ判断が付かない状況です。テクノロジー企業の投資家は弱々しい伸びを嫌う傾向があります。構成銘柄にテクノロジー企業の多いナスダック指数が、ダウ工業株30種平均やSP500種ほど堅調な推移となっていないことはそのためです。

 

 それにしてもアップル株は売られすぎです。アイフォーンの低迷は織り込み済みでしょう。今年後半に投入される見通しのアイフォーン新機種に大きな改良は期待できないものの、売上高の伸びが近く回復するとの楽観的見方もあります。アナリストは、20179月期のアイフォーン販売台数は5%増と予想しています。

 

 アップルは最近の投資家が選好しているタイプの銘柄です。同社は増配と183月までの自社株買いに2500億ドル(約265680億円)を投じる計画です。これにより1株利益と配当利回りが押し上げられる見通しです。アップルの配当利回りの2.3%は、今でも米国債10年物の利回りを大幅に上回っているのです。

 

 また、アップルはとてつもない利益を上げています。1-3月期の利益は1052000万ドルと、グーグルの親会社アルファベットとネット通販大手アマゾン・ドット・コム、フェイスブックの利益を合わせた額をはるかに上回っています。

 

 バリュエーションも魅力的です。予想PER(株価収益率)は11倍と、SP500種と比較すると34%割安ということもあり、このPERは少なくとも過去15年間で最も割安です。

 

 アップル株に買いを入れる価値がありそうだと思われ矢先、昨日6,28ドルと急騰しました。このまま上がり続けることはないにしてもやはり機が熟してきていることは間違いないようです。(ソースWSJ

2016年7月27日 (水)

ポケモンGO、有害アプリに要注意!

米アルファベット傘下のグーグルは先週末、ごく少数の悪意のある偽のポケモンアプリをコンテンツストア「グーグルプレイ」から削除しました。モバイルアプリ「ポケモンGO」に熱狂する人々に付け入ろうと海賊版アプリを開発する動きが出始めている一例です。アプリをダウンロードする際は安全に十分気をつけるべきであることを改めて思い知らされます。

 

 グーグルプレイ以外のサイトでは事態はさらに深刻です。セキュリティー専門家によると、サードパーティー製のアンドロイド・アプリ・ストアでは、本物のポケモンGOやポケモンGOプレーヤーを支援するアプリを装った十数種類の製品が配信されています。専門家は、それらアプリの多くはスマートフォンにスパイウエアをインストールし、個人データを収集したり、スパムを拡散したりするものだとして注意を促しています。

 

 グーグルの広報担当者は「このように人気のアプリが出てくると、模倣や追加アプリを目にするのは珍しいことではない」としていますが、偽のポケモンアプリをいくつ削除したかは言及しませんでした。担当者はさらに「手動・自動交えて絶えずアプリを精査しており、違反を見つけた場合は、プレイのチームが開発者に連絡して是正させるか、アプリをストアから撤去する措置を取っている」と説明しました。

 

 ステファンコ氏は19日、偽のポケモンアプリ3種類について警告した上で、グーグルプレイには有害なポケモン関連のアプリはもう見当たらないと述べました。現時点ではアップルのアプリ配信サイト「アップストア」ではマルウエアは見つかっていません。このように常に脅威があることを踏まえ、安全を保つための基本的な手順に従うことが重要です。

 

 はやりの新しいアプリが登場すると、それがどのようなものかを確かめたくなるものです。しかし、アプリの名称とその開発元を知っておく必要があります。ポケモンGOを開発したのは「ナイアンティック」という会社です。それ以外が開発した「ポケモンGO」という名のアプリはダウンロードしてはいけません。

 

 「ポケモンGOアルティメイト」は多くの人にとってポケモンGOの上位版のように見えますが、スタファンコ氏によると、ダウンロードした人はスマホからロックアウトされ、その間にアプリが――ユーザーに分からないようにバックグラウンドで――ネットのアダルトサイトの広告をクリックするプログラムを実行するといいます。

 

 スマホを乗っ取られた場合、アプリを止める唯一の方法はスマホからバッテリーを引き抜くか、バッテリーが取り外せない場合は、グーグルのアンドロイド・デバイス・マネジャー・ウェブサイトにログインし、遠隔操作でスマホを再起動するかデータを消去するしかないといいます。

 

 ステファンコ氏によると、グーグルプレイでは最近、「Guide & Cheats for Pokémon Go(ガイド・アンド・チーツ・フォー・ポケモンGO)」というアプリも削除したそうです。これは、便利なゲーム内アイテムの提供をうたった偽のサービスに誘導する広告をユーザーに送りつけるものだといいます。

 

 モバイル・セキュリティー・アプリを開発するロックアウト社の上級研究員アンドリュー・ブレイク氏は、試したいと思っている人気のアプリの名称や開発者が不確かな場合、そのアプリに関するニュースをネットで検索したり、開発者のウェブサイトで詳細を確認したりすることを勧めています。

 

アクセス許可に注意する

 

 アプリをインストールする際は、そのアプリがどのデータへのアクセス許可を求めているかに注意すべきです。iOSや最近のバージョンのアンドロイドでは、そのようなアクセス要求への許可が求められます。アプリがよく要求するのがユーザーの位置情報や連絡先、カメラへのアクセスです。

 

 アプリがユーザー個人の電子メールアカウントなど本当に必要でないと思われる情報を要求してきた場合は、警戒が必要だとブレイク氏は指摘します。同氏は「ポケモンGOはスマホのカメラと位置情報を使ってプレーするゲームなので、そうした要求は妥当だ」とした上で、「だが何か納得のいかない情報を要求してきた場合は拒否し、アプリを削除すべきだ」と忠告しています。

 

アップルとグーグルのアプリストアを常に利用する

 

 「ポケモンGOアルティメイト」が証明した通り、マルウエアがグーグルプレイに紛れ込む可能性は依然あります。しかし、グーグルプレイがアンドロイドアプリをダウンロードする最も安全な場所の1つであることに変わりはありません。アップルのiOSアプリストアはグーグルプレイ以上に厳しい審査手順を設けており、アプリはそれを通過してからでないとストアで配信されません。しかし、状況は日々変わり得るとブレイク氏は警告します。

 

 同氏は「セキュリティーチェックをかいくぐるモノは常に存在する。アップルとグーグルには何百万というアプリが寄せられ、彼らはそれら全てに対処し、チェックしなければならないのだから」と指摘します。ブレイク氏が勤務するロックアウトでは毎週、数種類のアンドロイドアプリをグーグルにマルウエアとして通知しており、グーグルは常に迅速に削除しているといいます。

 

 サードパーティー製アプリストアはもっと危険な可能性があります。ブレイク氏は「話題の新アプリを試したいと思っても、それが自国のグーグルやアップルのストアにない場合、サードパーティー製アプリストアや非正規の方法でアプリを入手したくなるものだ」と指摘。「しかし、それによってはるかに大きな危険にさらされることになる。したがって、お目当てのアプリが信頼できるストアで配信されるまで待つのが最善だ」とアドバイスしています。(ソースWSJ

2016年7月26日 (火)

鈴木はどのようにイチローになったか!

米大リーグ(MLB)マイアミ・マーリンズのイチローが米国でプロ野球選手としてのキャリアをスタートさせていたら、どのような記録を打ち立てていたかを想像してほしい。

 

 2001年に27歳でシアトル・マリナーズに移籍するまで、日本の9シーズンで1278安打を記録したことを考えると、可能性は果てしない。比較してみると、大リーグ通算安打記録を持つピート・ローズが27歳までに記録した安打数は903本です。現役の好打者であるアレックス・ロドリゲスは27歳までに1257安打を放っています。

 

 21日時点でメジャーでの安打数が3000本まで残り「4」となっている42歳のイチローですが、もし日本で10年近くプレーしていなければ、メジャーで4000本安打に近づいていたのはほぼ確実だろう。4256本というローズの記録にも迫っていたかもしれません。

 

 仮定の話に興味を持っていない人物はイチロー本人です。

 

 イチローはインタビューで、自分が自分の経験の産物でしかないと述べています。また、日本での経験がなければ今の自分はなかっただろうとし、米国にもっと早く来ていたら安打数が増えていたと考えるのは的外れだと指摘しました。

 

 イチロー自身と、日本で彼を観察したり一緒にプレーしたりした人々にとって、これはゆがめられた仮定であるだけではありません。彼らによると、日本での9年間は、才能はあるが小柄な有望選手をスーパースターに開花させるカギとなりました。イチローは野球には自慢げな米国人に非凡な流儀で挑む自信があったのです。

 

 高卒ドラフトでプロ入りした後、イチローは有望選手の一人として春季キャンプに参加しました。打席でのイチローは他の大半の選手よりも大きく投手寄りに体重を移動させ、時にはバッターボックスからはみ出てしまうこともありました。当事の打撃コーチだった新井宏昌氏は、イチローの一風変わった打撃スタイルをもっと理解してやりたかった。

 

 練習メニューの一つだったトスバッティングをしていた時、新井氏はこの若者が何かを持っていると確信するようになったといいます。

 

 新井氏は当事のイチローの特異性を指摘し、その本質を理解しようとしたと話しました。同氏はトスのテンポと位置を調整するという実験に打って出たのです。大半の選手は素早い調整を求めるためこうしたトスを見逃しがちですが、イチローはあらゆる球をスイングし、ほぼ全てのトスを芯で打ち返したのです。

 

 新井氏はトスのスピード、位置、タイミングは問題ではなかったと語ったのです。同氏によると、大半の選手はボールを見ようとするが、イチローはそれを打とうとするのだと。

 

 その後、新井氏は監督に対し、このひょろりとした若者にはもっと華やかな名前の方がふさわしいと進言しました。ユニホームには「SUZUKI」の刺しゅうが入っていたが、これは米国では「スミス」と同じ位ありふれた名前だ。イチロー本人からの提案はほとんどないまま、チームは登録名を「イチロー」に変更しました。

 

 オリックス・ブルーウェーブ(現バファローズ)の1軍登録選手として初めてフルシーズンを過ごしました1994年、イチローは当事の日本プロ野球記録となる210安打(130試合)をマーク。また、打率も385厘と、当事のパリーグ記録を打ち立てました。

 

 福岡ダイエー(現ソフトバンク)ホークスの監督を務めていた王貞治氏は、イチローのオリックスと1シーズンに20試合以上対戦する機会がありました。王氏によると、投手はイチロー対策としてさまざまな戦略を試したのですが、イチローは独自の対抗策を展開したといいます。

 

 王氏はイチローがシーズン200本安打で選手としてのキャリアをスタートさせた点に言及。イチローが20歳の時にはすでにあらゆる対戦相手が彼をマークしていたと話しました。ただ、現実的には高い技術を持つ打者に単純な戦略は通用しないとも、王氏は指摘しています。

 

 オリックスでイチローのチームメートだった田口壮氏は、イチローがアプローチと準備の面で揺らぐことはなかったと語っています。

 

 MLBでもセントルイス・カージナルスなどでプレーした田口氏は、イチローの最も印象的な資質として自分の信念に確信を持っていることを挙げています。田口氏は、イチロー自身がどんな状況でも自分を変えることを許さないため、誰も彼を変えることはできないと話しました。

 

 田口氏は、日本で10年近くスター選手として活躍してなければ、イチローが米国で変化を求める圧力に抵抗などできなかった可能性を示唆しています。同氏によると、日本での経験が試合に臨む際の並外れたアプローチに対する信念を固めたのだというのです。

 

 イチローは正しいのかもしれません。間近に迫った3000本という記録に、あと何本のヒットを上積みできていたかと考えるのではなく、単純に彼の生み出してきた3000本を楽しむのがベストなのだろう。(ソースWSJ

2016年7月25日 (月)

任天堂株、「ポケモンバブル」ではない!

米国で「ポケモンGO」が爆発的な人気を集め、任天堂の株価が2週間前の2倍近くに達していることから「バブル」と叫ぶ投資家もいるかもしれない。実際のところまだバブルではないが、高まる期待に任天堂が応えるためには多くの課題が残っています。

 

 ポケモンGOがどれだけ任天堂の利益に貢献するか計算するのは困難です。そもそも投資家には、売り上げの何パーセントが任天堂に入るのか分かりません。このゲームを開発したのは株式会社ポケモンと米ナイアンティックです。任天堂は株式会社ポケモンの32%株を保有し、持ち株比率は明らかにしていないもののナイアンティックへも出資しています。ポケモンの商標は任天堂が登録しているため、ロイヤルティーの支払いも受けている可能性はあります。

 

 次に、ポケモンGOがこれまでにいくら稼いだのか、誰も確信を持てないようで、外部の調査会社による1日当たりの売上高の推計は100600万ドル(約11000万〜64000万円)と幅広いのです。日本では22日に配信が始まったばかりで、他のアジア諸国ではまだリリースされていないことから、売上高の大半は米国で上げたものということになります。最も楽観的な想定では、世界で既存ゲームをはるかにしのぐ年50億ドルを稼ぎ出せる見通しです。さらに利益配分を任天堂に甘く見積もった場合、最大75000万ドルが同社に入るとみられ、任天堂の時価総額はここ2週間で、その約19倍の140億ドル増加しました。ポケモンGOだけで株価が上昇したのだとすれば、かなり高い割合だといえます。

 

 どのゲームにも言える通り、ポケモンGOの人気はやがて衰えかねません。座っての暇つぶしになるのではなく、常に動き回る必要のあるゲームならなおさらです。

 

 しかし、任天堂の株価は昨年のピークをやや上回る水準にすぎないことへも注意すべきです。この時にポケモンGOは投資家に意識されていませんでした。任天堂のモバイルゲーム参入で高まった期待は、初の自社開発モバイルゲーム「Miitomo(ミートモ)」の不振で徐々に後退しました。新作の投入ペースも耐え難いほど遅いのです。

 

 ポケモンGOの熱狂が始まるまで、任天堂株は割安でした。ネットキャッシュ(現預金と短期保有有価証券の合計から有利子負債を差し引いた金額)と設備投資が103億ドルに上る中で、時価総額が170億ドルにとどまっていました。企業価値は昨年のEBITDA(利払い前・税引き前・償却前損益)の約16倍と、同業の米アクティビジョン・ブリザードやエレクトロニック・アーツに比べて低かったのです。ポケモンフィーバーが訪れるまで、任天堂のモバイルゲーム事業にほとんど価値が見込まれていなかった格好です。

 

 任天堂は良質なゲームを開発できる力を証明しながら、自らのゲーム機以外へ冒険することには消極的だったのです。投資家はポケモンGOの大きな成功で、任天堂がモバイルゲームへ本腰を入れるよう期待しています。実際その通りになり、任天堂が数々のキャラクターをうまく使ってモバイルゲーム界の巨人になることができるなら、株価もそれほど不当とは言えないのかもしれません。

 

 以上を考え合わせると、任天堂の株価はバブルではありません。しかし根拠となる想定の多くが不明で、任天堂の方針転換にも大きく左右されるため、同社株について確実なこともあまりないということです。(ソースWSJ

2016年7月24日 (日)

ドーピング内部告発した「ロシアのスノーデン」!

