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2016年6月

2016年6月30日 (木)

トランプ氏が勝つために必要な3つのこと!

 数週間前、ドナルド・トランプ氏が米大統領選の共和党候補指名を確実にした後の一連の世論調査で、トランプ氏の支持率は民主党候補指名争いでリードするヒラリー・クリントン前国務長官とほぼ互角か、やや上回っていました。これを受け、民主党は軽いパニックに陥りました。

 

 先週、クリントン氏が民主党候補指名を確実にした後の一連の世論調査で、トランプ氏はクリントン氏に大きく水を空けられ、うち2回は12ポイントの差をつけられていました。共和党は完全なパニックに陥り、恐らくその対応策としてトランプ氏は20日、長らく選挙対策責任者を務めていたコーリー・ルワンドウスキ氏を解任しました。

 

 今は深呼吸をし、基本的な事実を思い起こすいい機会です。最近の世論調査の一部動向は、両候補が各党をまとめるためにやってきたことの必然的な結果です。一部はトランプ氏のオーランド銃乱射テロへの下手な対処や連邦判事に対する攻撃がもたらしたものです。

 

 一方、基本的な事実はこうです。本選まで4カ月ちょっととまだ長い期間が残されています。クリントン氏は本選に向けた争いで明らかに先頭に立っています。しかし、トランプ氏が勝つ可能性はあります。そうなる可能性が最も高いか? 言え恐らくノーです。この異例の年においてそれは可能か? もちろん可能です。

 

 単純な政治的計算をすれば、トランプ氏が勝つために必要なことは3つあることが分かります。

 

 まず1つは、白人の大卒女性の支持率を上げることです。この有権者層はトランプ氏のアキレス腱になっているのです。

 

 世論調査によると、トランプ氏は高卒以下の白人男性の支持率では約40ポイント、高卒以下の白人女性の支持率では約10ポイント、それぞれクリントン氏を上回っています。

 

 しかし、大卒の白人女性の支持率では2桁近く下回っていて、4年前の大統領選で共和党候補ミット・ロムニー氏はこの有権者層を勝ち取っています。ペンシルベニアやコロラドなどのスイングステート(大統領選挙で優勢な政党が一定しない州)で重要な郊外地区を制するには、この有権者層の支持率を上げる必要があります。

 

「第3の候補」に期待

 

 2つ目は、第3の政党がクリントン氏の票を奪うことに期待することです。

 

 今回の選挙戦で最も目立つ点の1つが、両候補者に対する反感の大きさです。そのため、通常よりも多くの有権者が「第3の候補者」を検討することに前向きになっています。

 

 第3の候補者は2人おり、リバタリアン党から出馬しているゲーリー・ジョンソン元ニューメキシコ州知事と、アメリカ緑の党の候補指名が確実とされるジル・スタイン氏です。初期の世論調査は、民主党の候補指名を争うバーニー・サンダース上院議員の支持者のうちクリントン氏に不満を持つ有権者を中心に、両者がクリントン氏からさらに票を奪う可能性があることを示唆しています。州によっては数ポイントで均衡が崩れる可能性があると言います。

 

 3つ目は、適切な州で支持を確保することだ。

 

 これは厄介な作業です。主要州の現在の人口動態や投票傾向を考慮すると、共和党候補が誰であるかにかかわらず、選挙人地図は民主党に有利です。しかし当然ながら、異例の選挙戦を展開するトランプ氏が異例の地図を作り上げる可能性はあります。その地図は同氏にとって良くも悪くもなり得るものです。

 

 本選の選挙人計算をするに当たって妥当な起点となるのが2012年の大統領選です。この年はオバマ大統領が共和党候補のロムニー氏を獲得選挙人332206で破り、当選に必要な270人を優に上回りました。

 

 オバマ大統領が勝利した州は民主党の基盤を把握する上でかなり役に立ちます。それにはコロラドやアイオワ、バージニアといった重要なスイングステートが含まれています。トランプ氏はロムニー氏の戦いぶりを再現した上で、さらに勝利州を増やす必要があります。

 

フロリダ州を制するか

 

 トランプ氏はニューヨークとカリフォルニアの両州で民主党に圧勝し、ニュージャージー州も制すると述べています。最初の2州の圧勝は幻想でしかなく、ニュージャージー州での勝利は無理難題です。

 

 彼はそうした奇跡に頼らずにどう勝つかを考えるべきでしょう。そのための基本的な道は2つあります。1つはフロリダ州で勝利し、選挙人29人を手に入れる「フロリダの道」。そしてもう1つはフロリダではない道です。

 

 フロリダの道の方がはるかに簡単です。トランプ氏がフロリダ州で勝利し、さらに例えばオハイオ、アイオワ、ニューハンプシャー、メーンの各州でも勝った場合――いずれも可能性はある――獲得選挙人は267人と、当選に必要な人数までわずか3人となるのです。そうなれば、後はペンシルベニア、ミネソタ、ウィスコンシン、コロラド、ミシガン、ニュージャージーのいずれか1つの州で勝利すればいいだけです。

 

 フロリダでない道を選んだ場合ははるかに大変です。トランプ氏がフロリダ州で負け、アイオワ、メーン、ニューハンプシャー、オハイオ、ペンシルベニアの各州で勝利した場合、獲得選挙人はわずか258人にしか届きません。270人を得るには、さらにバージニア、ニュージャージー、ミシガンのいずれかの州を制するか、その他のスイングステート2州で勝つ必要があります。しかも、アリゾナ、ジョージア、ユタの3州が民主党になびかないようにする必要もあるのです。3州はかつて共和党が優勢でしたが、現在は揺れているようです。

 

 これは非常に厳しい仕事です。しかし、既にあり得そうもないことが起こっている今年においては、不可能なことではありません。(ソースWSJ

2016年6月29日 (水)

防弾チョッキの「民間人」所有、是非で論議!

米フロリダ州オーランドで起きた銃乱射事件の数週間前、オマル・マティーン容疑者は防弾チョッキを購入しようと銃販売店に立ち寄ったそうです。警察の拳銃の弾を止める能力を持つ防弾チョッキです。しかし、その店はそうした商品を扱っていませんでした。

 

 マティーン容疑者がもしネット通販を利用していたなら、拳銃の弾丸だけでなく、特殊火器戦術部隊(SWAT)の狙撃手が撃った弾丸も止められる防弾チョッキを簡単に入手できたでしょう。また、防弾チョッキを貫通するライフル用の弾薬でさえも、自宅の玄関先まで運んでもらえていたかもしれません。その際、同容疑者は質問を受けることも、本格的な身元調査を受けることもなかったでしょう。

 

 オーランドの事件を受けて、攻撃用銃器の禁止や、特定の種類の銃の入手をこれまでより難しくするよう求める声が改めて高まっています。だがしかし、防弾チョッキに関しては、犯人の制止をより困難にさせ得るにもかかわらず、規制が比較的緩いままです。警察などの法執行当局や一部のメーカーは、防弾装備がますます犯罪者の手に渡るようになるだろうとの懸念を抱いています。

 

 カリフォルニア州保安官協会の法制担当者コリー・サルジロ氏は、「民間人がなぜ、軍事用の防弾チョッキを必要とするのか明確ではありません。われわれは軍事レベルの装備を必要とするような環境で生活していない」と述べています。同協会は、連邦議会で現在検討されている民間人への防弾チョッキ販売禁止法案を支持しています。

 

 米司法省のアルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)の報道官によると、防弾装備について連邦政府が設けている唯一の規制は、凶悪犯罪などの重罪を犯した者は購入および所有できないというものです。ただし、販売の時点でそれを取り締まる仕組みはありません。大きな制限のある州はコネティカット州のみです。同州は対面販売を義務付け、通信販売を不可としています。

 

 マティーン容疑者は、フロリダ州ジェンセンビーチの銃販売店「ロータス・ガンワークス」で、大量の弾薬とともに防弾チョッキの購入を試みました。この店は、以前は防弾チョッキを扱っていましたが、何年か前に販売を中止していました。また、店のオーナーのロビー・アベル氏によると、この店は同容疑者への弾薬の販売も拒否しました。同容疑者があやしい人物に見えたからだといいます。

 

 わずか数年前まで、防弾チョッキは事実上の隙間(ニッチ)市場の商品で、軍や警察などの専門職に就いていなければ入手は困難でした。しかし最近、小さなメーカーや販売業者が相次いで市場に参入し、熱心なファンに装備を売り始めたのです。このファンは最近増えており、その中には、いわゆる「プレッパー(「備える人」の意。戦争など非常事態に備えて食糧や、武器・弾薬を備蓄している人々)」も含まれる。彼らはいつか政府が打倒され、自衛を迫られる日がやって来ると信じている人々です。

 

 防弾チョッキに関して地方および連邦政府が出している統計はほとんどなく、規制されていない市場での売り上げを特定するのは困難です。テキサス州にある緊急時出動係官向け研修施設「高等法執行緊急時出動訓練センター」の調査によると、2000年から12年までに同センターの調査官が特定した銃撃犯110人のうち5%が防弾チョッキを着用していました。

 

 インターネットで防弾装備を販売する「ターゲット・マン」の創業者で、最近この会社を売却した元海兵隊員のジェレミー・テッパー氏によると、同氏のウェブサイトから装備を購入する場合、購入者は重罪で有罪判決を受けた記録がないことを確認する必要がありました。

 

 同氏は同社売却以前に実施したインタビューで、「われわれのウェブサイトで何かを購入する際には、四角にチェックを入れる必要がありますが、それには何の意味もありません。誰だってうそがつける」と話していました。

 

 防弾チョッキ販売会社「ブレットセーフ」のオーナーであるトム・ナードン氏によると、オーランドで銃乱射事件が起きた翌日、同社サイトへのトラフィックは通常の2倍を記録したそうです。しかし、同氏は同社の製品がマティーン容疑者のような犯人と対峙(たいじ)する可能性のある警備員向けだと話しています。

 

 ナードン氏は、この市場に参入したのは、防弾チョッキへの関心が近年高まっていることに気付いたためでした。防弾チョッキへの関心が高まっている理由の1つには、比較的最近の連邦政府の取り組みがある。防弾チョッキの費用を法執行当局が一部負担するという取り組みです。

 

 同氏は、基本的なチョッキでさえ1000ドル(約105000円)もかかることを知り、中国製のチョッキを299ドルで販売する会社を約3年前に立ち上げました。これは主に警備員、消防署員、救急医療技術者などを対象にした製品です。

 

 同氏は「安全装備は自由に入手できるようにすべきだ」と述べています。ブレットセーフは消防署員や野犬捕獲員などに対し、1カ月で約700着のチョッキを販売しています。同氏によると、身元調査は必要ないそうです。火器を購入する際にすでに必要とされているケースが多いからだといいます。

 

 より大手のメーカーの中には、防弾チョッキの入手が極めて簡単にできることに反対し、民間人への販売を拒否している会社もあります。ポイント・ブランク・エンタープライゼズのマイケル・フォアマン上級副社長は、「われわれには、防弾着が確実に犯罪に使われないようにする義務があると考えている」と述べています。同社は軍、法執行当局や認可を持つ専門職の人々にかなりの量の防弾装備を販売していると言います。(ソースWSJ

2016年6月28日 (火)

アップル「メッセージ」改良、どれほどすごい?

アップルが13日の「世界開発者会議(WWDC)」で行った発表の中で最もワクワクするのがこれです。

 

 特にドナルド・ダックの動くステッカーのことを指しているわけではありません。ただ、自分が片足を上げておなかが痛くなるほど大笑いしていることを誰かに伝えるのに、これほど優れた方法があるだでしょうか。

 

 アップルは「メッセージ」アプリに力を入れることを明らかにしました。このメッセージアプリは筆者の生活の中で最も重要なソーシャルネットワーク(SNS)です。そこは私が家族や友人とデジタルな会話を交わす主たる場であり、多くの写真や動画を共有する場でもあります。

 

 改良版のメッセージアプリは、この秋に提供されるiPhone(アイフォーン)とiPad(アイパッド)向けの次期バージョンの基本ソフト「iOS 10」で利用できます。ドナルドなどのステッカーを使用したり、絵文字を大きく表示したりできるようになるほか、友人とチャットしながら「DoorDash(ドアダッシュ)」などのアプリで一緒にランチを注文したりもできるようになります。

 

コミュニケーションの向上

 

 iOS 10が提供されれば、文字だけのメッセージが電報のように感じられるようになるでしょう。メッセージにはシルク・ドゥ・ソレイユのショーよりもたくさんの視覚的なトリックを仕掛けられるようになります。

 

 「インビジブルインク(見えないインク)」機能を使うと、スワイプすると写真やメッセージが現れるようにすることができます。「セレブレート(お祝い)」機能では、「Happy Birthday!」などの祝福のメッセージを入力すると画面いっぱいに自動的にアニメーションが表示される。メッセージの吹き出しの大きさを変えたり、写真や動画に指で絵を描いたり、手書きのメモを送信したりもできるようになります。

 

 さらにすごいのが新しい絵文字機能です。文字を入力すると、キーボードが絵文字を提案してくれるのです。タップ1つで文字を絵文字に変換することも、絵文字自体を大きく表示することも可能です。さらに、絵文字の強化版とも言えるステッカーも送信できるようになります。

 

この新機能をどうみるか

 

 カラフルなアニメキャラクターは、われわれが互いを深く理解し合う上で役立つのでしょうか? 「すごくワクワクする!」という気持ちを表すのにレーザーショーが本当に必要なのか? 確かに、こうした機能はどれも目を引くための仕掛けにすぎません。ただ、われわれは生活の中で最も重要な人たちとつながるとき、自分の声を使うより小さい吹き出しの文字を使うことの方が多いでしょう。自分を表現する方法がもっと増えれば、家族と今後もチャットを続ける上でメリットがあるえしょう。

 

 筆者の最大の懸念は、「アンドロイド」や「ウィンドウズ」OS搭載の端末を使用している家族や友人はこの楽しさを味わえないことです。アップルのメッセージアプリの基盤である「iMessage(アイメッセージ)」は依然、アップル端末の最大の魅力の1つです。アップルがメッセージアプリをアンドロイド向けにも提供するとのうわさがありますが、まだ発表されていません。

 

 既に数種類のサードパーティー製アプリへの対応を発表していますが、今後さらに増える予定です。例えば、「OpenTable(オープンテーブル)」を使ってメッセージアプリ内でレストランの予約を入れたり、「Fandango(ファンダンゴ)」で映画のチケットを購入したり、「Square Cash(スクエアキャッシュ)」で友人にお金を返したりできます。

 

 筆者が愛するステッカーさえもサードバーティー製です。ディズニーやキース・ヘリングなどさまざまなステッカーパックが、アップストアの「iMessage」セクションからダウンロードできるようになるのです。

 

この新機能をどうみるか

 

 これらをうまく機能させるには、アップルはソフトウエア開発者から支持を得る必要があります。これまでの実績に加え、先週アップストアで開発者の不満に対応したことを踏まえれば、見通しは有望です。しかし、グーグルやフェイスブックが各社のメッセージアプリで同様の重要なサービスに力を入れていることも忘れてはなりません。アップルが1つ有利な点は、フェイスブックの「Messenger(メッセンジャー)」やグーグルの「Allo(アロー)」と異なり、iMessageでは既定の設定で会話が全て暗号化されることです。チャット内のサードパーティーのiMessageアプリでさえも会話をのぞき見ることはできないのです。

 

 フェイスブックやグーグルがメッセージアプリに予測アシスタント機能を組み込んでいるのとは異なり、Siriはメッセージアプリに組み込まれません。しかしiOS 10では、メッセージアプリでも使用できるアップルの「QuickType(クイックタイプ)」キーボードにSiriが統合されます。

 

 アップルは、このキーボードを使えば時間を節約できる可能性があることを、いくつか例を使って披露しました。例えば、母親から「今どこにいるの?」というメッセージを受信した場合、Siriが位置情報の共有を提案してくれるのです。あるいは、具体的な映画名やレストラン名に言及した場合、チケット購入や席の予約ができるようウェブへのリンクを提示してくれたりします。

 

この新機能をどうみるか

 

 メッセージアプリでもiOS 10全般でも、Siriの課題はSiriに失望しているユーザーに再考を促し、グーグルやアマゾン、フェイスブックの予測アシスタント機能に対抗する準備ができていることを証明することです。そのためには、ユーザーの習慣に基づいて正確で賢い提案をし、迅速にタスクを実行できるようにする必要があります。絵文字の仕掛けや動くステッカーが使えるのは素晴らしいのですが、賢いアシスタント機能こそがメッセージアプリ戦争における本当の戦場です。(ソースWSJ

2016年6月27日 (月)

英EU離脱、影響を左右する三つの不確定要素!

