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2016年5月

2016年5月31日 (火)

封印した被爆体験 語り始めた日系米国人!

オバマ大統領は27日、現職の米大統領として初めて広島を訪問する。71年前の原爆投下で被爆しながらも生き残った約1000人の日系米国人は、この訪問を独特な思いで見ることになるでしょう。彼らは自分の国が投下した原爆に苦しめられたのだから。

 

 その中の一人にヤマオカ・メイさん(87)がいます。カリフォルニア州ローダイで生まれたヤマオカさんは第2次世界大戦がぼっ発した当時、日本の学校に通うため広島に滞在中でした。1945年の原爆投下を生き抜き、その後カリフォルニア州の自宅に戻ったヤマオカさんはそこで、この最も辛い記憶を60年間封印してきました。

 

 ヤマオカさんがインタビューや家族へ宛てた書き物などを通して、自身の経験を詳しく語り始めるようになったのはここ10年くらいのことです。父親と一緒に2日間妹を捜し回り、焼けただれてボロボロになった遺体の山の上にようやく死んだ妹を見つけたこと。妹だと分かったのは、米国で買った肌着に施されていた刺しゅうが目に入ったからだったからです。

 

 被爆した影響で体が弱りつつあった父親は高校を卒業させるためにヤマオカさんを米国に帰しました。戦時中、米国で日系人の強制収容所に入れられていた経験を持つヤマオカさんの夫は、家族が日系であることを話したがらなかったといいます。

 

 ヤマオカさんは「(夫は)差別を肌で感じてきた。米国人は原爆について聞きたくないと思っていると彼は話していた。だから多くを語らなかった」と話しています。

 

 オバマ大統領の広島訪問は、戦後の日米関係の劇的な変化と、核の不拡散という重要な政策目標の象徴となるだろう。大統領が原爆投下について正式な謝罪をしないことは、少なくとも一部の被爆者にとっては問題ではないようです。

 

 ハワイ生まれの被爆者であるサラシナ・ジュンジさんは「オバマ大統領は謝るべきかどうかと言われているが、一番お願いしたいのは、原爆の被害がいかに惨めなものだったのかを理解してもらいたい」ことだと話しています。サラシナさんは朝鮮戦争で戦った経験も持ち、オバマ大統領に絵はがきを送って広島訪問を促す日系米国人の取り組みを率先した人物です。

 

 20世紀初頭、日本は多くの移民を米国に送りました。中でも広島県からの移民は多くいました。渡米して新たに米国人になった日系移民たちは裕福になると、子供たちに言葉や文化を学ばせるため、祖国に数年滞在させることも多かったのです。

 

 ミシガン州立大学で日系米国人の被爆者に関する研究を行っているワケ・ナオコ准教授によると、日本では学徒動員に積極的に参加した若い日系米国人もいました。一方、上空に飛来する米軍のB29爆撃機を、戻りたいと切望する国からの友人や救済者として眺めた人もいたといいます。

 

 広島と長崎には数千人の日系米国人が暮らしていました。原爆で多くが犠牲となった。生き残った人々の多くは「被爆者」として米国に戻りました。そして彼らは差別の対象となったのです。

 

 数十年もの間、多くの被爆者はその事実を隠し通しました。就職や結婚に不利になるのを恐れてのことです。終戦は米国における10万人を超える日系米国人強制収容の終わりも意味していました。それが状況をより複雑なものにしました。戦後、米国民の大半は広島と長崎に原爆を投下するというハリー・トルーマン大統領の決断について、日米両国の犠牲者を抑えるために正当な決断だったと感じていた。歴史家は10万人から25万人が原爆の犠牲になったとみています。

 

 現在、米国に暮らす被爆者は日本政府からわずかな賠償金と医療面での援助を得ていて、年2回、日本から放射線の専門家が渡米していますが、それもこれに含まれています。日本政府は戦時中に強制労働者として朝鮮半島から日本に連れてきた数千人も被爆者として認めています。

 

 米国政府は核実験で被爆した退役軍人や、ウラン採鉱で被曝した人とは異なり、彼らを正式には被爆者として認めていません。

 

 4歳の時に広島で被爆した中野博子さんは「戦争で他にも苦労した人は沢山いる。被爆者だからと特別扱いされるのは心苦しい。あれをして、これをしてと裁判で勝ちとっていくようなことはあまりしない」と話りました。

 

 中野さんは崩壊した家の壁の下から引っ張り出されました。兄のひとりは学校から戻ってきませんでした。その後は、家族のなかで原爆のことは話さないという暗黙の合意があったといいます。中野さんは60代で髄膜腫と甲状腺異常を患いました。

 

 ヤマオカさんは9歳だった1938年に一家が日本に渡ったときのことを語ってくれました。日本人労働者向けの下宿を含むカリフォルニア州の3軒の家は親戚に預けてきました。そして戦争がぼっ発しました。

 

 19458月、ヤマオカさんは学徒動員で働いていました。原爆で命を落とさなかったのは、タバコ工場の中で高校の同級生と一緒に作業をしていたためです。13歳だった妹のマナさんは屋外で作業をしていました。ヤマオカさんと父親は長い捜索の末に、マナさんの遺体を爆心地の近くで見つけました。

 

 ヤマオカさんは「私は米国人を少しも恨んではいない。あれは戦争だったし、両国とも自分たちは正しいことをしていると考えていた」と話します。「ただ、広島が原爆の標的となったのは不運だった。私たちは言わば一種のモルモットになった」と。(ソースWSJ

2016年5月29日 (日)

米利回り曲線が発する新たな信号とは!

かねて米経済の先行きを予測する指標とされてきた米国債の利回り曲線は、新たな信号を送っている可能性があります。米国の金利上昇に米国自身は対処できても、世界はできないという信号です。

 

 米国債の10年物と2年物の利回り差は現在0.92%と、2007年末以降で最も狭く、148月の約半分の水準となっています。利回り差の縮小は経済成長にとってマイナスの兆し、拡大はプラスの兆しと見なされることが多いのです。

 

 しかし、近年はこの信号の仕組みが変化しています。短期債利回りは連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測の強まりと共に上昇しており、長期債利回りは自国のマイナス利回りを嫌気した海外勢からの資本流入もあって低下しています。

 

 では、利回り曲線はわれわれに何を伝えようとしているのでしょうか。ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏は、「米国の段階的な金融政策正常化に米経済は対処できるが、他の世界各国はできない」と伝えようとしていることが考えられると指摘しています。

 

 この主張で肝心なのは、世界経済はかつてないほど相互依存を強めているという点です。近年のグローバル化の影響により、米国が金利を引き上げ、借り入れコストが上昇して金融状況が引き締まれば、世界全体がそれに応じて反応するということです。

 

 ヤルデニ氏によると、利回り曲線の動きは世界の鉱工業生産や輸出量といった指標に連動しているそうです。

 

 一方、SP500種株価指数構成企業は収益の約半分を海外で上げているため、利回り曲線はこうした企業の収益とも相関関係があります。

 

 これら全てが示唆しているのは、利回り曲線の平たん化は米国だけでなく、世界全体の経済にとって不吉な信号を送っているということです。

 

 連邦公開市場委員会(FOMC)政策声明が示しているように、FRBはこのところ世界の金融・経済状況と米経済との間につながりがあることを認めています。いまの利回り曲線が世界経済を反映しているのなら、FRBは海外に目配りし続ける必要があるかもしれません。(ソースWSJ

2016年5月28日 (土)

トランプ氏、大荒れの遊説再開―暴言や衝突!

ドナルド・トランプ氏は大統領選に向け共和党候補の指名獲得を事実上確実にしていますが、全国党大会前の最後の予備選に向け、大々的な選挙運動を再開しました。

 

 しかし、24日にニューメキシコ州アルバカーキで行われた遊説は反トランプ派と警察隊が衝突する騒ぎとなり、トランプ氏の言動は相変わらず礼を失するものでした。

 

 トランプ氏は同じ共和党のニューメキシコ州知事をなじったほか、大統領選でのテレプロンプターの使用禁止を訴え、男性有権者の支持率が高いにもかかわらず「女性と記録を打ち立てたい」とふざけてみせました。

 

 遊説会場となったコンベンションセンターの外では反トランプ派の抗議者と警察が衝突。アルバカーキ警察当局によると、抗議者らは石やプラスチックボトルなどを警察の馬などに向かって投げたほか、ガラス製のドアを空気銃で破壊したもようです。

 

 警察当局はツイッターに「目撃された煙は催涙ガスではありません。ただの煙です。われわれは催涙ガスを使用していません」と投稿しました。

 

 

 トランプ氏は今月3日に共和党候補の指名獲得を事実上確定した後、公のイベントをほんの数回行っただけで、本格的な選挙遊説を今週から再開したばかり。本選へ向けて資金調達活動にも本腰を入れたところです。これまでの11カ月の選挙費用は、その大半がトランプ氏の手持ち資金で賄ってきました。

 

 トランプ氏は24日夜の演説で、貿易協定の再交渉や雇用創出といった目玉政策を繰り返しましたが、遊説を一時中断していた間に新たな材料も仕込んだようです。民主党候補として本命視されているヒラリー・クリントン前国務長官からは女性蔑視との攻撃を受けていますが、世論調査で示されている男女間の2ケタの支持率格差を縮めたいと思っているようです。

 

 騒々しい大勢の聴衆に向かってトランプ氏は「私は男性(の支持率)で記録を打ち立てていると言われているようだが(中略)あまりわくわくしない」とし、「男性とではなく、女性と記録を打ち立てたい」と述べました。

 

 また、クリントン氏がテレプロンプターを使用して演説を行っていることを茶化し、「彼女が叫ぶので、私は気が狂いそうになる(中略)聞いていられない」と語りました。 

 

 クリントン氏に対してとげのある発言を繰り返してはいるものの、トランプ氏が67日に予備選を控える西部3州――カリフォルニア、ニューメキシコ、モンタナ――での遊説を決断したことに、まだ予備選の戦いを終えていないという同氏の心情が窺(うかが)えます。最後まで残っていた2人の対立候補が数週間前に指名争いから撤退しましたが、次の予備選で指名に必要な1237人の代議員を獲得するまで、トランプ氏は正式に勝利宣言しないもようです。67日はニュージャージー、サウスダコタ両州でも予備選が行われます。

 

 共和党の主流派がまだトランプ氏を支持していないことを示す証しとして、トランプ氏の応援演説を行う議員や党幹部はいませんでした。大統領選の遊説では彼らの応援が慣例になっているにもかかわらずです。

 

 トランプ氏は「システムが私に不利なのだ。最初からそうだった。だが私はそれを好ましいと思っている。システムを打ち負かすことより良いことはないからだ」と述べました。(ソースWSJ

2016年5月27日 (金)

復活したインスタントカメラ、使い比べてみると!

筆者の27歳の妹は今年、結婚式を控えて独身お別れパーティーをしました。そのとき絶対忘れてはいけないアイテムとして荷物に詰め込んでいたのは、「間もなく花嫁に」と書かれたたすき、テキーラのボトル、そして写真のフィルム10箱でした。

 

 フェイスブックやスナップチャットに夢中の妹が、ポラロイド式インスタントカメラで写真を撮るのだと言い張った。落ち着いた色調と白枠付きの写真を見ると、妹の独身最後の数週間はカーター大統領の時代かとさえ思える。

 

 スマートフォンでの自撮りが日常的になっている今、音を立てて淡褐色の写真を吐き出すアナログなカメラが意外にも復活を遂げています。インスタントカメラを今も作る数少ないメーカーの1社、富士フイルムは昨年、「チェキ」の愛称で知られる「instax(インスタックス)」を500万台を販売しました。前年比30%増の伸びであり、今年は650万台の販売を見込んでいます。

 

 これはノスタルジアではありません。富士フイルム北米部門とポラロイドの幹部は、若い世代こそがインスタントカメラに最も熱中している層だと話しました。

 

 ではなぜか?まず、特にパーティーではインスタントカメラは非常に楽しいからです。

 

 しかしそれだけではありません。スマホは写真撮影のマジックの一部を奪い去ってしまいました。ひたすら撮り続けるが、それを印刷するのは言うまでもなく、振り返って見直すこともめったにありません。それどころか、スナップチャットを使えば、写真は永遠に消え失せてしまいます。

 

 とはいえ、この時代にインスタントカメラに頼る気に本当になるだろうか?筆者はこうしたカメラをいくつか試してみました。バーベキューの時や独身お別れパーティーなどで使うのに最も良い選択肢を探すためです。

 

フィルムの復活

 

 富士フイルムは「instax」シリーズの成功に大いに湧き上がり、その製品ラインはバラエティーに富みます。筆者が試した人気モデル4種の中では、「instax mini 90 ネオクラシック」が自分のために購入したくなるほど気に入ったのです。

 

 カラフルな「instax mini 8」はアマゾンなどで最も人気の商品ですが、「instax mini 90」は値段が高いだけの価値がある。レトロなデザインで、背面の液晶画面には撮影残数が表示され、明るさなどのコントロール機能も付いています。そして充電可能なバッテリー内蔵えす(他の多くは単三電池使用)。持ちやすい上、良い写真が撮れる。撮影オプションの中で特に気に入ったのは「二重露光モード」(1枚のフィルムに2度シャッターを切ることで像を重ねる撮影モード)で、私にも格好いい写真が撮れました。

 

 富士フイルムのInstaxシリーズはすべて、自動露出の「オートモード」と自動絞り設定が付いています。「インドア」と「アウトドア」モードを選ぶことを忘れず、焦点距離の設定に留意する必要があるだけだ。撮影した写真をディスプレー上で確認することに慣れた今、ファインダーをのぞき、出来上がる写真を注意深く想定しながら撮影するのは意外に楽しい挑戦でした。

 

 一方、あまり楽しくなかったのはフィルムを無駄にすることでした。「チーズ」という前に実際、よく考える必要があります。富士フイルムのInstax Mini用のフィルムはクレジットカードくらいの大きさで、1枚に付き1ドル程度かかります。フィルムは1パック20枚入りで売られています。(カラー写真の現像には4分間ほどかかる)

 

 写真自体は、「Instax Wide」で撮ったもののほうがずっと好きです。大きさは従来のポラロイド写真にずっと近い。しかし、大きな「Instax Wide 300」カメラを持ち歩く気にはとうていなれません。富士フイルムは大きな写真向けの小型カメラを開発中だといいます。

 

 ではポラロイドはどうか?2006年に従来のカメラ製造を中止し、その2年後にはインスタントカメラ用フィルムの製造も終了しました。同社は現在、デジタル技術を手掛ける企業として存続しています。しかし同社が伝統的事業から撤退した際、インポッシブル・プロジェクトという新興企業が昔ながらのフィルムの製造を始めました。

 

 先週発売されたインポッシブル・プロジェクトのカメラ「I-1」は、このインスタントフィルムを使用します。従来のポラロイドカメラのように見えますが、スマホ「iPhone(アイフォーン)」での操作が可能です。持って歩き回ってこれほど格好良いと思えたのは、最初のアイフォーン以来のことでした。

 

 それでも、薦めるのは難しい。このカメラはフィルム3パック付きで350ドルします。このカメラで撮る写真は富士フイルムのカメラで撮るよりも芸術的ですが、1枚に付き2.5ドルもかかります。写真を撮ったら日光を遮る必要があり、現像完了には25分かかります。30年前の5倍の時間です。理由は何か。ポラロイドのフィルム工場が閉鎖された後、インポッシブル・プロジェクトは製造が容易で環境に優しい化学物質を使うプロセスに設計し直さなければならかなったからです。(ソースWSJ

2016年5月26日 (木)

FRBの利上げ示唆、市場はうのみにせず!