リオデジャネイロ五輪の開幕まで2週間あまりに迫る中、ロシアのドーピングをめぐるドラマがスポーツ界を揺るがしています。ロシアでその主な悪役を演じているのが、元ドーピング検査機関所長のグリゴリー・ロドチェンコフ氏です。

 

 ロドチェンコフ氏は、ロシア高官がドーピング検査の不正を知っていたと内部告発し、その後米国に事実上亡命しました。同氏は、国を裏切ったとロシア政府の怒りを買い、ロシアのリオ五輪参加の可能性を妨げる陰謀に加わったと非難されています。

 

 世界反ドーピング機関(WADA)は18日、ロシアがソチ五輪中にドーピング検査で組織的に不正を働いていたとする報告書を発表しました。報告書は、5月にニューヨーク・タイムズ紙にドーピング不正操作の詳細を暴露したロドチェンコフ氏の主張を裏付けるものとなりました。プーチン大統領はWADAの報告書公表を受けてロドチェンコフ氏を「評判の悪い人物」と批判し、「こうした人物の主張だけを基にした議論にどの程度の信頼を置くことができるのか疑問が生じる」と述べました。

 

 ロシア・オリンピック委員会も19日発表した声明で、「ロドチェンコフ氏はロシア選手の経歴や運命だけでなく、国際五輪運動の高潔性を危うくする犯罪計画の中心人物だった」と厳しく批判。ロシアの男子ボクシング代表チームのコーチを務めるアレクサンドル・レブジアク氏も、同国のスポーツ関係のウェブサイトで、「ロドチェンコフ氏はロシア生まれだが、祖国はない。彼のただ一つの動機はカネである」とし、米国に魂を売った売国奴だと酷評しました。

 

 ロドチェンコフ氏は米国の映画製作者、ブライアン・フォーゲル氏を通じ、コメントは差し控えると語りました。フォーゲル氏はロドチェンコフ氏に関するドキュ メンタリー映画の製作に取り組んでいます。ロドチェンコフ氏はソチにあったドーピング検査機関で所長を務めていました。フォーゲル氏は、ロドチェンコフ氏が強要に関与した疑いについてはWADAの報告書を指摘し、ロドチェンコフ氏がロシア政府の命令に従って行動していたと述べ、ロドチェンコフ氏は自らの身の安全を危惧していると思うと付け加えました。

 

 フォーゲル氏は「(ロドチェンコフ氏は)もうロシアに帰れない。ロシア当局は何カ月にもわたって彼が鉄面皮のうそつきだと言い続けています。そして、103ページに及ぶWADAの報告書が出されました。これは彼が打ち明けたことは真実であるという証拠だ」と話しました。

 

 フォーゲル氏はロドチェンコフ氏が米中央情報局(CIA)の元職員のエドワード・スノーデン容疑者のようなものだとしています。スノーデン容疑者は国家安全保障局(NSA)による国内外の通信監視プログラムに関する機密情報をジャーナリストに暴露した後、香港、さらにその後ロシアに逃亡しました。

 

 今もロシアに滞在するスノーデン容疑者は、2013年に情報漏洩罪などの容疑で起訴されましたが、彼による暴露は政府による通信監視について大きな議論を巻き起こしました。彼はプライバシーや市民の自由を擁護する人々にとってのヒーローです。

 

 フォー ゲル氏は「わたしはずっと、彼がスノーデン氏のロシア版だと考えてきた。わたしが彼に代わって彼の動機を話すことはできない。だが、わたしが分かっているの は、真実を打ち明けるために、家族、人生、友人などすべてを祖国に残したまま、祖国を離れたいと思っている男が、名誉や栄光を求めて いるようには思えないということだ」と話しました。

 

 18日に公表された報告書はロシアで波紋を呼び続けています。インタファクス通信による と、同国のムトコ・スポーツ相は19日、WADAによる今回の調査が「スポーツの領域を大幅に超えている」と指摘、「世界のドーピング防止体制は不完全 だ。世界はそれを理解し始めている」と述べました。(ソースWSJ

2016年7月23日 (土)

株式投資家、過度の楽観視は禁物!

「現在のような環境下で株価は高過ぎるのではないか」

 

 英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱が選択されるという驚くべき結果は、2008年の世界金融危機以降も世界が不安定であるということを実証しました。一方、投資家はリスクを過度に楽観視しているように見えます。

 

 SP500指数は先週金曜日に1.3%上昇し、過去最高値までわずか0.04%となる2129.90でその週を終えました。最近の急激な楽観論の高まりの要因として考えられるのは、世界の中央銀行高官による発言です。英国の国民投票の直後に欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁と英中銀イングランド銀行(BOE)のカーニー総裁は、景気てこ入れのためにできることは何でもすると述べました。

 

 米国では、金曜日に発表された6月の雇用統計で非農業部門就業者数が大幅な伸びを記録したものの、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利引き上げに消極的な姿勢を当面維持するという市場の信頼は揺らぎそうにありません。予想通りに債券利回りは世界的に低下して、米10年物国債の利回りは金曜日に過去最低となる1.366%を付け、株式の魅力はさらに高まりました。

 

 低利回りは世界的なリスクの高まりを反映したものと言えます。英国は景気後退に陥る恐れがあり、世界的に景気停滞が続くと予想されています。長期的に見て、これらはいずれも株式にとって良いニュースとはなりません。独立系の債券ストラテジスト、デービッド・アダー氏は「現在のような環境下で株価は高過ぎるのではないか」と疑問を呈しています。

 

•株式のリスクプレミアムは適正か

 

 強気派はこの見解に反対するでしょう。SP500指数の予想株価収益率(PER)は16.7倍と過去10年の平均である14倍を上回っていますが、債券利回りは過去最低水準で推移しており、株式には確かに相対的な割安感があります。PERの逆数である株式益回りは現在約6%です。

 

 株式益回りから10年債利回りの1.38%を引いた差である株式のリスクプレミアムは4.6ポイントとなり、金融危機と欧州債務危機を除く過去15年間の最高水準に近い。最近のさまざまな問題がもたらす不安感にもかかわらず、楽観論が高まっているのはこのためです。

 

 しかし、楽観論から自己満足に陥らないようにしなくてはなりません。バークレイズのストラテジスト、キース・パーカー氏は、相対的なバリュエーションは概ね妥当でも、それは株式の適正なリスクプレミアムを市場が見直す可能性がないことを意味しているのではないと指摘しています。

 

 例えば、2014年にジャンク債の利回りは5%未満で過去最低に近い水準でした。ハイイールド債と米国債の利回り差は約3.25ポイントと過去最低水準をなお上回っており、投資家は自己満足に陥っていました。ところがその後、原油価格が急落し、エネルギー企業だけでなくコモディティー取引とは関係の薄い企業までもがデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が高まりました。上場投資信託(ETF)の「SPDRバークレイズ・ハイイールド債ETFJNK)」は2014年半ばから底値を付けた2016211日までに17%急落(利払いを含む)しました。

 

 ジャンク債のケースと同様に、株式のリスクプレミアムは見かけほど大きくないのかもしれません。2017年の予想利益の伸び率16%は高過ぎるように見えますが、原油価格の上昇、ドル安、製造業の好調な指標などを考慮すると不可能な水準ではありません。しかし、パーカー氏は英国の国民投票でEU離脱が選択されたことで、企業利益の急上昇は疑問視されると語ります。

 

 英国のEU離脱決定で欧州大陸の経済成長率は離脱決定がない場合より2ポイント低下する可能性があります。加えて、英国を含む欧州向けが約15%を占める米国企業の売上高は、伸び率が0.3ポイント縮小する可能性があるのです。結局、益利回りの分子の予想利益が高過ぎれば、株式は見かけほど割安とは言えないということです。パーカー氏は、「リスクプレミアムが十分に高まるまでは、株式への資金配分の増額を控えるつもりだ」と語っています。

 

•低金利下の景気後退、株価は20%下落

 

 今回の危機が超低金利下で株式のリスクプレミアムが高まった初めての機会というわけではありません。第2次世界大戦以降、1950年代に入るまで10年債の利回りは3%もしくはそれを下回る水準で停滞していたと、MKMパートナーズのストラテジスト、マイケル・ダーダ氏は指摘しています。今回のケースと同様に、債券と比較した株式の割安感は高まり、当時の株式のリスクプレミアムは現在より高く、5%を優に上回りました。通常、利回りが低い時には株式のリスクプレミアムは高くなることが多いのです。

 

 しかし、低金利でも米国経済の景気後退や株価下落を防ぐことはできませんでした。ダーダ氏は1947年から60年までに低金利下での景気後退が4回あったと指摘します。このときSP500指数は平均20%下落しました。これは景気後退に伴う株価の平均下落率である34%ほど悪くはないのですが、痛手であることに変わりはありません。

 

 投資家は株式に急いで資金を投じる前に、これらのことを肝に銘じるべきでしょう。(ソースWSJ

2016年7月22日 (金)

米国株の上昇局面、いつまで続く?

・米国株は上昇基調

 

 長い休みを経て、米国株式市場が最高値を連日更新しています。SP500指数は20155月に過去最高を記録してから約14カ月後に、ようやく高値を更新したことになります。この強気市場は今後も持続するのでしょうか。

 

 株式市場は現在、7年半にわたり強気相場を維持しています。強気相場としては既に史上2番目の長さです。過去の例を見ると、SP500指数が過去最高を記録した後1年以上たってから再び高値を更新した場合、投資家は相場のさらなる勢いを期待できます。再高値から6カ月間の平均上昇率は8%となっていますが、過剰な期待は禁物です。

 

 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定後に米国株式は安値から8%反発しましたが、これが頭打ちであることを示す兆候が幾つか目前に現れています。SP500指数構成銘柄の90%がすでに50日移動平均を上回っており、株式ファンドには先週、ここ9カ月で最大となる110億ドルが流入しました。出遅れ株として知られるアップル(AAPL)などの銘柄でさえ上昇し始めているのです。

 

 現在、投資家が米国株を選択するのは他に選択の余地がないからです。米国債の利回りは過去最低に近く、世界の債券のうち約30%(13兆ドル相当)で利回りがマイナスとなっています。米国株式60%、米国債券40%の典型的な配分からなるポートフォリオの利回りは1.9%と過去最低水準です。2016年に最も上昇しているセクターは配当利回りの高い電気通信サービス(22%上昇)と公益(20%上昇)で、金融は下落している唯一のセクターです。これは驚くに当たらないでしょう。

 

 マネーマネジャーは、これまで以上にパフォーマンスの追求を迫られています。米国大型株のベンチマークとされるラッセル1000指数を今年上半期にアウトパフォームした大型株ファンドはわずか18%にとどまりました。ブレグジットや中国に起因する一連の株価下落後の急回復は、ショートカバーや相場に飛びつく意欲を高めています。

 

 株価収益率(PER)の上昇は利益の増加を伴っているのでしょうか。4-6月期の利益は5%減と、5四半期連続で減少する見通しで、SP500指数のPERは既に18.5倍となっています。株価を支えているのは記録的な自社株買いですが、PERがこれほど高い状況で自社株買いがいつまで続くかは疑問です。

 

•米国株の今後

 

 ディフェンシブ銘柄への資金集中は、株式への投資意欲がまだ衰えていないことを示す逆のシグナルに見えるかもしれません。しかし、ルーソルド・グループのダグ・ラムジー最高投資責任者(CIO)は「ディフェンシブ株に投資している投資家を弱気派とするならば、彼らは投資意欲が旺盛な弱気派です。20003月に株式市場が最高値を付けた時も、この種の弱気派は市場に多く存在していましたが、根底にある『悲観主義』も、それに続く50%の株価下落に対する緩衝材とはならなかった」と語っています。

 

 一方、株価の上昇基調は長期化しています。リサーチ企業であるMKMパートナーズのチーフエコノミスト兼ストラテジスト、マイケル・ダーダ氏は景気サイクルの後期に見られる2つの兆候を指摘します。米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めと、利益率のピークとその後の低下です。株価がさらに上昇する可能性はあるものの(景気サイクル最後の年の上昇率の中央値は7%)、直後の下落率の中央値は27.8%です。

 

•低金利の恩恵

 

 低金利やマイナス金利は実際に景気を刺激するのでしょうか。低コストでの借り入れは万人に対する恩恵だと言われるが、米国の家計は14兆ドルの負債を抱える一方、資産はその7倍で、これには26兆ドルの現金と債券が含まれています。低金利は「恩恵どころか、実質的には大規模な税金と言える」とドイツ銀行のストラテジストは指摘しています。

 

 「低金利やマイナス金利は企業の資金調達にとっては恩恵となりますが、個人は退職後の収入を維持するために、貯蓄をもっと増やそうとする」とドイツ銀行は説明します。低金利は住宅市場を押し上げますが、一方で利益が減少して貸出意欲が弱まる銀行セクターなどを犠牲にしています。また、低金利は相場のセンチメントにとってプラスだという見方もあります。現在、株価は過去最高値を付け、金利はますます低下していますが、読者はこの状況にどれほど自信を持っているのでしょうか。(ソースWSJ

2016年7月21日 (木)

クーデター未遂のトルコで次に起こること!