英国の欧州連合(EU)離脱が与える経済的な影響は、三つの不確定要素に左右されます。

 

 まずは、先行き不透明感や資産価格の下落で英国の投資と個人消費が冷え込むかどうか。

 

 二つ目に、英国が貿易と投資に関して欧州を含む他市場へこれまでと同じ程度のアクセスを維持できるか。

 

 そして最後に、英国民投票の結果を受けて欧州の政治的および経済的な分断が進むかです。

 

 エコノミストや財界人らの多くは23日、英国や欧州が経済的な損失を被り、その他の地域へも影響が波及しかねないとの見方で一致しました。重大なリスクがあるとの見方も支配的です。ただ一部では、英国をはじめとする各国政府が賢く対応すれば、短期的なダメージを抑制できると見る向きもいます。

 

 英国はこれから欧州諸国とのさまざまな関係を再構築するための交渉に臨むことになります。コンサルティング会社HISグローバル・インサイトのエコノミスト、ハワード・アーチャー氏は「英国経済にとって今後かなりの期間、先行き不透明感が当たり前のことになるだろう」と述べました。

 

 同氏は「こうした不透明感が続く間、企業は投資に極めて消極的になり、雇用にも慎重になるだろう」としたのです。そのため英国が今年後半にリセッション(景気後退)に陥り、来年は成長が足踏みすると予想します。欧州の貿易相手国の成長にもブレーキがかかると見込んでいます。

 

 エコノミストの大半は、英国がEUから抜けた後、他国との経済的なつながりを従来と同程度に保つことはできないとみています。今回の国民投票の結果には、制限できない移民流入への嫌悪感が大きな要因となりましたが、欧州の単一市場においては自由貿易と人の移動の自由が同等に重要視されています。

 

 資産運用会社マニュライフ・アセット・マネジメントのチーフエコノミスト、ミーガン・グリーン氏は「EU離脱派のキャンペーンがあれだけ移民問題に焦点を当てていたため、EUから抜けても単一市場だけ維持することは意味をなさない」と述べました。

 

 政治的な影響が経済に最も大きな混乱を引き起こす可能性があるとの見方も多い。フランスやオランダなどではEUに批判的な右翼主義者が、それぞれの国でEU離脱の是非を巡る国民投票の実施を呼び掛けています。一方、イングランドとは違ってEU残留が過半数を占めたスコットランドには、英国からの独立を新たな国民投票で問おうとする動きがあります。

 

 グリーン氏は「英国のEU離脱自体は世界経済にとっての災厄ではないが、EUの分裂は厄災となる」とし、「(EU分裂の)可能性が大きいとは言わないが、昨日よりはリスクが高まった」と指摘しました。

 

 財界からは、英国政府がEUからの離脱をどのように進めるのか早期に示すよう求める声が上がっています。国内の政争より、他国との新たな経済関係の明確化を優先することも要請しています。

 

 英国産業連盟(CBI)のキャロリン・フェアバーン事務局長は「喫緊の課題は市場に安心感を与えることだ」とし、「イングランド銀行(中央銀行)と協力しながら国内経済の信頼感と安定を支える英政府の強力かつ冷静なリーダーシップが必要だ」と述べました。

 

 英国商工会議所(BCC)のアダム・マーシャル事務局長代理は「企業が求めているのは、経済の安定を維持するための行動、EU離脱までの行動計画に加え、この歴史的な転換期とその後の経営に関して数多く存在する実践的な、現実世界の疑問への答えだ」と指摘。「政界の反省会ではなく、経済の健全性こそが最優先事項であるべきだ」と呼び掛けました。

 

 欧州の航空・防衛大手エアバス・グループのトム・エンダース最高経営責任者(CEO)は、EUからの離脱を進める過程で「経済的な損害を最小限にとどめることを視野に入れる」よう求めました。エンダースCEOは英国のEU残留を支持していました。「英国は苦しむだろうが、EUや世界全体に比べた自国経済の競争力にいっそう集中するようになるのは確かだろう」との考えも明らかにしました。(ソースWSJ

2016年6月26日 (日)

英EU離脱、市場への痛烈な一撃!

欧州連合(EU)離脱の是非を問う英国の国民投票が実施される前から市場が不透明で不安定だと思っていたのなら、改めて考えてみましょう。

 

 市場は完全に読み違えていたのです。英国民が選んだEU離脱という結果は、投票前とその直後の世論調査で示された楽観的な見方と正反対でした。

 

 開票が進むにつれ、動きは激しくなりました。ポンドの対ドル為替レートはオーバーナイトの高値である1ポンド=0.16ドル近辺から1.34ドルに沈み、年初来の高値から1985年以来の安値水準に急落しました。米10年物国債利回りは1.49%まで0.25ポイントほど低下(価格は上昇)し、日経平均株価は7.9%ほど下げ、欧米の株式市場も荒波に向かいます。

 

 問題は不透明感がむしろ増したことです。外国為替や株式、債券市場はこれまで、開票結果そのものという比較的明確に定義されたリスクに沿った動きを示してきました。各市場は開票状況やオッズなど、入手可能なデータに追随して動いてきました。しかし、今や市場は答えを見つけるのが非常に困難な多くの問題に直面しています。

 

 まずやってくるのが英国の問題です。EU残留を訴えてきたキャメロン首相が率いる英政府の能力に疑問符が付けられ、政治的緊張はすでに明確になっています。北アイルランドとスコットランドは英国との関係見直しを迫るかもしれません。英国のEU離脱のプロセスでは交渉に膨大な時間と労力がかけられるでしょう。

 

 投票結果は英国内の深い政治的・経済的な亀裂をさらけ出しました。投票前から不透明感で冷え込んでいた英国経済は、さらなる逆風にさらされる公算が大きいでしょう。

 

 さらに大きな問題は、今回の結果が「リーマン・ショック」の再来につながるかということです。恐らくそうはならないでしょうが、仮にそうなれば、欧州とりわけソブリン債務危機からまだ立ち直ろうともがいているユーロ圏に深刻な問題を引き起こす可能性があります。英国で国民投票を実施するというだけでユーロ懐疑派が勇気付けられました。EU離脱の決定は彼らをさらに勢いづけるえしょう。

 

 現在、市場は明らかに各国中央銀行による行動を注視しており、投資家が陥ったパニックを一時的に緩和する措置がいくらか発動されるかもしれない。一般に、リスクの高いイベントの結果が「カタルシス(精神の浄化作用)」となり、市場や投資家が前に進めるようになるケースは多いのですが、英国の投票結果はそのような効果を一切もたらしていません。(ソースWSJ

2016年6月25日 (土)

キャメロン英首相に痛手、EU離脱が確定!

英国のキャメロン首相は、欧州との関係を国民投票にかけるという大勝負に打って出ましたが、敗北しました。首相のレガシー(政治的遺産)は一変し、辞任に追い込まれることになりました。

 

 英国の各メディアは、国民投票は欧州連合(EU)離脱が多数になることが確実になったと報じましたが、これでキャメロン首相の運命は一転します。首相は過去2年、スコットランドの独立を無事に回避し、総選挙で予想外の勝利を収めて23年ぶりに保守党単独政権を樹立しました。

 

 2015年の総選挙前、キャメロン首相は保守党が過半数を獲得した場合、EU残留の是非を問う国民投票を実施すると約束しました。23日の国民投票で残留を確定させれば、きわどい3つの投票で完全な勝利を収められるはずだったのです。

 

 しかし代わりに、英国とEUとの関係後退に道筋をつけた首相という立場に置かれることになってしまいました。首相は「EU離脱は英国経済を破壊し、英国の世界での立場を弱体化させる」と主張してきにも拘わらず、その主張は退けられてしまいました。

 

いかに難民問題が国民の間で大きな問題だったということであり、経済的な問題よりもこちらのほうが優先されたと言うことです。EUを離脱することになりましたが、すぐ離脱というわけではなく猶予期間というものが2年あり、その間に諸問題をかたづけるということになります。

 

今後はどこまで円高株安が進むかわかりませんが、場合によっては株も一段安になるかもしれません。(ソ-スWSJ

2016年6月24日 (金)

LINEと微信、広告収入の「金鉱脈」掘り当てる!

モバイルメッセージアプリを使ったマーケティングは、欧米で根付いているとは言い難いのですが、アジアではすでに本格化しています。

 

 それでも、アジアの2大メッセージアプリである日本の「LINE」と中国の「微信(ウィーチャット)」は、潜在的な広告収入の「金鉱脈」の表面を削り始めたばかりです。

 

 LINEと微信の運営会社は、広告主によるプラットフォームの活用を可能にしています。両社のプラットフォームはいずれも何億人ものユーザーに、メッセージサービスを超えたさまざまなサービスを提供しています。例えばタクシーの手配、音楽配信、食事の出前や決済などです。

 

 東京を拠点とするモバイル業界コンサルタント、セルカン・トト氏は、「収益化という点で、LINEや微信などアジアのメッセージアプリは、欧米のメッセージアプリのはるか先を行っている」と述べています。

 

 アジアの同業と違い、フェイスブックは保有する2つのメッセージアプリである「フェイスブック・メッセンジャー」と「ワッツアップ」から収益を上げていません。ただし、両アプリとも、収益を上げる可能性のあるモデルについて試験を行っています。例えば、広告主がスポンサーとなっているメッセージをユーザーに見せるなどのモデルです。

 

 微信は、中国のインターネットサービス大手、騰訊控股(テンセントホールディングス)が保有するメッセージアプリだが、月間アクティブユーザー数は世界で76200万人を超えていて、その大半は中国の人々です。

 

 LINEは月間ユーザー数が21800万人を超えるとしており、うち3分の2を日本、台湾、タイとインドネシアの人々が占めます。同社は、韓国の検索ポータルサイトのネイバーが保有する企業ですが、来月に上場して9億ドル(約945億円)を調達する計画です。

 

 昨年のLINEの売上高(1200億円)のうち、広告収入が占めた比率は3分の1を下回る程度でした。同社はモバイルゲームとスタンプからも収益を上げています。スタンプは大きなサイズの顔文字(エモティコン)で、かわいらしいキャラクターを採用したものが多く、ユーザーはそれを購入して互いに送り合っています。

 

 LINEは、企業が料金を払って公式アカウントを作れるようにしています。その後、企業は登録した(友だちに追加した)ユーザーに情報や無料の宣伝用スタンプを送ることができるのです。

 

 東京に本拠を置く旅行代理店のエイチ・アイ・エス(HIS)は、LINEの公式アカウントを使って、登録ユーザーに特別なクーポンなどの特典を提供しています。同社アカウントの登録ユーザー数は770万人前後に達します。登録ユーザーはチャット機能を使って、HISに直接問い合わせすることもできます。

 

 LINEは昨年、中小企業や個人を対象に新サービスをスタートしました。公式アカウントの料金が高すぎると感じているかもしれない企業や個人向けです。フェイスブックのページと同様に、このアカウントはユーザーとブランドや企業との直接のやりとりを可能にします。LINEは最近、人口動態やユーザーの興味に関するデータに基づいて、最適化された広告を提供するサービスも始めました。

 

 テンセントは2014年に微信でバナー広告の試験を開始しました。微信の公式アカウントを持つ企業が他社の公式ページに広告を載せることを可能にしたものです。昨年には、ユーザーが写真や最新情報を載せる「モーメンツ(朋友圏)」での広告表示を開始したほか、今年には、このセクションを広告予算が少ない広告主にも開放しました。

 

 多くの企業は、自らの店舗に消費者を引き寄せるため、微信で消費者とやりとりし、割引クーポンを配布も行っています。高級ファッションブランドのシャネルは先月、北京でファッションショーを開催した際、微信の公式アカウントを使って招待客と交流し、他のショーの動画の共有や新しいコレクションのプレビューにも利用しました。

 

 収益を上げながらメッセージアプリのユーザーを満足させ続けるためには、課題もあります。広州市のある化粧品会社の営業部長はこれまでのところ、微信のモーメンツに表示される広告がわずらわしいと感じたことはないと話しました。「たまに見ることはあるが、そのリンクをクリックしたことはない」と。

 

 また、この営業部長は今後、微信の計画通りに表示される広告の量が増えたとしても、このアプリを使うのをやめるのは難しいだろうと述べました。その理由は、知り合いが皆使っているからえす。(ソースWSJ

2016年6月23日 (木)

米経済、日本型の成長低迷に陥るリスクは!

米連邦準備制度理事会(FRB)と日本銀行は金融政策を据え置きましたが、それでも国債利回りは低水準を更新しました。ドイツ国債の利回りはマイナス水準になり、日本国債はさらにマイナスとなり、米国債は3年ぶりの低利回りをつけたのです。

 

 この利回り低下の理由は数多くありますが、中でも三つが際立っています。ゼロ金利ないしマイナス金利と債券買い入れで経済成長を刺激しようとする各中央銀行の取り組み。欧州連合(EU)離脱の是非を問う623日の英国民投票への懸念を主な背景とする投資家の安全志向。そして世界中の経済成長減速です。

 

 最初の二つはほぼ一時的な現象ですが、三つ目は相乗性が高く、それゆえより心配なことです。そして、これは米国や他の国々が日本のようになりつつあることを示唆しています。日本経済は危機的な状況から回復する取り組みが20年間も阻まれているのです。

 

 10年債利回りは、投資家が今後10年間に予想する短期金利の水準に、「タームプレミアム」と呼ばれる資金をこの期間固定することへの代償を上乗せして決まります。このタームプレミアムはこれまで平均的に0.5%〜2.0%でした。しかし、投資顧問会社コーナーストーン・マクロの推計によると、現在は米国でマイナス0.6%、ドイツではマイナス1.6%、日本はマイナス1.7%になっています。

 

 これは一つには、各中銀が債券を買い入れて供給を絞り、投資家がさらに高い価格で買いより低い利回りを受け入れるように仕向けているためです。中銀としては、こうした利回りの低下で投資が促され、インフレ率が目標とする2%に向かって上昇することを期待しているのです。

 

 マイナス水準のタームプレミアムは、懸念も反映しています。国債は通常、投資家にとって最も安全な投資資産です。災厄に見舞われると、株式や社債など他の資産価格が下落し、国債価格は上昇します。2008年の米金融危機、ユーロ圏のソブリン債務危機、中国経済が落ち込む可能性、大規模なテロ攻撃、感染病の大流行など、さまざまな場面で債券はその保険としての価値が上がりました。足元のリスク要因はいわゆるブレグジット(英国のEU離脱)です。英国がEU離脱を決めれば、利回りがつかない債券でさえも最悪の事態に対する有効なヘッジになります。

 

 しかし懸念は永遠に続くものではないし、中銀の緩和策もそうです。いまはむしろずっと根深い要因が金利を抑えているようです。FRBが今後の利上げ経路を下方修正した判断は、この点にスポットライトを当てています。

 

 FRBはかねて短期金利を、完全雇用と安定したインフレが両立する中立的水準まで引き上げることを前提としてきました。だがこの自然利子率の水準が低下しているようです。FRB当局者らは13年には4%と考えていましたが、いまでは3%とみており、イエレン議長は15日に2%かもしれないとの見方を示しました。

 

 議長はこれまで、自然利子率が低い原因は08年の金融危機の後遺症などの「逆風」にあり、いずれは薄れるとしてきました。しかし15日の会見では、高齢化や生産性の伸びの世界的な落ち込みなど、「長期にわたる持続的要因」を指摘しました。

 

 労働力の拡大減速で設備需要が減り、生産性の伸びが鈍化すると、賃金と利益の伸びも衰えます。家計は返済にあてる将来の所得が減るので借り入れ意欲が薄れ、企業の投資意欲も後退します。このように成長の低迷は自己強化する可能性があります。

 

 1990年以降の日本を見れば、これはなじみのある状況に思えるかもしれません。90年当時、日本経済は年率4%の成長を続けると広く予想されていました。ところが労働年齢の人口は95年前後でピークに達し、生産性の伸びが衰え始めました。90年以降、日本の成長率は平均1%未満となっています。ゼロ金利やマイナス金利が企業に投資を促す効果は限定的です。企業は日本の外に成長の可能性を見いだしているからです。

 

 現在、大半の経済大国で労働力の拡大と生産性の伸びが減速しているため、金利に対するこうした持続的要因の影響はさらに高まっています。新興国の多くは、09年の米国で有り余っていた空き屋住宅にも似た過剰な資源生産力と取り組んでいます。

 

 日本の政策担当者らは、早まって成長が回復したと判断し、増税や利上げで周期的に事態を悪化させてきました。その結果の一つが低すぎるインフレで、そのため低金利をさらに続けるよう求められています。FRBは同じ過ちを犯すまいと決めているかに思われますが。

 

 それでも高齢化や生産性の伸びの鈍化、事業投資を抑え込む自己強化的な悲観は、克服するのがはるかに厳しい課題です。そして債券市場が下した判断は、すぐには克服されないというものなのです。(ソースWSJ

2016年6月21日 (火)

LINE海外展開、日本で受ける「かわいい」は無力!

