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2016年2月

2016年2月29日 (月)

アップルのロック解除問題、過半数が政府の味方!

米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」のロック解除を政府が求めている問題で、国民の過半数が政府側を支持していることが、米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターの最新調査で分かりました。

 

 カリフォルニア州サンバーナディーノ郡で昨年発生した銃乱射事件の容疑者が使用していたアイフォーンのロック解除を求める検察当局の訴えを受けて、裁判所はアップルにロック解除に協力するよう命令しましたが、同社はこれを拒否する意向を示しました。

 

シリコンバレーにはアップルの姿勢に同調する大手IT(情報技術)企業の経営者も多くいます。その中にはグーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)やツイッターのジャック・ドーシーCEOも含まれています。彼らは、政府の監視の目からプライバシーを守る戦いで、自分たちはアップル側につくと述べています。

 

 しかし、米国人の過半数は異なる見解を持っています。ピュー・リサーチに回答を寄せた米国人のうち、連邦捜査局(FBI)の捜査に協力するためアップルはアイフォーンのロックを解除すべきだと回答した人は半数をやや上回る51%に達しました。ユーザーの個人情報を守るために、ロック解除に協力すべきではないと回答した人は38%にとどまったのです。11%の人は意見を示しませんでした。調査は1002人の成人を対象に実施されました。

 

 アップルは政府に協力すべきだと回答した人の支持政党別にみると、共和党支持者は56%、民主党支持者は55%で支持政党による違いはありませんでした。

 

 この調査結果はシリコンバレーと一般国民との断層を浮き上がらせました。国民は深く分裂していると回答した人は、どちらのサイドにも同程度いました。

 

 オンライン調査会社サーベイモンキーが先週末に実施した世論調査でも同様の結果となっています。(ソースWSJ

2016年2月28日 (日)

アカデミー賞、俳優も製作者も白人ばかり!

米アカデミー賞授賞式は28日に迫っていますが、多様性、もっと言えばその欠如が米映画業界で今、議論を引き起こしています。業界のリーダーたちはこの問題への対応方法を検討し始めているところえすが、なかなか複雑です。

 

 例えば、コムキャスト傘下のユニバーサル・ピクチャーズは、「ストレイト・アウタ・コンプトン」や「ワイルド・スピード」シリーズといった最近の映画に出演している主演俳優の人種的多様性という点で、他社よりも進んでいると考えられています。それにもかかわらず、映画の製作に関わる同社の幹部たちは、米映画業界の主要製作スタジオ中のどこよりも人種の多様性に乏しいといいます。

 

 アカデミー賞の演技部門の賞にノミネートされたのは2年連続で全員白人な上、プロデューサーや監督までもがほぼ全員白人です。このことが明らかになると、「oscarssowhite(オスカーは真っ白)」というハッシュタグ付きでソーシャルメディアで大騒ぎとなり、米国の大衆文化を代表する映画の俳優や製作者の人種的多様性が、その観客の多様性に比べなぜ低いのかをめぐり論争が巻き起こっているのです。

 

 映画業界自体があらゆるレベルで一段と多様にならない限り、アカデミー賞候補者の多様化は難しいという点では、映画関係者の大半が同意しています。21日に公表された南カリフォルニア大学(USC)の調査で、2014年に公開された109本の映画の主演俳優のうちマイノリティー(人種的少数派)は22%だったことが分かりました。またこの映画のうち、監督が白人以外だったのは13%に過ぎなかったのです。

 

米国映画協会(AFI)によると、同年の映画館入場者のうち白人以外の人々は46%でした。また、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の分析によると、7大映画製作会社の全米公開映画で、製作に関する権限を有する約150人の幹部のうち白人以外は約20%でした。

 

 この7社、つまりウォルト・ディズニー、メディア大手タイム・ワーナー傘下のワーナー・ブラザーズ、21世紀フォックス傘下の20世紀フォックス、ソニーの米子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、ユニバーサル・ピクチャーズ、メディア大手バイアコム傘下のパラマウント・ピクチャーズ、ライオンズゲート・エンターテインメントのバイスプレジデント以上のポストの幹部約100人のうち、白人以外の人種は16%にとどまっています。

 