 妄想にとりつかれた人間にも実在の敵がいる――。トルコで15日に起きたクーデター未遂は少なくともこの格言の証明にはなった。

 

 エルドアン大統領はトルコ政治を支配し始めてから過去15年の間に、軍の将校やジャーナリスト、警察、社会活動家、クルド系の野党勢力、イスラム主義に協力する人々への攻撃を続けてきました。そしてエルドアン氏に敵対する勢力が存在することが判明しました。

 

皮肉なのは、クーデターの失敗によって、エルドアン氏がロシアのプーチン式独裁政権への歩みを加速する可能性があるということです。

 

 トルコの全野党はエルドアン氏と共にクーデターを非難しましたが、それは当然のことです。エルドアン氏と与党・公正発展党(AKP)は昨年11月の総選挙を含め、選挙で勝利し続けています。ほとんどのトルコ人は、軍が自分たちに都合のよい影の政府「ディープステート」を運営し、選挙で選ばれた政府を当たり前のように転覆させた時代に戻ることを望んでいません。

 

 クーデターは危険なタイミングでトルコの安定を脅かしました。トルコは既に経済の減速と過激派組織「イスラム国(IS)」による攻撃の加速という問題を抱えています。トルコ軍は同国南東部でクルド人ゲリラと戦い、空軍は領空侵犯を繰り返すロシアとにらみ合いを続けています。シリアからは250万人もの難民が押し寄せ、多くが街頭で物乞いをしているのです。

 

 もしクーデターが成功していれば、首謀者たちは反発する数百万の市民を武力で押さえつけなければならなかったでしょう。エジプトでは2013年に当時のシシ国防相が選挙で選ばれたモルシ大統領から権力を奪いましが、トルコの民衆はクーデターを支持しませんでした。

 

 参謀総長を含めた軍の幹部もクーデターを支持しなかったのです。大統領を猛烈に批判している人々さえ、内戦は望まなかったはずです。トルコが崩壊していれば、シリアの混乱はさらに欧州に迫り、ISなどイスラム聖戦士にも付け入るすきを与えていたはずだからです。(ソースWSJ

2016年7月20日 (水)

南シナ海で敗訴の中国、米国に矛先!

中国が最も恐れていた屈辱的な結果でした。小国フィリピンがアジア太平洋地域の覇権国になる野望を持つ中国を徹底的に打ち負かす判決が国際仲裁裁判所から下ったためです。中国政府は引き下がるわけにはいかないのです。

 

 判決は明白かつ全員一致で、歴史的に南シナ海の大部分に主権が及ぶという中国の主張をはねつけました。中国が珊瑚礁の周囲を埋め立てて人工島を造成したことを強く非難し、中国に威嚇されていたフィリピンの漁師の主張を支持したことで、中国政府が唱える正当性は危うくなりました。

 

 中国政府は、ナショナリスティックな国民の反応に加え、「オランダ・ハーグにある国際仲裁裁判所の判事らは、中国の台頭抑止を謀る米国の手先になっている」との確信を背景に対応していくでしょう。中国は次に怒りの矛先を米国に向けることになります。中国の英字紙「チャイナ・デイリー」は12日、「米政府演出の茶番」と論評。新華社も「外部により念入りに演出された茶番だ」と同様な記事を配信しました。

 

 緊張が急速にエスカレートしている状況では、差し迫った危機は、判断ミスや事故を引き金に中国と米国が紛争にもつれ込む可能性があることです。

 

 判決に先立ち、中国による国際仲裁裁判所の非難が最高潮に達する中、中国は実効支配しているパラセル(中国名:西沙)諸島の沖合で実弾演習を実施。習近平国家主席は「中国は騒ぎになることは恐れない」と述べていました。先に同海域には米軍が空母打撃群を派遣していました。

 

 地図で見ると、仲裁裁判所が今回無効判断を下した「九段線」は、中国南部の海岸から南方に垂れる牛の舌のような形をしており、南シナ海のほぼ全域がこの中に入ります。中国国民の目から見れば、国威発揚を示し誇りに思えるものです。中国政府が発行したパスポートにはこの線が記されています。同じく人工島も中国復興の代表的な象徴となりました。

 

 かつて帝国主義の犠牲になったことを引き合いに出して国際法に訴えることが多い中国にとって、今回の判決は法律上だけでなく道徳上の難題でもあります。中国の王毅外相は2年前、国際連合(UN)の会合で「強者がやりたいように振る舞い、弱者が痛手を負うような無法地帯の法律は拒否すべきだ」と訴えています。

 

 中国が今後、埋め立てによる造成で地域の地理にさらに手を加え、係争中の他の領土でも領有権を主張したり、さらには南シナ海上空に領空を設定したりすることはいずれも考えられます。そうなれば中国は、違法行為に出たと世界の大方からみなされるでしょう。

 

 南シナ海で生じている不穏さの背景には中国の相反する2つの優先課題があります。ひとつは強大国として「平和的に台頭」するという長きにわたって表明されてきた切なる願い。もうひとつは、かつては自分たちのものだったと中国がみなしている領地のすべてと、「近海」の管轄権を取り戻すという大いなる決意です。これはつまり、米軍をこの海域から押し出すことを意味します。

 

 この著しい矛盾を反映するかのように、アジアの近隣諸国に対する中国のアプローチの仕方は積極的な友好姿勢と、けんか腰の間で揺れ動いてきました。

 

 東南アジアの政府関係者たちはいまだに、2010年にベトナムのハノイで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムで中国の楊潔チ外相(当時)が発した言葉と身振りに憤慨しています。楊氏はシンガポールの代表団をにらみつけると、人差し指を振りながらこう宣言したのです。「中国は大国であり、他の国は小国だ。それが事実だ」と。

 

 仮に中国が、フィリピンや他の沿岸諸国が新たな地域の覇者に単純に従い、中国を頂点とするヒエラルキーの中で自国の立場を受け入れると期待したのであれば、彼らは誤りに気付かされたはずです。米国の後押しを得てフィリピンが抵抗することを決めたことは中国を激怒させました。

 

 数日前、戴秉国・元外務次官はフィリピンに対し、さらなる挑発は避けるようにと警告を発し、「そうでなければ、中国は黙って座ってはいない」と述べました。

 

 しかし、フィリピンの記念すべき勝利に触発され、南シナ海で領有権を主張する国・地域のなかから同様に法的判断を仰ごうとする動きがひとつならず出る可能性はあります。なかで、最も追随しそうな国はベトナムです。

 

 中国指導部は自らを窮地に陥れています。彼らは東アジアで優位に立っていた古代の中国の立場を回復させるというビジョンと、土地を取り戻すことを関連づけてきました。すなわち、南シナ海のちっぽけなサンゴ礁であり、日本や台湾と領有権を巡って反目している東シナ海の岩礁です。本土から離れている領地として、飛び抜けて重要な場所です。これは習氏が思い描く「チャイナドリーム」の心理的な中核部分です。

 

 中国が国家の威信をかけてこの夢を追い求めるなかでとっている行為は、地域の不安をかき立て、軍拡を助長し、中国の領有権への野心に対抗するための小国同士の連携を生んできました。

 

 浚渫(しゅんせつ)工事で造成された人工島は限られた軍事施設しかもちません。いざ対立が起これば、ミサイルの集中砲火で即時に海の藻くずと消えるでしょう(超大型台風でも同じような効果があるかもしれない)。

 

 しかし重要なのは、アジアにおける米国の優位性に挑戦するという中国の決意を表すものとしては高くついているということです。

 

 中国にとって今が過去を清算するときです。最終的に中国は地域の平穏と国家的野心のどちらをとるか、決断を下さねばなりません。中国の台頭は近隣諸国の領有権の犠牲のもとによってのみ実現するという、中国のこの攻撃性の強い姿勢は法という障害にぶち当たったのです。

 

 中国が手に入れられるのは地域の安定性か、失地回復の夢のどちらかです。両方は無理なのです。(ソースWSJ

2016年7月19日 (火)

サムスンの誤算、野心的な鉱山開発で逆風!

韓国サムスングループの幹部は20136月、西オーストラリア州の州都パースの公園に集まり、豪実業界の大物と世界最大級の鉱山開発で合意できたことを祝っていました。バーベキューでワニ肉のステーキを焼きながら、上級幹部の1人は60億ドル(現在の為替レートで約6400億円)近い大口契約を獲得した従業員たちをねぎらっていました。

 

 これ以前にもサムスンは巨大プロジェクトを手がけたことがあります。例えば、サムスン物産を通じ、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイに世界一高いビル「ブルジュ・ハリファ」を施工しました。オーストラリアの富豪ジーナ・ラインハート氏が保有する「ロイヒル鉱山」の開発でも成功を収め、世界的なコモディティー(商品)ブームの波に乗るはずでした。

 

 しかし、サムスン物産によると、グループ初となる鉱山開発では、2年間で少なくとも7億ドルの損失を出したといいます。

 

不運と失策

 

 サムスンのトラブルは不運と失策が重なったものです。それは鉱山投資に失敗した多くの企業が傷を癒している時期でした。商品価格が下落し始めるまでは、鉱山に投資すれば巨額のリターンが得られるはずだったのです。サムスンが雇った請負業者は数カ月で破たん状態に陥り、プロジェクトには遅れが生じました。

 

 他の多くの鉱業運営会社と異なり、サムスン物産は予算超過リスクを全面的に背負うことに同意する一方、20158月までに鉄鉱石の輸出を開始するというラインハート氏側のタイトなスケジュールも受け入れました。また、開発作業が予定通り目標に到達しなければ、ラインハート氏が率いるロイヒル・ホールディングス(HD)に違約金を支払うことでも同意していました。

 

 通常、鉱業運営会社は超過コストを採掘会社と共同で負担します。これは資源開発プロジェクトでは一般的なことだ。採掘が開始された201512月までに、サムスンは複数の請負業者およびロイヒルHDとの間で費用のかさむ法廷闘争に巻き込まれていました。

 

 それ以降、サムスン物産はオーストラリア国内では、有料道路2本の建設に参画してきました。ただ、商品価格の下落で鉱山拡張が棚上げ状態となるなか、新たな鉱山開発プロジェクトには立ち入っていません。

 

合併のシナジーは?

 

 サムスン電子と比べれば目立たないのですが、サムスン物産は2015年に約23億ドルの純利益を計上しました。同社の業績はサムスングループの未来にとって極めて重要です。

 

 サムスンの支配株主である李一族は2015年、一部の少数株主の反対を押し切って、グループの実質的な持ち株会社とサムスン物産を合併させました。サムスン物産はサムスン電子を含むグループ会社の株式を相当数保有しています。

 

 この合併により、3代目の後継者となる李在鎔(イ・ジェヨン)氏によるサムスン電子への支配権が強まることとなりました。サムスンは合併について、グループ会社とのシナジー効果を高めることでサムスン物産の株主にも恩恵が及ぶだろうと説明しました。ただ、昨年の合併に批判的だった高麗大学ビジネススクールのキム・ウチャン教授は、こうしたシナジー効果は発揮されずにいると指摘しています。

 

 国内での成長鈍化に直面したサムスン物産は新たな機会を求めて積極的に海外に進出しましたが、その結果はまちまちです。

 

 サウジアラビアに証券取引所の建物を新設するというプロジェクトは今年に入って立ち消えになりました。原油相場が下落する中、サウジ政府がプロジェクトを凍結したからです。また、7億ドルを投じてカタールに鉄道を建設するという事業も、原油安のため中止となりました。(ソースWSJ

2016年7月18日 (月)

ハリウッド、中国企業の影響力が増大!

ハリウッドで中国企業の影響力が増しています。不動産や娯楽などを手掛ける中国の複合企業、大連万達集団(ワンダ・グループ)は、米映画製作会社パラマウント・ピクチャーズの少数株式の取得に向けて交渉中だと報じられました。万達は世界で最も支配的な娯楽企業の一社になるという目標の達成に近づきつつあります。

 

 膨大なチャイナマネーの流入は、ハリウッドに再編をもたらしているだけではありません。西側の映画とその関連企業に対し、世界最大の映画興行市場にいずれなろうとしている中国に参入する機会を与えることになります。

 

 中国では中間層の消費者が急増しており、娯楽への需要も膨らんでいます。これは世界中の映画会社や映画館チェーンにとって、利益の主要なけん引役の一つになるとみられています。

 

 アジアの買い手への資産売却について助言しているキャッスルヒル・パートナーズのピーター・シュロス最高経営責任者(CEO)は「これまでにハリウッドという複雑な暗号をうまく解くことができた外国企業はほとんどない」と指摘し、中国の買い手はこの目標の達成に近づきつつあると述べました。

 

 関係者によると、万達はパラマウント株49%の購入を目指し、パラマウントを傘下に持つ米メディア大手バイアコムと交渉中です。関係者の1人によれば、別の企業(社名は非公表)も株式取得に食指を動かしているといいます。バイアコムはパラマウントの企業価値を80億〜100億ドル(約8500億〜10600億円)と評価するような取引を目指しているといいます。

 

 万達は近年、映画製作や資金調達を手掛ける米レジェンダリー・エンターテインメントや米映画館チェーンのAMCエンターテインメント・ホールディングスを買収してきました。AMCは今週、欧州最大の映画館チェーンであるオデオン・アンド・UCIシネマズを買収することで合意したと発表しました。この買収が実現すれば、AMCは世界最大の映画館チェーンになるほか、万達は2020年までに世界の映画興行市場の20%を支配するという目標の実現に近づくことになります。

 

 これほど大規模な世界的映画館チェーンになれば、自身の配給元になる可能性があります。傘下の映画館での上映を確約し、世界公開を事実上保証するような配給元です。また、これほどの規模になると、世界の消費者の映画観賞の仕方をコントロールできるようになります。世界中のライバルが万達の慣行を採用するようになってきているからです。実際、AMCは多額の資金を投じて映画館の改装に取り組み、リクライニング式の座席を導入したり、飲食物のメニューを拡大したりしています。ライバルはこの戦略をまねており、AMCはこれを欧州のオデオンにも持ち込む計画です。

 

 ハリウッドへの投資を検討している中国企業には、阿里巴巴集団(アリババグループ)や騰訊控股(テンセントホールディングス)などがあります。

 

 キャッスルヒルのシュロス氏は「ハリウッドの幹部が大挙して資金集めのために飛行機で中国を訪れており、グローバル化が進む中、状況に変化が起こっている」と話しました。

 

 中国の映画興行市場が活況なのは、あらゆる規模の都市で映画館が急ピッチで建設されていることも一因です。同国では、シネマコンプレックス(複合型映画館)が初めてつくられる都市も多い。こういった動きは、カナダのIMAX(アイマックス)や米ドルビー・ラボラトリーズといった映画館関連会社に恩恵をもたらしており、これら企業の中国部門の収入はかなり伸びています。

 

 ハリウッド幹部は中国が信頼できる収益源になることを願っていますが、乗り越えるべきハードルは残っています。中国では、大半の映画製作会社がチケット収入の約25%しか受け取っていません。ちなみに米国や他の西側諸国では、チケット収入を折半するのが一般的です。また、中国は依然として1年間に公開できる外国映画の本数に制限を設けています。現在は年間34本だが、ハリウッド幹部の多くは、現行の契約が切れる来年にこの数が増えることを期待しています。

 

 中国企業によるハリウッドへの投資が増えるのに伴い、同国の影響力も強まっています。

 

 レジェンダリーが製作した「ウォークラフト」や「パシフィック・リム」といった映画は、商業的には米国でより中国での方が成功しました。パシフィック・リムについては、米国での興行成績が期待外れだったにもかかわらず、続編の製作が発表されました。

 

 ハリウッドの作品に中国の俳優や商品が出てくるケースも増えています。例えば、今年公開のSF映画「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」では、俳優たちが中国の「蒙牛」ブランドの牛乳を飲んだり、テンセントのメッセージングアプリ「QQ」を使ったりしています。

 

 北京に本拠を置く特殊効果会社、Base FXのクリストファー・ブレンブルCEOは「中国の商業的関心がますます西側の映画に入り込んできているのを感じる」と述べました。

 

 中国企業とハリウッドとの連携は、芸術としての映画製作について優先順位が互いに異なる2つの文化を結びつけています。

 

 中国のメディア大手、湖南電広伝媒の最高コンテンツ責任者(CCO)を務める周石星氏は「中国市場は特別な状況にあるため、われわれが映画を選ぶ際には『前向きなエネルギーが感じられる』作品を選ぶ。つまり、われわれがある映画に投資するとき、優先するのは映画の政治的・政策的なリスクを評価することで、その次に商業的な見通しを評価する」と述べました。同社はライオンズゲート・エンターテインメントの一連の作品に共同で出資しています。(ソースWSJ

2016年7月17日 (日)

ポケモンGO大ヒット、任天堂どれほど利益得るか!