米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決まるということを市場に信じさせようとしています。実際にそれはあり得るし、FRBにはその意向があります。

 

 エクルズ・ビル(FRB本部)の外ではここ1週間ほど、当局者らがほぼ声をそろえてそう主張しています。サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は23日、利上げすることが適切と思われる場合、障害になるものは(もちろん経済指標以外には)ないと指摘しました。

 

 市場は耳を傾けていますが、完全にうのみにしているわけではありません。

 

 FRBはこの10年で1度しか利上げしておらず、それが昨年12月に実施した0.25%の利上げです。しかも約2年にわたって示唆した末のわずかな利上げだったのです。0.25%の利上げに2年もかかるのでしょうか。最近も利上げをちらつかせていますが、市場に織り込まれる6月利上げの確率が約30%にとどまっているのも無理はありません。

 

 JPモルガン・ファンズのチーフ・グローバル・ストラテジスト、デービッド・ケリー氏は「ここ数年は異例の金融緩和策から経済を脱却させる機会があっても、FRBは幾度となく土壇場で尻込みした」とした上で、「FRBは利上げが予想外だった場合、市場がひどい反応を示すことを懸念しています。市場の期待を誘導できるようになりたいのでしょうが、市場が誘導に従うのはFRBの情報伝達に信頼性がある場合に限られる」と指摘しました。

 

 バーナンキFRB前議長は20135月、テーパリング(量的緩和の段階的縮小)や利上げの開始を初めて示唆することでそうした誘導を開始しました。これは不名誉にも「テーパリングかんしゃく」と呼ばれる市場の暴落につながりました。FRBは同年9月のFOMCでテーパリングを見送ったのです。

 

 イエレン現議長は、量的緩和第3弾が1410月に終了するや否や、予想より早期の利上げはあり得ると示唆し始めました。多くの人は当時、156月のFOMCで最初の利上げが決まるという意味だと受け止め、数カ月間はFRBも市場のそのように想定していました。6月が来てもFRBは利上げしませんでしたが、それでも年内に少なくとも1度は利上げがあると示唆しました。その後の手掛かりから、利上げ時期は9月と想定されました。9月にもなかったため10月に注目が移ったのですが、10月にも利上げは見送られたのです。

 

 FRB12月にようやく利上げし、16年には4回の追加利上げがあると強く示唆しました。まだ6月にも入っていませんが、利上げ回数は2回や1回、あるいはゼロのほうが、4回よりはるかに確率が高いのです。市場が今やFRBの発言を話半分に聞くようになっていても不思議ではありません。

 

 ケリー氏によると、FRBは何度も誤ったシグナルを発したため、市場の信認を失っており、それがさまざまな影響を引き起こしています。「こうした決意のなさが積み重なった影響は深刻で、経済において最も重要な価格、つまり金利にゆがみをもたらしている上、今後、金融刺激策が必要な場合、FRBには手段がなくなっている」と述べました。

 

 「当局者らはここ数週、6月の利上げが選択肢にある理由を説明しようと懸命だ」とし、「経済指標が引き続き比較的良好で、6FOMCで利上げがなかった場合、FRBがどのような信頼を植え付けたとしても、それはさらにむしばまれるばかりだろう」と語りました。(ソースWSJ

2016年5月25日 (水)

潤沢な現金保有の陰で膨らむ米企業の債務!

米企業の現金保有高の増加に注目が集まっていますが、これは債務というさらに大きな問題を覆い隠しています。

 

 SPグローバル・レーティングが発表した最新の調査によると、非金融企業が保有する現金などの手元資金は昨年1%増加して1.84兆ドル(約200兆円)となりましたが、債務総額は約15%増加して6.6兆ドルに達しました。

 

 いずれも過去最高額ですが、調査対象となった非金融企業2000社の間ではキャッシュポジション(現預金と短期保有有価証券の合計から有利子負債を差し引いた金額)に大きな開きがありました。

 

 SPグローバル・レーティングのクレジットアナリストで同調査の共同執筆者でもあるアンドリュー・チャン氏は「流動性状況は見かけほど良くないというのがポイントだ」と述べています。低格付けの企業は金利が上昇する中で債務の借り換えに苦労する可能性があるといいます。

 

 現金保有高が多い上位25社は全体の約1%に過ぎませんが、これら企業が半分強に当たる51%の現金を有しています。5年前にはこの比率が38%でした。

 

 上位を占めるのはハイテクや医薬品企業が大半で、例えばアップルは現金および流動資産が2157億ドル、マイクロソフトは1128億ドル、アルファベットは719億ドルに上っています。これら数値は報告された額にSPグローバル・レーティングが調整を加えたものです。

 

 総じて、上位25社は現金預金比率が153%で、現金保有高は2015年に8%増加しました。

 

 潤沢な資金を保有する上位1%を除き、企業全体の見通しはそれほど良好ではありません。残りの99%の企業では昨年、債務が7300億ドル膨らんだ一方、現金保有高は400億ドル減少しました。

 

 チャン氏は、これら企業は「現金保有高をまったく増やしていない」と指摘しました。

 

 こうした企業の現金保有高は合計9000億ドル、負債は6兆ドル。現金預金比率は15%で、ここ10年で最低の水準となっています。

 

 格付け別では、投資適格級の発行体の現金預金比率が17%であるのに対し、投機級の発行体では12%となっています。

 

 金利上昇に伴ってどのような変化が起きるかは定かでありません。コロンビア大学ビジネススクールの会計学准教授、ダン・アミラム氏は「企業債務市場はここ数年、多忙を極めている」とし、「影響を及ぼしているのは、次に何が起きるかをめぐる不透明感だ」と述べています。

 

 チャン氏は、上位1%の現金保有企業には大きな変化がないと見ています。「これらの企業は金利が上昇しても債務を発行し続けるだろう」とした上で、例えばアップルのような企業は、海外に保有する多額の資金を国内に送金する代わりに米国で債務を発行するとの見通しを示しました。

 

 アップルの広報担当者は電子メールおよび電話でのコメント要請に応じていません。(ソースWSJ

2016年5月24日 (火)

FRBの利上げ、株式や債券市場は乗り切れるか!

米国の株式市場と債券市場は、連邦準備制度理事会(FRB)による次の利上げを混乱に陥ることなく吸収する構えだ、と資金運用担当者らはみています。昨年12月にFRBが利上げして以来の景気動向と投資家の備えを映し出しています。

 

 61415日の連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き上げる可能性を投資家は過小評価していると、FRB当局者らが繰り返し警告を発し、先週はまた市場が動揺する懸念が高まりました。42627日分のFOMC議事録で経済成長が続けば6月にも利上げが可能との見解が示され、指標銘柄の10年物米国債利回りは18日、1日としては今年最大の上昇(価格は下落)を記録しました。

 

 それでも運用担当者らの多くは、市場が混乱する公算は小さいだろうとみています。ドル相場と原油相場がいずれも、昨年までよりもはるかに安心できる状態にあることが一因だと言います。

 

 ドルの通貨バスケットに対する水準を示すウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のドル指数は、過去2年間にわたり大幅に上昇しましたが、今年は2.9%下がっています。これにより、大手米企業の収益やドル建てで資金を借り入れている多くの新興諸国の財政に対する圧力が和らいでいます。原油相場は、供給が途絶する中で今年の安値から82%反発し、米国のエネルギー生産者に対する圧力が緩み、原油相場急落によるさらなる悪影響は抑えられそうです。

 

 今年初めの6週間にみられた株式と債券の相場急落は、米国がリセッション(景気後退)に陥るとの懸念に原因の多くがありました。ところが、工業生産や住宅販売、個人消費など米経済の健全性に関するいくつもの指標はこのところ、勢いを増す様子をみせています。賃金は、低調な伸びが長期間続いたのですが上向きました。一方インフレは全般に弱くみえ、FRBの利上げ余地は段階的なものにとどまる可能性が高いとみられています。

 

 運用会社セージ・アドバイザリー・サービシズの共同創始者兼運用担当者、マーク・マックイーン氏は「ごく数少ない高質の資産を世界中の大量な資金が追い求めている」と指摘し、FF金利を0.25%引き上げてもこの動向は変わらない公算が大きく、自身はFRBが利上げしたならば米国債を買うと述べています。

 

 一方、JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバルストラテジスト、ベン・マンデル氏は、米企業の1-3月期決算は悪かったのですが、「大底をつけた可能性が高い」と言います。同氏は、米国株は年末までに年率1桁半ばの投資成績を残すことが可能だとみています。

 

 米国債の大幅な価格下落も投資家はあまり心配していません。欧州と日本の中央銀行は景気刺激策として政策金利をマイナス水準に押し下げました。このため外国の投資家にとって米国債への投資妙味がさらに増しました。FRBの政策に通常最も敏感な短期米国債が売られても、外国投資家からの需要が長期債の価格を安定的に維持するとみられています。

 

 米社債市場も1月以降、回復の兆しをみせています。リスクが高く借入比率の高い企業であっても、ここ数カ月で起債が上向いていおり、年初は、市場が混乱する中で投資家の警戒感から社債発行はほぼ休止していましたが、先週はパソコン大手デルが過去4番目の大型起債となる200億ドルの社債を発行するなど、比較的格付けの低い企業にも市場がまた資金調達の場を提供し始めました。

 

 米商品先物取引委員会(CTFC)が20日に発表した建玉統計によると、先物市場の一角では投資家がさらに楽観的姿勢を示しました。517日時点の建玉状況では、原油と長期米国債に対する投機筋の強気な持ち高が増える一方、弱気な持ち高は減少しました。

 

 投資家はここ数日で金利見通しを大幅に再調整。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループによると、FRB6月に利上げする確率は20日時点で26.3%となっています。1週間前は、金利先物が織り込む確率はわずか4%でした。

 

 アトランティック・トラスト・プライベート・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、デビッド・ドナベディアン氏は、FRBの利上げで相場が下落しても、多くの投資家が押し目を拾う機会を提供することになるだろうとみています。「FRB6月か7月ないしその後に利上げするかどうかに関係なく、FRBの金利政策正常化は極めてゆっくりしたペースだということが重要なポイントです。これは株式を弱気相場に追いやるようなことではない」と語りました。(ソースWSJ

2016年5月23日 (月)

6月利上げリスク、FRBの警鐘ようやく伝わる!

米連邦準備制度理事会(FRB)関係者らはここ数週間、6月に再び利上げする可能性があることを投資家に気づかせようと警鐘を鳴らしてきました。

 

 今週になってようやく投資家に意図が伝わりました。

 

 FRB18日に発表した連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(42627日分)では、経済成長の加速が続けば6月に利上げする可能性について意見が交わされたことが明らかになりました。これを受け、同日の米国市場では株式や債券、多くのコモディティー(国際商品)が売り込まれました。ダウ工業株30種平均は取引序盤の上昇分を解消し、2年物と10年物の米国債利回りは1営業日の上昇幅としては年初来最大を記録しました。

 

 17日にも、サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁とアトランタ地区連銀のロックハート総裁が6月利上げの可能性を示唆したことで、相場は大きく動いていました。

 

 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のデータによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む6月の利上げ確率は18日、34%に上昇しました。17日時点では15%、1カ月前はゼロをわずかに上回る水準だったのです。

 

 こうした市場の動きは、投資家がようやくFRB関係者らの警告に耳を傾け始めたことを示しています。しかし、投資家やアナリストは、債券利回りとドル相場の上昇が続けば、金融環境の引き締まりや株買い意欲の減退につながる可能性が大きく、そうなれば当局は利上げをいっそう正当化しづらくなると警鐘を鳴らします。

 

 モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのグローバル債券ポートフォリオマネジャー、ジム・キャロン氏は「FRBにとって、言うは易し行うは難しだ」と述べました。

 

 イートン・バンス・マネジメントのグローバル債券部門共同ディレクター、エリック・スタイン氏は「市場が織り込む利上げ確率をこれまでよりも引き上げようと、FRB関係者らが一致団結して動いている」と指摘しました。

 

 米経済は4-6月期に勢いを取り戻したようですが、成長ペースは依然不安定です。また、インフレ加速の兆しはあるものの、物価全般への上昇圧力は抑えられています。

 

 世界の景気見通しも引き続き弱く、中国景気への懸念が再燃しているほか、6月のFOMC1週間後には英国で欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が実施されます。このため、資金運用担当者の間では利上げは時期尚早との声も聞こえます。

 

 利上げ見通しで最も恩恵を受けるセクターの一つは銀行株です。18日の米株式市場では、シティグループが5%高、バンク・オブ・アメリカが4.9%高、モルガン・スタンレーが4.1%高でした。ただ、年初来ではそれぞれ11%安、13%安、14%安と、世界経済の成長鈍化やトレーディング業務不振などへの懸念で株価は低迷しています。(ソースWSJ

2016年5月22日 (日)

アップルと中国、すれ違う思惑!

米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は今週、同社にとって2番目に大きな市場である中国を訪れ、アプリの開発者や政府当局者、顧客を驚かせました。アップルは、スマートフォンを使った中国の配車サービス会社「滴滴出行」に10億ドル(約1090億円)を出資したと先に発表したばかりです。今回の訪中から、クック氏が中国政府とのぎくしゃくした関係を改善し、同国での「iPhone(アイフォーン)」販売増を狙っているらしいことがうかがえます。

 

 滴滴出行に投資したのは、表向きには中国市場について「さらに学ぶ」ためです。あるアナリストによると、その背後にはアップルが「より中国化しつつあり」、「中国との関係改善に対する手付金」を支払っているのだと伝える意図があります。

 

 アップルにとっては不幸なことだが、企業が少しお金を出せば中国政府の共感を買えるとの考えは、同国の経済政策に対する危険な誤解です。

 

 正しくは、中国は自国企業が国内外の両方で外国企業に取って代わることを目標にしています。つまり中国が望んでいるのは、米国人が中国製部品と中国製基本ソフト(OS)を使った中国製スマホを買うことです。アップルの巨額の投資をもってさえ中国政府に考えを変えるよう説得できないでしょう。

 

 中国企業は政府の奨励を受けて、自前のスマホ用システムを設計しています。成功すれば、米グーグルなど西側企業の技術に対する依存度を低下させるのに使われるかもしれません。中国政府は昨年発表した「メード・イン・チャイナ 2025」計画を高々と掲げ、医療機器や電気自動車の国内製造を増やすことを目指しています。対象業界の企業は何の問題もなく融資にアクセスできます。政府は半導体業界を発展させるための国家基金も創設しました。ボーイングやエアバスと並ぶべく旅客ジェット機を製造する国営企業もあります。

 

 そうした野心は真剣にとらえられるべきです。豊富な資源を利用でき、巨大な国内市場を持つ中国は、外国勢と競合し、それに代わることのできる優れたテクノロジー企業を既に育成しています。通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は政策の助けを借りて、中国国内で国際企業を脇役に押しのけてから、国際市場での競争に打って出ました。政府の強力な後押しは、中国の太陽光パネル部門と風力タービン部門を国際市場のトップに押し上げる一助にもなりました。

 

 中国が既に力強い存在感を放っている業界で、政府は国内企業を宣伝する計画を練っています。鉄道や港、その他のインフラを建設してアジアに陸上交易ルート「シルクロード」を復活させる構想により、中国の産業・金融・通貨の影響力は拡大するでしょう。同国の当局者は、鉄鋼などの余剰能力の解決に向けた国際協調についても協議しています。これについては、他国を犠牲にして国内工場を維持する意向が透けて見えます。

 

 アップルの新たな提携先である滴滴出行までもが、政府の計画を物語っています。ウーバーと競合する同社は、中国の政府系投資ファンドから出資を受けているのです。

 

 最近の出来事も、外国企業にとって中国市場がいかに厳しいかを示しています。アウディ、ミード・ジョンソン・ニュートリション、クアルコムといった企業は疑わしい「独占禁止法違反」調査の対象になりました。在中国の米国商工会議所が行った最新の調査では、以前に比べて外国企業が歓迎されていないとの回答が77%に上りました。特にテクノロジー企業は中国の不透明な規制環境に悲観的です。調査によると、「政府は優先課題として中国での革新を支援すると言明しているが、海外企業はまだそれを感じていないこと」がうかがえます。

 

 中国国内経済に対するアップルの貢献度は高い。同社は同国でのガジェット製造により、約440万人の雇用を支えているとしているとしています。それでも先月、当局により「iTunes Movies(アイチューンズ・ムービーズ)」と「iBooks(アイブックス)」のサービス停止を余儀なくされました。クック氏の10億ドル出資と訪中を経た今も、これらのサービスは停止したままです。

 

 フェイスブックは同様の戦略を進めていまする。ザッカーバーグCEOは最近、大気汚染のなか天安門広場でジョギングをしました。それでも、悪名高いインターネット検閲システム「防火長城(Great Firewall)」を築いた中国政府が、フェイスブックを受け入れることはなかったのです。中国のネットユーザーでさえ、ザッカーバーグ氏のスタンドブレーが失敗に終わることはお見通しで、アクセス可能なソーシャルメディア(当然ながら中国のものだ)であからさまにザッカーバーグ氏をあざ笑いました。

 

 フェイスブック、ツイッター、ユーチューブといった外国のインターネット企業は、中国政府から統治への脅威だとみなされ、締め出されています。中国国内のインターネットサイトが外国勢との競争から守られるという意味で、それはある種の保護主義でもあります。ソーシャルメディアサイトに比べるとiPhoneは無害に見えるかもしれませんが、中国はそう思っていません。米国で起きたエドワード・スノーデン元国家安全保障局(NSA)契約職員による暴露事件を受けて、中国当局は外国製品の「バックドア」(裏口)に特に敏感になっています。国内でバックドアを作る必要性が浮き彫りになったためです。

 

 以上のような事情はありますが、だからといってアップルが近く中国を追放されるというわけではありません。中国で活発な事業を続ける可能性はあります。滴滴出行への出資は恐らく正解で、利益を生むでしょう。

 

 しかし、どんな懐柔策や投資をもってしても、外国企業が中国市場へのアクセスの保証を得ることはできません。中国は世界経済の重要な一部かもしれませんが、同国政府は国外で広まっている自由主義的な規則と基準に従うことを強制されていません。将来の利益と成長をけん引するため、西側テクノロジー企業のCEOには中国に代わる市場が必要だという教訓がますます明確になってきました。クック氏は賢明にも今週インドを訪れています。この国はアップルにとって巨大かつ、中国よりずっと優しい市場になる可能性を秘めています。(ソースWSJ

2016年5月21日 (土)

モノのインターネット、実は「閉じた世界」!