 特にヒスパニック系が少ないのです。USCの調査によると、映画の主演俳優のうちヒスパニック系は2.7%にとどまっているほか、主要な製作会社の製作幹部では5%を割り込んでいます。米国民全体ではヒスパニック系は17%。14年の映画館入場者の23%がヒスパニック系と、人種別の分類で最大でした。

 

 米国で人種の多様化が急速に進んでいる上、映画の市場がグローバル化しているため、映画事業にとって多様性が重要だという点では、業界の大半の人々の意見が一致しています。米アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは「オスカーは真っ白」論争に対し、賞の投票権を持つ会員について、2020年までに女性や白人以外のマイノリティーの数を倍増する計画を明らかにしています。

 

 米映画業界の第一線で働き、何年も人種の多様化をめぐる議論が燃え上がっては大した変化もなくくすぶっているのを目の当たりにしてきたマイノリティーの中には、今回の議論の進展に対しても懐疑的な見方が広がっています。

 

 しかし、多様性が高まっている若い層があまり映画館に足を運ばなくなっているため、映画製作会社はこれまで以上に大きなプレッシャーにさらされているという声もあります。(ソースWSJ

2016年2月27日 (土)

トランプ氏とクリントン氏、混沌の中から前進!

 米大統領選は20日の民主党ネバダ州党員集会、共和党サウスカロライナ州予備選で、民主党側は正常の序列に戻り始めたのですが、共和党側は依然として正常の序列があるのかどうかさえ分からないままです。

 

 はっきりしたことは、両党の最有力候補が誰かである。ヒラリー・クリントン前国務長官は、民主党の本命候補としての立場を再び固めました。一方、共和党指導部が好むと好まずに関わらず、不動産王のドナルド・トランプ氏が、同党の指名獲得に向けた紛れもない1番手となっています。

 

 共和党側ではトランプ氏が、共和党と同党の支持基盤を変容させ続けています。トランプ氏は、アイオワ州党員集会、ニューハンプシャー州予備選と同様に、サウスカロライナ州予備選でもブルーカラーや大卒以外の有権者の間で大きな強みを発揮しました。こうした層はかつては共和党にとって付け足しだったのですが、次第に支持層の中核になりつつあるようです。

 

一方、共和党の反トランプ陣営はばらばらで、トランプ阻止を切望する党の既成勢力の眼鏡にかなう候補は今もって絞られていません。少なくともトランプ氏、テッド・クルーズ上院議員(テキサス州)、マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)の三つどもえの戦いが続きそうです。サウスカロライナ州予備選の結果を受けて、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が撤退を表明しました。ジョン・ケーシック・オハイオ州知事も、撤退して反トランプ票を一本化できるよう大きな圧力を受けようとしています。

 

  ただ、サウスカロライナ州予備選を受けても、トランプ氏の対抗馬となる候補は浮上していません。同州にはクルーズ氏の支持基盤とされるキリスト教福音派が多いのですが、同氏は勝利を手に出来ませんでした。ルビオ氏は、ニューハンプシャー州予備選での惨敗から息を吹き返しましたが、どの州でも勝てることを示した訳ではありません。

 

 今後数日間、ルビオ陣営に大金が流れ込み、党内既成勢力の支持が集まるでしょう。そして共和党主流派はルビオ氏をトランプ氏の事実上の対抗馬として担ぐことになるでしょう。ルビオ氏は、サウスカロライナ州予備選後の演説で、自らをロナルド・レーガン元大統領になぞらえ、「レーガン・チルドレン」を率いて、保守勢力の新時代を切り開くとぶち上げました。しかし、それだけで十分かどうかは皆目分からない状況です。

 

 民主党にとっては、状況はもっと分かりやすい。クリントン氏はネバダ州党員集会では圧勝しませんでしたが、その必要はなかったようです。同氏が達成しなければならなかったのは、次のサウスカロライナ州予備選前に向け、本命候補としての疑問が新たに提起されるのを避けることだけだったのです。サウスカロライナ州は、クリントン陣営の支持基盤である黒人有権者が多いため、同州では大勝を収めるはずだからです。

 

 サンダース氏が抱える問題は、サウスカロライナ州予備選よりもその後にあります。31日のスーパーチューズデーでは、同氏の人気が高くない南部諸州で予備選・党員集会が開かれます。アラバマ、アーカンソー、ジョージア、テネシー、バージニアのいずれの州も、黒人の人口比率は15%を超えています。テキサス州では、ヒスパニックが3分の1を占めています。