米国などで爆発的な人気となっているスマートフォン(スマホ)向けゲーム「ポケモンGO」-。そこから生じる利益はどこに行き着くのか。それを探ること自体、やる価値のある「ゲーム」です。

 

 12日の東京市場の任天堂株は、前日比13%高の22840円に上伸した。前日11日には25%の上げ幅を記録していた。時価総額は3兆円(約300億ドル)を超えるまでに押し上げられた。

 

 任天堂の運勢が突然好転したわけで、同社がポケモンGOから利益を得るとの投資家の期待感を反映している。ポケモンGOはスマホ向けアプリ。プレーヤーは現実世界を映したスマホの画面上に重ねて表示されるアニメキャラクターを探すというものです。このアプリは無料でダウンロードできますが、プレーヤーがアプリ内でポケモンをおびき寄せる「おこう」などのアイテムを購入することによって売り上げが発生します。

 

 このゲームの開発と販売を担うのは、非公開企業のナイアンティック(米カリフォルニア州)です。同社は昨年、アルファベット傘下のグーグルからスピンアウトして誕生した会社です。同社は昨年10月、株式会社ポケモン(東京)、グーグル、そして任天堂から2000万ドル調達したことを明らかにしました。一定の節目を達成した場合は、追加で1000万ドルの出資を受けられる条件が付いています。新興企業ではよくあることですが、ナイアンティックも投資家による正確な出資比率を公表していません。

 

 任天堂はナイアンティックを部分的に所有していることから利益を得る可能性があります。同社はまたポケモンの株式も32%保有しています。ポケモンは長年、ポケモンのキャラクタービジネスを管理しており、自らが「ポケモンGO」のプロデューサーだとも述べています。さらに、任天堂自身も「Pokémon Go Plus」という35ドルの携帯デバイスを販売する計画です。これはゲーム内でより簡単にポケモンを捕まえられるようにするものです。

 

 最後に、任天堂への間接的な利益もあります。同社は今後、保有する「どうぶつの森」や「ファイアーエムブレム」といったシリーズのスマホ向けゲームの配信を始めます。「ポケモンGO」での経験は、独自のスマホゲームをもっと大きな成功に導くヒントを同社に与えている公算が大きいと思われます。

 

 これらを総合し、株式市場は現在の任天堂の企業価値は1週間前よりも120億ドルほど高いと判断したのです。

 

 だが、この利益の流れには依然として不透明な点があります。このため東京を拠点とする証券アナリストたちは、任天堂の将来の収益モデルの予測に苦慮しています。エース経済研究所のアナリストの安田秀樹氏は、現時点では一切情報が提供されておらず推量しかできない、と述べています。

 

 JPモルガンのアナリスト、森はるか氏は、ゲームの売り上げのうち、アプリストアを運営するアップルないしグーグルの取り分を除外したゲーム収入をナイアンティックとポケモンが分け合うと想定しています。森氏はアプリの月間収入が300億円の場合、通年の任天堂の利益が250億円増える公算が大きいと予測しています。付属品として販売されるPokémon Go Plus5000万個売れれば、ほぼ同程度の利益がかさ上げされるとみているといいます。

 

 前年度(163月終了)の任天堂の純利益が165億円にとどまっていたことを考えると、これは大きい。同社自身の今年度(来年3月まで)の純利益見通しは350億円ですが、これはポケモンGOが大ヒットする前に出された予測です。

 

 モルガン・スタンレーMUFG証券の長坂美亜氏は、任天堂の利益を相当大幅に押し上げるためには、今回のゲームが爆発的な人気を保つ必要があるほか、何百万人ものユーザーが毎月ゲームのアイテムにかなりの額を払うことも必要になると警告しています。

 

 アナリストたちは、ポケモンGOの最盛期がこれからかもしれないと述べています。なぜならポケモンGOは、まだ日本で配信されていないからです。日本は売り上げで世界最大級のスマホゲーム市場であるほか、誕生から20年となるポケモンシリーズの発祥の地でもあるからです。

 

 ポケモンGOは、1週間足らず前に米国、オーストラリアとニュージーランドで配信が始まったばかりです。(ソースWSJ

2016年7月16日 (土)

ポケモンGOの衝撃、任天堂の救世主となるか!

現実世界の街中でポケモンのキャラクターを探すスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」が予想を超える大ヒットとなり、任天堂の株式時価総額はわずか数日で90億ドル(約9300億円)も増加しました。

 

 3月に配信が始まった同社初のモバイルゲーム「Miitomo(ミートモ)」が期待外れだっただけに、ポケモンGOの人気は、それまで業績見通しへの懸念で落ち込んでいた任天堂株に待望の勢いを与えました。同社の従来型ゲーム機事業が苦戦するなか、モバイルゲーム進出にかかる期待は大きく、モバイルゲームは近年のビデオゲーム業界の成長の大半を占めます。

 

 ポケモンGOは、公園や建物、地下鉄の駅などに潜んでいるピカチュウなどのかわいらしいキャラクターを探すゲームです。「拡張現実(AR)」の技術を使い、スマホのカメラを通じて見る現実の世界と、色鮮やかなキャラクターのデジタル画像とを融合しています。

 

 ポケモンGOは、任天堂が32%の株式を保有する株式会社ポケモンと、グーグルの親会社アルファベットからスピンアウトしたナイアンティック社との共同プロジェクトです。ゲームは米国、オーストラリアとニュージーランドで6日に配信がスタートしました。ナイアンティックによると、予想以上の人気でサーバーに問題が生じているため、英国やオランダなどの国々での配信開始が遅れているといいます。

 

 任天堂にとって爆発的に人気が出ることは珍しくありません。今回の熱狂が続くようなら、新たな収益の扉が開く可能性があります。このゲームアプリは無料でダウンロードできますが、ゲーム内で使えるアイテムは販売されており、売り上げにつながります。例えば、ポケモンを捕まえるのに役立つボールは1ドル以上で販売されています。

 

 市場データ提供会社のアップ・アニーによると、配信が始まった国では、このアプリがダウンロード数と売り上げでトップになるのに1日もかからなかったそうです。データ会社のシミラーウェブは11日、デーリーアクティブユーザー数で見ると、米国のアンドロイドユーザーの間ではツイッターを超えそうな勢いだと述べました。

 

 アナリストたちは、ポケモンGOは一時的なブームで終わるリスクがあるほか、安全に関する問題の克服が課題だと指摘しています。米国と豪州の警察当局は安全に関する警告を出し、プレーヤーは周囲に気をつけるべきだと述べています。

 

 ポケモン社(東京)の広報担当者は、「このゲームをこれほどの人気にしてくれたファンに感謝している。皆さんがガイドラインに従い、マナーを守って安全にゲームを楽しんでくれることを望んでいる」と述べました。

 

 プレーヤーがゲームをダウンロードすると、すぐに注意を促す画面が表示されます。だが、ダコタ・シュワーツさん(27)の役には立たなかった。ハイテク業界で働くシュワーツさんは、このゲームでデジタルなポケモンを100匹ほど捕獲しています。

 

 彼は、公園で恐竜のような茶色のポケモンを捕まえようとして足首をねんざしました。「テニスコートの向こうに『カラカラ』がいるのは分かっていました。見てはいけない時にスマホの画面を見てしまった」と話しています。

 

 今回のゲームは、2002年から任天堂の社長を務めていた岩田聡氏の死去から1年というタイミングでヒットしました。同氏は当初、任天堂がスマホ向けゲームを作ることに後ろ向きだったのですが、その後「ポケモンGO」の開発に携わりました。

 

 長年のポケモンファンであるニュージャージー州クロスター在住のジョン・セオさん(25)は、ニューヨークのブルックリンで友人とこのゲームをしていたところ、若い女性がポケモンを捕まえているのを見ました。2人はすぐに会話を始めました。「結局、彼女をデートに誘った。知らない人に会って、こんなに気持ちが通じ合ったように感じたことは今までにない」と話しました。

 

 任天堂の事業は近年苦戦してきました。スマホ向けゲームや、マイクロソフトやソニーといったライバルのゲーム機に押されてきたのです。ポケモンGOの滑り出しが好調なことで、任天堂がスマホゲームで躍進する可能性が出てきました。

 

 カドカワの取締役で業界を長年観察してきた浜村弘一氏は「ポケモンGOは唯一無二のゲームだ。誰もが知る有名なキャラクターと、グーグルが支える最先端技術とを融合したものだからだ」と語っています。グーグルと任天堂はともに、ポケモンGOを共同開発したナイアンティックに出資しています。(ソースWSJ

2016年7月15日 (金)

ポケモンGOの衝撃、任天堂の救世主となるか!

現実世界の街中でポケモンのキャラクターを探すスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」が予想を超える大ヒットとなり、任天堂の株式時価総額はわずか数日で90億ドル(約9300億円)も増加しました。

 

 3月に配信が始まった同社初のモバイルゲーム「Miitomo(ミートモ)」が期待外れだっただけに、ポケモンGOの人気は、それまで業績見通しへの懸念で落ち込んでいた任天堂株に待望の勢いを与えました。同社の従来型ゲーム機事業が苦戦するなか、モバイルゲーム進出にかかる期待は大きく、モバイルゲームは近年のビデオゲーム業界の成長の大半を占めます。

 

 ポケモンGOは、公園や建物、地下鉄の駅などに潜んでいるピカチュウなどのかわいらしいキャラクターを探すゲームです。「拡張現実(AR)」の技術を使い、スマホのカメラを通じて見る現実の世界と、色鮮やかなキャラクターのデジタル画像とを融合しています。

 

 ポケモンGOは、任天堂が32%の株式を保有する株式会社ポケモンと、グーグルの親会社アルファベットからスピンアウトしたナイアンティック社との共同プロジェクトです。ゲームは米国、オーストラリアとニュージーランドで6日に配信がスタートしました。ナイアンティックによると、予想以上の人気でサーバーに問題が生じているため、英国やオランダなどの国々での配信開始が遅れているといいます。

 

 任天堂にとって爆発的に人気が出ることは珍しくありません。今回の熱狂が続くようなら、新たな収益の扉が開く可能性があります。このゲームアプリは無料でダウンロードできますが、ゲーム内で使えるアイテムは販売されており、売り上げにつながります。例えば、ポケモンを捕まえるのに役立つボールは1ドル以上で販売されています。

 

 市場データ提供会社のアップ・アニーによると、配信が始まった国では、このアプリがダウンロード数と売り上げでトップになるのに1日もかからなかったそうです。データ会社のシミラーウェブは11日、デーリーアクティブユーザー数で見ると、米国のアンドロイドユーザーの間ではツイッターを超えそうな勢いだと述べました。

 

 アナリストたちは、ポケモンGOは一時的なブームで終わるリスクがあるほか、安全に関する問題の克服が課題だと指摘しています。米国と豪州の警察当局は安全に関する警告を出し、プレーヤーは周囲に気をつけるべきだと述べています。

 

 ポケモン社(東京)の広報担当者は、「このゲームをこれほどの人気にしてくれたファンに感謝している。皆さんがガイドラインに従い、マナーを守って安全にゲームを楽しんでくれることを望んでいる」と述べました。

 

 プレーヤーがゲームをダウンロードすると、すぐに注意を促す画面が表示されます。だが、ダコタ・シュワーツさん(27)の役には立たなかった。ハイテク業界で働くシュワーツさんは、このゲームでデジタルなポケモンを100匹ほど捕獲しています。

 

 彼は、公園で恐竜のような茶色のポケモンを捕まえようとして足首をねんざしました。「テニスコートの向こうに『カラカラ』がいるのは分かっていました。見てはいけない時にスマホの画面を見てしまった」と話しています。

 

 今回のゲームは、2002年から任天堂の社長を務めていた岩田聡氏の死去から1年というタイミングでヒットしました。同氏は当初、任天堂がスマホ向けゲームを作ることに後ろ向きだったのですが、その後「ポケモンGO」の開発に携わりました。

 

 長年のポケモンファンであるニュージャージー州クロスター在住のジョン・セオさん(25)は、ニューヨークのブルックリンで友人とこのゲームをしていたところ、若い女性がポケモンを捕まえているのを見ました。2人はすぐに会話を始めました。「結局、彼女をデートに誘った。知らない人に会って、こんなに気持ちが通じ合ったように感じたことは今までにない」と話しました。

 

 任天堂の事業は近年苦戦してきました。スマホ向けゲームや、マイクロソフトやソニーといったライバルのゲーム機に押されてきたのです。ポケモンGOの滑り出しが好調なことで、任天堂がスマホゲームで躍進する可能性が出てきました。

 

 カドカワの取締役で業界を長年観察してきた浜村弘一氏は「ポケモンGOは唯一無二のゲームだ。誰もが知る有名なキャラクターと、グーグルが支える最先端技術とを融合したものだからだ」と語っています。グーグルと任天堂はともに、ポケモンGOを共同開発したナイアンティックに出資しています。(ソースWSJ

2016年7月14日 (木)

日本の参院選、有権者は「安全と安定」選択!