「モノのインターネット(IoT)」はハイテク業界で流行語の一つだが、名が体を表しておらず、それがハイテク業界の大きな問題となっています。

 

 IoTは、アルファベット(GOOGL)のスマートホーム用基盤技術である「Nest(ネスト)」、アップル(AAPL)の腕時計型端末である「アップル・ウオッチ」、安価なものではフィットビット(FIT)のブレスレット型活動量計といったさまざまなガジェット(小道具)で構成される。しかし、「相互に接続する」というインターネット本来の意味では、IoTはインターネットの一部とは言えません。

 

 インターネットは多数の異なるコンピューター・ネットワークを接続させて相互に通信できるようにするための手段です。さまざまな活動がインターネットで統合されることで大きな力が生まれます。一方、現在の形のIoTは、本当の意味では接続されていない電子機器の寄せ集めであり、「閉じた世界」にすぎません。

 

•顧客囲い込みの手段

 

 IoTはインターネットの反語とも言えるものえす。というのも、IoTはインターネットが登場する前の1960年代に出たコンピューター・システムと似通っているからです。インターネットの父と呼ばれる、コンピューター科学者でカリフォルニア大学ロサンゼルス校のレオナルド・クラインロック教授が、後にインターネットに進化するネットワークを通じてメッセージを送信したのは19691029日のことです。この独創的な取り組みが、そこから数十年に及ぶワールド・ワイド・ウエブ(WWW)や電子商取引、フェイスブック、スマートフォン・アプリといった電子コミュニケーションの発展につながったのです。

 

 それとは対照的に、IoTのような閉じた世界はパーソナル・コンピューティングの発展を阻害するかもしれません。理由の一つは、フィットビットの活動量計やアップル・ウオッチがパソコン(PC)やスマートフォンのような普遍的な魅力を持たないことです。もう一つの理由は、それらが独立した接続機器ではないことです。スマートフォンの付属品として販売され、所有する喜びをそいでしまっています。インターネットと異なり、全てのものに対して開放されているわけでもありません。これらの機器は、ユーザーを「エコシステム」(この言葉は、フィットビットやアップル、グーグルが経常的収益を目的としたユーザーの囲い込みを形容する言葉として流行している)に吸い上げるための手段となっています。

 

•必要なのは強力な公的機関の関与

 

 こうしたガジェットを相互にコミュニケーションさせるための取り組みはありますが、こうした取り組みそのものが分断されたネットワークによるものです。こうしたネットワークには、グーグルの「Brillo(ブリロ)」、アップルの「HomeKit(ホームキット)」、半導体メーカーでIoT機器の開発に力を入れているクアルコム(QCOM)の「AllJoyn(オールジョイン)」などがああります。こうしたさまざまな当事者が、おそらくは善意からIoTを「開かれた世界」に戻そうとしていますが、うまくはいかないでしょう。

 

 はるかに大きな取り組みが求められています。それはインターネット・コンピューティングの第2の波であり、クラインロック氏が47年前に追求したのと同じように野心的なものでなければなりません。

 

 産業界が忘れがちなのは、クラインロック氏のプロジェクトが公的機関である米国防高等研究計画局(DARPA)の支援を受けていたことです。アップルやグーグルなどのIT企業は自らの機器に依拠しているため、極めて複雑なシステムを構築しようとしています。こうした混乱からわれわれを救い出すには、真に強力な公的機関による取り組みが必要となるでしょう。(ソースWSJ

2016年5月20日 (金)

台湾総統寄稿:日本の大陸棚主張に異議!

西太平洋で今、台湾は島の法的地位を巡る2つの係争のまっただ中にあります。その主張の行方は国連海洋法条約に基づく島の定義で決まり、その結果は世界中の海事関連事業のあり方に影響を与えます。

 

 フィリピンはオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所で、(南シナ海での領有権争いで)中国との仲裁手続きを進めています。フィリピン政府はその主張の中で、南シナ海にある台湾の太平島が岩にすぎないとして、その地位を島から岩に引き下げるよう求めているのです。

 

 国連海洋法条約の第121条によると、島として大陸棚と200カイリの排他的経済水域(EEZ)を主張するには、人間の居住または経済的生活を維持できる陸地でなければなりません。この2つの条件を満たさない岩礁については、12カイリの領海しか主張できないのです。

 

 常設仲裁裁判所で昨年11月下旬に行われた審理でフィリピンは、太平島には淡水や耕作のための土地がなく、外から物資を運び込まなければ人が住むことはできないと主張しました。つまり、フィリピンによると太平島は単なる岩だと。この主張は明らかに間違っています。

 

 0.51平方キロの面積がある太平島は、自然に形成された中で南沙(スプラトリー)諸島最大の陸地です。自然の淡水も十分にあり、耕作可能な土地もあり、10種類を超える果実や野菜を産む肥沃(ひよく)な土地を自然に有しています。ニワトリ、ヤギ、犬も飼われている。樹齢100年を超え、高さが1020メートルに及ぶ自生の熱帯性樹木も群生していて、この島に人が1世紀近く居住し、経済活動を行っていたことを証明する史跡もあります。

 

 一方、日本は沖ノ鳥岩礁について、岩ではなく島であり、そのため大陸棚とEEZを有する資格があると主張しています。4月下旬にはこの違法な主張に基づき、沖ノ鳥近くで操業していた台湾漁船を拿捕しました。船長は所持品検査を受け、乗組員たちが釈放されたのは600万円の「担保金」が支払われた後でした。

 

 日本がこの海域で国家の行為を確立しようとしているのは明らかです。しかし、沖ノ鳥岩礁は、満潮時の水面からの高さがわずか16センチの2つの岩からなり、総面積は9平方メートル、つまりキングサイズのベッド2台分ほどの大きさしかありません。淡水も耕作できる土地もなく、人間の居住や経済的生活を維持することはできないのです。100人を超える日本人が本籍を置いていますが、現実的にはこの100人がこれらの岩礁に集まることができるのかどうかも不明です。

 

 国連海洋法条約によると、沖ノ鳥の条件では12カイリの領海しか主張できません。外側の周辺海域は、日本のEEZでなく国際水域とみなされるべきです。日本は鉄筋の構造物を造り、周辺海域を埋め立てています。しかし、国連海洋法条約によれば、人工島や人工構造物は主権の主張を認められず、領海を有する権利も与えられません。

 

 日本政府による台湾漁船の拿捕は、公海における漁業の自由を全ての国に認めた国連海洋法条約第87条に違反します。そうした違法行為は、国際社会で責任あるパートナーとしての日本のイメージを大きく傷つけるものです。最近それぞれが大地震に見舞われた後に顕在化した、台湾と日本の人々の深い友情も損ねます。

 

 私の政府はすでに、違法かつ過度な主張や沖ノ鳥岩礁周辺の海域で起きた力の乱用について日本に正式に抗議しています。台湾の立法院も日本を非難する与野党の共同声明を採択しました。

 

 19967月に国連海洋法条約が発効している日本は、同条約に違反すべきではない。そこで私は、この51日に沖ノ鳥島付近へ巡視船を出航させました。台湾漁船を警備し、全ての国のために公海での漁業の自由を守るためです。

 

 太平島に関する仲裁でもこう訴えます。近く出される裁定は、大陸棚とEEZの要件を満たす正真正銘の島であるという太平島の本当の地位を否定すべきではありません。国際社会は、沖ノ鳥岩礁に関連した日本の違法かつ過度の主張を見過ごしてはならない。いかなる国も、国連海洋法条約に違反することを許されるべきではないのですと。(ソースWSJ

2016年5月19日 (木)

スマホ飽和の時代、グーグルに好材料か!

世界のスマートフォン事業はまだピークを付けてはいませんが、現時点からの伸びは一段と難しくなる見通しです。奇妙なことに、これはグーグルにとっては好材料となる可能性があります。

 

 持ち株会社「アルファベット」の下で、インターネット検索と広告事業を中核とする事業子会社グーグルはすでにスマホ分野で支配的な地位を占めています。調査会社IDCによると、グーグルの携帯端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」は、昨年販売されたスマホのほぼ80%に搭載されていました。さらにグーグルは、今年リリースする新OS「アンドロイドN」の開発者向けプレビュー版をリリースしています。アンドロイドNは今週開催される年次開発者会議「Google I/O」で披露される見込みで、本格リリースは年内の見通しです。

 

 アンドロイドがあまりにも広く普及していることから、グーグルに欧州規制当局の注目が集まっており、一部、長期的リスクも生じています。また、スマホ市場で前例のない落ち込みの兆候がますます拡大していることを考慮すると、グーグルのこうした地位もそれほど素晴らしくは見えないかもしれません。

 

 IDCの報告によると、1-3月期(第1四半期)のスマホ出荷台数は前年同期比で初めて横ばいにとどまりました。アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」の出荷台数も、同1-3月期に前年同期比で初めて減少しています。アンドロイド搭載スマホの最大メーカーである韓国のサムスン電子も、従来機種の勢いの弱さに新機種「ギャラクシーS7」の好調な出だしが相殺され、スマホの販売総数は減少しています(IDC調べ)。

 

 こうした状況は、これまで2桁台の高い伸びを示してきた業界にとって、大いに期待外れのことです。しかし、同事業の現実を考えれば、もはや急速な拡大は見込めないでしょう。

 

 先進国は携帯端末であふれ、アイフォーンやギャラクシーSシリーズのような値の張る商品を買える人々の大半は、そうしたスマホをもう所有しています。従って、この分野は今や更新時の買い換え需要および、引き続き従来型携帯電話(フィーチャーフォン)を使用しているユーザーの取り込みに主にけん引されることになります。調査会社コムスコアの試算では現在、米人口の80%近くがスマホを所有しています。

 

 それでも、インドやアフリカ、中東といった新興諸国・地域ではまだ成長も見込めます。しかし、こうした場所での伸びはネットワークの制限や端末の値段のためにペースが遅い見込みです。

 

 それでも、そうした状況はグーグルには良い兆候です。アップル製の高級端末と違って、グーグルはさまざまな価格帯の製品を取りそろえています。ハイテクコンサルティング会社カウンターポイント・リサーチのアナリスト、ニール・シャー氏によると、アンドロイド搭載スマホの約60%は200ドル(約21700円)未満です。一方、アイフォーンの場合は、通信事業会社の補助金がなければこうした価格帯では手に入りません。

 

 従ってグーグルは引き続き、急速に鈍化するスマホ市場でアンドロイド搭載スマホの販売を伸ばすことが可能でしょう。そして、その規模は重要です。

 

 グーグルは端末販売でもうけているわけではなく、その収益はユーザーを利益の上がる検索事業などのサービスにどの程度取り込めるかにかかっています。この点ではまだ改善の余地はあります。スイス金融大手UBSのエリック・シェリダン氏の試算によると、グーグルのクリック1回当たりの広告料金を示すコスト・パー・クリック(CPC)は、携帯端末ではデスクトップと比較して30%近く低く、携帯端末ユーザーによる取引が増加するにつれ、これは拡大するでしょう。

 

 IDCは向こう5年間でスマホ販売は年平均6%の伸びになると予想しています。その間にアンドロイドの市場シェアは拡大し、現在の約80%から、2020年までには85%に達するとみられています。

 

 成長の鈍化する市場でグーグルの事業がどうなるかを懸念する同社投資家にとって、この数字は狙い通りのはずです。(ソースWSJ

2016年5月18日 (水)

トランプ氏、自前で選挙資金賄えない恐れ!

米大統領選の共和党指名候補となるのがほぼ確定した不動産王ドナルド・トランプ氏はずっと、利益団体などから影響を受けないようにするため自前で選挙資金を賄うと主張してきました。しかし5月初めに、民主党候補本命のヒラリー・クリントン前国務長官との対決に備え選挙資金を確保するためとして、大口献金を受け入れる用意があると表明し、方針を転換しました。

 

 トランプ氏は 100 億ドル(10900億円)の資産があると豪語しており、献金受け入れの理由付けとしては奇妙に聞こえる。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が同氏の資金状況を詳しく調べた結果、手元資金に関する限り、やり繰りが難しくなりそうなことが判明したのです。

 

 同氏が昨夏に大統領選をスタートさせた際に公表した資産報告では、現金のほか株式や債券など流動性資産の保有高は約7800万―23200万ドルでした。2012年の大統領選ではオバマ大統領が支出した選挙資金総額は72100万ドル、共和党候補のミット・ロムニー氏は44900万ドルでした。トランプ氏が同程度を使うとすれば、選挙資金はみるみるうちに底をついてしまいそうです。

 

 そうなると、トランプ氏は数億ドルの資金補てんが必要になります。しかし同氏の事業の年間利益はそれに見合う規模ではありません。WSJの分析では、彼の2016年の税引き前所得は約16000万ドルと見込まれています。トランプ氏が自前の資金に固執するならば、自分の資産の一部を売却するか、もしくは追加借り入れをするかせざるを得なくなるでしょう。

 

 WSJは、トランプ氏の昨年7月の資産報告に載った不動産やゴルフ場、管理会社、ライセンス契約など170項目の資産・事業について、公開文書や関係者へのインタビューを基に今年の収益を試算しました。同氏は納税申告書の開示を拒否しているため、 WSJの推定は同氏の資産状況をめぐる多くの疑問に答えることになるでしょう。

 

 大統領選が本格化すれば費用は増加していくことから、トランプ氏は今や資金繰りが大きな問題になっているといえます。同陣営の3月の選挙費用は、2月に比べ約50%増加しました。運動員や電話による運動、有権者のデータ処理に関する支出が増加した結果です。

 

 トランプ氏が公表した資産報告には、170項目のそれぞれの昨年7月までの18カ月半の間の賃貸料、ロイヤルティー、マンション売却額、手数料などが記載されています。また15件の借り入れが記されており、このうち4件は「5000万ドル以上」となっています。 WSJは、公開文書からこれら融資の元本は63000万ドル強と判断しました。

 

 同氏がトランプ・ビル(旧称40ウォール)について昨年借り換えを行った際に公開された融資文書などによれば、同ビルの年間収入は4320万ドル、金利を除く費用は2060万ドルで、年間返済額は約970万ドルとされています。差し引きで、同ビルの今年の利益は約1280万ドルとなります。同氏のその他の主要資産としては、ニューヨーク・マンハッタン6番街1290や、サンフランシスコのカリフォルニア通り555のオフィス・ビルの30%の所有権があります。これら2つのビルの持ち分の税引き前の年間利益はおよそ2270万ドルと推定されます。

 

 トランプ氏は16カ所のゴルフ場も所有し、18カ月半の間の収益は約2億ドルに上っています。また、この間にシカゴのトランプ・インターナショナル・ホテル・アンド・タワーのマンションを売却し、4330万ドルを手にしました。WSJの試算では、100万ドル超の収益を挙げる採算事業は合計54事業で、16年の税引き前利益は約14700万ドルとなります。残りの116事業は収益が100万ドル以下で、売却した場合の収入は約1300万ドルと推定されています。合わせると、16年の税引き前利益は16000万ドル前後になります。

 

 WSJの分析について、トランプ氏は114のライセンス契約などその他の収益が含まれておらず過小評価だと主張し、それらライセンス収入は数億ドルに達するとしています。同氏が選挙資金手当てのため借り入れを行おうとすれば、不動産担保債発行に伴いさまざまなコストや手間が掛かかります。不動産を売却するにしても、完了までに数カ月間かかり、買い手はトランプ氏が早急に資金を必要としていることが分かるため、足元を見られるでしょう。

 

 昨年の資産報告は、トランプ氏の資産価値を正確には反映していません。5000万超の主要資産が記載されているだけであり、同氏の総資産は控えめに見積もって135000万ドルに達します。さらに資産報告に添付した新聞発表では、「トランプ氏の現在の純資産は100億ドルを超える」と記されています。(ソースWSJ

2016年5月17日 (火)

「ドル安・株高説」の真偽!