 

 それほど明確ではなかったのですが、ネバダ州ではクリントン氏のもう1つの支持基盤が機能したことがうかがえます。これまでは既成勢力の支持はむしろ不利に働いたのですが、ネバダ州では有効であることを示しました。比較的高齢で穏健な主流の民主党有権者が大挙して党員集会に出席しクリントン氏支持を訴えたのです。

 

 

 それでも同氏は、予備選スタート時点から同じ問題に直面したままです。すなわち、正直さや誠実さに対する有権者の不信感です。民主党系世論調査専門家のピーター・ハート氏は、それを「彼女は自分と戦っている」と評しています。

 

サンダース氏は、大量の熱狂的な支持者と驚くほど潤沢な資金を維持しており、スーパーチューズデーでバーモント、マサチューセッツ、ミネソタ、さらにもしかするとオクラホマの各州で勝利できるかもしれません。したがって、事態はまだまだ流動的です。しかし民主党側は共和党とは違い、少なくとも正常な状態に戻る可能性が出てきたように見えます。(ソースWSJ

2016年2月26日 (金)

ツイッター利用者、日本でフェイスブック上回る!

短文投稿サイトのツイッターは現在、競合するフェイスブックよりユーザー数が多い。ただし、これは日本での話です。

 

 ツイッターは18日、米国以外のユーザー数を初めて公表し、昨年末時点での日本国内の月間アクティブユーザー数(MAU)が3500万人だったと明らかにしました。10日に発表した201510-12月期(第4四半期)決算では、ユーザーの伸びが頭打ちとなっているとの懸念が投資家の間で広がっていました。

 

 一方、広告収入面でツイッターの主なライバルであるフェイスブックは、昨年末時点での日本のMAU2500万人だったということを、広報担当者が18日に明らかにしました。

 

 ツイッターは長い間、ユーザー数でフェイスブックと比較されてきた。世界的にはフェイスブックがツイッターを大幅に上回っている。ツイッターは先週の決算発表時に、第4四半期の世界全体でのMAU32000万人と、前期の水準から横ばいだったことを明らかにした。一方のフェイスブックは、昨年末時点での世界でのMAU159000万人と、前期比3%増加したと公表しました。

 

 注目されているツイッターのMAUが前期比で横ばいとなったのは第4四半期が初めてだった。しかも米国内のユーザー数は6600万人から6500万人に減少しました。

 

 ツイッターの米国外での広告収入は新興国の値段が安いため総じて低いが、米国でのユーザー減少で日本や英国といった先進国の重要性が高まっています。ツイッターの第4四半期の米国外売上高は、売上高全体(64100万ドル=約723億円)の約35%でした。

 

 ツイッターのアジア太平洋・中南米・新興国担当バイスプレジデントのシャイリッシュ・ラオ氏は、日本では「非常に短期間に利用者数が5倍超に増えた」と述べています。11年には日本国内のユーザー数は700万人に達していなかったそうです。(ソースWSJ

2016年2月25日 (木)

「歩きスマホ」もはや笑い事ではない!

マニー・フィオリさんの仕事は、スマートフォンが死亡事故を起こさないようにすることです。同氏はサンフランシスコにある私のオフィスに近いガレージの出入口に立ち、画面に集中するあまり交通の往来に気づかない歩行者と自動車がぶつかるのを防いでいるのです。フィオリさんは「人々は最近、(スマホに)没頭しすぎている」と話します。同氏はビルの警備員で、叫んで指示を出すばかりか、両手を広げて自動車と歩行者を止めることだってあるそうです。

 

 朝のラッシュを車道から見守ることで、スマホ中毒の恐怖を測定できます。先週には見上げることすらしない歩行者が1時間に70人もいました。スマホでテレビ番組を見ている人もいたし、しかめっ面でメールを打っている人も多かったのです。車にぶつかるのを止めてくれたフィオリさんに礼を述べたのは、その中の5人だったそうです。

 

 私も潔白ではない。私のスマホにはネコと争ったかのような傷がついています。実はテキストを打ちながら壁にぶつかったのだ。こうした「歩きスマホ」現象が発生した当初、それは一種のジョークでした。動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」には、メールを打ちながらフラフラ歩いている人が噴水に落ちるといった動画が満載です。ドイツではこうした人々のことを「smombie」、つまりスマホとゾンビをかけ合わせた言葉で呼んでいるのです。