LINEが日本でこれほどの成功を収めているまさにその要因こそ、海外市場のほとんどで成功できない理由になるでしょう。

 

 日本で絶大な人気を博している無料対話アプリを手掛けるLINEは来月、東京証券取引所とニューヨーク証券取引所(NYSE)へ同時に上場し約92000万ドル(約980億円)を調達する計画で、企業評価額は55億ドルに上る見込みです。同社のチャットアプリ利用者数は、フェイスブックの「ワッツアップ」や中国の「微信(ウィーチャット)」など大手競合を下回りますが、ユーザー1人当たりの売上高は競合をはるかにしのぎます。米調査会社スタティスタによると、LINEの売上高は昨年、ユーザー1人当たり約6ドルに達しました。これに対しウィーチャットは約2ドル、ワッツアップは0.06ドルです。

 

 この好業績の秘密は、無表情なクマと感情を丸出しにするウサギにあります。

 

 クマの「ブラウン」とその連れ合いのウサギ、「コニー」をはじめ、LINEは多くの可愛らしいキャラクターをスタンプとして発売しており、ユーザーがこれを購入して友達に送る仕組みです。スタンプの販売は昨年、ラインの売上高の4分の1近くを占めました。さらに、売上高の約4割はチャットアプリで提供しているゲームで稼ぎます。ゲームの多くはLINEキャラクターが主役になっています。アプリではさらに、テイラー・スウィフトやディズニーといった第三者が作成するスタンプやゲームも販売されています。

 

 つまり、世界的なキャラクターのハローキティを生んだ国でLINEが大成功しているのは驚くにあたらないのです。台湾やタイ、インドネシアなどアジアの近隣諸国でも大きな存在感があります。

 

 しかし、日本の「かわいい」文化の影響が薄い国でも成功を収められるのでしょうか。データは心もとない。実際、日本とこのアジアの3カ国以外では、過去1年で月間アクティブユーザー数が減少しています。中国は参入して然るべき市場ですが、同国では2014年からLINEへの接続がブロックされています。月間アクティブユーザーの4分の3近くが海外の利用者とはいえ、LINEは依然として売上高の7割程度を国内で稼いでいます。

 

 さらに懸念されるのは、1カ月当たりのスタンプまたはゲーム購入者数が約800万人で頭打ちになっていることです。広告への事業多角化はある程度の成功を収めています。ただ、全体のユーザー数が伸び悩む中、こうした事業の拡大は難しい挑戦です。見込まれる評価額が55億ドルとすると、LINEの昨年の調整後利益に基づく株価収益率(PER)は57倍で、フェイスブックの51倍を上回る。

 

 LINEIPOで調達する資金を使って海外展開の努力を倍加したいところでしょう。何より、日本ではすでに人口の半分がユーザーになっています。しかし、LINEの世界市場での成功へ向けた道筋は一直線とはいくとは思えません。(ソースWSJ

2016年6月20日 (月)

英国、EU離脱後に待ち受ける難題!

あと2週間もしないうちに英国の政治、憲法、外交、経済は大混乱に陥るかもしれません。英国が623日の国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めた場合のその後の計画を策定しなければならない政策担当者らは少なくともそう懸念しています。離脱賛成派が勢いを増しつつある明らかな兆候が広がる中、こうした懸念が現実味を帯びてきました。10日に発表されたある世論調査では、離脱賛成派が反対派を6ポイント上回りました。賛成派の投票率の上昇が見込まれることを鑑みると、この差は10ポイントに拡大します。ただ、これ以外の世論調査では依然、離脱派と残留派が拮抗(きっこう)しています。投票で「ブレグジット(英国のEU離脱)」が決まれば、英国は数々の大きな難題に直面することでしょう。

 

政治の問題

 

 まず、政治の問題があります。キャメロン首相は自ら率いるEU残留派が負けても首相の地位にとどまる意向を示していますが、すぐに辞任するとの予想が大勢です。同首相の実績を猛烈に攻撃してきたEU離脱支持派がEUとの離脱交渉を同首相に任せるとは思えません。それにいずれにせよキャメロン首相はその時点で信用を失ってしまっているでしょう。最近までは、ブレグジット支持派が勝った場合、その中心的存在であるボリス・ジョンソン前市長がすぐに次期首相に就任する可能性が濃厚でした。しかし、前市長もここ最近で人気が落ち、首相にふさわしくないとの声が周囲から上がっています。一部の有力保守党議員は党首選で前市長が最終的に負けるとさえ確信しています。党首選で複数の候補が争うことになれば、秋口まで政府のトップが決まらないという状態になりかねないのです。

 

憲法上の問題

 

 EU離脱が決まれば憲法上の問題も生じるでしょう。新政権は離脱後のEUとの関係をどうすべきか判断を迫られることになります。これは実質的に二者択一です。一つ目の選択肢は、できる限り現在の関係を維持し(いわゆるノルウェー型)、二国間貿易協定(FTA)締結交渉のための時間を稼ぐこと。二つ目は、EUと決別し、世界貿易機関(WTO)規則だけに頼りつつ、新たな貿易関係の確立を目指すことです。

 

 大半の議員は一つ目の選択肢を支持しそうです。議員の間ではブレグジット反対派が圧倒的に多く、しかも一つ目の方が経済の混乱は最小限に抑えられると考えられるからです。だがこちらの選択肢を選べば、ブレグジット運動を主導する多くの人たちが声高に反対しているEU内からの移民の無制限受け入れ、EUへの資金拠出、EU規則の順守といった義務はこれからも消えません。これは議会内の対立を生み、早期解散・総選挙につながる可能性があります。

 

外交上の問題

 

 混乱は政治や憲法の面だけにとどまらず、正式なEU脱退交渉の開始を先延ばしにしようとした場合は特に外交まで及びかねないと政府関係者らは懸念しています。あるEU関係者によると、EU側としては、新たなEU予算の交渉が始まる2018年初めまでに脱退協定を締結したい考えです。つまり、英国は早ければ今月末のEU理事会で、EUからの脱退を定めたEU条約第50条に準じて正式に脱退の意向を通告し、2年間にわたる交渉をスタートさせる必要があるということです。

 

 ただ、離脱支持派の中には、非公式な形であれ脱退時の条件で合意に至るまで第50条の発動を遅らせるべきだと主張する向きもあります。そうすれば、交渉でEUを優位に立たせることは回避できます。実際、ブレグジット派の主力メンバーの一人、ゴーブ司法相は、他のEU諸国から譲歩を引き出すため、現在の加盟国としての権利を利用してEU貿易を妨害することまで提案しています。

 

 一方、英国とEUの外交官らはこうした主張について考えが甘いとみています。実際には、英国が第50条を発動するまでEUは一切の交渉を拒否するでしょう。英国側も、脱退協定が成立するまで移民の受け入れやEU予算への拠出をやめることはできないと思われます。英国が一方的にこうした義務を一つでも放棄すれば、EUには英国を追放する明らかな理由ができます。そうなると、EUからの助成金やEU加盟国としての地位に依存している英国の経済セクターは即座に問題を抱えることとなります。大規模な英国の金融業界も例外ではありません。

 

 EUが英国にとって貿易の半分近くを依存し良い関係を築いてきた相手であることを踏まえると、こうしたやり方はいずれにせよあまり得策とは言えません。英国がパートナーから競争相手への転向を決めたあかつきには、EUは新たな脱退国を出さないことを優先事項と考えるでしょう。そうした状況下でEUが脱退後の英国に今よりも良い条件を与えることはほぼあり得ません。つまり、域内での人や物の自由な移動を認める義務を果たさなくても単一市場に自由にアクセスできる、というブレグジット支持派の目標が達成される可能性はほとんどないということです。

 

 さらに、政治、憲法、外交の混乱が経済にも波及することは確実と思われます。少なくとも不透明感が晴れるまでは覚悟が必要です。英国経済へのショックがどれほど深刻なものになるかは、EU全体への影響の度合いによっても変わってくるでしょう。結局のところ、英国の国民投票は欧州各国で政治的不安定性が高まる中で行われるもので、それだけを切り離して考えることはできません。

 

 一部の離脱支持派でさえ、英国がEUを離れれば海外への混乱波及が予想されることを認めています。実際、ゴーブ司法相は、ブレグジットによって欧州がユーロやEUから「解放」されることへの期待と確信を表明しています。英国だけでなく多くの欧州諸国の政策担当者らが、同相の見方は正しいのではないかと不安を抱いています。(ソースWSJ

2016年6月19日 (日)

「原発支持」に転換する米環境団体!

米国で影響力の強い環境団体のうち数団体が、長年にわたる反原発の立場を軟化させています。環境保護論者の優先課題は気候変動に移っており、反原発運動に大きな変化が生じています。米国では採算が悪化している一部原子炉が閉鎖されつつありますが、環境団体の態度の軟化はこの国の原子力業界が直面する最大の政治的ハードルを低くしています。

 

 米国で最も多くの原子力発電所を所有するエクセロン社のジョー・ドミンゲス執行副社長は、「歴史的には、こういった団体が原発に反対してきただけに、反対派の中で彼らの存在感が薄れているのがかなり目立つ」と述べています。原発は温室効果ガスを排出せず、連邦政府のデータによれば、米国の電力の約20%、カーボンフリー(二酸化炭素=CO2を出さない)電力の60%を賄っています。しかし最近は安価な天然ガスや、原子力より再生可能燃料を好む各州の方針に押され、全米で十数基の原子炉が向こう数年間に閉鎖される予定か、すでに閉鎖されています。

 

 米国で最古参の大手環境団体のシエラ・クラブは、既存のすべての原発を政府の運転許可期間より前倒しで閉鎖することを支持するという長年の立場を放棄するか否かについて議論しています。シエラ・クラブの指導部は、同団体が石炭や天然ガスを使用する発電所の閉鎖を訴えるなか、既存の原子炉が再生可能燃料に転換する際の仲立ちや代替的エネルギー源になるとみています。環境団体の環境防衛基金(EDF)も同様に、原発に関する方針をどの程度調整すべきかについて判断を示そうとしており、財務的に苦しい原子炉の維持を支持する可能性があります。

 

 イリノイ州では、シエラ・クラブやEDFのほか、天然資源保護協議会(NRDC)などの環境団体がエクセロン社や州議会議員との間で、向こう2年間に2基の原子炉を閉鎖するという同社が6月初旬に下した決定を覆すための法案づくりを進めています。実現すれば、エネルギーの効率化と再生可能燃料を推進する一方で、二酸化炭素を排出せずに電力を生む原子炉の稼働継続が保証されることになります。

 

 前出のドミンゲス氏は、こうした変化はエネルギー企業の損益に明らかな影響をもたらすと述べ、「原発政策で州レベルの合意をとりまとめることが可能だなどと、以前は考えていなかった」と話しています。シエラ・クラブのマイケル・ブルーン専務理事は、同団体がエネルギーの大半を石炭火力発電所の閉鎖と天然ガス火力発電所の新設の阻止に集中していると語っています。

 

 既存の原発の維持に反対していた環境団体の変化は2つに分かれています。様子見の姿勢をとる団体と、イリノイ州のように原発の維持に向けて積極的に動いているグループです。ただし、市場の状況からみて、新規に稼働を開始する原発はほとんどありません。このため、議論はもっぱら、既存の原子炉の行方に集中しています。主要な環境団体の大半は、原発新設には反対の立場を維持しています。

 

 環境保護論者は長年、さまざまな懸念や要因から原発に反対の立場を取ってきました。破滅的な事故(2011年に起きた福島の原発事故で高まった)を起こすリスク、放射性廃棄物の保管の問題、核兵器拡散の恐れ、それに太陽光や風力といった再生可能エネルギーを好んだためです。

 

 過去23年間、気候変動がほぼすべての主要環境団体の最優先課題となり、気候科学と政策の両方の分野で影響力を持つ指導者が立場を変化させており、今では二酸化炭素を出さない電力を支持する向きが多数を占めています。彼らは、約60カ所の原発にあるおよそ100基の原子炉の存続を支持しています。原子力は安定しない風力や太陽光と比較すると安定した電力源となるからです。

 

 その一方で、グリーンピースなどの環境団体は、放射線放出や核燃料廃棄物の処理など環境上のリスクは気候変動防止の利益をはるかにしのぐとして、既存の原発の閉鎖に向けて積極的な活動を続けています。(ソースWSJ

2016年6月18日 (土)

あなたのマイナス思考断ち切るには!

前回経験した嫌だったことを考え、次に前回自分を褒めたかったことを振り返ってみよう。どちらの方が簡単に思い出せるだろうか。たいていは、嫌だったことが次から次へ浮かんでくるものです。われわれは、否定的で非生産的なことをあれこれ考えてしまうものなのです。

 

 11つの考えは、脳の中のタンパク質などの物質や遺伝子発現と、神経連絡との間の複雑な活動パターンで構成されています。考えれば考えるほど、その回路は強くなります。神経科学者で「上昇スパイラル:神経科学を使って鬱病を反転させる」の著者であるアレックス・コーブ氏は、「十分発達した1つの考えは、シュプールのようなものだ。シュプールをたどって下れば下るほど、下るのが楽になる」と語っています。

 

 しかし意志と習慣で、違うシュプールを描くことが出来ます。心理学者はこれを、認知的再評価技法と呼んでいます。その結果、前向きな思考に当てられる神経回路網が強化されます。研究によれば、そうなると、心の健康が改善され生活満足度が高まり、心臓の機能も好転します。この技法は、認識行動治療の核心です。朗報は、それを家庭でも訓練できることです。

 

 認知的再評価は、否定的な考えを消してしまうわけではありません。そんなことはできません。また事実でない否定的な考えを事実でない肯定的な考えに変化させるものでもありません。目的は考えを前向きに再構成することで、したがって事実に基づくことになります。

 

 まず認識する

 

  まず変えるべき考えを知る必要があります。あれこれ考えるのは時間の無駄であると自覚する必要があります。考えていることを紙に書いて、どうしてそう考えるのか突き止めましょう。例えば、「上司が私のところに話しに来ると、彼が私の仕事ぶりを気に入っていないのでは心配になる。私は負け犬だ」という考えが嫌なことかもしれません。米心理療法士のポール・ホケメイヤー氏は、「考えていることを外に出すと、気持ちがすっきりする」と話します。

 

補強証拠を探す

 

 人々が思い悩み自分に言い聞かせている多くのことは事実ではありません。自分の考えに異義を唱える必要があります。否定的な考え、例えば「私は負け犬か」に疑問を投げ掛けましょう。負け犬である証拠は、それほど多くはないでしょう。次に、それとは逆のことを自問し、それを裏付ける証拠を探し、書いてみましょう。「うまくいったことは何か」、「昨年昇進したか」「自分はいい親か」などだ。そして、証拠を吟味しよう。いつもうまくいっているわけではありませんが、うまくいったことの方がいかなかったことよりはるかに多いかもしれません。サンフランシスコの臨床心理学者スティーブ・オーマ氏は、この段階の目標は自分を正確に見詰めることだと語っています。

 

とにかく練習あるのみ

 

 この新しい考え方は1晩ももちません。自分に対して何年も批判的だったのだから、無理はありません。批判的な考え方の神経経路は強固になっているのです。ただし、新しい考え方を比較的短期間で習慣にすることはできます。201411月に学術誌「行動研究と療法」に掲載された研究論文によると、認知行動療法の一環で認知的再評価を実践した人は、16週間で否定的な感情を大幅に減らすことができました。この研究は当時スタンフォード大学の研究員だったフィリップ・R・ゴールディン氏とジャザイエリ氏が行ったもので、75人の被験者が参加しました。

 

 これには練習が必要です。否定的な考えが浮かぶたびにそれを書き出し、それに反論するのです。反論に適切な文章をいくつか用意しておくのも良い。「わ たしは賢い」「わたしは良い親だ」などだ。目標は繰り返すことです。オーマ博士は「良いスタイルになりたいのなら、1回の運動ではダメだ。心にも同じことが言える」と話しています。

 

 われわれの友人に対する態度は、自分自身に対する態度より良い場合が多いものです。もし、あなたが自分に対して言うような不合理なことを友人が友人自身に言っているのを聞いたら、あなたはすかさずそれは違うと答えるでしょう。あらゆる点で自分にそっくりな友人がいることを想像しよう。あなたが自分に対して言うような破滅的な考えを彼が彼自身に言っているとしたら、あなたは彼にどう反論するだろうか。彼の考え方が間違っていることを示すためにどんな証拠を提示するだろう。自分が友人に答えることを想像して、それを心に刻み込んでおきましょう。

 

 否定的な考えを突き詰めてしましょう。自分が負け犬だと思うのなら、自分に国中で一番の負け犬だと言い聞かせましょう。もし、負け犬オリンピックがあれば、10個の金メ ダルが取れるだろうし、タイム誌はあなたの顔を表紙に載せるでしょう。ここまで来ると、「思わず笑ってしまうはずだ」とオーマ博士は指摘します。これだけで、気分が少し軽くなります。こういった誇張は、否定的な考えがいかにばかげているかを強調するのにも役立ちます。

 

路線を変更する

 

 高速道路を走行中に大きなトラックが乱暴に割り込んで来たら、すぐに車線を変更するでしょう。否定的な考えが浮かんだときも、これをする必要があります。頭をすぐに他のことに向けるのです。自転車に乗っているときのように手信号を使っても良いでしょう。考えると楽しいと思える適切な話題をいくつか持っておくと良いのです。仕事で解決しなければならない問題でも、休暇の計画でも、趣味の技能について考えをめぐらすのでも良いのです。1度に2つのことは考えられないのですから。(ソースWSJ

2016年6月17日 (金)

装着せずに自分だけに聞こえる「ヘッドホン」!