ドルは国際金融システムの要であり、その価値が投資家にとって重要なのは言うまでもありません。いったいどれだけ重要かを理解するのは、それほど容易なことではありません。説明が二転三転するようでは、なおさらです。

 

 ドルの重要性に関して、今年は「ドル安が株価を押し上げている」という説が支持を集めています。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ観測を後退させ、ドルの2年間に及ぶ上昇局面を終わらせたことで、世界の市場を救ったというものです。この説はほぼ全ての投資家が信じているようですが、株価が年初の急落から持ち直していった状況と整合を図るのは難く、しかも、少なくともこの数週間は事実と全く異なります。

 

 確かに、この説通りの展開になった時期もありました。1カ月前、ドルと米国株が正反対の方向に動いた回数は、2012年以降で最多に上りました。ドルが下落した日には世界的にリスク選好意欲が高まり、株価は上昇しました。反対にドルが上昇すれば株安となったのです。SP500種指数は3月から4月初めにかけて、ドル安を背景に約5%上昇しました。

 

 それ以降、この逆相関は徐々に弱まり、最終的には完全に崩れたのです。この1カ月はドルと株価が反対方向よりも同じ方向に動くことが多く、5911日は全く同じ動きを見せたのです。

 

 ドル安が株価の支援材料だったのは過去の話です。

 

 ドルと株価は3月に逆相関が非常に強かったため、ドル安・株高説がさまざまな角度から支持を得た理由は容易に想像できます。12月の急激な株価の下落・反発にドルが関係していたことも、この説が支持を集めた一因でしょう。

 

 ドル安が株高につながった説明として、以下のような話がよくされます。

 

 「ドル高によって国際金融市場の流動性が低下し、世界中から準備通貨が吸い上げられ、ドル建てで資金を調達していた人々、特に新興国の借り手が打撃を受けました。FRBが年初の国際市場混乱に懸念を徐々に強めていく中、トレーダーが利上げ予想を後ずれさせ、インカムゲイン狙いでドルを保有する妙味は薄れました。その後、FRBが年内の利上げ規模を縮小するとの見方が広がったことでドルが下落しました。これが市場のリスク選好意欲を高め、株価を押し上げた」。

 

 もっとうまい説明があります。それは主に中国に関する話です。

 

 「中国が新たに大規模な金融緩和と財政出動を打ち出したことで新規の建設事業が見込まれ、コモディティーに対する需要が高まった。結果として、鉄鉱石や銅など原材料輸出の落ち込みで打撃を受けていた新興国企業が支えられた。新興国で金融面の圧力が緩和したことで、新興国資産への投資を回避し、安全通貨のドルを買う必要も薄れた。リスク選好意欲の高まりとドル安(新興国通貨高)には共通の原因があった」。

 

 では、転換点について考えてみます。ドルが新興国通貨に対してピークを付けたのは120日でした。この日からドルは下げ始めたのです。新興国通貨に連動している資源価格(鉱業・エネルギー品目)や資産(新興国株)は底打ちし、その後に大幅反発するという、ドルと正反対の動きを見せました。

 

 ドルは先進国通貨に対しても下落し始めました。ただドルが大きく下げたのは、円高が大幅に進んだ後だったのです。円高の背景には、日本銀行がマイナス金利を導入したものの、日銀にはもうそれほど政策手段が残っていないのではないかとの懸念を高めてしまったことがありました。

 

 ドルとSP500種指数はいずれも下落し、211日に年初来安値を更新しました。そしてドルと株式は連れ安となったのです。ドル安・株高説にとってはさらに不都合なことに、フェデラルファンド(FF)金利先物のトレーダーが織り込むFRBの年内利上げ回数も減りました。

 

 ドルと米国株の正の相関は2月末まで続き、その頃にはドル(の対先進国通貨相場)とSP500種指数が共に上昇し、FRBの利上げ観測も高まりました。実際、米国株は2月末にかけて約5%上昇しましたが、その前のドル安局面ではやはり5%程度下げていました。

 

 利上げの可能性が再び後退し、ドルが(先進国通貨に対して)下落したことを受けて株価が上昇し始めたのは、3月〜4月初めの期間だけだったのです。この期間にドルと株価の逆相関が非常に強かったのは確かです。両者の30日間の相関係数はマイナス0.9となり、逆相関が最も強くなった時期の水準に迫りました。しかし、その期間の前後にはこうした傾向は見られなかったのです。

 

 以上のことは全て投資家への教訓となるはずです。投資家は自らが正しいと思う仮説の本質を慎重に見極めなければなりません。ドルの動きが株価を動かすこともあれば、両者が同じ要因で動くこともあるし、両者が違う動きをすることだってあるからです。

 

 現時点では、早期利上げについて何らかの示唆があれば、それが景気拡大期待を背景にしたものであっても株価の悪材料(ドルの支援材料)になるという感じがします。しかし、確かなことは言えません。米国株とドルの連動性はこの1カ月で失われ、ドル安・株高説から示唆される以上にずっと不安定になっています。(ソースWSJ

2016年5月16日 (月)

配当利回りに着目した株買いに潜む問題!

配当が株式の価値を左右するという地位を取り戻しつつあります。先進国の4大市場のうち3市場(日本、ドイツ、英国)では現在、株式利回りが長期国債利回りを上回っています。残る米国市場では、配当利回りが20年物国債の利回りさえしのぎます。

 

 インカムゲインを得ることに必死な投資家にとって、株式を買う理由は明確です。配当収入が増えて困る人などいるだろうか。株価は変動するかもしれないが、企業幹部は無理してでも配当を維持しようとするものです。さらに好都合なことに、配当はインフレと連動して上昇することが多く、株価は長期的に見れば上昇する傾向があります。

 

当たり前なのかも知れませんが、こうした株式に関する一般的な仮説は、債券や配当自体の市場で作られた仮説と矛盾します。誰かが間違っているということです。

 

 まずは、低位に沈む債券利回りから見てみます。これは相反するシグナルを投資家に送っています。一つは、世界経済の見通しは厳しい、すなわち今後はどの資産もリターン(投資収益率)が低下すると投資家は想定しなければならないというシグナルです。もう一つのシグナルは、国債の投資妙味が相当薄れているため、代わりにリスクがもっと高い資産に投資すべきというものです。英国債は2.1%、30年物の米国債は2.6%といった具合です。

 

これらの水準が経済成長率とインフレ率を正確に見通しているとすれば、どちらもあと数世代は大きな上昇が望めないということになります。配当の魅力はますます高まっているようです。

 

 とはいえ、経済成長率とインフレ率が低ければ、配当にも打撃が及びます。投資家は近い過去に基づいて物事を予想する傾向があり、その近い過去には配当が好調だったのです。米国では昨年、SP500種指数構成企業の配当が直近の景気の山だった2007年の水準を55%上回ったものの、企業収益は29%増にとどまりました。配当はこの5年間、年13%のペースで増えています。

 

 しかし、配当自体の市場はそうした成長を織り込んでいるわけではありません。プロ投資家のみが参加する配当スワップや配当先物では、SP500種構成企業の配当が今後10年間は年1%の伸びにとどまり、欧州企業の配当は年間5%近く減少すると織り込まれており、欧州の配当先物は大きく下落しています。「自動償還型」として知られる仕組み商品が人気を集めた影響で大量の売りが出たためです(同商品は組成した銀行が配当リスクを引き受ける)。しかし、これを十二分に考慮した場合でも、配当の見通しはこれまでほど良くありません。

 

 最も基本的な株価評価手段である「配当割引モデル」にとって、これはありがたくない話です。同モデルでは、将来得られる配当額を現在価値に割り引いた合計額が理論株価となる。配当の見通しが悪化すれば、それだけ株価は下がることになります。

 

 長期的なリターンを考える上では、近い過去や配当以外の要素を考慮することが不可欠となっていて、事実、エール大学のロバート・シラー教授がまとめたデータによると、19827月と19016月の米国株価はインフレ調整後では同水準となります。この期間のリターンがインフレ率を上回ったケースはいずれも配当の再投資が原因だったのです。配当再投資の威力の大きさはよく知られていて、ロンドン・ビジネス・スクールのエルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・ストーントンの3教授によると、1900年に米国株を購入した投資家のキャピタルゲインは年2.1%でしたが、配当を1度再投資すれば、これが年6.4%へ拡大するのです。

 

 1980年代に始まった長期上昇相場が定着したことで、配当の重要性は大きく低下しました。それ以降、キャピタルゲインはトータルリターン(キャピタルゲインとインカムゲインの合計)の約3分の2を占めるようになりました。

 

 もっとも、30年間続く強気相場は債券利回りの低下が追い風となり、同じ事はもう期待できません。債券利回りは多くの市場で過去最低かその近辺を付けているからです。そのおかげで、配当利回りは債券利回りを上回るという1950年代まで維持していた地位を取り戻しました。強気相場が勢いを失うにつれ、トータルリターンに配当利回りが占める割合も再び上昇しそうです。SP500種構成企業の配当利回りは2.2%ですが、これが示唆しているのは、将来のリターン水準は年金基金の運用利回りに多くが期待している水準よりも低くなるということです。

 

 債券利回りが低水準にとどまる一方、配当は(比較的)高い水準を維持すると予想している投資家は株式を買っています。株式が割安だからではなく、債券よりも高いリターンが見込めるからです。投資家が配当を重視する姿勢は、株式に代わる投資先がないという見方を裏付けています。

 

 配当の見通しが怪しくなれば、株式を買う理由はもっと怪しくなります。経済の先行きは厳しいという債券投資家の見方が正しく、配当先物も将来を正確に織り込んでいるとすれば、株式の魅力は債券に比べてかなり劣ることになります。ゴールドマン・サックスによれば、その場合でも株式の見通しはまだ債券よりも明るいが、想定外の悪材料を吸収する能力は大幅に低下するだろうと言っています。

 

 債券市場や配当市場の織り込みが間違っていると考える投資家は、利回り目的での株式購入を正当化できるでしょう。ただこうした投資家は、過去の水準と比べて割高に見える米国株を買うより、債券を売るか配当先物を買った方が持論をうまく表現できそうです。(ソースWSJ

2016年5月15日 (日)

アベノミクス行き詰まり招く労働市場の問題!

マツシタ・ケイさん(32)の苦労は、安倍晋三首相が労働市場に目を向ける理由だけでなく、労働市場が日本経済の足かせになっている状況を浮き彫りにしています。

 

 マツシタさんは同世代の多くの人と同じように結婚して、子どもをもうけようと思っています。つまり、安倍氏が推進する「一億総活躍社会」の市民の1人になろうと考えているのです。ただ、マツシタさんはまだ両親と一緒に住んでいます。

 

 2007年に経済学の学位を取得したマツシタさんは、卒業以来、一度も正社員の職に就いたことがありません。いまや有望な正社員候補ではなく、一生賃金の低い非正規社員のままかもしれないという未来に直面しているのです。

 

 安倍氏の経済政策「アベノミクス」が打ち出されてから3年。ただ、成長率と物価上昇率がともにゼロ近辺にとどまるなど、アベノミクスは行き詰まり感を示しています。この主な原因となっているのが労働市場です。ここを起点に一連の本質的な問題―賃金上昇率の鈍さ、生産性と投資の低さ、そして未婚率の高さと出生率の低さ―が生まれています。

 

 安倍氏は今週、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで「働き方の改革は次の3年の最大のチャレンジになると思う」とし、「(労働市場の改革が)日本が持続的に成長していく鍵になるだろうと思っている」と語りました。

 

 安倍氏は非正規で働く労働者の賃上げ幅を拡大させ、「同一労働同一賃金」の実現を目指すと述べています。同氏は仕事と子育て・介護を両立させなければならない、女性を中心とした労働者の支援を積極化させています。こうしたイニシアチブには保育所や介護施設の数を増やし、育児休業を取得しやすくするといった対策が含まれています。

 

 1990年代のバブル崩壊以降、企業はより柔軟に雇用や解雇ができる方法を模索し、これが非正規社員への依存を強めるようになったのです。過剰な生産能力と負債を抱えた「日本株式会社」は人員をカットするか賃金をカットするかという選択に直面し、後者を選んだ。ここに映し出されているのは、日本の大企業は雇用を保障する責任を持つ「公共機関」だという見方です。

 正社員を保護することで非正規社員が拡大しました。事業環境が悪化した時に解雇しやすい労働者の雇用を企業が増やしたためえす。

 

 現在も正社員には実質的な終身雇用が保障されています。いまや非管理職従業員の38%を占める非正規労働者は、正社員と同じ仕事をしていても、正社員よりはるかに低い賃金しかもらえません。非正規社員は正式な訓練をほとんど受けず、労働組合の保護をあまり受けられず、配属が頻繁に変わり、正社員によって昇進の道がふさがれています。

 

 「オリエンタル・エコノミスト・リポート」のリチャード・カッツ編集長は、「非正規の仕事にしか就けなければ、30代になるころには魅力的な従業員ではなくなる」と話しました。

 

 これはマツシタさんが置かれている状況です。同氏は「日本では新卒カードが強い。そこで失敗すると非正規に甘んじることになる」と話しました。マツシタさんは現在も正社員の職を探しています。

 

非正規社員という不安定な地位と低賃金が結婚相手としての魅力を低下させ、これが人口減少という問題につながっています。政府統計によると、非正規社員の30代男性のうち、昨年結婚したのはわずか27%でした。一方、正社員の30代男性は66%に上っています。

 

 経済協力開発機構(OECD)経済局の日本・韓国課長で、チーフエコノミストのランダル・ジョーンズ氏は、労働市場の二極化を改革することが、日本にとって最も重要な課題のひとつだと指摘。これは労働生産性にとっての大きな障害で、現在の日本の潜在成長率を非常に低くしている主因だと述べました。OECD加盟国の中で、日本の労働生産性は下位に位置しています。

 

 ジョーンズ氏によると、正社員を手厚く保護することで有望企業への人材や資金の流れが制限されています。そして、必要な人材確保ができないため、革新的な新興企業はベンチャー資金を呼び込むのに苦戦しているといいます。

 

 安倍氏はかねてから賃上げの重要性を強調してきましたが、当初は労働市場の二極化にあまり注意を払ってきませんでした。むしろ、企業の利益を押し上げて賃上げを促す金融緩和などの政策に重点を置いていました。ただ今年は、日本銀行によるマイナス金利導入にかかわらず景気低迷が続くなか、安倍氏は政策の方向を転換させました。

 