 

しかし、自分自身から自分を助けるために、ガレージに警備員を雇わなければならない状況にまでなれば、歩きスマホはもはやジョークとは言えなくなります。これはひとつの公共安全問題で、中毒症状です。スマホは私たちの注意を引くすべを習得してしまいました。少なくとも、これはスマホの構造上の欠陥です。この問題への対処でどのような責任がIT(情報技術)企業に要求されるかが問われる時代になっているのです。

 

 米消費者製品安全委員会のデータを探ったところ、歩きスマホをしていた人が救急救命室に運ばれた回数は2010年から14年までに124%増加し、06年からは10倍に増えたことが判明しました。一部の研究者によると、携帯電子機器が原因で負傷した歩行者の割合は1年間で全体の10%に上り、同じ理由で6人が死亡したといいます。運転中にスマホを操作すればさらに深刻な危害につながりますが、歩きスマホによる事故も一般的になってきています。

 

 スマホの登場で、私たちは複数の仕事を同時にこなせると思うようになりました。ただ、今やスマホが私たちの働きに害を与えていることが証明されています。スマホを使うことで私たちの歩き方に変化が出てきます。スピードが落ちるか、道からそれてしまうのです。

 

 今週、私は同僚に米国の映画「スター・ウォーズ」に登場する、毛むくじゃらのチューバッカの格好をしてもらい、朝のラッシュの時間帯にサンフランシスコをうろついてもらうよう頼みまし。そして、私はスマホをのぞき込んでいる歩行者に話しかけ、伝説的なチューバッカが歩いているのに気づいたか尋ねてみたところ、多くが気づいていなかったのです。

 

米ウェスタンワシントン大学のアイラ・ハイマン・ジュニア教授(心理学)によると、これは「非注意性盲目」と呼ばれていて、同氏は2008年に私と似たような実験を行い、歩行者に一輪車に乗った道化師に気づいたかを尋ねてみました。するとスマホをしていない人の半分がそれに気づいたと述べましたが、歩きスマホをしている人ではたった4分の1だったそうです。

 

 ハイマン氏は、「人々は気づいたとの印象を持っているが、どれほど見逃しているかについては分かっていない」と指摘しています。強い意志を持つ人でさえ、騒々しいガジェットに影響されやすいのです。ガジェットは新しいことを見つけたり、社会に加わったりしたがる脳の欲求に応えるよう、完全に作り込まれているからです。受信メールをどれほど長く無視できるか試してみるといいでしょう。カンザス大学のポール・アチリー教授(心理学)は、「これはFOMO、つまり取り残される不安のことだ」とし、スマホが「あなたの注意をハイジャックしようとしているのだ」と述べています。

 

テクノロジーはこれを解決できるか。個人の自制心が大きな役割を果たしますが、私は多くの人が歩道でスマホをしまって歩くとは思っていません。ただ、私たちは道路を横断するときにスマホを見るのをやめさせることが、左右を見るのと同じくらい重要だと、子どもたちに教える必要があります。

 

 それには都市計画の見直しが役立つかもしれません。一部の町や大学キャンパスには危険な階段の吹き抜けや交差点に「見上げろ」の標識が掲げてあります。香港の地下鉄では、乗客向けに「スマホだけに目を集中させるな」とのアナウンスが流れます。ニューヨーク市では自動車の制限速度が引き下げられ、サンフランシスコでは交通量の多い道路を歩行者専用にする動きが進められていますが、これらは歩きスマホに対応した措置でもあります。

 

 昨年の秋、スウェーデンの首都ストックホルムでは自動車の運転手に歩きスマホへの注意を促す道路標識が掲げられました。こうした危険性の高まりに端末メーカー自身が対処する義務はどれくらいあるのか。自動車産業が良い比較になります。シートベルトを着用することで多くの人命が救われますが、エアバッグの搭載が義務付けられてからさらに多くの命が救われました。現在、大手自動車メーカーの大半は自動制御システムまで搭載するようになっています。

 

 米アップルの「アップルウオッチ」、韓国サムスン電子の「ギャラクシー・ギア」などスマートウオッチは、素早くチェックできる小さな画面を使うことで、データ中毒者が常に下を向いて画面にくぎ付けになる必要性を回避させています。