不安定な政治的情熱によって動揺する世界にあって、日本はそれとは無縁の孤立した島です。

 

 10日投開票された参院選で、当初の開票結果では、安倍晋三首相率いる連立与党が過半数議席を伸ばし、憲法改正発議に必要とされる議席も確保し。既に政権を担当して3年半、安倍氏は少なくとも2018年まで在任する公算が大きいようです。

 

 日本の人口は減少し、成長は横ばいで、低賃金の非正規労働者がかつてないほど増えています。現状維持に対する「反発」の条件は存在しています。それは先月、欧州連合(EU)から離脱を決めた英国、あるいはドナルド・トランプやバーニー・サンダースといった非伝統的な政治家に目を向ける米国と似た反発条件です。

 

 なぜ日本ではそうした反発が起こらないのでしょうか? 一つ挙げられるのは、他国で不満をかき立てたスタグネーション(景気停滞)はここ日本では全く目新しいことではないことです。この国は、四半世紀以上前のような経済的けん引役であることをやめてしまい、金利とインフレは1990年代末以降ゼロ近辺になっています。

 

 安倍氏の包括的経済政策、つまり「アベノミクス」は、抜本的な金融緩和や、企業の社外取締役増加などビジネス慣行変更などを盛り込んでいますが、日本を急速な経済成長に戻すことはありませんでした。しかしそれは株式市場と企業利益を押し上げました。最近逆転しているとはいえ円安のおかげだったのです。その結果、安倍氏はバラ色の数字を、少ないながら吹聴できたのです。

 

 最初の1.3%は、日本の総人口に占める非日本人の割合です。それは深刻な移民問題を醸成するクリティカル・マス(臨界質量)にはほど遠いものです。つまり、メキシコとの間に壁を構築するというトランプ氏の提案につながった反移民感情、ドイツの州選挙で反移民政党が過去最高の投票率を記録するに至った雰囲気、そしてブレクジット(英国のEU離脱)運動を勝利に導いた状況などとは無縁なのです。

 

 東京の民間シンクタンクを主宰する船橋洋一氏は「日本の最大の弱点、つまり閉鎖された労働市場は、実際には逆説的に多大な恩恵を日本にもたらした」と述べました。「彼らは移民に責任を押しつけられない」のです。

 

 もう一つの数字、350万ドルについて。これは時価総額で日本最大の企業であるトヨタ自動車の豊田章男社長の直近の年俸です。それはトヨタが200億ドルを上回る純利益を計上し、自動車販売台数が世界一になった年の年俸です。ちなみに、米ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)の2015年の総報酬は2860万ドルで、前年比77%増でした。

 

 野党陣営の候補者たちは、アベノミクスは金持ちを優遇していると非難しました。だが、反エリート主義的な攻撃目標自体が欠如しており、それが、野党陣営に政治的な得点を稼がせるのを難しくしたのです。

 

 批判者を封じ込めるため、安倍氏はほとんどすべての経済公約について、介護施設の数や高齢者介護者数の引き上げといった提案に終始しました。野党民進党の牧山弘恵参院議員は安倍氏のそうした出方について、民進党の政策を模倣していると批判しました。

 

 選挙後のアベノミクスは、こうした家族問題や財源問題に集中する公算が大きい。一方で、安倍氏は外国投資家に関心のあるテーマ、例えば解雇を容易にする労働市場改革や、非熟練労働者(訳注=外国人労働者)の大量受け入れ問題については慎重に動くでしょう。

 

 10日の選挙結果が現状維持の追認に該当するのであれば、両陣営の選挙レトリックも現状維持の追認だったわけです。

 

 長野県の古い城下町・松本の駅前で開かれた投票数日前の野党集会で、21歳の学生活動家ホンマ・ノブカズさんは、安倍氏が日本の平和憲法を権威主義的な憲法に変えようとしていると非難しました。ホンマさんは聴衆(主として年配の人々だった)に対し、彼の目的は第2次世界大戦終了以降に永続して来たものを大切に守ることだと述べました。彼は「わたしがここに立っているのは、それを守りたいからだ」と語りました。

 

 最後のスピーカーが演説を終了して数分後、野党の支持者たちは、次に与党陣営による集会が予定されているため礼儀正しくその場を立ち去りました。すると安倍氏を乗せた車がやって来て、演説のためバンの上に登りました。

 

 安倍氏は、憲法改正について何もいませんでした。安倍氏は、日本の確立された秩序に対する本当の脅威は、野党陣営から来ていると述べました。そして与党に投票することは、60年間続いている日米同盟と、この国の自衛隊の力を堅持する投票を意味すると述べました。また安倍氏は、自衛隊は自然災害後に人々を支援することが主要な任務だと語っています。

 

 10日夜、選挙の勝利を祝いながらも、安倍氏は憲法改正問題を討議するのは国会だと述べるにとどまり、これを質問しようとするインタビュアーにおおむね拒絶的な発言に終始しました。

 

 安倍氏が憲法改正を議論したくないのは、この種の話をしたら同氏を追認したばかりの有権者がろうばいする恐れがあるからです。権力の座にとどまるため、安倍氏は日本を再び偉大にする必要はない。安定を求める人々の希望を満たすのに十分な状態に保つだけでいいのです。(ソースWSJ

2016年7月13日 (水)

ブレグジットショックから投資家が学べる5つのこと!

英国が予想に反して欧州連合(EU)離脱を決めたことについて、投資家はその影響が一巡するまで何年もかかる可能性があることを自覚しているようです。そうした中、世界のあちこちで五月雨式に市場は不安定な動きを見せています。

 

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、インデックスファンドの創始者でバンガード・グループを設立したジョン・ボーグル氏やノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー氏など、投資や行動ファイナンスの専門家数人に、投資家がブレグジット(英国のEU離脱)のショックから学べる五つの教訓を聞きました。

 

1.相場が動くタイミングは見極め困難

 

 インデックス投資の古典とされる名著「敗者のゲーム」で論じられているように、相場がいつ上がるかは事前には決して分かりません。

 

 人間は不確実性や複雑さをうまく扱えないため、最も有能な予想家でさえ地政学的イベントを予測するのは苦手なことが多い。これがエフィシェント・フロンティア・アドバイザーズの投資マネジャー、ウィリアム・バーンスタイン氏の見解です。

 

 地政学的不確実性に基づいて証券の価格を判断するという次のステップは、直観とは全く相いれない場合もあるため、それに輪を掛けて難しいと同氏は言います。「経済成長の減速(加速)が見込まれるというだけで投資収益率が下がる(上がる)わけではない」とした上で、「その象徴的な例が中国だ」と指摘しています。

 

 パッシブ運用の最も積極的な支持者の一人であるボーグル氏によれば、相場が動くタイミングを見極めようとしても、それに伴うリスクを上回るだけの見返りを得ることは絶対にできません。市場を牛耳っているのは短期的視野に立ったトレーダーや投機筋、というのが同氏の考え方です。これらのトレーダーは感情で動いており、こうした感情の持続期間や度合いを予想することはできないため、「市場のタイミングを判断しようとするのは絶対にやめた方が良い」と同氏は言います。

 

2.人間が動かす市場は常に予想外の展開

 

 米サンタクララ大学のメイア・スタットマン教授(金融学)によると、市場は「たいてい合理的かつ利口で思慮深く、企業収益に関する情報や(英国の)EU離脱で生じかねない影響を織り込んでいる」。

 

 しかし、同教授や他の専門家らは、短期的には人間の理不尽な行動が市場の投資収益を左右することもあると言います。

 

 エール大学教授(金融学)のシラー氏は「市場は実は人間で構成されており、市場での人々の行動は論理的推理に基づいたものではない」と指摘。同教授は自著「投機バブル-根拠なき熱狂」で、市場のボラティリティー(変動率)と資産バブルを分析しています。

 

 一つ朗報があります。ボーグル氏によれば、長期的に見ると、市場の投資収益率は企業収益の伸びと配当利回りによって決まり、最終的には国内総生産(GDP)成長率を反映する。つまり「米国(と世界の)経済が(たとえ減速しようが)拡大している限り、恐らく債券や現金よりも株式の方が収益率は高い」というのです。

 

3.目先の相場動向は気にせず長期投資を目指すべし

 

 ブレグジット決定後の2営業日でSP500種指数は5.3%下落したが、その後の3営業日で下げ幅をほぼ全て回復しました。

 

 今週に入り市場は再び荒れ模様だ。ブレグジットやその他の地政学的・マクロ経済的問題が渦巻く中、そうした不確実性と向き合う取引はコストや困難を伴いかねないのです。

 

 ボーグル氏は「目先の感情で行動するのは逆効果だ。死ぬほど怖いときに逃げ出すことは確かに簡単だ。だが、いつ戻れば良いかを教えてくれる人などいない」と指摘します。

 

 同氏によると、長く投資を続けている人たちは平均して「1年に約1回のペースでいわゆる市場危機に直面する」ことが予想されます。「あなたが50歳だとしても、長期間保有してきた投資資産をいま手放して、例えばこれから30年か40年の間に30回、40回と絶好のタイミングで再度新たな投資を是非試みたいと思うか」と同氏は問い掛けています。

 

4.分散投資が鍵

 

 専門家らはパニックを起こさずに厳しい市場環境を乗り切るための運用戦略として、リスクが自分の許容範囲内で相関関係のない資産クラスに分散投資することを奨励しています。

 

 インデックスファンドに満足していると話すスタットマン氏は、「陳腐に思えるだろうが、ただ情報を集めるだけの人たちよりも本当に頭が良くない限り、それ以外の戦略で生き残ることは不可能だ」との意見です。

 

 だがバーンスタイン氏は、投資家にとって分散投資は難しいと指摘。「強気相場のときは誰もがリスクに寛容となり、長期保有を前提とした投資手法を志す」が、「弱気相場では安全性のことばかり考えるようになる」と言います。

 

5.アドバイザーがいればパニックは回避可能かも

 

 有能なファイナンシャルアドバイザーが提供する最大の便益の一つは、顧客の財務状況を分析して理にかなった資産運用計画などを指南することで、特に市場がショックに見舞われているときはなおさら重要な役割を担う、と専門家らは指摘します。

 

 シラー氏は「もっと多くの人々がファイナンシャルアドバイザーを持つべきだと思う」とした上で、「全体としてプロのアドバイザーは自制や分散投資を推奨し、より広い意味での常識を教えてくれるはずだ」と述べています。

 

 もちろん、どんなに忍耐強く現実主義のアドバイザーであっても顧客が腹を立てることは多くあるでしょう。

 

 「つい最近相場が大きく動いたときにパニックを起こした人は、基本的な投資心理に重大な問題があります。(中略)パニックになる人は、相場の下げが2007年から09年までの下げに近づけば(こうしたことは将来必ず起きると予想される)、アドバイザーに電話して(保有金融資産を)全部売却するよう伝えることだろう。そしてアドバイザーは売却に動くだろう」とバーンスタイン氏は言います。(ソースWSJ

2016年7月12日 (火)

アップルの新iOS10、ダウンロードは慎重に!

あなたは、アップルの新しい携帯端末向け基本ソフト(OS)「iOS 10」をきっと気に入るだろう。でも、それはおそらく今すぐにというわけではありません。

 

 アップルは7日、iPhone(アイフォーン)とiPad(アイパッド)のユーザー向けに、iOS 10の公開テスト版であるパブリックベータ版の提供を開始しました。メンバーに登録すると、アップルからソフトウエアをダウンロードするための招待状が受け取れます。すると、「メッセージ」、「ミュージック」および「マップ」のアプリケーションの新機能が使えるようになります。

 

 しかし、もし私があなたなら、すぐにはダウンロードしないだろう。メインで使っている端末なら絶対にしません。私は過去1週間、iOS 10を試験的に使ってみましたが、たくさんのバグやクラッシュを経験したし、動きが遅くなることも多々あったからです。サードパーティーのアプリがほとんど入っていない新品のiPhone6sを使ったにもかかわらずそうだったのです(この無償ソフトはiPhone5iPadの第4世代、およびiPod Touchの第6世代以降のデバイスに対応する。iPhone4sでも十分使える)。

 

 iOS 10のベータ版をインストールして、前のバージョンに戻ることも簡単でありません。ベータ版のソフトを削除して、iOSの最新版を再インストールし、以前のiTunes(アイチューンズ)のバックアップからデバイスを復元しなければならなくなります。どうするにせよ、試す前にデバイスのバックアップを取るべきえしょう。

 

 ベータ版の狙いは、冒険心のある人たちにアップルのエンジニアへのフィードバックをしてもらうことにあります。そうすれば今秋の一般公開前にソフトウエアの改善に取り組めるからです。アップルは昨年このプログラムを開始しましたが、今のところ成功しています。私はすでに「ミュージック」アプリのロード時間が遅いことと、「メッセージ」の送信エラーが頻発していることについて報告してきました。

 

 バグはあるものの、私は新機能を楽しんで使ってきました。それはあなたのiPhoneの使用体験を確実に向上させるはずだからです。以下に私のファーストインプレッションをまとめました(アップデートされた音声アシスタント機能「Siri(シリ)」については、まだサードパーティー製のアプリで動かないので除外する)。詳細なレビューは秋の一般公開時に行います。

 

 最も大きく変更されたのは、私が一番良く使っているアップルのアプリ「メッセージ」でした。私はこのメッセージに面白い画像や手書きのメモ、ステッカーを付け加えて家族や友人たちの一歩先を行こうとしました(ただし、サードパーティーのオプションが加わるまでは、スマイリーフェイスと、特徴がなくて気味が悪いパントマイムの手のようなものくらいしかありません)。

 

 iOS 10をダウンロードした人とのメッセージのやりとりは、ずっと楽しくなります。例えば、飼い犬がトイレットペーパーを食べている写真をただ送りつけるのではなく、見えないインクで隠して送って相手を驚かすことができます。これは受け手が写真の上をスワイプしないと表示されません。また、レーザービームが画面いっぱいに表示される効果以上に、「良い1日を」というメッセージを格好よく送る方法はないのではないのではないか(厄介なことに、現段階ではこのフルスクリーン効果を無効にできない)。

 

 今はさしずめ遊園地のような状態です。つまり、楽しみはたくさんあるが、混沌(こんとん)としている。新しい「App」ボタン(ステッカーが出てくる)と、「Digital Touch」ボタン(手書きなどの機能が出てくる)をタップすれば、メニューの迷宮に入り込んでしまうこと間違いなしです。青い送信ボタンを長押しすると、別の機能が出てくるし、ふきだしを押すと、もっとオプションが出てきます。

 

ミュージック

 

 新しい「ミュージック」アプリをマスターするのにPh.D.(博士号)は必要なくなりました。アップルはサービス開始から1年を経てようやく、最初のリリース時に必要だった洗練と簡潔さをこのサービスに加えました。あなたが保存した曲とアルバムは全て「Library」のタブに入ります。ユーザーに対するおすすめは「For You」のタブ内に表示され続けますが、そこには最近かけた音楽も表示されるようになりました。新しいものは「Browse」のタブ内に表示されます。また、画面の下側から上に向かってスワイプすることで、次にどの曲がかかるかが簡単に分かるようになりました。

 

 人生の大切な瞬間を整理しようとする戦いは続きます。「写真」アプリの新しい「Memories」タブは、古い写真をアルバムにしてくれます(スナップチャットの同名の新機能と混同しないように)。自動的に作成される「2015年のこの日は」というアルバムは、1年前のように今週ビーチに行くべきだったことを思い起こすのに良いです。また、グーグルフォトと同様に、アップルも物体認識による検索機能を向上させました。検索ボックスに「犬」と入力すると、私が撮った飼い犬の写真全てが表示されました。そこには猫の写真2枚も混じっていましたが…。「コンピューター」や「タキシード」など、適当な検索語を入力して何が出てくるかを見てみると面白いかもしれません。

 

その他

 

 私がiOS 10で気に入っている機能の一部は、隠れた宝物です。「時計」アプリには、寝る時間であることを知らせるベッドタイム機能が新たに追加されました。よりやさしいアラームで目覚めることも可能になったのです。比較的新しいデバイス(iPhone6s6sプラスおよびSE)の場合、持ち上げると電源ボタンを押さなくても画面に時間が表示されます。また、ライト(懐中電灯)が明るすぎると感じたときは、コントロールセンターにあるライトのアイコンを押すことで明るさを調整できます。(ソースWSJ

2016年7月11日 (月)

テスラの自動運転技術、利用者にも困惑の声 !