この製品は、急激な進化を遂げつつある3Dトラッキングとサウンドプロジェクションという2つの技術を合体させたものです。イヤホンはもうすぐ時代遅れになるかもしれません。

 

 サウンドプロジェクションシステムは、ユーザーの頭の動きを追跡して、レーザーのようにユーザーの耳に音を届ける技術です。イスラエルの新興企業ノベト・システムズが開発しました。この技術を使えば、職場でイヤホンを付けずに私用の電話に出たり、デスメタルを聞いたりすることができます。近くにいる人には音は一切聞こえません。

 

 仕組みはこうです。3Dトラッカーが赤外線センサーとカメラを使ってユーザーの耳の位置を特定します。プロジェクションシステムがユーザーの耳に向かって超音波を発すると、コンピューターチップがユーザーの動きを感知して誰の耳にどの音波を届けるかを決めます。

 

 ノベトの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のノーム・ババイオフ氏は来年には製品(デスクトップ型のスピーカーと小型のサウンドバー)を発売したいと考えています。将来的にはビデオゲームへの応用も期待できます。現金自動預け払い機(ATM)に採用すれば、視覚障害を持つ人への残高情報の提供に活用できるかもしれません。

 

 この世はWi-Fi無線信号であふれかえっています。人間が動くたびに無線信号が流れを変える様子は水面に広がるさざ波のようです。カナダ・モントリオールの新興企業が開発したセンサー「エアリアル」はこうした信号の乱れを読み取り、家の中を監視することができます。

 

 センサーは物体と動きだけを感知するため個人を特定することはできませんが、無線信号に現れる人間の大きさの乱れを感知して、人間がどこにいるか――どこにいないかも――把握します。旧式の動作探知機と違い、エアリアルはその動きが向かう方向を予測できるのです。

 

 「午前3時にトイレに行きたくなったときに寝室の明かりはつけたくありません。廊下やトイレの電気だけでいい」と話すのはエアリアルの共同創業者で技術部門のトップ、ミシェル・アレグ氏です。このシステムならアレグ氏の動きや動く方向を感知して、どの照明をつけるかを決めてくれるかもしれません。

 

 同社はこのシステムを自社開発の機器か、既存のネットワーク機器のソフトウエアを更新するかのいずれかの形で1年以内に発売する予定です。初期のユーザーはどうやって他の「スマートホーム」システムに統合するかを考えなければならないでしょう。同社は現在、人気のスマートホーム製品のメーカーと協議を行っています。

 

 使い方を誤れば恐ろしい技術になりえます。センサー1つで家がまるごと盗聴される可能性があるからです。ただ、アレグ氏によると、エアリアルは外から他人の家の中をのぞけるような設計にはなっていないといいます。性能を最大限に発揮するのは家の中に設置した状態で使用したときで、しかもWi-Fiネットワークのパスワードが必要です。

 

 米ダクリのスマート・ヘルメットは頭を守るという意味では従来のヘルメットと変わりません。ただ、単なる安全装備ではなく頭部装着型のコンピューターです。マイクやカメラ、熱や方向を感知するセンサー、それに――これが一番肝心なところで――拡張現実(AR)機能を備えています。ダクリはこのヘルメットが労働者と機械の付き合い方を変えることを期待しています。

 

 あなたが工場労働者で、過熱した爆発寸前のパイプを冷やさなければならないとしましょう。ダクリのスマート・ヘルメットは熱を感知したり、部品に関するデジタルデータを表示したり、爆発を回避するための手順を提示したりします。「リモート・エキスパート」機能を使えば、オーストリアにいるエンジニアがブラジルの労働者が装着したヘルメットのゴーグル経由で現場の様子を確認し、装置の取り付けを指導できるのです。人間とコンピューターの知識全てを活用するシリ(アップルの音声認識アシスタント機能)のようなものです。ちょっとした家のリフォームにも役立ちます。

 

 ダクリのブライアン・マリンズCEOは、汎用性こそがこの製品のカギだと話します。「この製品に関してわれわれが目指しているのは、装着して周りを見回すだけでどんな仕事のやり方でもわかるヘルメットだ」。同社のヘルメットはカザフスタンの製鉄所で試験的に使用されています。価格は1万ドル(約107万円)から。今年中には20回目の改良を終えたスマート・ヘルメットが発表される予定で、シーメンスやバンシ・コンストラクションなど大手の顧客が相当数を発注しています。

 

 スマート・ヘルメットが幅広く採用されるようになれば、安全な職場環境が実現し、出張も減るかもしれません。マリンズ氏は「学習の概念を変える」ヘルメットと話しています。(ソースWSJ

2016年6月16日 (木)

アップル、iPhone低迷の先に光明!

米アップルは長きにわたりシンプルであることを誇りにしてきましたが、反対に同社の事業はますます複雑になっています。ただこれは避けられるものではなく、投資家が懸念すべきことでもありません。

 

 それでも懸念はアップルに重くのしかかっており、同社の株価は年初来でナスダック総合指数を約4%ポイント下回って推移しています。だが悲観は行き過ぎかもしれず、アップルが来週開催する世界開発者会議(WWDC)は投資家のムード改善につながる可能性があります。例えば、同社はアプリ配信サイト「アップストア」の変更に関する詳細をすでに一部明らかにしており、開発者の興味をそそると見られます。

 

 アップルは依然として、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」が収益の大部分を稼ぎ出しているという事実からは逃れられません。iPhoneに関してはこのところあまり良いニュースが聞こえてこず、中核市場の飽和とアップグレード率の鈍化が成長を抑えています。

 

 2年ごとに漸進的なアップグレードを行うアップルの製品サイクルも限界に達しつつあるかもしれません。今年のiPhone 6sは特に期待外れとなり、発売後2四半期のiPhone総出荷台数は前年同期比7%減少しています。

 

 そのため、アップルは考え方を変えているようです。今年にはスマホの普及を後押しするため画面がやや小さな新機種を発売しました。また、今年最も高い成長を遂げているサービス部門をさらに重視する姿勢を示しています。

 

 アップストアの変更で、ストア収入の一部については開発者の取り分が増えるが、長期的にはサービス事業を支援することにもなるかもしれません。こうした変更やモバイル端末およびデスクトップ向け基本ソフト(OS)の新バージョンについては来週の開発者会議で説明されます。

 

 新型iPhoneの発表は秋までなさそうです。市場では次世代機が179月期の業績を押し上げると見られていますが、投資家はまだ確信を持てずにいます。

 

 足元の株価低迷はiPhoneへの強い依存、そして同分野での技術革新の減退に対する懸念を反映しています。だがこれは早まった見方でしょう。スマホのパフォーマンスや耐久性を大幅に改善する方法はまだたくさんあります。

 

 例えば、チャーター・エクイティの半導体アナリスト、エド・スナイダー氏は、次世代iPhone3社の異なる通信会社の周波数帯で同時に使えるようになるとの見通しを示しました。通信会社はデータレートを高めるために異なる周波数帯のシグナルをまとめているため、これは大きな前進となります。半導体製品大手ブロードコムが先週モバイル用チップセットの強気見通しを示したことがこれを事実上確認しました。同社は強気見通しの理由として「次世代」端末を開発している「北米の大手スマホ顧客」からの需要を挙げました。

 

 最近のレポートによると、iPhoneは将来的に有機ELOLED)を用いたディスプレーと全面ガラスのフレームを採用する可能性があります。すなわち、漸次的なアップグレード以上の進歩があり、成長を押し上げる可能性があるということです。

 

 一方、アップルは他の事業分野への拡大を推進し、研究開発費(RD)支出も増やしているため、収益源の拡大に向けた取り組みは続きます。アップルとiPhoneの規模を考えれば、投資家にとってはその重要性を認識するのは難しいかもしれません。iPhone事業だけでも今年のフォーチュン500社(全米上位500社)の7位に入る大きさです。さらに、他の分野の売上高増加に向けた取り組みは効果が出るのに長年を要する可能性もあります。

 

 とはいえ、アップル株に賭けるリスクはあまりありません。株価はネットキャッシュを除く予想利益の8.5倍と、非常に割安になっています。

 

 アップルは暗雲が立ち込める中で夏を迎えた。だが近いうちに日の光が差し込み始めるかもしれません。(ソースWSJ

2016年6月15日 (水)

英国国教会、年10%近いリターン出す投資術!

英国国教会の歴史はローマ帝国から宗教改革への流れをくんでいます。最高統治者は英国の女王で、現在でも毎週百万人ほどが欠かさず礼拝のため教会を訪れています。

 

 一方、英国国教会は市場を打ち負かす「投資ファンドの聖地」でもあります。

 

 英国国教会の財務委員会は約70億ポンド(約1兆円)の教会資産を基金を通じて運用して、この資産は教区支援から布教活動の援助まで、教会の運営費用を賄うのに役立てられています。基金は昨年8.2%のリターンを上げ、過去30年のリターンは年平均で9.7%に達します。基金は年間インフレ率を最低でも5ポイント上回る運用成績を目標としています。過去30年の年間インフレ率は3.4%でした。

 

 大部分の投資家は基金ほど忍耐強くはなれません。ただ、その成功は何らかの教訓となる可能性がありまうs。

 

超長期投資

 

 基金を率いるアンドレアス・ウィッタム・スミス氏によると、この基金は永続的な教会への献金を原資としているため、超長期的な視点を持つことができます。例えば、英国国教会が地方に保有する不動産の一部は、数百年前からの所有物です。ウィッタム・スミス氏は「他の投資家には不可能だが、私たち(教会)にはできることがある。他の投資家は安定的なリターンを得る必要があり、永遠に待つことなどできない」と述べています。

 

 基金のパフォーマンスから得られる教訓の一つは、投資を検討する際には公開株以外にも目を向けるということです。

 

 ウィッタム・スミス氏によると、基金はかねてから証券市場に上場している株式へのエクスポージャーを減らそうとしてきました。こうした動きは最近加速しており、基金は3月に国内外株式ポートフォリオの資産25000万ポンドを売却しました。ウィッタム・スミス氏は世界経済について、急激に勢いを失い、政府の対応能力にも限界がくるだろうとして、厳しい見方を示しました。

 

 「長年続けてきた投資戦略のポイントは、(株式)市場への依存度をゆっくり、慎重に減らすことです。流動性リスクを高めてしまうため、持ち高を急に削減することはできません。そこに限界があるのは明確です。ただ、それは資産の分散を続けるという意味で役に立つ」と。

 

 公開株へのエクスポージャーを減らす一方、基金は未公開株投資(PE)マネジャーを通じた投資を増やしたほか、森林などの非流動資産を取得してきました。これらは昨年に好調なパフォーマンスを上げ、PEマネジャーのリターンは20.0%に達したそうです。

 

 ウィッタム・スミス氏は、流動性の低さを恐れる投資家が多いと指摘しています。しかし、保有資産を異なる投資先に分散すればリスクを低く抑えられます。同氏は「最悪なのは流動性の低い資産を保有しすぎることだ。それぞれの非流動資産の組み入れ比率が23%ほどであれば管理しやすくなる」と説明しました。

 

 全ての投資家が大手ファンドや慈善団体と同じ規模で流動性の低い資産に投資できるわけではありません。ただ、同氏が投資家にとりわけ強調したい点は、投資を委託するマネジャー全員についてできる限り掘り下げた調査を行うことの大切さです。ウィッタム・スミス氏によると、同氏の部下で投資ディレクターを務めるトム・ジョイ氏は「運用会社が教会のポートフォリオに組み入れる個別銘柄の調査にかけるのと同じ位の時間を、委託する運用会社の吟味、調査、監視にかけている」と話しました。

 

 また、英国国教会は倫理的に正しい投資を優先させています。教会は、宗教団体か非宗教団体かにかかわらず、「社会責任投資」を重視しているのです。

 

 宗教団体の基金と同様に、投資家はキリスト教やイスラム教など特定の信仰を重視するファンドに投資することができます。アプローチとパフォーマンスはさまざまですが、ここで繰り返されるのは倫理的・社会的に責任ある投資にコミットすることです。

 

倫理を重視した投資方針

 

 OIPインベストメント・トラストと英国国教会の財務委員会は軍事やポルノなどに関連する分野への投資を避けています。OIPインベストメントは200以上のローマカトリック団体が保有する長期資産を管理しているのです。

 

 ただ、両者はより積極的なアプローチで倫理的な投資を行う場合があります。つまり、何らかの企業方針に同意できなくてもその銘柄を直ちに売るのではなく、その企業の方向性を変更させるよう働きかけることがあるのです。

 

 財務委員会は昨年、「気候変動」というテーマを投資方針に取り入れ、全売上高に占める石炭販売の割合が10%以上を占める企業とオイルサンドから原油を抽出している企業をポートフォリオから外しました。ただ、石炭の売上比率が10%に近いある企業については株式を売却せず、関与を続ける道を選びました。それは今後の事業における石炭の役割を確認するためだったのです。

 

 とはいえ、英ハーグリーブズ・ランズダウンのパッシブ運用マネジャー、アダム・レアド氏は、倫理基準だけがビジネスの成功を意味するわけではなく、投資家は利益から目をそらすべきではないと指摘しています。同氏は「最終的には利益を上げることが主目標になることが多い。倫理(的な側面)は考慮すべき重要なポイントだが、あくまでその(利益を上げるという)フレームワークの枠内にあることは明らかだ」と述べました。(ソースWSJ

2016年6月14日 (火)

史上最大の手数料、サウジアラムコIPO狂想曲!

投資銀行がからむ取引案件の中には数年に一度、あるいは一世代に一度あるかないかの大規模な金額のものがまれにあります。しかし、ウォール街がサウジアラビアの砂漠に見ている案件は、一世代に一度どころではない、とてつもない規模の取引になりそうです。

 

 その案件とは、サウジ国営石油会社サウジアラムコが予定している新規株式公開(IPO)だ。サウジアラムコは実質、あらゆる指標で地球上最大規模の企業の1つです。サウジ政府は、サウジアラムコの企業価値は2兆〜3兆ドル(約214兆〜321兆円)になる可能性があるとしています。SPグローバル・マーケット・インテリジェンスによると、これは世界の他の上場石油・ガス会社全ての市場価値を合計した金額のほぼ半分に相当します。

 

銀行幹部がダーラン詣で

 

 このIPOの引受手数料は10億ドルになる可能性があり、世界有数の金融機関の幹部がこぞってサウジ湾岸の都市ダーランにあるサウジアラムコ本社につめかけています。IPOの手続きに詳しい関係者によると、中にはアミン・ナセル最高経営責任者(CEO)やハリド・ファリハ会長に面会しようと何時間も待ったあげく、会えるのはもっと下位の幹部だと告げられた人たちもいるそうです。

 

 サウジアラムコの社屋の1つで最近ナセル氏と面会した銀行関係者によると、同氏はサウジの経済改革がいかに有望であるかをとうとうと語ったといいます。その上で、IPOで役割を得るためには、石油依存型経済からの脱却に向けた大規模インフラプロジェクトへの融資を検討するよう明確に促しました。

 

 こうした厳しい審査を経た後には大きな見返りが待っています。サウジ政府はサウジアラムコ株について、最大5%の上場や海外の複数の取引所での上場の可能性を示唆しています。5%上場された場合、調達額は1500億ドルに上る可能性があり、これは、中国の電子商取引大手、阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング)が2014年に行ったIPOの調達額250億ドルという史上最高額をもはるかに上回ります。引き受け幹事になれば評判上のメリットも相当大きくなる可能性があります。

 

銀行がそろえる「強打者」

 

 経営コンサルティング会社マッキンゼーの元コンサルタントで、現在は米ペンシルバニア大学ウォートン校で経営者教育部門の責任者を務めるデービッド・ウェッセルズ氏は「契約を勝ち取った銀行は、エネルギー市場であらゆる種類の取引に関して極めて大きな信任を得ることになる」とした上で、「銀行はこの件に関して社内の『強打者』をそろえるだろう」と述べています。

 

 調査会社ディールロジックによると、引き受け幹事の手数料は通常、100億ドルを超える取引の場合、その約2%です。国営企業のIPOの手数料はもっと低いことが多く、アラムコは厳しい交渉を仕掛けてくることが予想されます。この案件に詳しい関係者によると、たとえ手数料が1%未満だとしても、最高10億ドルになる可能性があります。

 

 事情に詳しい関係者によると、現在のところ、サウジアラムコのIPOやサウジ政府の「国家変革計画(NTP)」、それに関連した2020年までに非石油収入を3倍以上に増やすプロジェクトに直接関わる仕事を手掛けた銀行やコンサルタント、弁護士はごく一部に限られています。銀行関係では、サウジとの関係が80年も前にさかのぼるJPモルガン・チェース、以前シティグループに勤めており、サウジ政府からIPO手続きの指南を任されている独立契約者のマイケル・クライン氏です。このほか、マッキンゼーやボストン・コンサルティング・グループのコンサルタント、ホワイト・アンド・ケース法律事務所の弁護士が関わっています。

 

 しかし、大鉱脈を追い求める上では多くのリスクも伴います。それら全ての株式を吸い上げられるだけの投資家からの十分な需要があるとは限らないからです。特に、サウジ政府は秘密主義で知られるため、当局者が十分な情報を開示しなかった場合はそうなる可能性があります。また関係者の一人は、サウジアラムコが最終的にIPOの規模を縮小し、サウジの取引所で比較的控え目な上場をするにとどまる可能性もあると話しています。

 

 いずれにしても、推定2610億バレルとされるサウジアラムコが確保している石油埋蔵量を株主が直接保有することはないでしょう。それよりも、他の国営石油会社と同じく、上場株式には長期採取権が付与されるとみられます。

 

 サウジ政府は、石油産業への依存軽減を目指す広範なプランの一環として、経済多様化に向けた資金を調達するためIPOを進めていて、今週、石油依存型経済からの脱却に向けた計画の概要も発表しています。

 

 事情に詳しい関係者によると、サウジは同国初となる国際市場での起債も準備しており、早ければ7月にも実施され、調達額は最大150億ドルになる可能性があり、その主幹事はIPOの幹事契約を獲得する上で有利になる可能性が高いといいます。

 

主幹事の最有力候補は?