 安倍氏の指示で招集された専門家による検討会が3月にスタートしました。ここでは労働市場が賃金に与える影響が審議されるほか、必要な労働法の改正についての進言がまとめられます。安倍内閣は5月にも同一賃金の実現に向けたガイドラインを明らかにする見通しです。また、安倍氏はインタビューで「非正規という言葉をなくしていこうと思う」とも述べています。

 

 一方、多くの人が抜本改革の実現には懐疑的です。かねてからビジネス界の幹部らは正社員を解雇しやすくするべきだと主張してきましたが、安倍氏の同一賃金へのこだわりには警戒感を示しています。同一賃金は現在の法律ですでに求められているのですが、実施されることはまれです。企業幹部らによると、これを実施するには負担が大きいといいます。

 

 経済同友会の雇用・労働市場委員会を率いる橘・フクシマ・咲江氏は、「正社員が最も良くて企業は決して誰も解雇すべきではない」など、日本は労働と労使関係について心の持ち方を変える必要があると指摘。労働者には生産性と成果に応じて賃金が支払われるべきで、正社員よりも高い賃金をもらう非正規社員がいてもいいと述べています。

 

 安倍氏が同一賃金の実現を目指していることについて、フクシマ氏は「(安倍氏が)そこに意識を持ち、是正しようとする努力は素晴らしいことだと思う。ただ是正の仕方を間違えると、今度は逆に正規の人(の賃金)を下げて、こちら(別の人)に払おうということになる」と語りました。

 

 安倍氏は全国民が働く必要性を訴えています。同氏が首相に返り咲いてから3年で労働参加率は上昇し、失業率は20年ぶりの水準まで下げましたが、こうした数値は根本的な弱さを覆い隠しています。実際には安倍政権下で正社員の数は減少し、非正規社員の割合は過去最高に達したのです。

 

 ゴールドマン・サックスが1月に発表したリポートによると、世帯主の収入が減る中、パート職に就く既婚女性や60歳超の高齢者の増加が、労働参加率の上昇の大部分に貢献してきました。

 

 島田美奈子さん(36)も新たなパート職に就きました。島田さんの夫は東京にある会社の正社員で、順調に昇進していますが、給与は数年間ほとんど変わっていないといいます。娘の子育てを5年間やった後、彼女は昨年から主婦の就職をあっせんする仕事を始めました。

 

 島田さん夫婦はもう1人子どもを欲しがっていますが、生活をやっていけるとは思っていません。生活を支えるため、夫婦は自分たちの食費や衣料費を節約し始めました。

 

 島田さんは「将来、子供にどのぐらいお金がかかるのかわからない。年を取ったときに自分たちの生活もどうなるかわからない。だから、少ないが貯蓄は定期的にするようにしている」と述べていました。(ソースWSJ

2016年5月13日 (金)

優良な北米企業「バロンズ500」ランキング!

医薬品卸売り大手アメリソースバーゲン(ABC)の株価は昨年、後発医薬品(ジェネリック)の成長への懸念によって下落しましたが、今年の「バロンズ500」調査では1位となり、懸念の解消に役立つでしょう。同社は149位から躍進し、買収や内部成長による2桁台の増収がけん引しました。また、ドラッグストアチェーン大手のウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA)に対してブランド薬とジェネリック薬を提供するという3年前の合意も、成長戦略の中核でもあります。

 

 他の上位企業は、昨年トップだったバイオ医薬品会社ギリアド・サイエンシズ(GILD)が2位、たばこ大手アルトリア・グループ(MO)が3位、ホテルチェーン大手マリオット・インターナショナル(MAR)が4位、たばこ大手のレイノルズ・アメリカン(RAI)が5位となりました。6位から10位までは、ホテルチェーン大手のウィンダム・ワールドワイド(WYN)、バイオ医薬品大手のバイオジェン(BIIB)、保険代理店のギャラガー(AJG)、データ・サービス・プロバイダーのSPグローバル(SPGI、旧マグロウヒルファイナンシャル)、交流サイト大手のフェイスブック(FB)となっています。

 

 バロンズ500は、クレディ・スイスの一部門であるHOLTが、米国およびカナダ上場企業の中で売り上げ規模上位500社を対象に、1)過去3年間のCFROI(キャッシュフローに基づく投資収益率)の中央値、2)その中央値との比較での直近会計年度におけるCFROI変動率、3)直近会計年度における売上高成長率――という3つの指標を均等加重によりランク付けしたものです。HOLTでは、インフレの影響を排除し、資産計上された研究開発費や簿外のオペレーティングリースなど特殊項目を調整しています。金融機関の場合、有形固定資産に対するキャッシュフローのリターンを計算しています。

 

 HOLTは上記3基準のそれぞれについて、企業を上位のAからFまでに分類。ちなみに、増収率でAを獲得するために必要な水準は昨年の11.68%から今年は4.82%まで低下していますが、HOLTによるとこれは手法の変更を反映しています。つまり、昨年のランキングでは買収の影響を反映していなかったのです。

 

 今年は35社が入れ替わりました。中でも上位企業は、上述のウィンダム・ワールドワイド、ギャラガー、SPグローバルのほか、11位には酒類大手コンステレーション・ブランズ(STZ)、29位にはクラウドベースの顧客関係管理や営業支援を手掛けるセールスフォース・ドットコム(CRM)が新たに加わりました。

 

 一方、今年ランキング入りできなかった企業には、エネルギー不振の影響を被った油田掘削会社ネイバーズ・インダストリーズ(NBR)、新聞部門を売却した放送・デジタルメディア大手のテグナ(TGNA、旧ガネット)、マカオのギャンブル関連収入が大幅に落ち込んだカジノ運営大手ウィン・リゾーツ(WYNN)、ランキング作成時点で年次報告書(10-K)を届け出ていなかったカナダの製薬会社バリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナル(VRX)などです。

 

 いわゆる「FANG銘柄」の状況はまちまちで、フェイスブックは10位ですが、アマゾン・ドット・コム(AMZN)が158位、動画ストリーミング(逐次配信)大手ネットフリックス(NFLX)は275位に沈みました。

 

 順位を上げた企業は、好調な住宅市場の恩恵を受けたホームセンター大手ホーム・デポ(HD67位から18位)、医療保険大手のエトナ(AET96位から15位)、医療保険・管理医療サービス大手ユナイテッドヘルス・グループ(UNH201位から28位)、スポーツ用品大手のナイキ(NKE82位から22位)などである。

 

 最下層グループは、エネルギー企業で占められました。

 

 ちなみに、バロンズ500ランキングはクレディ・スイスのアナリストの投資見解を反映したものではなく、今後1年間で市場をアウトパフォームする可能性のある企業のランキングでもありません。本誌のランキングは、過去数年間で資本を最も有効に活用し、比較的優れた業績を上げた企業に対する指針とみなすのが最適です。以下、上位に位置づけた5社を紹介します。

 

•アメリソースバーゲン

 

 医療関係の調査会社IMSヘルスによると、2015年に米国人が医薬品に費やした額は前年比8.5%増の3100億ドルで、医薬品卸売企業にとっての追い風になっています。同社の株価は過去1年間で23%下落しましたが、これはジェネリックの販売量や薬価上昇の鈍化が懸念されたためです。

 

 しかし、20159月期の売上高は買収を調整して12%増加し、純利益は25%増加しました。アナリストは今期に9%増収、17%増益を記録すると予想しています。

 

 3年前に、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(当時はウォルグリーンズ)と医薬品の提供で合意した結果、現在では同社向けの販売額が全体の30%を占めるほどに拡大しました。

 

 同社は、現在の売上高と純利益の成長ペース維持に苦慮する可能性がありますが、医薬品市場全体よりも急速に成長しているスペシャルティ医薬品をリードする地位に期待しています。特にがん治療の分野では特に強い立場にあります。SPグローバル・マーケット・インテリジェンスのアナリストであるジョー・アグネス氏は、「ジェネリック薬からスペシャリティ医薬品(高額かつ取り扱い難易度の高い特殊処方薬)への移行が進行中で、価格は高いが利益率が低いスペシャリティ医薬品が、今後数年間の1株当たり利益(EPS)成長にとってより大きなポイントになる」と語っています。

 

•レイノルズ・アメリカン

 

 多くの最高経営責任者(CEO)が、大型買収の成果を過剰に喧伝する一方でそれに見合った成果を達成できていませんが、スーザン・キャメロン氏は違います。同氏がレイノルズ・アメリカンのCEOに就くのは今回が2回目です。昨年にはライバルだったロリラードを買収。これは市場に好感され、好調な決算にも支えられて株価は過去1年間で34%上昇しています。

 

 2015年の純利益は23億ドル、売上高は7%増の120億ドル。競争上の懸念から複数のブランドが売却され、英国のインペリアル・ブランズ(IMB. 英国、旧インペリアル・タバコ・グループ)が71億ドルの現金を支払いました。また、「ナチュラル・アメリカン・スピリット」ブランドの海外事業をJT2914)へ50億ドルで売却しました。これらの結果、331日現在の純負債は約90億ドルへ減少しました。

 

 アグネス氏は、買収による費用削減効果(目標は約8億ドル)にも支えられ、向こう数年間は2桁台の増益になると予想しています。

 

 レイノルズ・アメリカンの今期予想株価収益率(PER)は21倍と割安ではありません。一方で配当利回りは3.4%で、スカイブリッジ・ディビデンド・バリュー・ファンド(SKYAX)の投資銘柄の1社でもあります。

 

•バイオジェン

 

 バイオジェンは多発性硬化症治療の大手で、2013年に発売された主力薬の一つ「テクフィデラ」の2015年の売上高は、前年比25%増の36億ドルとなりました。多発性硬化症薬の多くが注射または点滴による投与ですが、同薬には経口という優位性があります。

 

 しかし、同薬の成長鈍化という懸念によって株価は過去1年間で約30%下落しています。同社は年央に、2015年の増収率ガイダンスを1416%から68%へ引き下げました。また、多発性硬化症、アルツハイマー病、さらにその他の疾病治療用製品のパイプライン(薬剤の研究開始から承認・販売開始に至るまでの開発品)をめぐる潜在力に対する懸念もありました。とはいえ、最近では堅実な第1四半期の決算発表を受けて、過去1カ月で株価は8%上昇しています。

 

 20161-3月期の純利益は前年同期比25%増、売上高は同7%増加しました。テクフィデラの売上高も15%増加しました。モーニングスターのアナリストであるカレン・アンダーソン氏は、さらに多くの新規患者が経口薬に移行し、テクフィデラは向こう数年間にわたって恩恵を受けると予想しています。

 

 2010年から同社を率いているジョージ・スキャンゴスCEOは、多発性硬化症薬の開発努力を主導したことで称賛されています。同氏の包括的なアプローチは、脳疾患に焦点を当てています。有望薬の一つは「アデュカヌマブ」で、試験結果は良好で現在は第3相試験(フェーズ3)にあります。ただ、最終結果は早くて2018年末になるとの見方もあります。また、多発性硬化症薬でフェーズ2にある「オピシヌマブ」も注目されています。

 

 今年の予想PER15倍未満で、株価は割安です。

 

 同社は出版社から、主にSPブランドで提供される企業および金融の調査・分析会社に業態を変化させたのを反映して、企業名を先週変更したばかりです。ダグラス・ピーターソン氏が2013年後半にCEOに就任した時点で、変化は既に進行していました。当時は旗艦となる出版物ビジネスウィーク誌が手放されて久しく、教科書発行のマグロウヒル・エデュケーションが売却されたばかりでした。同氏は、資本集約度の高い旧来の事業から、急成長中でリターンが高い情報事業への移行を継続しました。先月は、消費者調査企業J.D.パワー・アンド・アソシエーツの売却に調印しました。

 

 現在のSPグローバルは、信用格付け、各種指数の構成、投資調査および分析、コモディティーおよび商業市場の4部門で構成されています。中でも、スタンダード・アンド・プアーズ・レーティング・サービスを含んでいる信用格付け事業が最大で、2015年の売上高は24億ドルと全体の約半分を占め、営業利益(調整後)では半分以上を稼ぎ出しました。エネルギー企業を中心とした新規社債発行の減少で信用格付け事業は打撃を被っていますが、その他の事業が補って全体では前進しています。

 

 第1四半期の純利益は32000万ドルで前年同期比8%増、売上高は5%増でした。今期は13%増益、来期は12%増益が予想されています。

 

 ピーターソン氏は成長に向けて投資しており、昨年には銀行など金融機関向けに投資調査やデータ、分析ツールを提供するSNLフィナンシャルを買収しました。SNLフィナンシャルは、旧SPキャピタルIQとうまく適合し、今やSPグローバル・マーケット・インテリジェンスの一部となっています。

 

 株価は、過去3カ月で25%、過去3年間では約2倍上昇しています。

 

•フェイスブック

 

フェイスブックの第1四半期は好調で、株価は428日に7.2%上昇しました。売上高とキャッシュフローの驚異的な増加は、モバイル広告宣伝がけん引しています。今期の市場予想は、EPS3.47ドル(前期は2.28ドル)、売上高は40%超の増加となっています。

 

 フェイスブックのプライバシー保護を懸念する向きもありますが、投資家は同社を好んでおり、株価は過去1年だけで44%、20125月の新規株式公開(IPO)以降では205%上昇しました。同社株を保有しているT.ロウ・プライス・メディア・アンド・テレコミュニケーションズ・ファンド(PRMTX)を運用しているポール・グリーン氏は、成長のけん引役として「技術革新力が強く、一貫している」と述べています。

 

 同社はIPO直後に、デスクトップパソコン(PC)からモバイルへユーザーを移行できると証明しなければなりませんでした。実際には移行に成功しており、3月末現在のモバイルの1日当たりアクティブユーザーは10億人超と前年比16%増加し、売上高にモバイル広告が占める割合は昨年の73%から約82%へ上昇しています。

 

 同社は急速なペースで技術革新を進めていて、月間ユーザーが8億人のメッセンジャー・アプリは、今や決済も可能となっています。写真共有サイトのインスタグラムは4億人以上のユーザーを抱え、昨年末にはビデオ機能の提供も開始しました。

 

 フェイスブックにとっての最も重要なサービスはニュース・フィードで、各ユーザー向けのストーリーや広告をランク付けしてカスタマイズするアルゴリズムを使った機能です。同社は、ニュース・フィードが価値ある資産であることを、広告主に確信させてきました。

 

 同社の今期予想PER34倍と非常に割高だが、グリーン氏は株価が今後18カ月で50%以上上昇する可能性があると考えています。(ソースWSJ

 

2016年5月12日 (木)

日韓の米軍基地コスト、早わかりQ&A!

米大統領選の共和党指名を目指すドナルド・トランプ氏は427日の外交政策演説で、アジアの同盟国との「費用負担のバランスを取り戻す」と表明。世界の同盟国が「公平な負担分」を支払っていないと主張しました。日韓は東アジアで米軍を最も多く受け入れており、その理由は異なるが重なる部分も多くあります。

 

 東アジアでの米軍の運営コストはどのくらいなのか? 軍事基地を維持するメリットは? 一問一答形式でまとめました。

 

日韓に駐留する米軍の規模は?

 

 在日米軍の広報官によると、日本にある米軍関連施設85カ所に勤務するのは軍人約54000人、その家族42000人、そして軍属800人。それに加え、日本人25500人が事務員や消防士、医者などとして働いています。韓国に駐留する米兵は28500人。

 

在日米軍の年間費用は?

 

 2月に公表されたオバマ大統領の予算案では、2017会計年度(1610月~179月)での費用は、人件費を含めて約55億ドル(約5850億円)。

 

日本側は米軍基地のためにいくらか負担しているのか?

 

 日本の16年度予算には米軍基地の直接的支援のための1920億円が含まれます。米軍基地で働く日本人25500人の人件費の90%以上と、公益費のほとんどを日本政府が負担しています。そのほか、基地に使用される民間・公共の土地の賃貸料に加え、近隣住民の騒音防止策などにかかる費用も負担しており、これらすべてを合せると、米軍基地関連予算は4500億円になります。

 

在韓米軍に対する韓国の負担額と韓国駐留の理由は?