昨年11月、バージニア州のインターステート66(州間高速道路66号線)をテスラ・モーターズ製電気自動車「モデルS」で走行していたカール・ベネットさんは、運転席に座ったまま印刷物に目を向け始めました。17分間連続で自動走行させたあとのことでした。

 

 その数秒後、見上げると、道路の前方に一台のトラックが駐車しているのを見つけました。ベネットさんによると、車の「オートパイロット(自動操縦)」システムは期待通りに反応しなかったといいます。彼はブレーキを踏み、急ハンドルを切ったのですが、トラックにぶつかってしまいました。彼は負傷しませんでしたが、価格106000ドル(約1070万円)もするこの車は台無しになってしまったのです。

 

 ベネットさんはバージニア州ウォレントンに住むコンサルタントです。彼は製造元のテスラ・モーターズに苦情を言いました。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が閲覧したテスラからの書簡によれば、同社は、衝突はベネットさんの自己責任だと回答しました。

 

 テスラは書簡で、この自動運転システムは想定された通りの仕方で機能したと述べ、その根拠として車の「ヒストリカル・ログファイル」(コンピューターの利用状況やプログラムの実行状況などを記録したファイルで、ベネットさんが署名している)からのデータを引用しました。またオーナー・マニュアルも引用していました。そこには、この技術は「あらゆる対象物は検知できず、静止した車両に対してブレーキを掛けたり減速したりしない可能性がある」と明記されていました。

 

 ドライバーやエンジニアたちとのインタビューから判断すると、人々の自動運転への熱狂はこの自動運転技術の能力を超えていることがうかがえます。それは道路上の安全性への懸念を深めるものでした。

 

 昨年10月にデビューして以来、テスラのオートパイロット・ソフトウエアは一握りの衝突事故と関連づけられてきました。今年5月の死亡事故もそうで、現在、米自動車安全規制当局が調査中です。テスラによれば、この死亡事故はオートパイロット搭載のテスラ車での初めての事故です。それは、自動運転技術への厳しい見方が一段と広まる引き金となっています。

 

 また規制当局は6日、今月1日にペンシルベニア州で発生したテスラ・モデルXの衝突事故について「情報収集」していると発表しました。テスラは「オートパイロットがこの事故に関係していると信じる理由は一切ない」が、この車からの一部のデータにアクセスできていないと述べました。

 

 事故を起こしたドライバー2人はWSJに対し、テスラの技術は停止車両を認識するのを怠ったと思うと述べています。その結果、彼らの車両は走行し続け、事故を回避できなかったといいます。

 

 他のオートパイロットのユーザーによると、オートパイロットは極めてうまく機能する。このため、かえってユーザーの油断を誘い、潜在的に危険な状況に陥れるのだといいます。例えば運転中に居眠りしたり、車を道路の工事区域に進入させてしまったりしたというものです。

 

 ノースカロライナ州ヒッコリーに住むコンピュータープログラマーのジェイソン・ヒューズ氏は「わたしは、通常よりも携帯電話を見る回数が少し増える」と述べました。同氏はテスラ車を運転中、オートパイロット・システムを90%方利用しているといいます。同氏は「人々はこのシステムを過剰に信頼していると思う。彼らはそれがマジックのように機能すると考えていますが、感知器が教える以上にうまくは行かないのだ」と述べています。

 

 WSJの問い合わせに対し、テスラの広報担当者は、オートパイロットの導入以降、非死亡事故が幾つかあったが、オートパイロットを利用しているテスラのドライバーの事故発生率は、利用しないドライバーよりはるかに低いと述べました。オートパイロットは世界全体で約7万台の車両に搭載されています。

 

 それでもテスラは、ドライバーが自動運転システムを誤用する時に介入する方法を模索し始めました。

 

 事情に詳しい関係者によれば、テスラは、オートパイロット機能を一時的に無効にする仕組みの導入を決定する可能性があります。例えばドライバーが警告ライトないし警告ベルに恒常的に対応しない場合、そして自分の手をハンドルに戻さない場合だといいます。

 

 テスラの広報担当者によれば、テスラはまた、数カ月以内にオートパイロットのソフトウエアをアップデートする計画です。ただし5月の死亡事故を受けて特別に変更するつもりはないといいます。

 

 57日に衝突事故で死亡したのはジョシュア・ブラウンさんで、18車輪付きの大型トラック(18輪トレーラー)に衝突しました。事故処理したフロリダ州高速道路パトロール隊のキム・モンテス巡査部長は、ブラウンさんの乗っていた「モデルS」車内でポータブルDVDプレーヤーが見つかったと述べました。法執行当局は、このプレーヤーが衝突当時オンになっていたかどうか分からないといいます。トレーラーの運転手はインタビューで、衝突直前、ブラウン氏が映画を見ていたと述べています。

 

 テスラと、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、オートパイロットの性能を積極果敢に売り込む一方で、オートパイロットの利用で注意を呼びかけてきました。オーナー・マニュアルでは、このオートパイロット技術は「運転時の快適さと便利さのために設計されたものであって、衝突警告ないし衝突回避システムではない」と注意書きされています。

 

 テスラは、オートパイロットについて「道路走行上、最も進歩したシステムだが、テスラ車をオートノマス(自主的運転)車両に変えるものではないし、ドライバーが責任を放棄できるようにするものでもない」としています。(ソースWSJ

2016年7月10日 (日)

中国、仲裁判決無視なら前例は「米国」!

南シナ海の領有権をめぐりフィリピンが起こした国際仲裁手続きで、来週下される仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の判決を中国が無視する意向を示しているのは異例のことですが、前代未聞の話ではありません。過去にも注目すべき係争で国際的な裁判の判決を無視した国があります。それは米国です。

 

 国際司法裁判所(ICJ)は1986年に、米国がニカラグアの反政府武装組織を支援したとして同国政府が訴えた裁判で、米国に37000万ドルの賠償を命じる判決を下しました。しかし米国は、ICJには管轄権がないと主張し、審理の大半をボイコットしたうえ、判決に従わなかったのです。ニカラグアは国連安保理に訴えたが、米国は拒否権を発動して判決順守の決議案を否決。国連総会が採択した同様の決議も無視したのです。

 

 今回の中国の係争も小国が大国を訴えたもので、中国も仲裁裁には管轄権がないとして審理をボイコットしています。判決が予想通り中国に不利なものとなれば、中国は30年前の米国と同様に無視するとみられています。

 

「判決無視」では終わらない

 

 しかし「それで話は終わらない」と話すのは、フィリピン側の主任弁護人でニカラグアの係争でも主任弁護人を務めたポール・ライクラー氏です。同氏は、ニカラグアの問題で「米国は道徳的な立場を弱め、法に基づく国際秩序の推進者としてのイメージも傷付けた」と指摘。中国も同じように評判を落とし、周辺国からさらなる訴訟を起こされると予想します。

 

 国際法がらみの多くの係争と同じく、今回の裁判も法的拘束力はあるものの、国際的な圧力を通じてしか当事国に判決を順守させることはできません。米国やその同盟国は中国に対し、判決を受け入れるよう圧力を掛け続けるのは間違いありませんが、中国はそれに対抗して、ここ数週間もっぱら中小の途上国に対し中国支持の立場を打ち出すよう働き掛けています。安保理に提訴された場合には、米国と同様に拒否権を発動できるのです。

 

 中国は、米国はニカラグア問題での対応に加え、仲裁裁の判決が準拠する国連海洋法条約(UNCLOS)を批准していないことで、同国の立場が損なわれていると見ています。

 

 これに対し米政府当局者は、米国はUNCLOSの条文を順守しており、今回の件をニカラグアの係争と比較するのも適当でないと主張しています。同当局者は、ニカラグアの裁判では米国は当初審理に参加していたことや、最終的には1991年にニカラグアとの間で紛争を決着させたことを指摘しています。当時のニカラグア新政権は、米国からの援助の見返りに訴訟を取り下げたのです。

 

 それでも関係者によれば中国当局は、仲裁裁の管轄権に当事国が異議を唱え、国際的な影響に対応した前例として、ニカラグア係争を研究しています。中国政府の法律専門家は、国際的な仲裁判決を受け入れなかった他国の事例も研究しているといいます。例えば、2013年に環境保護団体グリーンピースの船を拿捕(だほ)したことをめぐり、オランダがロシアを訴えた件です。

 

問題棚上げへフィリピンと交渉か

 

 外交アナリストや外交官らは、中国が米国のやり方に倣い、この問題を棚上げするためにフィリピンのドゥテルテ新大統領と交渉を試みる可能性があると指摘します。フィリピンに対する援助や投資が交換条件になりかねないということです。

 

 ただ、中国は判決を無視することで別の面で困難に直面する可能性もあります。同国の海洋への野望を抑え込もうとする国々からの圧力を招くことになりかねないためです。

 

 米国とその同盟国は、「航行の自由」作戦を通じて中国の主張に異議を唱える取り組みを強化する可能性があります。米中双方とも今週、通常の訓練だとして南シナ海に艦船を移動させましたが、緊張が高まっているしるしと見る向きは多いのです。

 

 中国は、他国からのさらなる訴訟にさらされる恐れもあります。とりわけベトナムは中国の立場に異議を唱え、仲裁を支持しています。

 

 もう1つのリスクは、何十年にもわたって中小国や途上国の代表であるかのように振る舞ってきた中国が、今や超大国のように行動し、自らは国際法の対象外だと見なしていると受け取られることです。

 

 香港の弁護士で、仲裁裁判所には管轄権がないと主張する同裁判所宛て文書を共同執筆したダニエル・ファン氏は、判決を無視することはもろ刃の剣だと述べています。中国は、国際的な圧力や批判に抵抗し、1986年当時の米国のように普通の超大国として行動できることを誇示する一方、同じ理由から否定的に見られる可能性もあるというのです。

 

 フィリピン側のライクラー主任弁護人は、最終的には中国政府は判決を反映した内容で周辺国と合意に達すると予想しています。そうしないと自らが無法国家に見えてしまいかねないからです。ライクラー氏は「6カ月かかるかもしれないし、1年か2年、それ以上かかるかもしれないが、中国はそうせざるを得ないと思う」と話しています。(ソースWSJ

2016年7月 9日 (土)

英不動産市場、本当のリスクは居住用不動産にあり!

英国が欧州連合(EU)離脱を決めた後、同国の商業用不動産市場が機能不全に陥ったことが今週表面化しました。事務所や店舗に投資し、通常は日々の流動性を供給するミューチュアルファンドが、その扉を閉ざしました。

 

 しかし本当のリスクは、商業用不動産ではなく居住用不動産にあります。賃貸用に集合住宅を購入した中小投資家も、英国の不動産バブルは終わったと判断すれば、事態は本当に面倒なことになるでしょう。

 

 いままでに、突然の評価減などを受け、6つのファンドが取引を停止しました。英保険大手プルーデンシャル傘下のファンド運用会社MGインベストメンツは先週、資産規模46億英ポンドのファンドについて約5.5%の評価損を計上したのです。アバディーン・アセット・マネジメントは解約を希望する投資家に17%の減価を容認するよう求めました。同社はファンドの評価が約7%下落したとみていて、残り10%は現金化する際の対価です。不動産を1週間以内に売却するためには、割り引く必要があるためです。

 

 オープンエンド型の不動産ファンドは、2013年から15年にかけて81億ポンドの資金を集めました。ファンドはその資金を投資する必要があり、既に高くなっていたロンドンの不動産相場が一段と過熱しました。ここにきて一部の投資家が逃げ出し、ファンド運用会社は資産売却を強いられています。解約を停止しても、この動きは止められません。英中銀イングランド銀行は5日に発表した金融安定報告で、オープンエンド型ファンドの構造は「あらゆる市場の調整を増幅する可能性がある」と予測して警告しました。

 

 リスクは、不動産の不良債権が08年のように金融システムを機能不全に追い込むことです。しかし、銀行は当時よりもはるかに備えを固めています。英国の商業用不動産を裏付けとする債権総額は、07年当時よりも約3分の1少ない上に、融資基準は厳格化しています。

 

 本当に悪夢のような展開は、居住用不動産市場で同じような投資家の売りの波が生まれることです。投資家が住宅価格の値上がりを狙い低利の資金を利用したため、英国の銀行では、いわゆる「賃貸物件購入」用ローンが主な成長分野になってましきた。こうしたローンは、英国の有担保貸し出し残高全体の17%を占めています。

 

 ミューチュアルファンド投資家に追随して居住用不動産の所有者も逃げ出すと、高いことで知られる英国の住宅価格の調整につながる可能性があります。イングランド銀行が5日に「賃貸物件購入の投資家は景気循環に従い行動する可能性があり、住宅市場の循環全体を増幅する可能性が高い」と警告した意味はここにある。

 

 住宅資産を担保とした借り入れはまだ盛んではありませんが、大多数の英国人にとって住宅は純資産の中で高い割合を占めているため、住宅価格の下落は消費経済に厳しい痛手となるでしょう。

 

 最近の税制改正により、特にロンドンのような高い不動産市場においては、賃貸物件購入はかつてほど利益の上がる取引ではなくなってきました。しかし、金利がこれほど低い中、しかもしばらく続く可能性が高い中で、おそらく大多数の不動産保有者にとっては引き続き利益を生むことでしょう。これに住宅を売却する難しさと費用を合わせると、投資家が自らの資産を抱え込む可能性はさらに高くなります。住宅価格が下がり始めれば、さらなる売りを誘う可能性があり、自らの予測を実現するような下げ相場になるでしょう。

 

 約350億ポンドの資産を運用する不動産ファンドの解約が生み出した懸念を思い、5月だけでも182億ポンドのローンが組まれた賃貸物件購入が解消され始めた場合を考えると、イングランド銀行が心配しているのは間違いありません。(ソースWSJ

2016年7月 8日 (金)

ブレグジット同様、目が離せない日本の状況!