 

 私が試している小さなワイアレス端末「ディット」は、スマホが重要な通知を受け取ると振動することで、取り残される不安を解消させるのを目指しています。また、新興企業のリングリーは、指輪型スマート端末の色合いを微妙に変化させることで重要な通知を知らせます。

 

 問題の核心はスマホ本体です。米ラトガース大学のエンジニア、シュブハム・ジャイン氏は、スマホを利用するユーザーが交差点に差し掛かると端末が終了するアプリを同僚と開発しているそうです。このアプリでは、ユーザーが交差点に入ると瞬間的にスマホにロックがかかり、目を上げろという警告が光ります。

 

 私はスマホに内蔵された全地球測位システム(GPS)を活用し、どこが交差点かを判断するタイプのアプリを使ってみました。別のタイプでは靴に安価なセンサーを埋め込み、ユーザーが歩道を踏み外してしまうと2歩以内に端末を終了させるというものです。(ソースWSJ

 

2016年2月24日 (水)

米リセッション入りリスク増大、市場混乱が引き金!

米国はリセッション(景気後退)に向かっているのでしょうか。市場はそう示唆しています。

 

 ダウ工業株30種平均は12日時点で20155月につけた過去最高値から12.7%安の水準にあります。安全逃避先としての需要が高い米国債の利回りが低下する一方、高リスク債券の利回りは上昇し続けています。そして、原油価格は約12年ぶりの安値を記録しました。とはいえ、経済指標からはリセッション入りの気配は見受けられません。1月の雇用の伸びは堅調で、雇用主は人員補充に苦労しています。

 

 こうした乖離(かいり)は、調査研究機関コーナーストーン・マクロが発表している二つの指標にはっきりと表れています。株式市場や社債利回りといった金融指標から算出される一つ目の指標によると、米国がリセッション入りする確率は現在50%。しかし、融資延滞率や実質賃金などのマクロ経済指標に基づくもう一つの指標では、この確率はわずか28%です。

 

 当然ながら、市場がリセッション入りを読み誤ることは多いです。しかし、市場の悪化が原因で経済がリセッションに陥る場合もあります。景気は金利や所得など量的要因だけでなく心理の変化によっても左右されるため、景気の転換点は予測できません。この心理に影響を及ぼすのが市場です。企業は市場からのシグナルを手掛かりに投資や雇用の是非を判断するからです。つまり、リセッションの懸念は自己成就的である可能性があるのです。

 

 投資家の心理を圧迫しているのは経済成長や原油価格への懸念だけではなく、政策への不安もあります。米連邦準備制度理事会(FRB)は追加利上げを推し進めるのか。中国は再び人民元の切り下げを実施するのか。英国は欧州連合(EU)を脱退するのか。米国民は既存の経済秩序をひっくり返そうとする大衆主義の大統領を選ぶのか。政策の不確実性が「リスクプレミアム」を生み、それが株価や債券価格を押し下げているのです。

 

 経済に重圧がかかっていることは確かで、輸出低迷やエネルギー設備の受注急減を背景に製造業は明らかにリセッションの状況にあります。カーライル・グループのジェイソン・トーマ氏によると、国内総生産(GDP)に占める設備投資の割合は2008年時点でわずか6%だったのですが、09年にはGDPの減少幅の50%近くが設備投資の落ち込みによるものでした。これは景気循環に影響します。企業は機械設備などの購入を簡単に取り消したり延期したりするからです。一方、住宅や自動車の購入といった個人消費も自由裁量によるものですが、こちらは相対的に堅調さを維持しています。

 

 今のところ、景気全般に関しては腰折れには至っていません。1月の雇用統計では、非農業部門就業者数が前月から151000人増加し、平均的な労働者の労働時間が増えたことから全体の週平均労働時間は昨年7月以来の大きな伸びとなってしまいました。また、1月に増加傾向にあった新規失業保険申請件数は26日までの週に急減しました。

 