 

 銀行各社は、サウジアラムコがIPOにどのような資産が含まれるかについて詳しい情報を提供し、夏には引き受け幹事を選定するとみています。事情に詳しい関係者によると、幹事は十数社になるようですが、主幹事は6社またはそれ以下になる可能性があります。

 

 関係者によると、主幹事の座を獲得すると広くみられているのがJPモルガンです。ディールロジックによると、JPモルガンはサウジアラムコの主力取引銀行であり、同社の融資のほぼ全てに関わっています。サウジ国内では「王国の銀行」として知られ、ここ数カ月もサウジ政府への100億ドルの融資の組成で主要な役割を果たしています。両者の関係は1930年代にまでさかのぼり、JPモルガンの前身であるモルガン・ギャランティー・トラストが米石油会社のサウジでの事業立ち上げと強化を支援したことがきっかけです。

 

 事情に詳しい関係者によると、JPモルガンのジェームズ・ダイモン最高経営責任者(CEO)は昨年後半以降サウジを訪れていませんが、政府高官と別の場所で定期的に会ったり、電話で話したりしています。また、JPモルガンの法人・投資銀行部門を率いるダニエル・ピント氏や投資銀行部門トップのカルロス・ヘルナンデス氏が定期的にサウジを訪問し、IPOやその他プロジェクトについてサウジアラムコの関係者や政府当局者と話し合っているといいます。

 

 シティグループ、ドイツ銀行、HSBCホールディングスは、2015年にサウジアラムコが確保した100億ドルの回転信用枠の設定に大規模銀行団の一員として関わりました。HSBC中東担当CEOのモハマド・トゥワイジリ氏が最近、サウジの経済企画省の副大臣に任命されたことから、HSBCに再びビジネスチャンスが与えられる可能性があります。

 

 中東でさまざまなプロジェクトに携わった銀行関係者は、1月にサウジアラムコのIPO計画が最初に報じられた際、懐疑的でした。サウジは過去にも石油市場の低迷時に石油依存からの脱却に乗り出したことがありますが、相場が回復するいつもそうした取り組みを断念していたからです。

 

 IPOは少なくとも1年は先になる可能性が高く、実際に行われる保証もありません。それでも、ウォール街の銀行はその機会を逃すまいと必死です。

 

 ウォートン校のウェッセルズ氏は「銀行はこのビジネスのニーズに応じようと、あらゆる手を尽くすだろう」と述べました。(ソースWSJ

2016年6月13日 (月)

クリントン氏はいかに左傾化してきたか!

16年前、ニューヨーク州民主党員の前で初の選挙戦の火ぶたを切って落としたヒラリー・クリントン氏は、自分が中道派であることを堂々と宣言しました。

 

 当時ファーストレディーだったクリントン氏は上院議員選挙への出馬を表明し、「私はニューデモクラットだ」と語りました。夫のビル・クリントン氏はそれまでの約10年間、民主党がよって立つリベラルな位置から党を離れさせ、無党派層の支持を得ようと取り組んでいました。そしてヒラリー氏もその「第三の道」という哲学を売り込んだというわけです。

 

 ヒラリー氏はその際、「政府が私たちのすべての問題の原因ではないし、解決策だとも思っていない」と述べました。

 

 ここにきてクリントン氏の演説内容が再び変化しました。だが今回は大統領選に向けてです。国内問題では急速に変化する党や、意外にしぶとい対抗馬となったバーニー・サンダース上委員議員に引きずられる格好で、クリントン氏は左寄りに動いたのです。自身の立場を覆すこともあれば、がらりとトーンを変えることもあったわけです。

 

 クリントン氏は長年、同性婚に反対してきましたが、その姿勢を取り下げました。また、2002年にイラクへの武力行使に賛成票を投じたことを詫たほか、地域や保護者で作るチャータースクールの支持から手を引き、さらには「大量収監の時代」を終わらせるよう訴えました。これは1994年にビル氏が制定した犯罪法を非難するものです。

 

 さらには、サンダース氏からの激しい圧力を受け、カナダとテキサス州を結ぶ原油パイプライン「キーストーンXL」に反対姿勢を示しました。国務長官在任中には承認に傾いていたにもかかわらずです。環太平洋経済連携協定(TPP)にも反対しました。クリントン氏は以前、TPPが世界の通商ルールの「標準基準(ゴールド・スタンダード)」になると発言していたものの、労働組合と民主党員の大部分やサンダース氏はTPPに反対していました。

 

 社会保障制度に関しても、クリントン氏は支払い能力拡充のため超党派による譲歩が必要だという長年の持論を、ほとんどかなぐり捨てました。そして給付金を削減しないというリベラル派の公約を受け入れたのです。

 

 2008年の敗北から8年後の今、クリントン氏は大統領選の候補指名に必要な代議員数を獲得しました。これは米国の主要政党で初めて女性の大統領候補が誕生した歴史的な快挙です。

 

 今秋の本選では共和党候補として指名が確実なドナルド・トランプ氏と対決することになりますが、少しリベラルに傾いたと見られることは無党派や労働者階級の有権者を取り込む上であまり役立たないかもしれません。さらに、クリントン氏の見解の変化は、同氏は信頼できないという一部有権者の見方をさらに強めることになりかねません。サンダース氏の支持者の多くがそうであったようにです。

 

 ラスベガス在住のビル・レッシュさん(63)は「正直言って、彼女は本物だとは思わない」と話す。サンダース氏の代議員でもあるレッシュさんは「彼女は当選するために必要なことなら何だってやる」と言います。

 

リベラル色強める国民と民主党

 

 クリントン陣営内外の民主党員は、彼女の見解の変化は新たな事実を反映したもので、中核となる理念を重視しながら状況に応じて調整しようというクリントン氏の意志を示していると指摘しています。 

 

 クリントン氏を支持するスーパーPAC(政治活動委員会)「プライオリティーズUSA」の世論調査員ジェフ・ガリン氏は「2008年以降、世界はとてつもなく変わった。経済も大きく変わった。8年後も同じ思考でいれば常識外れになる」と話しました。

 

 ただ、クリントン氏はサンダース氏ほど左寄りにはなっていません。サンダース氏は社会福祉制度の給付金を一律で増額することを主張しています。一方、クリントン氏の増額は目標が絞られています。特に同性婚問題で見られるように、国民は全体的にリベラルになりました。

 

 クリントン陣営で政策面の参謀長を務めるジェイク・サリバン氏は環境の変化に合わせて民主党が全体的に変化しているが、なかでもクリントン氏の変化が目立つと話します。例えば、銃規制を支持する姿勢は以前よりもかなり強くなっています。サリバン氏によると、これは銃乱射事件の多発を受けたものです。 

 

 トランプ氏は指名争いの中で自身の立場を何度も変化させてきました。彼もTPPに反対しているほか、社会保障制度には手を付けるべきではないと主張しています。

 

 クリントン氏にとって、当面の課題は、激しい指名争いを繰り広げた後の民主党の結束です。長かったこの戦いの中でクリントン氏が立ち位置を調整してきたものの中に、社会保障制度に対する見解があります。これは、民主党が左傾化するのを受けて変わってきたクリントン氏の見解の中で最も明白な例です。

 

超党派の委員会「最も賢明」 

 

 ベビーブーマー世代が退職すれば、政府が支払う給付金は税収によって賄われる分を超えることになります。現在の予測では、2034年までに社会保障制度の準備金は底をつき、政府は約束した金額の4分の3程度しか支払うことができなくなります。

 

 民主・共和両党の中道派は、いずれ両党が増税と給付金の削減を組み合わせた対策で合意するとみていました。そうすれば支払い能力が確保されるうえ、超党派による合意であれば両党とも政治的な大義名分が得られるからです。

 

 しかし、左派は別の見方をしていました。活動家らは、ここに現実の危機は存在しておらず、民主党は自らを恐怖で駆り立てているとして、すでに不十分な制度をさらに縮小すべきではないと主張しました。

 

 クリントン氏は長年、中道派と足並みをそろえてきました。上院議員選への出馬を表明した際、同氏は社会保障制度を財政責任という言葉で語りました。2008年の大統領選では、超党派による政策委員会を支持したほか、増税や退職年齢の引き上げなどで制度の延命を図る1983年の取り決めに言及。討論会で「レーガン大統領とオニール下院議長が委員会を創設した」とし、「あれは最適かつ最も賢明な方法だった。共和党と民主党を一緒に集められるからだ。私がやるのはそれだ」と述べています。

 

 クリントン氏が具体的に挙げた制限は、現在給付を受けている人の金額は削減しないことと、中間層には増税しないことだけでした。その後、大半の民主党員と同様に、社会保障制度の民営化に反対しました。民営化という政策は2005年にジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)が試みましたが、実現しなかったものです。(ソースWSJ

2016年6月12日 (日)

ソロス氏、トレーディング再開-世界経済に悲観的!

弱気筋として知られる著名投資家のジョージ・ソロス氏(85)が長い休止期間を経てトレーディングを再開しています。さまざまな経済・政治問題が世界を苦しめている中で、今がひともうけの好機とみています。

 

 事情に詳しい関係者によると、ソロス氏は先ごろ、世界経済の先行きと、市場が近く大きく変動することへの懸念から大規模な弱気のポジションを取るよう指示しました。

 

 同氏率いる投資会社ソロス・ファンド・マネジメントは、各市場の軟化を見越して株式を売却する一方で、金と金鉱会社の株式を購入した。同ファンドはソロス氏とその家族の資産300億ドルを運用しています。

 

 今回の動きはソロス氏にとって重要な方向転換と言えます。同氏は1992年に英ポンドが下落することに賭けて10億ドルの利益を手にしたことで有名になりました。ここ数年は公共政策的な活動や慈善事業に専念していました。また、米大統領選で民主党候補指名を確実にしたヒラリー・クリントン前国務長官を支持するスーパーPAC(特別政治活動委員会)に多額の献金を行っているほか、民主党を支持する団体に寄付しています。

 

 ソロス氏はこれまでも、ソロス・ファンドの投資動向を事細かに見守ってきました。事情に詳しい関係者によると、ソロス・ファンドの幹部は、同氏が時々(得てして損失が出た後に)同社の業務に口出しすることにいら立っていたといいます。ソロス氏はここ数年、あまり投資に関わっていなかったのですが、このところオフィスで売買を指示する時間が増えています。また、幹部と連絡を取る頻度も増えているといいます。

 

 ソロス氏は同ファンドに開いた隙間を埋めようとしているとも言えます。昨年、同社の最高投資責任者(CIO)だったスコット・ベセント氏がヘッジファンドを立ち上げるために退社したからです。ベセント氏は世界中のマクロ経済の動きを予測して投資するグローバルマクロ運用に長けていました。ソロス・ファンドはベセント氏率いるキー・スクエア・グループに20億ドル出資しています。

 

 ソロス氏は15年暮れにテッド・バーディック氏をソロス・ファンドのCIOに任命しました。バーディック氏は、ソロス氏が得意とするグローバルマクロではなく、ディストレスト債権や裁定取引などの経験が長かったそうで、関係者の話によれば、そのためソロス氏は気兼ねなくソロス・ファンドに戻れたといいます。

 

 同氏の今回の投資スタンスは、同氏が多くの人々よりも先行きを悲観していることを物語っています。中国や欧州で経済・政治問題が深刻化していることを受けて、同氏の世界観はこの半年で暗さを増してきました。今年初めは低調だった米株式市場はじりじりと過去最高値に迫っており、中国の株式市場も落ち着いています。しかし、ソロス氏は減速が続く中国経済の先行きを依然として疑問視し、中国から投資資金が引き揚げられた場合、その影響は世界中に及ぶ可能性が高いとみています。

 

 ソロス氏は電子メールで「中国は今も資金の流出に見舞われており、他のアジア諸国が外貨準備を積み上げているのに対し、中国の外貨準備は激減している」とし、「中国は政治指導部の内部抗争によって、今後金融問題に対処しにくくなるだろう」との見方を示しました。

 

 投資家の間では、最近の米国の賃金上昇を受けてインフレ率の上昇を予測する声が出始めていますが、ソロス氏はそれよりも、今もなお続く中国の景気減速が米国をはじめとする世界各国にデフレ圧力をかけることを懸念しています。

 

 また、移民危機やギリシャ問題、英国の欧州連合(EU)離脱の可能性が重くのしかかり、EU崩壊は依然として十分あり得るとみています。

 

 ソロス氏は「英国が離脱すれば、他国もこれに追随し、EU崩壊はほとんど避けられなくなるだろう」と話しています。足元の英ポンド高については国民投票で英国のEU離脱が決まる見込みが薄いことを示唆していると指摘しました。

 

 「EU離脱に近づけば近づくほど、『残留』派の力が強くなると確信している」とし、「市場が常に正しいとは限らないが、今回は私も同感だ」と述べました。

 

 前回ソロス氏がトレーディングに乗り出したのは2007年。この時は住宅市場に弱気のポジションを取り2年間で10億ドルを超える利益を上げました。(ソースWSJ

2016年6月11日 (土)

クロームOS、真剣にとらえるべき理由!

筆者は働き始めてからはおおむね自宅ではアップルのパソコン「Mac(マック)」を使い、職場では「ウィンドウズ」搭載のパソコンを使用してきました。しかし数年前、コンピューティングの潮流がデスクトップからクラウドへと変わったことを受け、グーグルの基本ソフト(OS)「Chrome(クローム)」を搭載したノートパソコン「Chromebook(クロームブック)」を試してみることにしました。

 

 意外にも今では、モバイル以外の全ての作業にクロームOSを使用しています。クロームOSは使い勝手や性能が継続的に改良されており、そのおかげで以前にも増してこれこそがコンピューティングの未来だと筆者は考えるようになったのです。

 

 そう思う人は増えているようで、クローム端末の販売台数は1-3月期、初めてマックの販売台数を上回ったそうです。

 

 調査会社IDCの調査部門責任者リン・フアン氏によると、クローム端末は、米国のパソコン販売台数のわずか10%、世界全体では2.5%を占めるにすぎません。しかし、IDCは、クローム端末の販売台数の伸び率は今年30%近くに達し、パソコン市場全体の伸び率を大幅に上回るとみています。

 

 筆者もその見方に賛成です。理由は、コンピューターで達成する必要のあることのほとんどに関して、クロームの方がうまくこなせるからです。

 

 クラウドに依存したクロームを搭載した端末は、基本的にウェブブラウザーを主として実行するマシンです。そのため、他のデスクトップパソコンのOSではできないが、モバイルOSでは当たり前とみなされていることができます。

 

 クロームは比較的性能の低いハードウエアでも処理が高速です。そのため、それなりのクロームブックでも300ドルもしないことがあります。モバイルOS同様、アップデートを自動的に実行してくれる。しかし、筆者が使用したことのある他のどのOSとも異なり、アップデートはユーザーの目には見えず、回避することもできず、バックグランドのみで実行され、しかもその間に他の処理が遅くなることもありません。

 

 クロームの製品管理責任者ラジェン・シェス氏は、全て意図的にそのようにしているとし、「ユーザーの共感を呼ぶのはシンプルさ、安全性、共有性、スピードだ」と指摘しています。

 

次の課題

 

 クロームブックは米国の教育市場では大きな成功を収めています。学校向けの販売台数では他の全デバイスを合わせた台数をも上回り、タブレット端末「iPad(アイパッド)」で教育市場に攻勢をかけるアップルを寄せ付けません。

 

 次の課題は、学校や筆者のような趣味で使用するユーザーだけでなく、ビジネスの世界にも普及させることです。ビジネス市場は長年、マイクロソフトのウィンドウズOSが支配しています。 

 

 シェス氏は、クロームブックはビジネス市場でも受け入れられるとみており、その理由の1つに管理のしやすさを挙げています。グーグルは2011年にクロームの提供を開始して以来、多くを学んだようです。同社は当時、ウィンドウズを使用するビジネスユーザーの75%はクロームに切り替える可能性があると述べていました。