 

 韓国政府によると、14年は在韓米軍向けに約86660万ドルを負担しました。これは全費用の約40%に相当するといいます。米軍が韓国に駐屯する理由は北朝鮮です。北朝鮮は核実験やミサイル発射により、米国とアジアの米同盟国に対する戦略的軍事力を強化しています。

 

日本での米軍基地の機能向上や基地移転にかかる費用は?

 

 日本の16年度予算には、こうした費用として1760億円が含まれています。このほか、米国務省によると、日本政府は在日米兵約4000人のグアムへの移転支援に31億ドルを提供することで合意しています。これは想定される総費用86億ドルの36%に相当します。

 

日本に米軍基地を置く目的は?

 

 日米安全保障条約第5条で、米国は武力攻撃から日本を守ることが義務付けられています。第6条では、米軍のもう一つの目的は「極東の国際的平和と安全保障の維持」とされていて、この条約では、日本の領域を超えた攻撃から日本が米国を保護する義務は明示されていません。このため、片務的だと批判する向きもあります。しかし、最近改定された「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)で、軍事紛争の際も平時も、日本はその領域を超えて米軍を支援することが認められました。日本は地域紛争の際に武器を提供し、災害救助の支援を行い、海・空域の航行の自由を確保するために偵察活動を行うことができます。

 

日米同盟による日本のメリットは?

 

 日本にとっての財政上の大きなメリットは、自衛のための全費用を負担せずに済むことです。日本は年間の防衛費として国民総生産(GDP)の約1%に相当する約5兆円を投じています。米国の場合、防衛費は5800億ドルとGDPの約3.5%に相当しており、防衛大学校の武藤功教授と武田康裕教授は、日米同盟がなければ、同じ防衛水準を維持するために、艦船や空母や他の武器調達にさらに42000億円が必要になるとの試算を示しています。

 

 また、米国主導の安全保障体制にとどまることで、第2次大戦中に占領もしくは侵略した近隣諸国の懸念を高めることなくアジア地域の平和維持に貢献できるというのが、日本政府の立場です。

 

米国のメリットは?

 

 同盟を支持する向きによれば、東アジアの安定維持、地域と世界での米国の影響力維持、そして他国の攻撃抑止に役立つ。日本と韓国に米軍基地がなければ、貿易量が減少するうえ犠牲の大きな紛争が発生しかねないといいます。(ソースWSJ

2016年5月10日 (火)

トランプ氏の独走、アジアで警戒!

米大統領選の共和党候補指名争いでドナルド・トランプ氏がほぼ独走態勢に入り、アジア諸国は「トランプ大統領」が実現した場合の影響を見極める取り組みを本格化させています。

 

 日本の外務省のある高官は、このような状況を想定していなかったと話しました。同省では最近になってからトランプ氏の関連発言をまとめ、アジアへ及び得る影響を分析し始めました。だがこの高官によると、作業ははかどっていません。トランプ氏自身の立場に関する情報があふれている一方で、同氏の顧問らがどのような見解なのか、はっきりしないのだといいます。

 

 トランプ氏は、一部の同盟国がしかるべきコストを支払わずに防衛体制の利益を得ていると批判し、財政的な負担のバランスを見直すと警告しています。中国が軍事力を増し、北朝鮮が核実験やミサイル発射を繰り返す東アジア地域にとっては特に懸念材料です。

 

 安倍晋三首相の諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」に参加する細谷雄一・慶応義塾大学教授は、中国のアジアでの地政学的な野望にとってトランプ氏は好都合かもしれないと指摘しました。中国としては、自らが最大限の利益と安全保障を確保できるよう、米国にはアジアからできるだけ手を引いてほしいはずだとみているます。

 

 トランプ氏は中国の貿易政策を厳しく批判しており、中国でも一部の反応は冷ややかだ。中国人民大学で国際関係学を専門とする時殷弘氏は、トランプ氏の姿勢を警戒していると述べました。

 

 時氏は「これまでの発言に基づくと、トランプ氏が大統領になった場合、残念ながら米中関係が大きく揺れ動くだろう」と語りました。

 

 中国外務省の報道官は4日の定例会見で、トランプ氏が共和党の指名を得る可能性が高いことについて「米国の内政問題だ」と述べ、それ以上のコメントは控えています。

 

 韓国では、米国の軍事力によって不当に保護されているというトランプ氏の見方が波紋を呼んでいます。韓国には28500人の米軍兵士が駐留し、北朝鮮からの攻撃に対する防衛協力体制を築いています。

 

 韓国外務省のある高官は、自国の外交政策を説明し、スムーズな意思伝達を確実にするため、トランプ氏を含む大統領候補者の各陣営との接触を試みていると明らかにしました。

 

 韓国の中央日報は4日付の社説で、米軍が韓国から撤退する可能性に備えなければならないとし、トランプ氏が中国製品に関税を課すと公言していることが貿易摩擦に発展する可能性もあると述べました。

 

 トランプ氏はこれまでに、米国が日本や韓国を防衛する体制を終わらせ、両国の核武装を認めるべきだとの考えを示しています。

 

 シンガポールにあるISEASユソフ・イシャク研究所の東南アジア諸国連合(ASEAN)研究センターを統括するタン・シェウ・ムン氏は、環太平洋経済連携協定(TPP)の行方が懸念されると話しました。「日本もベトナムもマレーシアもTPPを成功させるために国内で多大な政治資本を費やしてきました。米国が退けば、各国と米国との二国間関係に深刻な影響が及ぶだろう」と述べています。

 

 アジアにもトランプ氏の味方はいます。マニラには56階建ての新「トランプタワー」が今年中に完成する予定。ここで働くフィリピンの建設作業員や警備員は、テッド・クルーズ上院議員(テキサス州)などを相手に繰り広げてきた候補指名争いについて何も知らないながら、トランプ氏へ力強い支持を表明しました。現場監督のジェリー・ガルシア氏は「トランプ氏が勝てばフィリピンにとって好ましいこと請け合いだ」とし、「われわれは皆、トランプ氏が好きだ。彼の息子たちもここを訪れたことがある」と語っています。(ソースWSJ

2016年5月 9日 (月)

トランプ氏、本選挙での勝算は?

米大統領選に向けてインディアナ州で行われた共和党予備選で実業家のドナルド・トランプ氏が圧勝し、テッド・クルーズ、ジョン・ケーシック両氏が指名争いから撤退しました。その結果、11月の本選はトランプ氏と民主党のヒラリー・クリントン氏の対決になることがほぼ確実となりました。

 

 果たしてトランプ氏はクリントン氏を破り、大統領の座を手に入れることができるのだるのでしょうか?

 

 トランプ氏と戦ってきたクルーズ氏とケーシック氏は、トランプ氏は不支持率が高く、評価が真っ二つに分かれているため、本選では勝てないと主張してきました。共和党上層部の多くもそうした見方をしています。

 

 まず、州ごとの優劣をみてみると、共和党にとっては誰が候補になっても厳しい戦いになりそうなことが分かります。

 

 1992年以降、民主党候補は18州とワシントンDCで常に勝利し、大統領選で勝利するために必要な選挙人270人のうち、242人を確保してきました。これに対し、共和党候補は13州で勝ち続けていますが、選挙人の数では102人にとどまっています。

 

 クック・ポリティカル・リポートの集計では、現段階で固めている選挙人の数は民主党が217人、共和党は191人とみられています

 

 そのため、トランプ氏が勝利するにはこの勢力図を大幅に塗り替える必要があります。08年と12年の大統領選でオバマ氏が勝利し、今も民主党が優勢なコロラド、バージニア、ネバダ、ニューメキシコなどを奪うだけでなく、1980年代以降共和党が勝ったことのないミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンなどでも勝利しなければならないのです。

 

 ではトランプ氏にこうした勝利をものにするだけの勢いがあるのでしょうか。

 

 現段階で本選の票読みをしてもあまり大きな意味はありませんが、トランプ氏にとって幸先がいいとは言えません。リアル・クリア・ポリティックスが算出した全米世論調査の平均では、085月初旬にはオバマ氏と共和党のジョン・マケイン候補は接戦、12年にはオバマ氏がミット・ロムニー候補をわずか3ポイント上回っていただけえした。これに対し、今回はクリントン氏がトランプ氏を6ポイント超リードしています。

 

 一方、WSJNBCニュースが共同で実施した直近の世論調査では、クリントン氏に否定的な人の割合は56%。肯定的な人の割合は3分の1弱でしたが、トランプ氏では否定的な人が65%、肯定的な人は4分の1未満でした。有権者の間で否定的な見方がここまで高い候補者同士が本選を戦ったことはありません。

 

 トランプ氏は白人の労働者階級、その中でも主に男性から圧倒的な支持を受けて躍進してきましたが、高学歴の女性やマイノリティからの支持確保に苦労しています。そのため、トランプ氏が中西部で勝てば本選で勝利できるとの見方もあります。

 

 しかし、世論調査の結果を見ると、それも容易ではなさそうです。ペンシルベニア州で先週行われた予備選前の世論調査によると、トランプ氏の支持率はクリントン氏を15ポイント下回っていました。ミシガン、ウィスコンシン両州で最近行われた世論調査でも、トランプ氏はクリントン氏を大幅に下回っています。確実に勝利が必要なフロリダ州でも大きく引き離されています。

 

 激戦州のうち中西部を除いて08年と12年の大統領選でオバマ氏が勝利した州全てがクリントン氏支持に回った場合、トランプ氏が中西部で勝利すれば大統領選に勝てるだろうか。その可能性はあります。トランプ氏がペンシルベニア、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシンで勝利すれば、ちょうど270人の選挙人を確保できます。しかし、共和党候補がそこまで圧勝したのは1984年に1州を除いて全てで勝利したロナルド・レーガン氏が最後です。

 

 予想機関は何と言っているのでしょう。プレディクトワイズが賭けのオッズや世論調査などに基づいて集計したところ、民主党候補が本選で勝利する確率は現段階で70%となっています。(ソースWSJ

2016年5月 8日 (日)

米国で根強い人気の「ガラケー」最新事情!

ハイテク業界が容易に認めないもの、それは「スマートフォンを使わなくても問題がない」ということです。

 

 実際、米国では折りたたみ式やキャンディーバー型など、2000年代に逆戻りしたような端末を購入する人々が増えています。調査会社IDCによると、2015年の米国では、いわゆる「ガラケー」の出荷台数が2420万台となり、前年から200万台近く増加しました。

 

 ラダイト(19世紀初頭の英国で機械化に反対した労働者組織)ぶった人たちが整えた口ひげに合わせるため、スマホならぬ「ダムフォン(スマートでない電話)」に移行しているわけではない。私は毎週、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の読者からシンプルな携帯電話を紹介してほしいといったメールを受け取る。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」が登場してから9年たつが、まだ「スマホが全ての答えだ」という新たな教義を信じていない米国人が7人に1人ほどいるのです。

 

 現在、米国で購入できるガラケーはイライラするほど少ない。この1週間、私はアプリを脇に置き、いくつかのガラケーで生活してみました。タッチスクリーンの光を浴びている人がスマホを完全に絶つのは容易ではありません。私は仕事の行き帰りや支払い、食事の検索など、驚くほど多くの基本的な生活をiPhoneに頼っています。

 

しかし、「スマホ断ち」をした瞬間から、集中力が上がり、リラックスした気分になり、携帯を充電する回数も随分減りました。

 

 ガラケーに信頼を寄せる人を探すのは非常に簡単で、あまりカネがない人、安全を重視する退職者、緊急事態に備える家族、テクノロジーに頼らない専門家などがそうです。

 

ガラケーの最大の魅力は低いコストです。最も人気のあるスマホなら端末価格が最低でも650ドル(約69000円)かかり、これに利用料が月80ドル加算されます。一方、ガラケーなら最低7.50ドルで済みます。これは中国の通信機器メーカー、中興通訊(ZTE)の「Z222」モデルをベスト・バイで購入した場合の端末価格です。この端末を使う際にATTのプリペイドサービスを利用しましたが、料金は月30ドルでした。

 

 基本的な機能だけを求めているなら、恐らく韓国のLGエレクトロニクス製がいいでしょう。LGは通信キャリア大手のガラケー商品ラインアップを独占しているからです。もしダムフォンを買う必要が生じれば、私はベライゾン・ワイアレスが扱う50ドルの「LG Revere 3」を選ぶでしょう。ボタンとメニューがシンプルだからです。そしてATTは同じく50ドルの「LG B470」を、ATTの子会社クリケット・ワイアレスは30ドルの「LG True」を販売していますが、これらには音声を聞きやすくする「シニア・モード」が付いています。

 

 こうしたガラケーでも十分通話ができ、簡単に電話番号を打ち込んだり連絡先を探したりできます。スマホを上回る音声の質は期待できませんが、マイクが口の近くにあるので問題なく通話ができます。どのモデルを選択しようが、第3世代(3G)ネットワークに対応していることを確認しましょう。通信キャリアによると、3Gはもうしばらく存続するはずだといいます。

 

 スマホにできてガラケーにできないことを列挙するのは簡単です。ただ、私のiPhoneでは不可能で、全てのガラケーができることもあります。私は充電器から逃れられるという至福の時間を過ごしました。ガラケーなら1回の充電で数週間、最長で15日持ったからです。

 

 単3電池を入れるだけで利用できる携帯もあります。キャンディーバー型の非常用携帯「スペアワン」(50ドル)は、充電手段がないときに備えて車のトランクや防災キットの中に入れておける。これは通話用でテキスト送信には向いていませんが、GPS(衛星利用測位システム)を利用して緊急連絡先にテキストメッセージやメールを送るボタンを設定することができます。

 

 また、ガラケーは耐久性にも優れています。iPhoneならスクリーンが粉々になるような場所に最も安いガラケーを落としても、跳ね返ってくるだけでしょう。非常に活発あるいは非常に不器用なユーザー向けに作られた頑丈なモデルがあります。私は韓国サムスン電子の「Convoy 4」と京セラの「DuraXE」を約1.2メートルの高さからコンクリートの地面に落としてみたが、かすり傷さえつきませんでした。これらは他のモデルよりもかさばります、衝撃や気温、水、放射線への耐久性は軍の規格を満たしているといいます。

 

ただ、完全に満足しているわけではありません。タッチスクリーンがない時代に設計されたため、多くのガラケーには混乱しそうなほどのボタンが並んでいます。私は親指を鍛え、素早くテンキーで文字入力を行ってメッセージを作成しました。これは私が2003年に習得した技術ですが、今では非常に苦痛です。

 

 ガラケーに搭載されているカメラは低品質で、インターネットを閲覧できるにしても、その用途には限界があります。どちらかの機能を求めるなら、スマホを購入する方がよいでしょう。また、絵文字を見たり送ったりすることはできず、せいぜい旧式の絵文字で行き詰まるだけです。

 

 最も重要なのは、スマホがなければ家族やあらゆる年代にとってのライフラインとなる、極めて重要なツールにアクセスできないままとなることです。ここには「iMessage(アイメッセージ)」や「スカイプ」、音楽ストリーミング、そして「ウーバー」などの配車サービスが含まれます。スマホ断ちをした私は、すっかり友人に頼り切るようになってしまいました。

 

全てのガラケーが2004年から進化をやめたわけではありません。最大級の再発明品で、私のお気に入りはグレートコール社が投入したばかりの「Jitterbug Flip」(75ドル)です。シニア層をターゲットにしたこの商品は、シンプルさを追求しています。特大のキーと明るい画面だけではなく、そこでは小さなアイコンを忙しくタップする代わりに、非常に明瞭なテキストで表示されたメニューに「YES」か「NO」で応答するだけで良いのです。難癖を付けるとすれば、ロック画面にもメーン画面にもバッテリー残量が表示されないことです。Jitterbug Flipには他のガラケーよりも先進的な技術が使われているため、恐らく毎日充電したくなるかもしれません。

 

 実を言うと、Jitterbug Flipは最新の第4世代(4G)データネットワークで稼働するスマホとも言えます。進んだサービスのおかげでシンプルさも磨き上げられ、「0」ボタンを押すとオペレーターなどにつながり、端末の使い方を教えてくれます。そればかりか、あなたに代わってあなたのアドレス帳に追加登録することまでできるのです。月25ドルで「5スター」と呼ばれる医療コンシェルジュなど支援サービスが受けられるのです。

 

 ガラケーが安さを意味する必要はありません。スイスのプンクト社が販売する「MP01」の価格は、私が試したダムフォンの中で最も高い295ドルです。この商品は世界的デザイナーのジャスパー・モリソン氏がデザインし、オンラインで販売されています。これも心の乱れに対処する究極の一品で、電子書籍端末「キンドル」の電話版です。カメラやインターネット接続機能は一切付いていません。1回の充電で4週間待機できき、誰かが電話やメールを送ってくれば、やさしい鳥のさえずりでユーザーに知らせてくれるのです。(ソースWSJ

2016年5月 7日 (土)

アップル、何が株価に弾みをつけるか!