 もちろん、市場の混乱が家計資産の目減りや企業向け融資の減少を招き、経済成長を押し下げる可能性はあります。FRB10日公表した半期に一度の金融政策報告を見る限り、企業が融資を受けられなくなるような危機が起きている証拠はなく、短期金融市場は正常に機能しています。そして大半の世帯にとって、株安による資産の目減りは昨年の住宅の値上がりほど重大なことではありません。それでも、エネルギー関連企業の社債などの利回りはデフォルト(債務不履行)の可能性だけでは説明がつかないほど大きく上昇しており、銀行は貸出基準を引き締め始めました。

 

 このような金融環境の変化は消費者や企業の動向を大きく変えることにもなり得るのです。スタンフォード大学のロバート・ホール経済学教授は2年前に発表した論文で、従業員を1人雇うことは機械設備を一つ買うようなものだと指摘した上で、将来見込まれる利益を現在価値に割り引く際に用いる「割引率」が、想定されるリスクの増加に伴い上昇すると、そうした投資の利益率は低下すると説明しています。つまり、株価の下落と失業率の上昇はどちらもリスク回避志向の拡大と割引率の上昇を反映しているため、同時に起きることが多いというのです。

 

 相場の下落、心理の悪化、景気低迷は相互に影響し合う可能性があります。そのような悪循環をきっかけにリセッション入りの恐れが生じれば、中央銀行が介入してサーキットブレーカーの役割を担います。しかし最近では、中銀が使える政策手段は限られてきています。

 

 米連邦準備制度理事会(FRB)がまだ非常ボタンを押していないのも無理はありません。米経済が完全雇用に近づく中、FRBは昨年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き上げ、2016年に合計1.0%の追加利上げを行う方針を示唆しました。投資家はFRBのイエレン議長が先週の議会証言でこの追加利上げの計画を否定することを期待していましたが、今更驚くことではないものの、そのような判断は「時期尚早」で利上げは「あらかじめ決められた」路線にのっとったものではない、というのが議長の発言だったのです。

 

 それでも、FRBの政策に関して心配なのは、利上げを見送るかということよりもむしろ、必要に応じて利下げに転じなおかつ十分な効果を生むことができるかどうかです。日本銀行は129日、欧州中央銀行(ECB)が2014年に実施したようにマイナス金利の導入を決定しました。理論的には、マイナス金利の導入は投資家心理を改善させるはずです。政策金利がゼロに達しても中銀にまだ他の政策手段があることを示しているからです。しかし、投資家は困惑しているようです。マイナス金利は実際に景気支援になるのだろうか。あるいは、単に銀行の利益を圧迫するだけなのだろうかと。

 

 政策をめぐる不透明感がもたらす悪影響は他にもあります。欧州銀行株が大きく売られているのは、一部の銀行を対象に規制当局が資本バッファー維持のために強制的に債券を株式に転換させるのではないか、という株式の希薄化に対する懸念が広がっているからでもあります。皮肉なことに、当局がこうした株式への転換を政策手段の一つに加えたのは、金融危機が起きたときに納税者が支援負担を強いられないようにすることが目的だったのです。しかしエバーコアISIのクリシュナ・グハ氏は、政策効果は「景気循環を増幅させる」もの、つまり景気への負荷を緩和させるどころか増大させるものだと指摘します。株式市場で狙い撃ちされている銀行は融資に消極的になりやすいのです。

 

 その上、今年は政治的不透明感も薄れるどころか深まる見通しです。まず、英国が欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票を実施する公算が大きいのです。英国がEU脱退を決めれば、スコットランドが住民投票で英国からの独立を図るかもしれません。米国では、大統領選の候補者氏名争いの第2戦となる9日のニューハンプシャー州予備選で、共和党は富豪の実業家ドナルド・トランプ氏が、民主党はバーニー・サンダース上院議員が勝利を収め、11月の本戦で革新的な経済改革を公約に掲げる大衆主義の大統領が選出される可能性があります。

 

 コーナーストーン・マクロの政治アナリスト、アンディ・ラペリエール氏は「(米大統領)選挙が極端な結果になれば株式市場にとって大きなリスクが生じるが、投資家はその可能性を排除できない」と言います。(ソースWSJ

2016年2月23日 (火)

中国主導のインドネシア高速鉄道計画、欠陥だらけ?