 

 得た教訓の1つは、ビジネス市場に食い込むには、サプライヤーを選んだり、または選ぶ手助けをする立場にある企業の情報技術(IT)担当者を満足させる必要があるということです。

 

 グーグルは2014年後半、「Chromebooks for Work(クロームブックス・フォー・ワーク)」を発売しました。これは、VPN(仮想プライベートネットワーク)やシングルサインオン、デジタル証明書などのセキュリティー措置をはじめ、IT管理者にとって重要な機能を提供する端末です。価格は1台あたり年額50ドルで、これはグーグルにとって新たな収益源となっています。

 

 一方で、デルやHP、エイサーなどのクロームブックのメーカーが、より高性能で高価格の端末を企業向けに展開しています。それら新型のノートパソコンは画面が大きく、ディスプレーやキーボード、トラックパッドの品質が高く、タブをたくさん開いたままでも処理が高速で、本体には炭素繊維やアルミニウム素材が使用されています。

 

 グーグルは最近になってようやく、10月までにクロームブックでアンドロイド向けアプリ200万種ほぼ全てが実行できるようになると発表しました。クロームブックはこれまでネット接続できなければ機能性が限られるとみなされていましたが、そうなれば有用性が劇的に増します。既存のクロームブックもオフラインで問題なく機能するものの、使えるのはグーグルのアプリだけです。マイクロソフトの業務用ソフト「Office(オフィス)」のアンドロイド版などが使用できるようになれば、そうしたソフトに依存するユーザーにとって影響は大きいでしょう。

 

 フアン氏は「米大手企業にもクロームへの関心の高さが見受けられる」と話します。IDCは、2018年までには世界企業番付「フォーチュン500」にランクインする企業の25%がクロームブックを社員に提供するようになると予測しています。

 

 とはいえ、フアン氏はクロームがビジネス市場で直面している課題はかなりあると指摘しています。最大の問題の1つは単純な「惰性」です。ウィンドウズが長年支配していたため、多くの企業にはウィンドウズ上でしか実行できない古いアプリケーションがたくさんあります。グーグルは現在、その解決策として、それらアプリケーションをウィンドウズサーバーで実行し、そこにクロームブックを遠隔接続させています。つまり、基本的に旧来のアプリケーションをクラウドに置いているのです。

 

 長期的にクロームブックは、コンピューティングの歴史上の一時的な流行に終わる可能性もあれば、企業におけるウィンドウズの支配をいずれ終わらせることになる可能性もあります。筆者はクロームがその中間的な地位に落ち着くと予想しています。つまり、モバイルやデスクトップOSをはじめ、絶えず増え続けるわれわれが使用する多種多様なテクノロジーの一部という位置づけです。

 

 しかし、クロームがグーグルにとって、まだ誰にも予期し得ないはるかに大きなビジネスになるとも筆者はみています。そして、これまでは自分たちの牙城へのグーグルの進出に無関心または守勢を取っていたアップルやマイクロソフトも注目するようになるはずです。(ソースWSJ

2016年6月10日 (金)

円売り介入、大きな効果期待できず!

日本の政府関係者は円相場の上昇に再び警戒感を強め、菅義偉官房長官は6日、市場介入の可能性を示唆することで円高をけん制しました。

 

 しかし米国からの反発を招くことなく日本が為替介入を実施できるかについては懐疑的な見方が広がっており、日本の財務官経験者も、介入の効果を疑問視しています。

 

 円は6日のアジア取引時間中に1ドル=10635銭と、ほぼ5週間ぶりの高値をつけました。3日発表の米雇用統計が市場予想を大幅に下回り、米経済の健全性への疑念があらためて浮上したことが背景にあります。

 

 菅官房長官は6日の記者会見で「投機的な動きが継続することがないように為替市場の動向を緊張感を持って注視し、必要な時はしっかり対応したい」と述べました。

 

 しかし介入とは、当局は相場を動かすため繰り返し介入することができるという恐怖心をトレーダーが抱いてこそ効果を発揮する、と専門家は指摘しています。日本の当局が市場にこのような恐怖心を植え付けることは難しい。米国がここ数カ月、介入を控えるよう公の場で何度も求めてきたからです。

 

 篠原尚之元財務官(国際通貨基金=IMF元副専務理事)はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の取材に対し、「日本は介入をしているが米国が反対している、という話が伝わると、介入の効果が著しく減殺されることは間違いない」と述べました。

 

 毎日数兆ドル相当の通貨が取引されている外国為替市場で、介入により大きな変化を生み出すのはそもそも難しい。したがって介入は市場心理に影響を及ぼすことを狙いとするわけですが、米国から表だったけん制が出ると、目的の達成は困難になる、と篠原氏は述べています。

 

 やはり元財務官の榊原英資氏もWSJの取材に対し、介入は米国の政治的反発を招く恐れがあるとの考えを示しました。米大統領選の共和党指名候補に事実上決まったドナルド・トランプ氏と、民主党最有力候補ヒラリー・クリントン氏は日本が為替を操作しているとすでに名指しで批判しています。

 

 榊原氏は「米国の大統領候補が日本を非難せざるを得なくなってくるだろう。それはやらせてはいけない」と語りました。

 

 元財務官2人の発言は、安倍晋三首相が直面する新たな厳しい現実を浮き彫りにしています。参院選が迫る中、米国のドル高・円安への許容度はここ最近、大幅に低下しています。

 

 5月の米財務省幹部の発言によれば、米国は2011年の東日本大震災後の円急騰時のような、危機的な状況下でのみ介入を容認する方針です。

 

 榊原氏は、少なくとも1ドル=90円へ上昇するまでは過度の「円高」とは考えられないだろうと述べました。

 

 篠原氏は米国の厳しい姿勢について、アベノミクスへの失望感が一因かもしれないと述べました。安倍首相がアベノミクスを掲げた当初、米国は円安を黙認し、日本が「痛みを伴う」構造改革を実施できるよう時間的余裕を与えたが、現在は進展の乏しさに懸念を抱いているようだと指摘しました。(ソースWSJ

2016年6月 9日 (木)

IPOはどこに行った?!

• IPO市場の低迷

 

 新規株式公開(IPO)市場が低調です。以前のハイテクバブル崩壊を教訓に、シリコンバレーははるかに強固な企業を生み出しています。ウーバー・テクノロジーズやドロップボックス、エアビーアンドビーなどのビジネスモデルは本物であり、これらの企業は巨額の資金を集めています。こうしたいわゆる「ユニコーン」企業(企業評価額が10億ドル以上で非上場のベンチャー企業を指す)は今や147社に達していますが、過去7カ月においてシリコンバレーを本拠とする企業のIPO1件も行われていません。

 

 IPOの低調はハイテク企業だけではありません。今年に入って5カ月間の米国での新規上場企業はわずか31社です。2015年には同期間に69社、2014年には115社が新規上場していました。IPO市場は一般的に、株式市場に非合理的な熱狂がある時期に好調であり、IPO市場を35年にわたって研究しているフロリダ大学のジェイ・リッター教授によると、現在のように株価指数が史上最高に近い状況でのIPO不振は前例のない事態です。

 

 銀行家、法律家、会計士は、20082009年の株式市場暴落による投資家の投機意欲減退、起業家にとっての新たな資金調達源の登場、そして規制の変更によって、非公開企業にとどまることが容易になったのと同時に、公開が困難になったことなどの複数の要因が合わさってIPO市場の低調につながっているとしています。

 

• 個人投資家の離反、新たな投資家

 

 IPOが低迷する一方、ベンチャーキャピタル(VC)は合併・買収(MA)を通じて収益を上げています。VCが支援する企業のMA件数は過去10年間において、四半期当たり約120件でほぼ一定しています。今年の最初の3カ月間において、VCが支援したMA案件は112件でした。言い換えると、IPO市場の低迷は売り手によるものではなく、突如として選択眼の厳しくなった買い手によるものであると言えます。

 

 ルネサンス・キャピタルのプリンシパルであるキャスリーン・スミス氏は「大半の個人投資家とそのアドバイザーがインデックス商品に流れる中で、IPO市場はより機関投資家主導となっています。個人投資家は調達の容易な資金源だったのですが、もはや個人投資家はIPO市場にはおらず、戻ってくる可能性も低い」と述べています。このような状況の中でウーバー・テクノロジーズは非公開のまま成長しており、先週はサウジアラビアの政府系ファンドから35億ドルを調達しています。

 

 ミューチュアルファンドも成長機会を求めて非公開企業に投資しています。フィデリティ・インベストメンツ、T.ロウ・プライス、ウェリントン・マネジメントなどは全て、ユニコーン企業に対する大きな持ち分を保有しています。フィデリティのグローバル・エクイティ・キャピタル・マーケッツチームを率いるアンドリュー・ボイド氏はこの動きを長期的投資の前払い金であるとみており、時間がかかるとしてもこれらの企業は準備が整えば上場すると考えています。例えば、フィデリティはIPO前のフェイスブック(FB)に投資しました。ボイド氏は「上場への障害は大きくなったものの、メリットは小さくなっていない。以前よりも準備する必要があるだけだ」と述べています。

 

• 規制の変更による非公開の長期化

 

 IPOプロセスの参加者の大半は上場があまりに面倒になっており、可能な限り回避するのが最善の策だとしています。2012年に新規産業活性化法(JOBS法)を通過させた米国議会にも責任があります。この法制は小企業のIPOを容易にすることを意図したものであったのですが、実際にはIPO市場を失速させています。JOBS法の重要な規定の一つでは、企業は投資家が2000人に達するまでは公開企業に準じる情報開示を免れることになっており、しかもこの数には、報酬としてストックオプションを与えられた従業員の数は含まれなくなりました。以前はこの上限は500人であり、フェイスブックが尚早な上場を強いられた要因でもありました。同社は今でこそ好調ですが、上場直後はスマートフォンでの収益モデルが確立されておらず、株価は急落しました。昨年上場したモバイル決済サービス会社スクエア(SQ)、フィットネス関連のウエアラブル機器を手掛けるフィットビット(FIT)、企業向けファイル共有サービスを手掛けるボックス(BOX)、手作り品のマーケットプレイスを運営するエッツイ(ETSY)、ストレージ(記憶装置)メーカーのピュア・ストレージ(PSTG)なども株価の維持に苦しんでいます。

 

 プライスウォーターハウスクーパース(PwC)では、このようなシナリオを回避するためのコンサルティング業務を行っており、IPO準備の進捗状況の評価と、上場のためのコンサルティングを提供しています。同社の幹部でIPOサービス部門のリーダーであるマイク・グールド氏は「15年前には、数カ月以内に登録届出書を作成するというような電話を受けていましたが、最近では一般的に23年前に相談を受けるようになっており、プロセスは以前より調整されたものになった」と述べています。

 

 法律事務所のシンプソン・サッチャー&バートレットでIPO専門のパートナーであるジョッシュ・ボニー氏は金融危機とそれに対応して成立したサーベンス・オクスリー法(SOX法)がIPO市場に対するダブルパンチになったとしています。「ハイテクバブルの崩壊で新規上場のフローが途絶え、そしてSOX法によって上場企業のコスト負担が増大したのです。費用便益分析の結果、企業にとってはより大きくなるまで非公開を維持する方が有利になった」と同氏は述べています。

 

• 拡大する非公開企業株式取引

 

 ナスダック(NDAQ)は依然としてハイテク企業株の主力市場であり、IPOの主要な受益者でもありますが、非公開市場事業(ナスダック・プライベート・マーケット)も有しており、扱っている企業にはピンタレスト、ドキュサイン、シャザム、タンゴなどのユニコーン企業が含まれていて、2015年の取引金額は16億ドルに達しています。ナスダックでは昨年、非公開株のマーケットプレイスとして有名なセカンドマーケット・ソリューションズの買収で合意しており、非公開株式事業がさらに拡大することになります。ナスダックの最高経営責任者(CEO)であるロバート・グレイフェルド氏は、同事業が今後数年間で重要になるとしており、「長期にわたって非公開であり続けようと考える企業が、従業員とアーリーステージ投資家に流動性を提供できるようにすることは、当社の役割であると考えている。ニーズは存在する」と述べています。

 

 ナスダック・プライベート・マーケットの最近の報告書では、ナスダックの非公開取引所の典型的な企業は、設立後9年で従業員は440人、評価額は18億ドルとなっています。「これは従来であれば中型の公開企業の定義に近い。公開企業と非公開企業の間の区別はますますあいまいになりつつある」と同報告書は述べています。(ソースWSJ

2016年6月 8日 (水)

米国株、サマーラリーは「都市神話」か!

この夏、ある時点で米国の株式市場が上昇する可能性はかなり高い。だからと言って、それは「サマーラリー」(米国では夏場に株価が上がりやすい習性があり、この現象を「サマーラリー」と呼びます。)が期待できるという意味ではないと言います。

 

 その区別は重要です。なぜなら毎年のメモリアルデー(5月の最終月曜日)や6月の初め頃に多くのアドバイザーがサマーラリーに言及するため、いつでも起こり得るありきたりの上昇をはるかに超えるものであるかのよう思ってしまうからです。ところが、68月に米株式市場が定期的に急上昇を演じるという証拠はどこにもありません。

 

 明確なサマーラリーが存在しないということは、この夏に見込めるラリーにはありきたりのラリー以上に期待する価値がないということです。言い換えると、米株式市場は現在からレーバーデー(9月の第1月曜日)までの間に急上昇するかもしれないが、その勢いは68月であることと何の関係もあいません。

 

 確かに、サマーラリーに何が必要なのか、正確な定義は見つかっていません。したがって何らかの変わった形で定義されているサマーラリーが実際に存在する可能性はあります。しかし、大半の投資家が思い描くような通常のラリーに焦点を当てると、この季節パターンはまたしても「都市神話」だったということになります。

 

全体的に小康状態

 

 米株式市場の全体的なパフォーマンスが68月はあまり芳しくないということが、サマーラリーが虚構であることを示す最初のヒントとなっています。実際のところ、その3カ月間のパフォーマンスは他のどの3カ月間よりも弱いのです。ダウ工業株30種平均(DJIA)の過去60年間を振り返ると、6月、7月、8月の平均月間リターンはわずか0.1%で、その他の月の平均である0.7%を大きく下回っています。

 

 別の見方をしてみると、68月のパフォーマンスが全体的に平凡だとしても、米株式市場がその間に急激な上昇を見せる可能性は依然としてあります。この可能性を確かめるために、筆者は過去に遡ってDJIA6月の安値から8月末までにつけた高値(いずれも終値ベース)までの上昇率を算出しました。

 

 その結果、夏期に市場が急上昇する可能性を示す特別な材料はやはり見つからなかったのです。DJIAの過去60年間のデータを紐解くと、6月の安値から次の2カ月間の高値までの平均上昇率は6.9%でした。それなら十分に期待できると思うかもしれませんが、そのパフォーマンスに特別なものではないのです。他の11カ月で同じ計算をすると、その上昇率は平均8%に達していました。

 

1932年の夏

 

 ではなぜ、投資家はサマーラリーが存在すると考えるようになったのでしょうか。もちろん、それを確実に知る方法はありません。とはいえ、それが世界大恐慌のどん底にあった1932年の夏に起きたものすごい急騰に由来する可能性はあります。その年、DJIA6月の安値から8月の高値まで76.5%も急騰したのです。そして、先ほどの筆者の計算対象期間を長くし、1930年代まで含めると、サマーラリーの上昇率は確かにより高くなるのです。しかし、統計学者を納得させるには不十分な数値であり、68月に米株式市場が上昇する可能性に関して特別なことは何もありません。

 

 皮肉的な見方になりますが、サマーラリーの起源に関してはウォール街が手数料収入を生み出す必要性から生じたという可能性もあるのです。なにしろ68月は、「5月に売って市場から立ち去れ」という格言が示唆しているように、米株式市場にとって芳しくない時期である6カ月間の真ん中に位置しているのです。サマーラリーとは対照的に、「5月に売れ」の正当性は統計学的にもはっきりと裏付けられています。つまり、サマーラリーは、投資家は市場から立ち去るのではなくとどまるべきだということを示す、もっともらしい理由となる可能性があります。

 

学んだ教訓

 

 サマーラリーは遠回りとはいえ、われわれをより賢明な投資家にするのを手助けし得ます。直感は厳しく吟味すべきであることをわれわれに教えてくれているのです。今度、ブローカーやアドバイザーがポートフォリオを変更する理由として何らかのパターンに言及したら、それが単なるランダムノイズ以上で、統計的に有意であるかどうかを聞いてみるべきです。

 

 ウォール街のセールストークのほとんどはこのテストにパスできないでしょう。長期間にわたって市場で勝ち続ける人がほとんどいない理由の1つもそこにあります。(ソースWSJ

2016年6月 7日 (火)

米海軍の新世代兵器「レールガン」の驚異!