世界中の金融市場は先週末にかけ、落ち着きを取り戻しました。英国が国民投票で決めた欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)による経済的影響が顕在化するのには数カ月か、あるいはそれ以上かかると投資家が気付いたためです。しかし、円の急騰と財政の脆弱性が再び視野に入ってきた日本からは目を離さないほうがいいでしょう。

 

 投資家が資産の安全な逃避先とみている円相場はこの1年ですでに20%上昇していますが、今後一段高もあり得ると広く予想されています。円高で輸入品が値下がりすれば、日銀にとってデフレとの戦いが一層困難になるでしょう。

 

 非伝統的金融政策が金融ショックに際し日本をどの程度脆弱にしてしまったかについてはそれほど明確ではありません。日銀の木内登英審議委員は2週間前、危機に対する日銀の対処策はほとんどないと述べていました。日銀は今、当惑しています。恐らく世界で最も緩い金融政策を続けているにも関わらず、銀行システムは先週、流動性不足に陥っていたからです。

 

 1月に始まった日銀のマイナス金利政策も問題の一端です。第一に、マイナス金利は銀行の利益率を押し下げています。格付け会社フィッチ・レーティングスは日本の3大銀行の純金利マージン(預金金利と貸出金利の差)は昨年度、0.7%だったと見積もっています。そして、スタンダード&プアーズ(SP)は日本の5大銀行の利益が来年、8%減少すると試算しています。なかでも、地方銀行への打撃が大きいとみています。

 

 米セントルイス地区連銀のエコノミスト、クリストファー・ウォーラー氏は、マイナス金利は銀行に対する事実上の課税だと指摘しています。融資を促進する代わりに、リスク回避傾向が強まり、新たな経済のひずみを生みます。日本の銀行は事業融資の代わりに住宅ローンを増やし、不動産価格を押し上げてきました。彼らは今、利益を求めて海外に融資先を拡大する以外にほとんど選択肢はありません。

 

 日本の銀行はマイナス金利に対する批判を公然と始めています。三菱東京UFJは最近、抗議の意味を込めて、国債入札の特別参加資格を国に返上すると発表しました。マイナス利回りは銀行による国債の保有高を減らす圧力となり、保険会社も購入額を減らしています。

 

 日銀はこれを前向きなサインだととらえていて、金融機関がリスク資産を購入しているためです。だが、この変化は危険になり得ます。国債の大口購入者は今、円高を見込んでいる外国勢であり、銀行や保険会社のように長期的に保有する公算は小さい。外国勢は円高の期待が外れれば、大量に国債を売るでしょう。そうなれば利回りは急伸します。理論的には、日銀が低い利回りを維持するために国債買い入れを増やすことはあり得ます。しかし、それは日銀が日本の公的債務をマネタイズ(貨幣化)しているとの解釈につながりかねず、市場の懸念を強めることになりそうです。

 

 日本は経済改革を避け、借金による財政支出を続けることが可能でした。日本の金融システムが大方、「壁に囲まれた庭」のままだからです。それは銀行が政府の言うことを聞いていたため可能だったことです。銀行はたとえ低くても、安定したリターンを進んで受け入れてきました。しかし今、日銀は銀行を追い詰めています。停滞しつつも日本を安定させていたこの関係がここに来てほころぶ可能性があるのです。

 

 非伝統的金融政策という日本の実験は成長の刺激剤にはならなかったうえ、金融システムを不安定化させかねないのです。木内氏をはじめ、マイナス金利に反対する日銀政策委員は声を上げるようになってきました。3年前に供給サイドの改革を約束した安倍晋三首相はそれを守る責任があります。(ソースWSJ

2016年7月 6日 (水)

日本の賃金低迷は経済学者の失敗=ポーゼン氏!

日本の安倍晋三首相がデフレからの脱却を公約し日本銀行が大規模な緩和措置を導入してから3年余りたちますが、この試みを特に楽観していた一人が戸惑いを示しました。

 

 ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューに対し、予想に反してインフレは上昇しておらず、賃金はあまり上がっていないと認め、「これは日銀や日本にとってだけでなく近代マクロ経済にとって現実の試練だ」と語りました。

 

 ポーゼン氏は「これは安倍首相の失敗ではなく、私自身や経済学を専門とする仲間たちの失敗だと思う」と述べ、「われわれが言おうとしたことの多くが、考えたほどの良い効果をあまり上げなかった」と話しました。

 

 総務省が先月発表した4月の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)は前年同月比で0.3%低下しました。国内総生産(GDP)成長率は1-3月期こそ年率1.9%を記録したものの、ここ数四半期はまちまちで推移しています。

 

 ポーゼン氏によれば、日本にとってはある程度インフレにすることがまだ必要不可欠です。それが、歳出削減や極端な増税を伴わずに巨額の公的債務を管理可能な水準に抑えることができる唯一の方法だからです。インフレ率が上がれば税収が伸びて債務負担を減らすことができ、公的債務のGDPに対する比率が実質的に低下すると考えるからです。

 

 同氏の見解では、日本政府に残された道は、もっと積極的に賃上げを行い、物価と賃金の上昇スパイラルにつなげようとすることです。その手段としては、公的部門の賃上げや物価スライド制賃金の導入などを含むことができると指摘しました。

 

 「日本はついに財政面で脱線しつつある可能性がある」との見方を示し、「緩やかなインフレが、財政問題を原因とする調整を滑らかにする一つの方法だ」と語りました。

 

 2017年に予定した消費増税の延期を決めたいま、安倍首相は財政を安定させる措置を講じるべきだとポーゼン氏は指摘しています。同氏は14年の消費増税に賛成しましたが、この増税による悪影響が予想よりもはるかに長引いたことを認めました。

 

 歳入を増やすには、法人税減税を控えるか、小規模事業者から徴税するために先ごろ導入したマイナンバー制度をもっと積極的に活用するようポーゼン氏は提言しています。

 

 「世界経済のデフレ的傾向から考えると、(消費税引き上げは)延期できる。そのことは尊重できる」としつつ、「だが延期しておいて財政政策について少なくとも何かやらないというのは間違いだと思う」と語りました。

 

 かつて英中銀イングランド銀行金融政策委員会(MPC)の外部委員を務めたポーゼン氏は、日銀が今年初めに導入したマイナス金利政策には懐疑的です。マイナス金利は小規模で開かれた経済の限定的な条件でのみ有効で、日本のように人口が多く、特に高齢化している国では貯蓄性向が高いので、効果は薄いだろうとみています。

 

 日銀は当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてマイナス金利、ゼロ金利、プラス金利をつけています。ポーゼン氏は、この階層構造は「預金者をマイナス金利の直接の痛みから守ろうとするものですが、そうするならばマイナス金利は何ら効果がない。誰にも(資金の)再配分を強制しないからだ」と指摘しました。

 

 それでも同氏は日銀が金利をさらにマイナス水準に引き下げる可能性があると予想しているのです。「間違いを認めたくないだろうし、何かする必要があると少し捨て身になっているからだ」と話しました。日銀がマイナス金利で利益が損なわれている銀行に対し支援措置を検討する公算が大きいと語りました。(ソースWSJ

2016年7月 5日 (火)

ブレグジット相場、機械が人間に勝つ!

先週、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が決定したことに市場は厳しい反応を示しましたが、ウォール街では勝者と敗者の集計が進められています。早い段階で浮上したあるテーマとは、コンピューターが正しくて人間が間違っていたことです。

 

 エコノミストやアナリストらによると、その一因は自分が好む結果に賭けた投資家が多すぎたためで、これは市場における「投影バイアス」の典型的な例だといいます。

 

 モデル駆動型の投資会社フォートの共同創設者、イブ・バルサー氏はEU残留に投票する英国民の方が多いと予想していました。ただ、同氏の取引モデルは世界経済に対する懸念に焦点を当てていたため、同社は円や国債といったブレグジットによる混乱から恩恵を受ける資産を購入し続けていました。

 

 バルサー氏は「ブレグジットの前に何も変えていない」と述べました。同社が保有する2つのポートフォリオは24日にそろって3%以上の上昇率を示し、年初からの上昇率はそれぞれ10.75%、4%になったといいます。

 

 国民投票の前まで、ほぼ全ての主要世論調査だけでなく、主な政治家やジョージ・ソロス氏のような著名投資家の多くまでが公然とEU離脱はないとの考えを示していました。その主な理由は離脱に伴い経済が破壊される可能性があったからです。さらに踏み込んだ洞察を得るために、一部の投資家は他の知識人に意見を求めましたが、中には米ハーバード大学のニーアル・ファーガソン教授(歴史学)の個人的見方を聞き出すために大枚をはたいた人もいたそうです。

 

 事情に詳しい複数の関係者によると、ヘッジファンドのSACキャピタル・アドバイザーズを率いていたスティーブン・A・コーエン氏は同社の顧客に対し、英国民投票に関連するいかなる投資も避けるべきだと述べました。接戦が予想され、結果を見通せないことが理由だったといいます。

 

 シカゴに拠点を置く調査会社ヘッジファンド・リサーチ(HFR)のデータによると、株式ヘッジファンドのリターンは24日だけで2.1%低下したそうです。総じて、敗者は航空や金融など、EU離脱決定で売りたたかれたシクリカル(景気循環)銘柄に過度のウエートをかけていたようです。

 

 ただ、市場戦略を形成するコンピューターには、そうしたセンチメントは考えられさえしなかったのです。

 

 このファンドは分類上「CTA(商品投資顧問業者)」とも呼ばれ、市場トレンドを見抜くカスタマイズされた取引アルゴリズムを使って先物などの金融派生商品(デリバティブ)を売り買いします。英国民投票やブックメーカーのオッズ、そして他人より優位に立とうとする投資家を支配する政治動向といった要因は、大半のモデルに織り込まれていなかったのです。

 

 国民投票を数週間後に控えたころから、多くのCTAファンドの取引モデルにはディフェンシブな姿勢が採用されるようになりました。各モデルは信用性の高い国債、金、円などの安全通貨を選好し、大部分が原油や新興国市場などリスクの高い投資先を避けました。

 

 23日に投票結果が出てブレグジットがポンドや不安定な資産価値を急落させた後、こうしたポジションが効果を発揮しました。仏銀ソシエテ・ジェネラルのCTA指数は24日に1.5%上昇。フォートのほか、AQRキャピタル・マネジメント、ウェルトン・インベストメント・パートナーズなどの値上がりが目立ちました。

 

 一方、同日にはHFRXグローバル・ヘッジファンド指数が1.1%下落。米コンサルタント会社エイジクロフト・パートナーズによると、ヘッジファンド全体でCTAのモデル駆動型戦略を採用しているのは15%ほどです。

 

 運用担当者らによると、CTAで成功するカギとなるのは、モデルが市場を動かすイベントを取り巻くノイズを取り除くことができることです。こうしたイベントは選挙や重要な経済指標など投資家にとって重要な要因ですが、それでも正確に予測するのが困難な時もあるということです。(ソースWSJ

2016年7月 4日 (月)

英EU離脱受け、相次ぐ経済見通し下方修正!