米アップルの最近の株価急落は、同社が単にiPhone(アイフォーン)だけでなく、それ以上のものを必要としていることを示しています。しかし腕時計型端末「Apple Watch(アップルウオッチ)」は、アップルが事業の多様化に苦戦していることを物語っています。

 

 アップルの初代ウオッチは1年前に発売されました。同社は売り上げの詳細を開示していませんが、過去4四半期の決算を見る限りこれが大ヒットも大失敗もしていないことは明らかです。

 

 ウオッチはアップルの「その他の製品」に含まれます。326日までの12カ月に同部門の売上高は53%急増しました。その他の製品にはケースやヘッドフォンなどのアクセサリに加え、携帯音楽再生プレーヤー「iPod(アイポッド)」も含まれるますが、売り上げの伸びの大部分はアップルウオッチがもたらしています。

 

 アップルウオッチの売り上げに関しては様々な推計がありますが、アナリストの大半は過去4四半期の販売台数を1100万〜1500万台とみている。これは、iPhoneおよびタブレット端末「iPad(アイパッド)」の1年目の販売台数を超えています。

 

 しかし、時価総額で世界最大のアップルにおいて、ウオッチ事業は業績の伸びにほとんど貢献していません。その他の製品部門が12カ月売上高に占める割合はわずか5%で、前年同期は4%だったのです。

 

 この観点から見れば、ウオッチはアイポッドの穴を埋めているだけのように見えます。アイポッドによる業績への寄与は2006年にピークの40%をつけて以来、低下の一途をたどっているのです。

 

 アップルの投資家にとって、小幅な成長は買い材料とはなりません。少なくとも、アイフォーン事業が苦戦している時はそうです。

 

 アップル株は、先週発表の1-3月期決算でアイフォーンが今秋にかけても低調にとどまる見通しが確認されてから10%下落しました。韓国サムスン電子の新携帯電話の販売が比較的好調となったことや、アクティビスト(物言う株主)のカール・アイカーン氏がアップル株の保有比率を引き下げたことも重しとなりました。

 

 アップル株は8日間にわたり下げ続け、約2年ぶりの安値をつけています。これを受けて、ティム・クック最高経営責任者(CEO)は2日に異例のテレビ出演を行い、同社の業績を擁護しました。

 

 短期的に成長を回復するにはアイフォーン事業を再び勢いづける必要があります。しかし、ウオッチのような新製品を改善することも長期的には重要となります。簡単に言えば、売上高のバスケットにより多くの卵が必要だということです。

 

 幸いにも、アイフォーンとアイポッドも発売当初は比較的小さな事業で、弾みがつくのに数年かかっています。そのため、ウオッチをこの時点で失敗だと決めつけるのは時期尚早に思われます。

 

 アップルはこれまで以上に新たな取り組みを推進しなければなりません。(ソースWSJ

2016年5月 6日 (金)

今のハイテク・バブル、間もなくはじける!

2000年初めにドットコム・バブルがはじけた際、上場株への影響はすばやく、深刻なものでした。ハイテク株の比重が高いナスダック総合指数は、同年310日にピークを付けた後の10週間で37%下落しました。

 

 新興企業では直接の影響はそれほど大きくありませんでした。ベンチャー・キャピタル(VC)の新興企業への投資額は、004-6月期(第2四半期)に250億ドル(約27000億円)となり、1-3月期のピークに比べ5%減にとどまりました。

 

 当時、米電子決済サービス会社ペイパル・ホールディングス副社長を務めていたキース・ラボイス氏は、「3月と6月の間は懐疑的な見方が一時的に後退しただけだ」と振り返っています。ラボイス氏は現在、コースラ・ベンチャーズでパートナーを務めています。

 

 ラボイス氏などは今の状況が当時と似ていると考えています。新興企業への投資が冷え込み、バリュエーションが低下しているのです。ラボイス氏によると、投資家や起業家の多くがそれでも新たな現実をまだ理解していないといいます。同氏は再び懐疑的な見方が浮上すれば「大混乱が生じる」とみています。

 

 そうはいっても今と当時の状況はそれほど類似していません。ナスダック指数は昨年からの7カ月間下落傾向が続いていましたが、今年の2月初旬に底値を付けて以降12%上昇しています。

 

 418日時点では00年以降の高値に比べた下落率は5%以内にとどまっています。新規株式公開(IPO)はほとんど姿を消しましたが、VCファンドの資金調達額は1-3月期に記録的な水準を付けました。

 

 しかしラボイス氏はVCによる資金調達が記録的な水準になっていることは実際には弱気サインだと述べています。ラボイス氏は厳しい時期が迫っており、VCがそれを知っているからだと説明しています。

 

 ラボイス氏は、VCの資金調達理由の1つは実際に資金を必要としているのでなく、自社独自の測定基準が緩くなっている今の時期、ポートフォリオ内の企業が倒産する前に資金を確保しておきたいからだと説明しました。新興企業の中でも同様の戦略をとるところがあるといいます。

 

 株式非公開企業のバリュエーションは少なくとも145社で10億ドルを超えています。VCからの資金はここ数年、大量に流入していますが、こうした企業の経営幹部はライバルに打ち勝つ、あるいは採用増強などの目的で採算を度外視して支出してきました。しかし今は、自立するためコストを大幅に削減するか、一段と厳しい条件で追加の資金を調達するかの難しい選択肢を迫られています。

 

 バーンレート(資本燃焼率)の高いこうした企業の一部が混乱に陥っている状況を受け、ラボイス氏は「破壊的な状況」が迫っていると予測しています。さらにこれが有望な企業への一時的な投資でなく、新興企業への投資全体にまで言えると述べています。理由としてVCが普通に考えられているよりも相互の依存度が高いことを挙げています。

 

 投資家が1社で問題に直面すれば別のバリュエーションの高い企業への投資には消極的になると考えられます。VC業界内で口コミが広がれば他の投資家も慎重姿勢に転じるでしょう。VCも他の市場同様、金もうけの欲と恐怖の間で板挟みとなっているのです。

 

 一部の企業ではその予兆が出ています。ビデオ通話アプリの「タンゴミー」やモバイルゲーム会社カバム、ウエアラブル端末メーカー、ジョーボーンの親会社は最近、レイオフを実施しました。これらの企業は全て評価額が10億ドルを超えています。ダウ・ジョーンズ・ベンチャーソースによると、VCの支援を受けた企業で評価額が10億ドルを超えた88社のうち、この7カ月で最高経営責任者(CEO)が交代したのは9社に上りました。

 

こうした企業の中で最も注目が高いのが米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズです。ウーバーの評価額は現在625億ドル前後。ウーバーは一部の基準でみると北米事業の採算が取れていると主張しているものの、中国などの海外では市場シェアを伸ばすため巨額の投資を行っています。

 

 もし、評価額の最も高い新興企業であるウーバーさえも野心を捨てなければならない場合、その影響は金融システム全体に広がる恐れがあります。

 

今の新興企業の弱さが正確にいつ、これまで目にしたよりもさらに大きな評価額の修正をもたらすかを予測するのは不可能です。なぜなら金融システムと同時に群集心理に関わってくるからです。

 

 ヘミングウェイは自身が破産した際、破産が「徐々に、そして突然」やってきたと表現しています。企業もヘミングウェイの表現と同じように倒産していく恐れがあるのです。(ソースWSJ

2016年5月 5日 (木)

フェイスブックが市場を生み出す時代!

経済学者のジェームズ・ベッセン氏によると、平均的な食料品店が扱う商品の数は80年前の約50倍になっている。調査会社ミンテルによると、食品から化粧品まで毎年発売される消費財の新商品の数は過去50年で30倍以上に増えました。

 

 これは1世紀におよぶ生産性の向上や富の拡大、生産・サプライチェーン管理の進化のたまものです。しかし近年、このトレンドを大きく後押ししているもう1つの要因がある。フェイスブックです。

 

 つまり、新興企業が市場に足掛かりを築く上で役立つテクノロジーは他にもあります。ドロップシッピング(販売者が在庫を抱えるのではなくメーカーや卸元から直接購入者に発送するネット通販形態)や注文生産のほか、インターネット自体もそうです。しかし、製品に対する興味をかき立て、それを売り上げに変えることができなければ、それらのテクノロジーは何の意味も持ちません。つまり、商品に対する市場がなければ、どんなビジネスも存在しない。フェイスブックは検索や口コミや従来型の広告を超えて、前例のない方法で市場を生み出しています。

 

 男性用衣料品会社チャビーズの創業者、トム・モンゴメリー氏は「フェイスブックは今日、小売業者を差別化する巨大な要因の1つになっている。フェイスブック以前は、何か良い物を見つけても800人の友人に教える手段はなかった」と話しています。

 

 フェイスブックには2種類の力があります。1つは口コミ、つまり新製品への個人的な支持を大勢に伝える力。もう1つはターゲット広告です。新興企業にとってフェイスブックは他に類を見ない広告エンジンであり、グーグルさえも上回ります。グーグルの強みは製品に興味を示した人にターゲットを絞れることにあるのです。一方、フェイスブックが自負しているのはユーザーを熟知し、ユーザーが興味を持ちそうなものを予測して表示できる点です。

 

フェイスブックに依存する企業によると、同社の広告はレーザー並みの精度でターゲットを絞れるといいます。モンゴメリー氏は「当社は現在フェイスブックで約50のオーディエンス(ターゲット層)を標的にしているが、重複は一つもない」と話します。一例が、2125歳のサーフィンに関心を持つカリフォルニア州在住者というターゲット層です。「他ではこれほどの精度で広告枠を購入することはできない」とモンゴメリー氏は指摘します。

 

 放送媒体が広告を圧倒していた時代は、自社の製品を宣伝できる余裕があるのは大手ブランドだけでした。しかも、製品を広い視聴者に訴求する必要があったため、広告枠の購入コストによって毎年市場に投入できる製品の数は限られていました。英蘭系食品・日用品大手ユニリーバに28年勤めたジェイ・コンテッサ氏はそう話します。

 

 コンテッサ氏は現在、新繊維洗濯用のハイテク洗剤を開発するHEXパフォーマンスの最高経営責任者(CEO)を務めています。5年前、10年前であれば、洗濯洗剤は大手に支配され、HEXに入り込める見込みはなかっただろうとコンテッサ氏は話しています。しかし今は新興企業でも、顧客が自分たちの製品を購入する可能性を実証できれば陳列スペースを確保できるのです。HEXはそのようにして小売り大手ターゲットやウェグマンズ・フード・マーケッツに製品を置いてもらうことに成功したのです。

 

 チャビーズはオンラインのみで営業する小売業者で、HEXは競争の激しい実店舗の世界で争う小売企業です。しかし、いずれもフェイスブックのターゲット技術に頼っています。チャビーズは大学の男子学生社交クラブに所属する人たちに狙いを定めることができます。一方、HEXは同社製品を扱う店舗から16キロ圏内に住む高所得者層をターゲットにできます。

 

 コンテッサ氏は「われわれは消費者が何を食べ、何が好きで何が嫌いかを理解し、ターゲットを絞っている。ソーシャルメディアのおかげで競争できている」と話します。

 

 このトレンドは以前にも目にしています。ワイアード誌の元編集長クリス・アンダーソン氏はメディアとエンターテインメントに関する記事で、このトレンドを「ロングテール」と呼び、大手映画会社であれば制作しなかったかもしれませんが、ネットを介してニッチなオーディエンスを見つけられる可能性のあるコンテンツについて触れています。

 

 ネットは消費者をより売れ筋商品に集中させることになるため、ロングテール理論は成り立たないとの反論もあります。皮肉にも、ロングテールの例えは、非物理的な商品よりも物理的な商品とそれを生産する新興企業により的確に当てはまります。

 

 調査会社ミンテルで消費財市場を担当するリン・ドーンブレイザー氏によると、1980年以降、消費者はより小規模の、より多くのブランドから製品を購入するようになり、上位20メーカーが支配する販売シェアは着実に減少しています。一方で、市場投入される消費財は年々増えています。

 

 ミンテルのデータでは、このトレンドが2008年にピークに達したかのような印象を受けます。しかし、そうでない可能性があると考えられる理由が2つあります。1つは、企業は流行に便乗するため、新製品の発売回数は一部、循環的であることです。最近の例ではココナツウオーターやケールなどがそれに当たります。もう1つはミンテルも認めていますが、オンラインでしか販売されていない多くの新製品を見逃していることです。特にキックスターターなどのクラウドファンディングサイトを介して販売されている製品は見逃されやすいのです。

 

 ドーンブレイザー氏によると、以前は新製品の発売増加をけん引していたのは、新しいタイプの店の登場でした。1980年代に登場した自然食品やグルメ食品店などがそうです。しかし、2000年代初めからはネットが製品発売をけん引するようになりました。このトレンドの最先端を行くのがフェイスブックです。

 

 今の若い消費者――新製品を最も試してくれそうな人たち――は、ソーシャルメディア(SNS)を頻繁に使用しています。こうした消費者に到達するための最適な手段は依然フェイスブックだとモンゴメリー氏は指摘しています。チャビーズの中核オーディエンスがよく使用するSNSはスナップチャットですが、フェイスブックのような共有機能はありません。SNSの中でも、ユーザーによる媒体の閲覧からコンテンツの共有、製品の購入までを追跡できるのはフェイスブックだけです。フェイスブックはオーディエンスの数も最大です。

 

 われわれはこれまで、多くの新興企業が多くのアプリの開発で成功を収め、生産の簡易化に伴って多くの新興ハードウエアメーカーが登場するのを目の当たりにしてきました。われわれは今、それを新たな場所で目撃しています。

 

 これは巨大コングロマリットの終わりを意味するわけではありません。最終的に大手企業に身売りし、消費財業界からいなくなる新興企業も多いからです。しかし今は、かつてなく複雑化した消費者の嗜好(しこう)を企業が満たすことができる時代になっています。(ソースWSJ

2016年5月 4日 (水)

米国の賃金伸び悩み、経済成長の足かせに!