米海軍の極秘施設にあるコンクリートの掩蔽壕(えんぺいごう)に警報が鳴り響いた。そこでは米軍のエンジニアたちが、ほぼ防御不能な武器の発射実験準備を整えていた。

 

 関係者らは恐るべき威力を持つ新型の超大砲を一目見ようと、ビデオモニターの前に集まった。この大砲から発射された約11.3キログラムの自走ミサイルは7枚のスチール製プレートを突き抜け、最終目標に約13センチメートルの穴を残すことができるのです。

 

 「レールガン(超電磁砲)」と呼ばれるこの武器には火薬も爆発物も必要ありません。電気伝導体のレールに挟まれた硬い発射体を驚異的なスピードまで加速させるのです。レールガンの推進者によると、これはまだ戦場における隕石(いんせき)ほどの威力を持つ一つの兵器にすぎないが、いつかは軍事戦略に採用され、武器開発を進めるロシアと中国に対する米国の優位性を維持するといいます。

 

 従来の機関砲では、弾丸の推進力は火薬に火が付いた瞬間から衰え始める。レールガンの発射体は約10メートルの砲身の中を加速しながら進み、砲口を出る時のスピードは時速7240キロ、秒速1.6キロほどに達します。

 

 海軍は敵の艦船に穴をあけ、戦車を破壊し、テロリストのキャンプを壊滅させる潜在的な攻撃兵器としてレールガンを開発してきました。米国防総省の幹部が注目しているこの兵器システムは、恐らく10年以内に、現在のミサイル防衛システムよりも低コストで、大量に敵のミサイルを空中で撃破できるだろうと期待されています。

 

 米軍が直面する総合的な課題は、海軍の艦船や陸上部隊の数が減少する中でも世界規模の軍事力を維持することです。防衛費が拡大する一方で予算は固定されており、侵略を思いとどまらせるのに十分な軍事力を適切な場所に維持することが一段と困難になりつつあります。

 

 レールガンの推進者の1人であるロバート・ワーク国防副長官は「冷戦時代のような部隊を欧州に復元する未来は想像できない。だが、低コストだが絶大な抑止効果が期待できるレールガンなら想定できる。レールガンは軍用機やミサイル、戦車など、ほぼ全ての標的に対して威力を発揮するだろう」と述べています。

 

 レールガンの後部からは何重ものワイヤが出ていますが、これには18750世帯の電力を賄うのに十分な25メガワットの電力が必要とされています。

 

レールガンの仕組み

 

1秒間に10発を発射させるパルス電力を供給するには25メガワットの発電装置と大規模な蓄電設備が必要です。

 

 レールガンが戦場に配備されるまでには多くの技術的障害が残されています。また、政策立案者が地政学的な問題を慎重に検討する必要もあります。中国とロシアはレールガンを含む米国のミサイル防衛能力の進歩が世界の軍事バランスを崩すと見ています。レールガンによって中ロが保有するミサイル兵器の効果が無に帰してしまうからです。

 

 米海軍は10年前にレールガンの開発に着手し、5億ドル(約560億円)以上の資金をつぎ込んできました。国防総省の戦略戦力整備室(SCO)もレールガンの防御能力を高めると同時に、既存の機関砲を使ってレールガンのハイテクミサイルを発射させることに8億ドルを追加投入しました。これはSCOのプロジェクトに投入された資金の中で最も大きい割合です。

 

 関係者の一部は、この技術があまりにも重視され、多大なリソースが割かれてきたことに懸念を表明しています。ただ、防衛関係者の1人は「こちらの方が良い仕事をする」と話しています。

 

 火薬を使った兵器では射程距離と正確さに限界があるため、第2次世界大戦以降、機関砲の役割は小さくなっていきました。冷戦時代にはミサイルとジェット戦闘機の役割が大きくなり、海軍は大砲を使った戦闘を縮小せざるを得なくなりました。ただ、レールガンと新たに開発された発射体が艦船の新世代の幕開けになる可能性が出てきたのです。

 

 現在、海軍が使用している6インチ(1インチ=約2.54センチメートル)砲の有効射程は24キロメートルほどです。予備役に回された第2次大戦時代の艦船に搭載された16インチ砲は約38.6キロメートルの有効射程を持ち、厚さ30センチほどのコンクリートを貫通できました。それに対し、レールガンの有効射程は約200キロメートル、威力は従来型の5倍に達すると、関係者は話しています。

 

レールガン発射のメカニズム

 

電気伝導体レールに逆方向の電流を流すことで、レールガンの発射体は約10メートルの砲身の中を加速しながら進み、砲口を出る時のスピードは時速7240キロに達します。

 

「スター・ウォーズ」の続編

 

 レーガン元大統領の「戦略防衛構想(通称スター・ウォーズ)」でも、核ミサイルを撃ち落とすためレールガンの使用が検討されたことがありました。しかし、その計画は1980年代までに技術的に行き詰まったのです。問題の一つは、1発撃つたびに砲身と電気伝導体レールを交換しなければならないことでした。

 

 現在、海軍が描いている計画では、1つの砲身で1秒間に10発を発射でき、それを1000回続ける能力を持つことになるのです。

 

 レールガンにはスピードだけでなく、収容能力の点でも優位性があります。通常、米海軍の駆逐艦には最大96発のミサイルを搭載できます。ただ、レールガンを装備した艦船なら1000発のミサイルを運ぶことが潜在的に可能となります。このため長時間にわたって素早く発射を繰り返し、敵が発射したミサイルを撃ち落としたり敵軍を攻撃できたりするのです。

 

 大国間の武力紛争が起こる可能性はまだ低いように見えます。ただ、冷戦後初めて、米国防総省は中国およびロシアとの緊張の高まりがどのような反応を引き起こすかについて、再び注視し始めました。

 

 米軍の戦略担当者は、ロシアからバルト諸国を防衛し、南シナ海で中国から同盟国を守る必要に迫られれば、レールガンが有効になるだろうと述べています。

 

 ロシアと中国は、それぞれの地域から米国の影響力を排除できるミサイルシステムに資金をつぎ込んでいます。一方、関係者によると、レールガンをベースにしたミサイル防衛システムなら海軍や地上部隊を守ることができ、ロシアや中国の国境近くまで米軍を展開するのが容易になるといいます。(ソースWSJ

2016年6月 6日 (月)

クリントン氏は本当に指名を獲得できるのか!

米大統領選でヒラリー・クリントン前国務長官が民主党候補に指名されない可能性は理論上のものにすぎないとは必ずしも言えない。

 

 メディアや民主党内のほぼ全ての人がクリントン氏の指名獲得は確実とみている中、どうしたらそのようなことが起こるのだろうか。いくつかの可能性を考えてみよう。

 

 クリントン氏が67日のカリフォルニア州予備選でバーニー・サンダース上院議員に負けた場合、指名獲得の必然性は大きく崩れかねない。そうしたシナリオは十分あり得る。

 

フーバー研究所のビル・ウェイレン・リサーチフェローが来週のカリフォルニア州予備選の最新世論調査や見通しについて語る(英語音声、英語字幕あり)

 PPICの最新世論調査によると、クリントン氏の支持率はサンダース氏を2ポイント上回っているにすぎない。FOXニュースの調査でも同じ結果だった。たとえ僅差でもサンダース氏が勝てば、250人以上の一般代議員を獲得することになり、代議員数を大きく積み増すことができる。カリフォルニア州では明らかにサンダース氏に流れが傾いている。党員でなくても参加できるオープン型の予備選を見ると、サンダース氏は投票前の世論調査の支持率は芳しくないものの、予備選・党員集会当日は新たに登録した有権者や若者の票を集めて健闘する傾向がある。

 

 カリフォルニア州では11日から5月半ばまでに150万人近くが民主党の有権者登録を行った。これは2012年の同じ時期の3.18倍に上り、サンダース氏にとっては大いに励みになる兆候だ。

 

 カリフォルニア州でサンダース氏が勝利した場合、本選の候補者としてのクリントン氏の弱さが際立つことになる。今のところクリントン氏支持が圧倒的に多い民主党の特別代議員は、このまま同氏を支持すべきかどうか真剣に考えざるを得なくなろう。

 

 サンダース氏は党大会で、特別代議員に予備選あるいは党員集会で勝った候補者への投票を義務付ける規則の変更を提案する可能性がある。そう信じるに足る十分な理由がある。規則変更案の採決はほぼ確実に行われるだろうが、これはクリントン氏の指名獲得に対する信任投票にもなる。サンダース氏が7日にカリフォルニア州、モンタナ州、ノースダコタ州で勝ち、ニュージャージー州で健闘すれば、クリントン氏との獲得代議員数の差は200人を切るかもしれない。そうなれば、特別代議員に関する規則変更案が通る可能性も高まる。

 

トランプ氏に勝てない可能性

 

 もう一つの問題は、ここ数週間、クリントン氏はドナルド・トランプ氏に対抗できる最強の候補者との見方が薄れつつあることだ。政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RCP)」がまとめた各種世論調査の平均支持率ではクリントン氏とトランプ氏が肩を並べている。また、ABCニュースとワシントンポスト紙が共同で実施した世論調査と、FOXニュースが実施した世論調査では、クリントン氏の支持率はトランプ氏をそれぞれ2ポイント、3ポイント下回った。

 

 クリントン氏の指名獲得の必然性を崩す要因は他にもある。本選でトランプ氏との対決となった場合の支持率では、サンダース氏は常にクリントン氏を上回り、最新の世論調査ではトランプ氏より約10ポイント高かった。

 

 サンダース氏の勢いを恐れて、クリントン陣営と民主党全国委員会は同氏に譲歩し始めており、党の政策綱領にサンダース氏が関与を強めることを認めた。考え方の異なる哲学者のコーネル・ウェスト氏とキース・エリソン下院議員が政策綱領委員に任命され、民主党のさらなる左傾化が確実となった。政策綱領をめぐる話し合いでは、サンダース氏の社会主義的な考え方が披露されるほか、米国とイスラエルの関係をめぐる醜い言い争いが起きそうだ。 

 

 クリントン氏が直面している法的な問題も深刻化しつつある。クリントン氏が国務長官時代に私用メールサーバーを公務で使用していた問題について、国務省の監察官が先ごろ報告書を発表した。これにより、同氏が規則を破り、公の場での発言には裏があったことが明々白々となった。党内では、クリントン氏とその側近たちがどこかで責任を認めない限り、政府の調査を乗り切れないのではとの懸念が強まっている。

 

 クリントン氏が近く連邦捜査局(FBI)の事情聴取を受けると報じられているため、捜査は終わりに近づいているとみられ、725日にフィラデルフィアで行われる民主党の党大会の前に司法長官が最終的な判断を下す可能性がある。監察官の報告書を踏まえると、クリントン氏が「無罪放免」されるとは考えにくい。

 

 最後に、クリントン氏の不支持率はトランプ氏と同じくらい高く、クリントン氏を信頼していると答えた有権者は4人に1人に過ぎない。民主党員はゾッとするような可能性に直面している。ほんの12カ月前、彼らは共和党の党大会が混沌(こんとん)としたものになりそうな様子にほくそ笑んでいた。だが今や、自分たちの党大会がそうなるかもしれない。

 

バイデン氏が救世主に?

 

 党内では党大会で新しい候補者が登場するかどうかについて、さまざまなうわさが広がっている。04年に民主党候補になったジョン・ケリー氏がその候補の1人だ。だが、最もありそうなシナリオはジョー・バイデン副大統領の立候補だ。バイデン氏は出馬を見送ったことを「毎日」後悔していると述べている。

 

 バイデン氏は、トランプ氏の大統領就任から民主党、そして米国を救う救世主の役どころを与えられるだろう。彼はサンダース氏の支持者を取り込むため、党内の左派に尊敬されているエリザベス・ウォーレン上院議員のような人物を副大統領候補に選ぶ可能性が高い。

 

 こうした状況の中、オバマ大統領はどこにいるだろう。オバマ氏は今のところ、大統領選から距離を置いており、クリントン氏が私用メールサーバーで国家安全保障の機密情報を漏らしたとは考えていないとしか語っていない。しかし、世論調査でクリントン氏の支持率が下がり、法的問題が深刻化し、サンダース氏が盛り返し、トランプ氏がオバマ氏の「レガシー(政治的遺産)」のレッキングボール(建物解体用の鉄球)として迫る中、オバマ氏とバレリー・ジャレット大統領補佐官は民主党全国委員会とバイデン氏に対し、バイデン氏による「救済」はホワイトハウスの機嫌を損じるものではないというシグナルを送り始めるかもしれない。

 

 今まで述べてきたことはすべて「可能性」にすぎない。だが、法的問題あるいは政治的事情によって、クリントン氏が民主党候補に指名されないというシナリオを想像するのは、これまでになく容易になっている。(ソースWSJ

2016年6月 4日 (土)

米国株、暴落しない5つの理由!

株式市場は再度の暴落に向かっているのでしょうか。それは当然です。暴落とは繰り返すものだからです。しかし、暴落から次の暴落までの相場上昇は十二分に長く、市場が暴落した際の痛みを相殺できます。

 

 前回の暴落から7年以上が経過し、株価指数は過去最高を更新しました。しかし、市場は昨年5月から停滞し、今年初めには瞬間的に10%の下落を演じました。弱気派は、暴落が差し迫っているのではないかと考え始めています。

 

 恐らくそうではないでしょう。暴落は、少数の例外を除いて景気後退を伴っており、現時点の景気後退の可能性は極めて小さい。従って、暴落が起こるためにはしばらく時間がかかるでしょう。経済成長率は低迷していた2015年と比較して加速しており、強気相場が再開する見込みです。ただし、株価上昇ペースは鈍く、恐らく10%未満になるでしょう。

 

 ちなみに、景気後退は民間の非営利団体である全米経済研究所(NBER)が定義している。ところで、株式市場の暴落とは何だろうか。一般的に弱気相場は市場の20%以上の下落とみなされているが、弱気相場は常に暴落なのだろうか。

 

 弱気相場の期間が12カ月未満の場合、本誌は暴落ではないとみています。例えば、20114月終盤から10月初旬にかけてSP500指数は20%下落しました。しかし、その後の数カ月で相場は反発し、20121月には新高値まで上昇しました。インデックス運用の投資家が少なくとも12カ月保有していたならば、10%未満の損失は被っただろうが、20%の損失にはなっていないはずです。

 

 本誌は、SP500指数の直近ピークからの20%以上の下落期間が最低12カ月続いた場合に、暴落と定義しています。しかし、この定義によると、過去35年間で景気後退を伴っていない暴落が1度だけあります。19878月から19888月までの20%以上の下落です。この下落は、1日の下落率としてはいまだに過去最大のブラックマンデー(19871019日)によるものです。ブラックマンデー前に1日の下落率として匹敵するのは、その58年前の192910月の2桁前半の下落となります。仮に、1日の暴落が58年毎に繰り返されるとすると、次回は2045年ということになるのです。

 

 ブラックマンデーを例外とすると、過去36年間では、3回の暴落と1回の暴落に近い下落があり、いずれも過去4回の景気後退の時期と一致しています。

 

 図に示した暴落は、最初が198182年の景気後退と一致しており、2度目の199091年の景気後退は暴落に近い下落を引き起こしました(19909月までのSP500指数の下落率は17%)。198990年にかけての相場下落が暴落に至らなかった理由は、19899月の市場のバリュエーションがまだ低かったためで、SP500指数の過去12カ月の企業業績に基づく実績株価収益率(PER)は14.1倍でした。

 

 20003月に実績PER27.8倍へ上昇しており、2001年の緩やかな景気後退に伴った市場の激しい暴落の一因となりました。市場は、2001911日のテロ攻撃で下落したと思いがちですが、実際には20013月までの12カ月間にSP500指数は20%超下落しており、9/11以降の下落率はわずかその半分です。200809年の大不況に伴う暴落は、これまでで最大でした。

 

• 暴落が差し迫っていない理由

 

 しかし、前回の暴落が始まった20077月と現在を比較すると、景気後退、ひいては暴落が生じないことが示唆されています。

 

 米連邦準備制度理事会(FRB)が維持してきた超低金利が、金余りの温床となっており、金利が調整されれば一般的には景気後退につながることになります。しかし、これまでのところはFRBも経済も幸運で、国内に資金過剰があったとしても、差し迫った危険を警告するほどではありません。

 

 株式市場の現在のPER20.3倍で20077月の16.3倍の方が低くなっています。しかし、ペンシルベニア大学ウォートンスクールの金融の教授であるジェレミー・シーゲル氏は、20077月は金融セクターの高水準の利益を反映しており、現在のPERは、景気を刺激している低いエネルギー価格によるエネルギーセクターの利益の欠如を反映していると指摘しています。

 

 株式におけるもっとわかりやすい指標は、米国で配当を支払っている1400社超をカバーするウィズダムツリー・ディビデンド・インデックスの配当利回りでしょう。20077月の同指数の配当利回りは2.9%で、30年債利回りは5.1%でした。現在の30年債利回りは2.6%へ低下しており、投資家が株価を押し上げたために同インデックスの配当利回りは2.6%を下回っていると考えられるかもしれません。しかし、実際は3.2%で、株価が比較的保守的に評価されていることを示しています。

 