英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めたことに対するエコノミストらの反応は、迅速かつ厳しいものとなっています。世界中の成長見通しが下方修正され、それに伴う相場見通しの引き下げも相次いでいます。

 

 623日の国民投票で英国のEU離脱が決まり、為替、債券、株式市場が動揺し、英ポンドは今週初めに31年ぶりの安値に転落しました。その後市場は落ち着きましたが、世界第5位の経済規模を有する英国の長引く混乱が今後に及ぼす影響にアナリストらは目を向けています。

 

 モルガン・スタンレーのエコノミストらは今週のリポートで、「ブレグジット(英国のEU離脱)は、まだ弱々しい回復を遅らせ、低迷に向かわせる可能性がある」と述べました。同社では、来年世界的なリセッション(景気後退)に陥る確率を30%から40%に引き上げました。

 

 アナリストらは、欧州以外の国や地域に対する直接の影響は欧州よりも少ないとみています。しかし、欧州諸国の成長減速は、世界の貿易ばかりでなく多国籍企業にも影響を及ぼそうとしています。多国籍企業の多くは、欧州を主要市場の一つとしています。ドル高の影響も世界全体に反響し、米企業の利益や新興諸国に打撃を加える見通しです。

 

 ブレグジットの混乱は、世界の貿易が近年弱まっている中で生じており、世界貿易機関(WTO)によると、世界の貿易は2015年の伸びがわずか2.8%でした。伸びが3%を下回ったのは4年連続です。

 

 クレディ・スイスのアナリストらは「グローバル化の最期」と題したリポートで、ブレグジットは「より密接な統合と開かれた貿易という第2次世界大戦後のコンセンサスからの、これまでで最も大幅な後退だ」と指摘しました。そして、「このような大きく長期の変化は、中期的に成長や企業利益、資産価格にかなり否定的な意味を持つ可能性がある」と述べています。

 

 英国は見通し引き下げのやり玉に挙がり、一部の銀行は政治的不透明感と投資の落ち込みは今年この後リセッションに陥る予兆だとみています。英国の政治情勢が流動的でEUとの離脱交渉には数年かかる可能性が高いため、アナリストらはポンド安が長期に及ぶと予想しています。その結果としてインフレが上昇し、個人消費を一段と抑えるだろうとエコノミストらは考えています。

 

 バンクオブアメリカ・メリルリンチのエコノミスト、ロブ・ウッド氏は「英国は早々にリセッションに陥り、この政治上の不確実性が長引くほど、事態は悪化するだろう」と指摘しました。同行では7-9月期から来年初めにかけてのリセッションを予想し、英経済の成長予想を17年については2.3%から0.2%に下方修正しました。

 

 英仏海峡を越えてブレグジットに関連してすぐに生じる混乱は、英国からの需要減少というかたちで生じる可能性があります。英国はユーロ圏のモノとサービスにとって最大の需要を担っており、HSBCによると総輸出の13%を占めていて、ブレグジット決定を受けてHSBCでは、ユーロ圏の17年におけるGDP成長率予想を1.5%から1.0%に引き下げました。

 

 シティグループでは、ドイツやベルギー、オランダなど英国との取引関係が強い国々が一番影響を受けるとみています。

 

 JPモルガンの上席グローバルエコノミスト、ジョゼフ・リュプトン氏は「ブレグジットは欧州に対する重要な経済上の衝撃だ」と述べ、「これで(英国の)景気回復は遅れ、社会経済面と政治面の問題につながるかもしれない」と指摘しています。

 

 今後さらにEU離脱が問われる可能性もあり、世界最大の貿易圏の先行きを巡る不透明感が高まっています。アナリストらは、これが、債務危機と昨年のギリシャを巡る混乱でまだおぼつかない投資情勢と欧州大陸の消費意欲に悪影響を及ぼすだろうとみています。

 

 バンクオブアメリカ・メリルリンチのウッド氏は「欧州にとって英国との貿易からの影響は小さいだろうが、もっと大きな問題は単一市場の先行きに関する不透明感だ」と述べ、「(EU離脱が)英国にできるなら、次は誰かということだ」と語っています。

 

 米国や中国の経済活動に英国との取引が占める割合は極めて小さいので、欧州以外の国や地域に対する影響はさらに少ない見通しです。しかし、ブレグジット決定後に投資家が安全とみなす資産に群がったため、米ドル相場が上昇し、米企業の利益や投資に対する懸念が浮上しています。

 

 シティグループのアナリストらは「米国では、急激なドル高になり高止まりする可能性があるかどうかが懸念の焦点です。このことが、ブレグジットが生む不透明感とともに、米国の事業資本投資をさらに弱める可能性がある」と指摘しています。

 

 同行では、ブレグジットで今年と来年の米GDP成長率は0.1ポイント下がる可能性があり、ブレグジットのリスクに対して国際的な投融資を行った米銀行部門のぜい弱性が、米国の成長をさらに抑えるかもしれないと述べました。(ソースWSJ

2016年7月 3日 (日)

ブレグジットの金融市場への影響、甘く見るべからず!

英国の代表的株価指数であるFTSE100指数に惑わされてはなりません。同指数は29日、英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を決める直前にあたる23日の終値を上回る水準で取引を終えたのです。ブレグジットを支持する人たちは万事順調と誇らしげでした。

 

 しかし、実際には順調どころではないのです。FTSE100指数は英国経済の典型にはほど遠い。実のところ、英国よりもむしろ英国以外の世界を象徴していると言った方が良いかもしれないのです。ゴールドマン・サックスによると、同指数構成企業の合計売上高のうち英国の売上高が占める割合は22%にすぎません。これらの企業の多くは収益や費用が英ポンド建てではなく、例えば配当金の3分の1余りがドル建てで発表されています。

 

 つまり、FTSE100指数構成企業は海外収益の比重が大きいということえす。世界の主要株価指数の中で、最初にブレグジットショック前の水準を回復したのがFTSE指数だった理由はここにあります。ポンドが急落すると、海外所得のポンド換算額は大幅に増えるため、ポンド建ての株式は押し上げられます。しかし、ポンドの下落分を調整すると、実際にはひどい株安の様相となるのです。

 

 中型株250銘柄で構成されるFTSE250指数を見れば、英国の現実をもっと簡単に理解できます。FTSE100指数よりもFTSE250指数の方が英国経済との関連性は強いのです。FTSE250指数はここ2日間で大きく反発したものの、依然として23日終値を8%近く下回っています。ポンドが10%下落したことも合わせて考えると、英国の将来は明るくないという市場のメッセージが浮かび上がります。

 

 とはいえ、世界の投資家にとって明るい材料もあります。英国以外の国の株式市場では、ブレグジットショック直後の混乱が急速に沈静化に向かっています。米国のSP500種指数は27日につけた直近安値から半分強戻しており、ユーロ圏の株式相場も下げ幅の半分近くを回復しました。原油価格とドルの対円相場も同じく下落幅を半分ほど縮小したのです。

 

 シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX、恐怖指数)の戻りはさらに目覚ましいのです。VIXSP500種指数を対象とするオプション取引の値動きを元に算出されている指数ですが、ブレグジットショックでいったん急騰したものの、足元では再び先週初めの水準に下がっているのです。市場に充満した将来への恐怖が収まったことがうかがえます。

 

 しかし、投資家は完全に安全策を手放したわけではありません。投資家の不安が依然強いため、国債や金といった安全な資金逃避先に対する需要はとどまるところを知らないのです。英国国民投票の結果を受けて特に大きく上昇したこれらの安全資産の価格は以来、ごくわずかしか下げていません。主要国の直近の10年物国債利回りを見ると、ドイツがマイナス0.12%、英国が1%未満、米国が1.47%といった具合で、投資家の懸念が少し後退したことが分かります(米国債利回りはブレグジット決定から数時間で1.4%に迫った)。もっとも、いずれの利回りもまだ23日の水準よりはるかに低い水準です。

 

 こうした強い国債需要を支えている要因の一つは、中央銀行が再び支援に動くという投資家の期待です。英中銀イングランド銀行は利下げや、場合によっては債券買い入れの再開に踏み切ると広く予想されています。翌日物金利スワップから将来の英国の政策金利を推計すると、これから低下が見込まれる同金利が現行水準(0.5%)に戻るのは5年先です。米国については、CMEグループのデータによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は直近で連邦準備制度理事会(FRB)が年内に1回利上げする確率をわずか14%と織り込んでいます。23日には56%だったのです。

 

 JPモルガン・アセット・マネジメントの債券部門グローバルヘッド、ボブ・ミシェル氏は「中銀が主に流動性供給によって(英国・EU間の)交渉を支援するという一種の安心感がある」と指摘。世界的なリセッション(景気後退)入りを見込む同氏は、投資家の楽観的姿勢に懸念を抱いています。

 

 リセッション入りの可能性はどうあれ、市場が発しているメッセージはFTSE100指数が示唆する見通しよりもはるかに前向きではありません。投資家は中銀が経済危機を防ぐことを確信しています。しかし、景気減速や金利低下は銀行にとって逆風となるため、ここ2日間の株価指数の反発に大きく出遅れている銀行株を買う理由は、銀行株以外は全て割高ということしかありません。英国とEUを巡る政治的不確実性が晴れるのは何年も先のことになるでしょう。投資家はその間、ブレグジットによって中銀でさえなかなか治すことのできない傷を負う恐れがあるため、そうしたリスクに見合うよう株式の適正価格を低めに評価すべきです。(ソースWSJ

2016年7月 2日 (土)

ブレグジットが英経済の追い風になる理由!

英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)のパニックはすでに過ぎた。ではブレグジットによる景気拡大が進んでいることはあり得るのでしょうか。

 

 英国が国民投票でEU離脱を決めたことに世界の金融市場が不意を突かれ、当初はリスク資産が売られる一方、安全資産が買われました。後者には皮肉にも英国債が含まれていました。

 

 しかし、国民投票の結果判明からわずか2営業日後の28日には、英国株が下げを戻し始めました。不動産や銀行など、ブレグジット後の低迷が痛手になるとみられる銘柄でさえ、28日と29日には上昇したのです。

 

 悲観的なエコノミストの予想ほど売りが長期化せず極端でない理由の一端は、非常に恐れられている「不確実性」が英国経済の足手まといにならないかもしれないことにあります。実際には、企業投資や消費者信頼感、経済成長を後押しするという逆の効果をもたらす可能性もあるにです。

 

 ただ、これは間違いなく現段階で市場ウォッチャーの大多数が抱いている考えではありません。EU外の世界市場へのアクセスを巡る不確実性を背景に、企業や消費者の景気期待が冷え込み、英国経済は近く減速、あるいは縮小するとさえ予想する向きは多いのです。

 

 ブレグジットで英国経済が直ちに変化することはない、ということは覚えておくべきです。数年間はEUにとどまる可能性が高く、その間は引き続き欧州市場へのアクセスを享受するでしょう。英国政府の借り入れコストは上昇するという大方の予想にもかかわらず、英国債利回りは投票以降低下しています。他の条件が同じであれば、金利の低下は景気刺激になるはずです。

 

 ただ、経済は不確実性そのものに足を引っ張られると考える人は多いものです。この考えは、ベン・バーナンキ氏が大学院生時代の1975年に書いた論文で提唱されています。若かりし日のバーナンキ氏は、企業は不確実性に直面すると、さらなる情報が得られるまで投資や雇用を見送る傾向があるという主張を展開しました。それ以降、不確実性と投資にマイナスの関係があることが大規模な経済調査で裏付けられているのです。

 

 ただ、極めて競争の激しい環境では、不確実性が投資や経済生産を促す証拠も存在します。競争の厳しい業界や国の企業は、待つことで投資や雇用の機会がライバルに奪われる恐れがあるため、さらなる情報を待つ余裕などないのが常です。こうした景気拡大につながる不確実性がさまざまな市場に見られることが、最近の複数の研究論文で明らかになっています。

 

 ロンドン・ビジネス・スクールで金融学博士課程を修了予定のラジャ・パトナイク氏は論文で、予測不可能なエルニーニョ期の天候に米企業がどう対応したか調査しました。その結果、極めて競争の激しい業界の企業は平均的に、不確実性が高まると支出を増やすことが判明したのです。これが特に当てはまるのは、経営上の柔軟性が高い企業、つまり需要の急減時に人員削減できる企業と、労働集約型の企業です。

 

 気象予報士の予報が食い違う場面を想像してみて欲しいのです。お住まいの街は猛吹雪に見舞われるという予報士もいれば、吹雪は北方へ移動するという予報士もいます。除雪用シャベルを販売する店を営んでいるとしたら選択肢は二つ、すぐに商品の追加発注をかけるか、予報がもっとはっきりするまで待つかです。その店が街で唯一のシャベル販売店なら待つ余裕があります。しかし、他にも販売店が複数ある場合、ぐずぐずしていれば需要急増のタイミングで仕入れするという憂き目に遭うため、すぐに仕入れる動機が生まれます。これが景気拡大につながる不確実性の作用です。

 

 これについて調査したパトナイク氏などの研究者によると、バーナンキ氏が発見した類の影響は、競争が極めて少ない一極集中型の業界に限られるといいます。そうした業界では、不確実性に直面すると研究開発や広告、雇用の支出が減少しますが、競争の激しい業界に不確実性は影響しないのです。

 

 英国経済は総じて、特に労働市場の柔軟性がはるかに低い欧州諸国と比べると、極めて競争の厳しい場所です。政府調査によると、建設からコンピューターサイエンスに至る多数の業界は競争が激しく、大手の独占状態ではありません。競争環境における不確実性の調査から見えてくるのは、多くの企業がブレグジット後を見据えて様子見に徹するよりも、EU離脱後に生じるとみられる機会に乗じようと投資や雇用を増やす可能性が高いということです。

 

 この例外の一つが銀行部門です。英国の銀行部門は集中型で、寡占状態と呼ばれることも多い。国際競争でいくらか中和されるでしょうが、欧州の銀行の多くも苦戦しているため、その影響は限定的かもしれません。従って、不確実性に直面した英国の銀行は、バーナンキ氏が指摘したように危険に備える可能性が極めて高いのです。ロンドン市民の多くがブレグジットに反対したのもうなずけます。

 

 確かに、不確実性は現代の合言葉となっています。しかし、英国経済の競争力のおかげで、それは悲観論者の予想をはるかに上回る経済成長をもたらす可能性があるのです。(ソースWSJ

2016年7月 1日 (金)

ソニー株、英EU離脱で割安に!

英国の欧州連合(EU)離脱で、ソニーは国際通貨同士の綱引きに巻き込まれています。しかし、為替変動はソニーの再建にさほど大きな影響は与えそうにありません。

 

 23日に英国民がEUに背を向けて以来、為替市場は大混乱に陥っています。特に円は27日時点で対ドルで3.6%上昇。さらにユーロに対しては、欧州経済の先行きが不透明になったことで23日以降、6.5%も急伸しました。

 

 こうした円の上昇はソニーに双方向の影響を及ぼします。対ドルでの円高はソニーにとって有利です。電子部品などコストの大部分はドル建てで取引されていますが、決算は円建てで行うためです。しかし、対ユーロでの円高はソニーにとって打撃です。なぜなら、売上高の4分の1近くを欧州で稼いでいるからです。

 

 ソニーの想定によると、ゲーム機、テレビ、携帯電話事業を含むエレクトロニクス部門の今年の営業利益は為替変動により約110億円押し下げられる見通しです。また、映画・音楽部門の営業利益も60億円減少する可能性があります。しかし、数十億円はわずか数百万ドルです。為替変動で減少するとみられる170億円は、ソニーの今年度の予想営業利益(熊本地震による一時的損失を除く)の4%にも満たないのです。それに引き換え、ソニーの株価は23日以降、8%下落し、17億ドル近い時価総額が吹き飛んでいます。

 

 ソニーは先月、家庭用ゲーム機「プレイステーション4」の累計販売台数が2013年の発売以来、4000万台を突破したことを明らかにしました。これは歴代モデルで最速ペースです。また、手頃な価格が高評価を得ているバーチャルリアリティー(仮想現実、VR)ヘッドセット「プレイステーション VR」が10月に発売される予定です。ソニーはゲーム部門の今年度の営業利益は52%増加するとの見通しを示しています。多くのアナリストは、それをさらに上回る可能性もあるとみています。

 

 円高の影響を直接受けそうにない日本企業の株価は週明けの27日に24日の下落分をほとんど取り戻しました。ソニーは依然、英EU離脱確定直後の低い水準にありますが、値を戻してもおかしくないはずです。(ソースWSJ

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