長年におよぶ雇用者数の堅調な増加も賃金の大幅な伸びにつながっておらず、経済成長の持続的な加速に必要な刺激が抑制されています。

 

 米企業はこの4年、平均して毎月20万人以上の雇用を創出してきました。2012年序盤には8%を超えていた失業率は先月5%まで低下しました。

 

 しかし賃金にはほとんど進展が見られていません。米労働省が29日発表した民間部門の1-3月期賃金・給与は前年同期比2%増にとどまり、12年初め以降の平均に近い水準となりました。

 

 世界の大半の国と同様に、米国経済も低成長から抜け出せずにいます。海外の混乱や依然として低水準のコモディティ価格のため、製造業、貿易、エネルギー業界による成長への寄与が阻止されています。そのため、米国の消費者が景気拡大を主導する立場にありますが、賃金が加速しなければ消費を増やすのは難しいのです。

 

 BNPパリバのエコノミスト、ローラ・ロスナー氏は「引き続き極めて遅々とした進展の軌道にある」とし、「これは賃金の伸びが欠如していることにも表れている」と述べています。

 

 エコノミストは米国内総生産(GDP)が0.5%増と期待外れのペースになった冬季からはいくぶん加速するとみているものの、今春も景気が大幅に改善するとは期待していません。調査会社マクロエコノミック・アドバイザーズは4-6月期GDP2.1%増と予想していますが、これも低調な景気拡大のペースに戻るだけです。

 

 米労働省によると、全労働者の福利厚生を含む報酬は前年同期比1.9%上昇しました。米連邦準備制度理事会(FRB)当局者らは、この指標を労働コスト上昇の兆候として注目しています。

 

 同指標は総合インフレ率を一貫して上回っています。米商務省がこの日発表した3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.8%上昇でした。しかし、200207年には報酬の年間上昇率が3%を超えており、報酬の伸びは前回の景気拡大局面に比べると小幅にとどまっています。

 

 いくつかの要因が賃金上昇ペースを抑制しているのです。

 

 失業率は労働市場のスラック(余剰資源)を完全に反映していない可能性があります。一部の中高年の労働者とリセッション(景気後退)下で職を失った人が最近、労働人口に再度加わりました。すでに雇用されていた労働者が賃上げを要求しにくいのはこれが原因です。

 

 また、BNPのロスナー氏によると、サービス関連企業の多くでは生産性向上ペースは低いままで、雇用主はごくわずかな賃金上昇であっても割高過ぎるとの印象を持つようになっています。インターネットやコールセンター経由で海外から簡単に調達できるサービスの存在を受けた世界的なコスト圧力が一部反映されていると、ロスナー氏は説明しました。

 

 賃金の伸びの鈍さは、消費動向が精彩を欠いている理由の少なくとも一つです。商務省が29日発表した3月の個人消費は前月比0.1%の増加にとどまり、インフレ調整後ではここ3カ月2度目となる前月比横ばいだったのです。一方で貯蓄は消費を上回るペースで増えており、消費者の信頼感が覚束ない状態にある可能性を示唆しています。

 

 IHSのエコノミスト、クリス・クリストファー氏は「好評価を得た雇用統計が出ているにもかかわらず、株式市場の不安定とガソリン価格の上昇のせいで、消費者のマインドと支出はこのところずっと低調だ」としました。ただ、「株式市場が混乱しない限り、4-6月期の個人消費は1-3月期から大きく改善する確率が高くなる」として、4月の個人消費はより力強い内容になるとの予想を示しました。(ソースWSJ

2016年5月 3日 (火)

仮想現実、最大の受益者はソニーか!

このところ話題を呼んでいる仮想現実(VR)は不格好で高価なため、消費者の本流を引き付けることはできないと思います。しかし、VRを推進する企業にとっては、VRが増収増益に寄与する可能性があります。

 

 よく知られているように、VRを好むのはマニアしかいません。何しろ、大きくて重いヘッドセットを装着し、ケーブルを介してパソコン(PC)に接続して使用する必要があります。ヘッドセットをかぶったままでは周囲を見ることができないため、日常的に使用するには不便ということもあります。しかも、ヘッドセットの値段は高く、フェイスブック(FB)の「リフト」は599ドルで、携帯電話機メーカーHTC2498.台湾)の「Vive(バイブ)」の価格はさらに200ドル高くなっています。さらにヘッドセットの他に、グラフィックスとオーディオ処理を担う高性能PCを用意する必要もあります。VRの主な購入者は、出費と不便さに耐えられるビデオゲーム愛好家でしょう。

 

 ただし、たとえVRの売れ行きが限定的であったとしても、VRが一部企業の業績を上振れさせる可能性はあります。リフトが発売されてから12カ月間の販売台数に関するアナリスト予想は50万台から200万台で、後者ならフェイスブックは12億ドルの増収を記録します。それを予想しているアナリストによると、同社は他にもゲームソフト販売で1億ドルから3億ドルを売り上げる可能性があるといいます。

 

 リフトが当初から利益を生むかについてフェイスブックはコメントしていませんが、同社経営陣のこれまでの話しぶりから判断すると、リフトは損益ゼロでしかないようです。ゲームソフト販売がある程度の利益をもたらす可能性があるため、リフトとゲームソフトを合わせた収支は若干の黒字となる一方、全体的な粗利益率を押し下げる見通しです。

 

•強気派はソニーの25%増益を予想

 

 VRの最大の受益者はソニー(6758)かもしれません。同社が今秋の発売を予定しているヘッドセット、「プレーステーションVRPSVR)」は399ドルと他社製品よりも低価格です。リフトがPCを必要とするのに対し、PSVRはゲーム機のプレーステーションとともに使用します。

 

 ジェフリーズのアナリスト、アチュル・ゴヤル氏はソニーの投資判断を「買い」としており、PSVRが業績に大きく寄与すると指摘。同氏はプレーステーション利用者の15%がPSVRを購入するという想定に基づき、その販売台数が発売から2年間で年1000万台に達すると予想しています。さらに同氏はさまざまな調査に基づき、PSVRの採算が発売当初から黒字となり、発売から2年目には1台当たりの粗利益が50ドルに達すると試算しています。

 

 加えて「触れる」感覚を提供するコントローラーなど、付属品の売り上げが見込まれ、さらに、ゲームソフトの販売が増えてソニーのロイヤルティ収入が増えることも予想されます。

 

 ゴヤル氏の試算では、販売台数を年間1000万台と想定し、さまざまな恩恵を総合すると、ソニーの粗利益は年間125000万ドル増え、営業利益は62500万ドル増えると予想されます。同社の20163月期の予想営業利益が26億ドルであることから、PSVR25%の増益をもたらす可能性があるわけです。

 

•エヌビディアとクアルコムにも追い風

 

 エヌビディア(NVDA)はPC用の高性能な画像処理半導体を製造しています。リフトやバイブは高性能PCを使用することから、VRPC市場におけるエヌビディアの売り上げを押し上げる可能性があります。同社は現在、HTCのバイブに対応したゲーム用グラフィックス・カードも販売しています。

 

 よりシンプルな形のVRとして、スマートフォンに安価なアダプターを組み合わせる方法もあります。その一例が、サムスン電子(005930.韓国)が100ドルで販売している「ギアVR」です。負荷のかかる画像生成は、スマホに組み込まれたクアルコム(QCOM)のモバイル用半導体が担います。VRの臨場感を高めるためには数多くの技術革新が必要であり、そこにクアルコムのビジネスチャンスがあります。

 

 いつの日か半導体の進歩により軽くて洗練された低価格のVRヘッドセットが登場し、誰もが使いたいと思うようになるかもしれません。しかし、それは遠い先のことであり、今のところVRはニッチ市場でしかないのです。ただし、一部の企業にとっては価値あるニッチ市場となる可能性があります。(ソースWSJ

2016年5月 2日 (月)

豪次期潜水艦計画、日本案葬った中国の圧力!

オーストラリアのターンブル首相は26日、次期潜水艦12隻の共同開発先としてフランス企業を選定したと発表しました。契約額は総額400億ドル(約44500億円)で、オーストラリア史上最大規模の軍事契約となります。日本は敗れ、中国の軍事的台頭に直面する太平洋沿岸の主な民主主義国間で協力を深める機会が失われました。

 

 ターンブル首相は、「フランスの提案は(長距離の移動が必要になるといった)オーストラリア独自のニーズに最もふわさしい」とする防衛当局の「明確な」推薦に基づいて決定を下したと述べました。フランス国営の防衛大手DCNS5000トン級の原子力潜水艦「バラクーダ」をベースに、動力をディーゼルに変更した4500トン級の潜水艦を建造します。推進装置も従来のスクリューから騒音の少ないポンプジェットに変更されます。

 

 オーストラリアでは7月に総選挙が迫っていることもあり、次期潜水艦計画が国内の雇用にどれだけ貢献するかも重要です。ターンブル首相は、国からの補助金削減で自動車工場の閉鎖に直面している激戦区を中心に、「オーストラリアの労働者がオーストラリアの鋼材でオーストラリアの潜水艦を建造する」ことを約束しています。ジョンストン国防相(当時)が2014年に国営造船会社のASCには「カヌー造り」さえ任せられないと発言してから、労働組合は神経をとがらせています。

 

 しかし入札参加者はいずれもオーストラリアでの潜水艦建造に同意していたため、フランスが日本に勝ったのは雇用問題が理由ではありません。オーストラリアの関係筋によると、日本案は一部のスペースが不十分だったほか、日本は2年前まで複雑な軍事技術の輸出を禁止していたため、こうした技術に関する企業幹部や当局者の経験が不足しているといったさまざまな問題があったといいます。

 

 しかし、ターンブル首相の決断に最も大きな影響を与えたのは、オーストラリアにとって最大の貿易相手国で、日本の参加に公然と反対していた中国だったかもしれません。中国の王毅外相は2月、日本の武器輸出の野望は「平和憲法を守って」いないことを意味するとし、第2次世界大戦を思い出し「アジア諸国の感情を考慮するよう」オーストラリア外相に求めました。

 

 中国政府が懸念している理由は明らかです。日本案が採用されれば、オーストラリアと日本の関係が強まるうえ、オーストラリアの次期潜水艦は米国製の戦闘システムと魚雷を搭載することから、オーストラリア海軍、日本の海上自衛隊、米国間の相互運用性が高まるためです。さらに日本が潜水艦の輸出大国になるのを支援することになっていたでしょう。

 

 ターンブル首相が中国を訪れ、オーストラリアがコモディティー(商品)への過度な依存を減らす上で中国市場は重要だと持ち上げてから1週間後にフランス企業の選定を発表した意味を日本は理解できます。アボット前首相は、特に日本が強く訴えた「戦略的な」理由から日本案を支持していました。この理由をターンブル政権はあまり重視していません。

 

 オーストラリアと日本で多くの人が強調しているように、オーストラリアが今までより防衛のことを真剣に考えており、日本との協力強化が必要という意見が今も大勢を占めていることは朗報です。オーストラリアは潜水艦の数を12隻に倍増させるほか、向こう10年間で防衛費を約230億ドル増やす計画です。

 

 オーストラリアの潜水艦契約は、中国の海洋進出がアジア諸国の反発を招いていることを浮き彫りにしています。シンガポールやベトナム、インドネシア、マレーシアなども潜水艦の近代化を進めています。次にその必要性を検討するのは米国かもしれません。米海軍は攻撃型潜水艦の数を2028年をめどに現在の52隻から41隻に減らす計画を立てているにもかかわらず、ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は先ごろ、「潜水艦が不足している」と警鐘を鳴らしました。広大なインド洋・太平洋の海上交通路をいつでも使えるようにするには民主主義国間の協力――そして潜水艦の艦隊が必要なのです。(ソースWSJ

2016年5月 1日 (日)

トランプ氏、外交政策演説でも矛盾ばかり!

26日に行われた東部5州の予備選で全勝し、米大統領選に向けた共和党候補の指名獲得に大きく近づいたドナルド・トランプ氏。彼は自身の政策論をかしこまった演説で説き始めています。また言動にも磨きをかけ、より威厳のある印象を醸し出そうとしています。トランプ氏は翌27日、外交政策に関する演説を行いましたが、この演説に対する「トランプ大学」の成績は課題未提出による「評価保留」でしょう。

 

 トランプ氏はワシントンで行った演説で、「アメリカファースト(米国優先)が私の政権の最大かつ最重要テーマになる」と述べました。同氏は「外交政策の新たな方向性」を打ち出しました。それは「でたらめな思いつきを目的で置き換え、イデオロギーを戦略で置き換え、混乱を平和で置き換えるものだ」と説明しました。この実業家は同じ原則が自身の演説集会や、いいかげんな選挙戦にも当てはまるのかどうかについては言及しませんでした。

 

 5000語に及ぶ演説は具体性に欠けていました。彼自身の尺度ではなく、通常の政治的な尺度に照らしてのことです。中核となるモチーフは(トランプ氏のあらゆる政治的な考えがそうだが)問題を解決する脳みそと強さを持ち合わせているのはこの実業家であって、他はすべて惨めな負け犬だというものです。よって、自分の直感と気性を信じろと説く。トランプ氏は「解決方法を知っている唯一の人間は私だ。信じてほしい、私はそれを分かっている」と言いました。

 

 トランプ氏の直感は確かに、時に建設的な方向に進むこともあります。米国の安全保障と国益に対する極めて重大な脅威として、世界で進む秩序の乱れを指摘したのは正しい。トランプ氏は、オバマ大統領が「われわれの友人を嫌い、敵に頭を下げている」と言ったが、これは大げさな表現ではあるものの現実を捉えています。

 

 オバマ氏の「背後から導く」哲学は同盟諸国を混乱させ、その多くは米国を当てにすることはできないと結論づけました。一方、中国やロシア、イランのような敵国はそれぞれの地域で覇権国家としての地位を強めようとし、オバマ氏の意志を試しています。

 

 同盟関係を再構築すれば、友好国からより多くが期待できるはずだという点でもトランプ氏は正しい。彼はまた欧州の安全を守るために米国が担っている負担は不均衡だとも指摘しました。たとえ米国の前方展開(としての欧州)が攻撃的な独裁主義者たちを阻止することで、米国の安全を守っているとしてもです。

 

 トランプ氏はオバマ氏が世界への関与を弱めたことによる結果を批判する一方で、より良い成果をもたらす可能性のある国際的な関与をも激しく攻撃しました。

 

 具体策は言わずに「われわれにはイスラム過激派の拡散を阻止するための長期的な計画が必要だ」と述べる一方、「イラク、リビア、シリアでのわれわれの行動はイスラム国(IS)の拡散を助長した」とも確かに言いました。

 

 米国はイラクに侵攻し、その後で必要以上に撤退しました。リビアでは政権交代を後押しし、その後は立ち去りました。シリアでは介入に失敗しました。イラク戦争に対するトランプ氏の後知恵批判は定番メニューになっています。しかし、シリアで戦争を始めなかったことでオバマ氏は過ちを犯したと思うことも時々あるようです。「キリスト教徒を助けるために、われわれは何もしてこなかった。何もだ」とトランプ氏は付け加えたのです。いったい、どっちだと言いたいのだろうか。

 

 あらかじめ準備された内容にしては、ついでにもっと言えば、夕食後の話題にするにしても、トランプ氏の演説はとりわけ矛盾に満ちています。外交政策の運営は「もっと予測不可能(でなければならない)。われわれは完全に予測可能だ。何もかも教えてしまう」と言ったかと思うと、外交政策の運営は「統制がとられ、慎重かつ一貫性」をもっていなければならないと説いています。

 

 トランプ氏は冷戦終結後の米国の対外方針を、民主・共和両党の大統領をまたいで「次から次へと続く外交政策の災禍」の一本線だと表現しました。これはどうやら、米国は諸外国に対し「経済の力」、つまりトランプ氏の言う「レバレッジ」を発揮してこなかったということが言いたいらしい。

 

 中国や日本、メキシコに貿易戦争を仕掛けるというトランプ氏の脅しは経済的ナショナリストを喜ばせるでしょうが、そうした瀬戸際政策は世界的なリセッション(景気後退)を誘発する可能性が高いのです。米国の国益は優先されなければならないが、そのために何を諦めるかというトレードオフは否応なく複雑なものになります。1930年代以降の両党の大統領たちは、貿易は経済に「純益」をもたらすと結論づけてきました。彼らはまた、旧ソ連崩壊後の「パックス・アメリカーナ(アメリカの覇権)」を維持してきました。これはトランプ、オバマ両氏が軽視しているものです。両氏のどちらも認めたくはないでしょうが、彼らの信念には連続性があります。

 

 トランプ氏は説明資料を注意深く読み込むことで知られているわけではありません(そういう資料が存在するとしての話だが)。それに、政策に関する深い知識が彼の政治的な魅力の源でないのは明らかです。しかし、米国人は通常、相手に対する攻撃的な言い方より、世界の大きな問題に精通している大統領を好むものであるし、ヒラリー・クリントン前国務長官はこの実業家が「最高司令官」にふさわしいかどうかについて果敢に「裁判にかける」つもりでしょう。

 

 トランプ氏は「将来の新たな闘いに勝つ。それは多いかもしれないし、複雑かもしれない。だが、私が大統領になれば、われわれは勝つ」と約束しました。有権者が核兵器を持ったトランプ氏を信頼しなければ、大統領どころか共和党の指名候補にもなれません。だから、矛盾に満ちていたとはいえ真剣な演説は、少なくとも一種の進歩でしょう。(ソースWSJ

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