 また周知のように、200809年の暴落の主因は住宅価格の暴落でした。住宅価格は上昇してきていますが、現在の水準は2007年を大幅に下回っています。最も直近の統計である4月をみると、中古住宅価格の中央値は、現在の232500ドルに対して、20077月当時の価格は現在の263560ドル相当にあたります。

 

 原油価格も景気後退と密接に関連しています。2007年当時の価格は現在の1バレル=85ドル相当と上昇傾向にあった一方で、現在は49ドルです。

 

 フラットなイールドカーブまたは逆イールドカーブも差し迫った景気後退の兆候ですが、現状のイールドカーブは比較的正常です。

 

 海外の景気後退によってもたらされる危険もあります。中国経済がマイナス成長に陥った場合、または、日本とユーロ圏の景気が停滞した場合、米国の輸出が間違いなく打撃を受けることになります。しかし、最近の記録では、海外の景気後退が原因となった米国の景気後退はありません。

 

 経済的な理由を除くと、景気後退を引き起こすようなショックは異例で、過去の例から教訓を引き出すのは困難です。仮に、ドナルド・トランプ氏が大統領選に勝利した場合、市場が売られる可能性はあります。しかし、それが本格的な暴落につながるか否かは、トランプ氏の政策が景気後退を引き起こすか否かにかかっています。それには反論もあるでしょうが、1930年のスムート・ホーリー法(関税引き上げ法)は大恐慌の程度を悪化させたとはいえ、そのきっかけにはならなかったのです。ドナルド・トランプ氏が大統領に就任して税金を引き下げたとしたら、長期的には財政赤字拡大を意味しますが、短期的には株式市場にとって好材料になるでしょう。

 

• むしろ株価上昇は続く

 

 景気後退が差し迫っておらず暴落の公算が小さいとすれば、株式市場の見通しはどのようなものなのでしょうか。強気相場の最もおいしい部分は既に過去のものでしょう。しかし、経済成長が続いた場合、市場は10%未満の上昇を達成できる可能性があります。2015年第4四半期の国内総生産(GDP)成長率は前期比年率2%で、2014年の2.5%から減速しました。当然ながら、SP500指数は2015年下半期に下落気味の横ばい圏にとどまりました。

 

 2015年の景気減速は個人消費の減速が理由でしたが、今年4月の力強い小売売上高は個人消費の回復が始まったことを示唆しています。背景には、賃金を押し上げている労働市場の逼迫(ひっぱく)があります。また、中古住宅販売件数の着実な増加と、新築住宅販売件数の4月の急増も寄与しています。新築住宅販売は、遅れて家具などの購入にも反映されます。これらの好環境によって、2016年のGDP成長率は2.5%へ加速する見込みです。

 

 これは株式市場にとって好材料です。本誌の調査によると、過去20年間でGDP成長率が前年同期を上回ったケースが35四半期あり、各四半期末のSP500指数は数回の例外を除いて1年前を上回っていました。

 

 人生の中で、死、税金、株式市場の暴落は確実なものですが、死は近代の医薬品によって先延ばしができ、税金は繰り延べが可能で、市場の暴落は経済成長によって先送りできます。いずれも遅かれ早かれ実現しますが、投資家は暴落の損害を軽減できます。市場のバリュエーションが高過ぎるように見え、インフレ調整後の住宅価格が前回のピークを大幅に上回り、イールドカーブがフラットな状態または逆イールドカーブの状態にあり、原油価格が100ドルに向けて急上昇した場合には、投資家は全てを売って空売りするというディフェンシブな手段を望むかもしれません。しかし、現状では強気相場がまだ終わっていない可能性が高いのです。(ソースWSJ

2016年6月 3日 (金)

アリババ投資家は要注意、米SECが会計調査!

火のないところに煙は立たない。中国の電子商取引最大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)の周りに立ちこめる煙は濃くなりつつあります。

 

 同社は25日の規制当局への報告で、会計処理を巡り米証券取引委員会(SEC)から調査を受けていることを明らかにしました。SECが精査している案件は、アリババが部分的に所有する物流関連の合弁会社の会計、関連企業の取引の全般的な扱い、それに中国の一大商戦である「独身の日」のデータ報告の仕方などだといいます。

 

 調査の結果、何が明らかになるのかは分かりません。しかし、今の時点で投資家が知っておくべきことが一つああります。アリババに投資することは、時に米西部開拓時代のような市場で独自のやり方で事を進める企業に賭けているということです。つまり、アリババの株にはかなりのリスクがあるということです。

 

 まず、アリババの企業構造は、創業者の馬雲(ジャック・マー)会長を含む内部関係者が統治権限を持つようになっています。同社のコーポレートガバナンス(企業統治)は上場以前から問題になっていました。アリババの判断が中国政府の影響を受ける点も不確定要素の一つです。

 

 SECが精査している分野の一部は長らく問題視されてきました。アリババは物流関係の合弁会社「菜鳥」の株式47%を保有しています。菜鳥は多数の独立系の物流会社と提携していて、そこが同社の配送を手掛けているのです。これは物流コストをアリババの帳簿から切り放す一助になっていますが、アリババによる保有比率にかかわらず、同社が実際に菜鳥を支配しているのかという疑問があるのです。

 

 「独身の日」は感謝祭翌日のブラックフライデーのようなイベントで、業者はアリババのプラットフォームを通じて何十億ドル分もの物品を販売します。この独身の日については、公表される推計売上高の正確さに以前から専門家が疑問を投げかけていたところで、販売業者がサイトでの順位を上げるために偽の売り上げ(ブラッシング)を使うことは以前から知られていて、それは独身の日に限らりません。

 

 アリババは偽の売り上げに対応し、撲滅しようとしていると述べています。しかし、中国国営テレビ局は今年3月、有力番組でこの点を指摘し、同社を批判しました。

 

 偽の売り上げの問題のほか、アリババのプラットフォーム上で偽物が売られているという明白な問題もあります。

 

 アリババは偽物の撲滅に向け大胆な取り組みを行っていると主張し続けていますが、ブランドオーナー側は信じていません。アリババは今年4月、著名な偽造品対策団体でワシントンに本拠を置く国際模倣対策連合(IACC)から加盟の誘いを受けました。しかし、マイケル・コースやロンシャンなどのブランドから批判が出たため、IACCはその撤回を余儀なくされたのです。

 

 より幅広い問題として、アリババは株主ではなく馬氏の利益のために経営されているように見えることが多いのです。2014年の新規株式公開(IPO)までの数カ月間に行った一連の買収が好例です。それには、アリババの中核事業との関連が疑問視されるような企業への何十億ドルもの投資が含まれます。香港の映画会社、実店舗を展開する百貨店チェーン、シンガポールの郵便事業会社、そしてサッカーチームなどへの投資です。

 

 アリババは、中国中信集団(CITICグループ)の関連会社で香港に本拠を置く医薬品データ管理企業の中信21世紀(CITIC21CN)も買収しました。しkし香港の証券規制当局は今月、中信21世紀の副会長の弟が保有する事業もアリババが買収したとして批判しました。

 

 同当局は、この買収が「有利な条件での特別な取引に該当し、全ての株主が優遇の対象になっていたわけではなかった」と指摘、これが香港の買収規則に「明白に違反」していると付け加えました。

 

 アリババは、中国の電子商取引という「ゴールドラッシュ」への権利を獲得するとうたって投資家を引き寄せてきました。しかし同社のガバナンスにはこれほど多くの疑問があり、本当にもうかる企業になるのかは疑わしいのです。(ソースWSJ

2016年6月 2日 (木)

米国は再び原爆を投下するのか!

 ホワイトハウスが最近、オバマ大統領が現職の米大統領として初めて広島を訪問すると発表したことは、オバマ大統領がそこで何を言うべきか、言わざるべきかをめぐる激しい議論を政治家や学者らの間で巻き起こしました。オバマ大統領の顧問らは、19458月に広島で核兵器を使用するとした決定の是非について大統領が「立ち返ることはない」と強く主張しました。

 

 しかし、この論争は、あまりにも狭い歴史的な問題にのみ焦点を合わせています。それよりも、われわれは今日、同じような状況下で米国がまた核兵器を使うかどうかを問うべきかもしれません。われわれが独自に行った調査では、米国民がその可能性に対して驚くほど抵抗感を持っていないということがわかりました。

 

 米国が広島と長崎に原爆を落とし、日本が降伏した直後、米国民は原爆を使用するというハリー・トルーマン大統領の決断を強く支持しました。19459月に米世論調査機関のローパーが全国規模で実施した世論調査では、回答者の53%が「実際の判断と同様、2つの都市で2つの原爆を使用すべきだった」という項目に同意しました。約14%の考えは「日本にその威力を示すために、人の住んでいない地域にまず1発の原爆を落とすべきだった」というもの。「米国は1発の原爆も使用すべきではなかった」と感じていたのはわずか4%だったのです。そして回答者の23%は「日本が降伏する前に米国はもっと多くの原爆を急いで使用すべきだった」に合意していました。

 

 第2次世界大戦集結後の数十年で、トルーマン大統領の核兵器を使うという決断に対する米国民の支持は大幅に低下しました。原爆投下から70周年を迎える直前の20157月、われわれは英世論調査会社ユーガブ(YouGov)に依頼し、1945年のローパーの調査を米国民840人の代表サンプルで再現してもらいました。

 

 その調査で、広島と長崎への原爆投下は正しい選択だったという考えに合意したのは回答者のわずか28%、核兵器での威嚇攻撃を支持したのは32%でした。米国は日本に1発の原爆も投下すべきではなかったと考える米国人は今や3倍以上――1945年には4%だったが、2015年には15%近くに達しました――となっています。そして、日本が降伏する前に米国が「より多くの」原爆を投下しなかったことを残念に思っている回答者はわずか3%でした。

 

 多くの識者たちはこうした数値について、戦後の米国民には核兵器使用に対する根強い反感があるという証だと指摘しています。ハーバード大学の心理学者、スティーブン・ピンカー教授は2011年の著書邦訳:『暴力の人類史』」で「核のタブー」について書いています。同教授は第2次世界大戦後、「核兵器の破壊力は歴史上のいかなる兵器とも程度を異にするということが理解され始めた」と主張しています。より最近では、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のコラムニスト、ペギー・ヌーナン氏は、1946年に被爆の惨状を伝えたジョン・ハーシーの著書「ヒロシマ」が「将来の核兵器の使用を不可能にした」「強力な道義上のタブー」を単独で作り上げたと書いています。このタブーは1949年に締結されたジュネーブ条約に記された原理――戦時中でも民間人への意図的な攻撃は禁止する――の実施を目指す国際的な取り組みによって強化されたと主張する人々もいます。

 

 ところが、原爆投下を振り返った世論調査では、米国民がそうした兵器の使用に反対の立場に回ったのか、それとも今や同盟国となった戦時中の敵国、日本に対する考え方が変わっただけなのかがよくわかりません。核兵器使用に対する現在のタブーの度合いを評価することもできません。従来の世論調査は、トルーマン大統領が1945年に直面していたようなトレードオフの熟考を米国民に迫っていない――それは、敵国の都市で核兵器を使用して多くの民間人犠牲者を出すか、それとも数千の米兵が戦死することを意味する総力を挙げての上陸作戦を開始するかというものでした。

 

 米国民が今日、そうした選択肢にどのような反応を示すのかを探るために、われわれは昨年7月、真珠湾攻撃と似た感情を引き起こす21世紀のシナリオについて、米国民620人の代表サンプルを対象とした調査をユーガブに依頼しました。米国が19458月に直面していたジレンマを再現するため、参加者はある架空の新聞記事を読みまし。それによると、イラン政府による2015年の核合意違反が明らかになり、米国がイランに厳しい制裁を科したところ、これに激怒したイランはペルシャ湾に配備されていた米空母を攻撃、米軍関係者2403人(1941年の真珠湾攻撃の犠牲者数と同じ)が犠牲になったというものです。

 

 米国議会はイランに対して宣戦布告し、米大統領はイランの指導部に「無条件降伏」の受け入れを迫ります。米軍の司令官たちは大統領に次の2つの選択肢を与えました。テヘランに侵攻し、イラン政府を降伏させるために上陸作戦を開始するか(2万人の米兵の戦死が見込まれる)、またはテヘランに近い大都市に1発の原爆を投下し、(広島の原爆投下直後の犠牲者数と同じ)推定10万人の民間人を殺害することで衝撃を与え、イランを無条件降伏に追い込むか。世論調査の参加者には、イランがまだ核兵器を保有していないという前提が伝えられていました。

 

 その結果は驚くべきものでした。われわれが想定したシナリオでは、回答者の59%がイランの一都市での核兵器の使用を支持したのです。そうした攻撃を支持する可能性は共和党員の方がずっと高く、81%以上が核兵器使用に合意しました。だが民主党員の47%も核攻撃を支持したのです。見込まれるイランの民間人犠牲者数を20倍の200万人に増やしても、回答者の59%――核兵器による犠牲者数が20分の1のときと同じ割合――が依然として原爆投下を支持したのです。

 

 トルーマン大統領の選択肢にさらに近づけるために、われわれは回答者にイランの最高指導者ハメネイ師が政治権力のない精神的象徴としての指導者にとどまるのを許可することで戦争を終わらせるという選択肢を回答者に与えた第2弾の調査も行いました。日本国の象徴として昭和天皇の地位の維持を許可することで、無条件降伏という連合国の要求の緩和に取り組んでいたトルーマン大統領とその顧問たちが直面していた選択肢を模倣する狙いがありました。回答者の約41%が原爆投下やテヘラン侵攻よりもこの外交的選択肢を好みました。しかし、それとほぼ同じ割合(40%)がそうした交渉による和平を受け入れるよりも、イランで10万人の民間人犠牲者を出すことになる原爆投下を依然として選んだのです。

 

 こうした核兵器使用に積極的な姿勢は、現在のその他の敵国についても言えるようです。われわれが以前に実施し、2013年に米政治学誌「アメリカン・ポリティカル・サイエンス・レビュー」で発表した調査では、通常兵器でも同様の効果があると聞かされた場合でも、回答者の19%が、アルカイダの標的に対する核攻撃を選びました。この数値は、1945年により多くの原爆を日本に落とすべきだったとする米国人の割合約23%に近いのです。つまり、最大の敵と相対するとき、米国民のかなりの割合が、米国の最も破壊的な兵器に対して嫌悪感を抱くのではなく、魅力を感じるのです。

 

 米国は原爆を再び投下するのだろうか。将来の大統領やその顧問たちが核兵器を使用するという選択肢をどのように考えるのか、われわれの調査からは判断できません。しかし、その調査により米国民の本能の中にある不安要素が明らかになりました。敵国から挑発されたとき、われわれは核兵器の使用をタブーと考えなくなるようで、戦時中の意図的な攻撃の対象から民間人を除くことに対する米国の誓約は、たとえ大量の犠牲者が出る場合でもあまりあてにならないのです。1945年当時と同様に今日でも、戦争の厳しい局面で核兵器の使用を検討する大統領に対し、米国民が引き止め役になる可能性は低いでしょう。(ソースWSJ

2016年6月 1日 (水)

米6月利上げ、雇用統計を重視すべきか!

米連邦準備制度理事会(FRB)幹部は、利上げを決定する際に特定の経済指標1つだけを重視することはないと好んで述べます。「重要なのは長期にわたる経済指標の傾向と指標が物語る経済の進展である」と。

 

 米国の経済指標はここ数カ月、米経済の成長が1-3月期に鈍化したものの持ち直す可能性があることを示しています。失業率は低下傾向にあり物価上昇も勢いづき始めています。

 

 次回の連邦公開市場委員会(FOMC61415日開催)まで残すところ3週間となり、FRB幹部は6月の利上げについて意思を決めなければなりません。今からFOMCまでの間に、景気判断を大きく変えるほど多くの経済指標の発表は予定されていません。しかしここ数日のFRB幹部の発言は、6月の利上げについて、確率が五分五分で、今後数日の経済指標に左右されることを示しています。

 

 例えば、フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は23日、記者団に対し、「経済指標が発表され米経済が拡大するとの自分の見方に一致しない場合には(利上げ賛成を)ためらうが、そうでなければ6月の利上げは適切だと考えている」と述べました。

 

 FRB幹部のこうした発言は、5月の雇用統計が特にFRB幹部の注目を集める可能性を示しています。雇用統計が好調な内容となれば一部の幹部はさらなる0.25%の利上げをする時が来たと確信を持つかもしれません。あるいは少なくとも利上げが近づいていることを明白な方法で示唆するでしょう。一方、雇用統計が低調となれば利上げを見送る意見が広がりそうです。5月の雇用統計は来週63日の発表となります。

 

 ただFRBが長期にわたる経済指標を重視しているならば、雇用統計の内容は実はそれほど重要ではないかもしれません。実際、先物市場のトレーダーの間では6月の利上げは五分五分とは考えられていません。同市場では、70%の確率でFRB6月に政策金利を据え置くと織り込まれています。一方、トレーダーらはむしろ7月のFOMCに注目し、7月の利上げの確率は60%近くとみています。(ソースWSJ

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