インドネシア運輸省は3日、中国が資金を拠出する総額55億ドル(約6500億円)の高速鉄道計画について数多くの欠陥を指摘しました。これは、同計画に疑問を投げ掛けると同時に、外国投資誘致に積極的なジョコ大統領の巨大事業を実行する力の限界を浮き彫りにしています。

 

 同運輸省のヘルマント・ドウィアトモコ鉄道総局長は、鳴り物入りの高速鉄道計画について同省が認可をためらっていることを弁護しました。同総局長は、鉄道を主導する中国とインドネシアのコンソーシアムは、まだインドネシアの安全規制を設計に織り込んでおらず、提案されている全長140キロメートルの路線のうちわずか5キロの敷設計画を提出しただけであることを明らかにしました。

 

 高速鉄道について、インドネシアは隣接する軌道の中心線の間隔を5メートルとするよう要求していが、現在の鉄道計画では4.6メートルしかありません。

 

 先月、ジョコ大統領は政府当局に対し、この鉄道計画を速やかに認可するよう要請し、その後、起工式典を挙行しました。ヘルマント鉄道総局長は3日、記者団に対し、「(この認可プロセスを)われわれが複雑にしているのでないことを、どうか理解していただきたい」と述べています。同総局長は、コンソーシアムは最初の鉄道5キロについて2カ月以内に計画を修正できると述べましたが、残りの建設計画の認可が得られるか、得られるとすればいつかについては言及を避けました。

 

 同コンソーシアムは、中国と東南アジア最大の経済国であるインドネシアの国営企業との合同チームです。中国の建設・エンジニアリング会社・中国鉄建とインドネシアの建設会社ウィジャヤ・カルヤが中心になっていて、同コンソーシアムは昨年10月、鉄道建設契約を結び、2019年には運行を開始する予定です。

 

 起工式のあと、インドネシア当局者は、同コンソーシアムが今後、とりわけ環境への影響を見極める必要があるほか、線路を敷設するための土地を何百ヘクタールも取得する必要があると述べています。ヘルマント鉄道総局長は同日、建設会社は鉄道の運行保証期間を100年間とし、提案された60年間をさらに延長する必要があると述べ、地震の発生しやすい区間については補強しなければならないと語りましたが、同コンソーシアムのコメントは得られていません。同コンソーシアムは、4日に記者会見を予定しています。

 

 提案された高速鉄道計画は、この種のものとしては東南アジアで初めて。ジャワ島西部にある首都ジャカルタと大都市バンドンを結ぶ路線を運行します。日本企業は数年間にわたり高速鉄道プロジェクトを調査してきましたが、昨年の高速鉄道敷設計画入札でライバルの中国・インドネシア・コンソーシアムに敗れました。その際、同コンソーシアムはインドネシア政府から建設融資保証を受けず、国庫からの資金なしで建設することに同意しました。

 

 高速鉄道プロジェクトは以前から論議を呼んできました。同国の運輸交通問題の専門家の間では、既に道路や鉄道で結ばれている都市間に高速鉄道を運行させる必要があるか疑問視する向きが少なくありません。また、同プロジェクトは政府支援なしでは実現できないとする研究結果があると指摘する向きもあります。

 

 現行の高速鉄道計画に対する運輸当局の抵抗は、ジョコ大統領が大幅な遅れの目立つ各種プロジェクトを軌道に乗せようと努力している中で表面化しました。緩慢ではあるが若干の前進がみられる計画もあります。例えば同大統領は、1年以上を費やして日本が支援する総額40億ドルの発電所を建設にこぎ着けました。だが建設に必要な土地の取得はまったく手つかずの状態です。

 

 「高速鉄道計画は当初から混乱に見舞われてきた」と、シンガポールに本拠を置くオーバーシーズ・チャイニーズ・バンキング・コープ(OCBC)のエコノミスト、ウィリアン・ウィラント氏は言います。同氏は「今回の曲折も、(政権への)信頼醸成につながるものではない」と述べています。(ソースWSJ

2016年2月22日 (月)

アベノミクス、行き詰まりへの道!

安倍晋三首相による経済再生計画の中核にあったのは、中央銀行の積極的な取り組みが数十年にわたる不況にあえぐ日本へのショック療法になり得る、という賭けでした。しかし、マイナス金利導入という最も斬新な措置を講じた後も、日本銀行は持続的な景気拡大をもたらすに至っておらず、「アベノミクス」の行き詰まりが示唆されています。

 

 経済の低迷を背景に、10日の日経平均株価は前日比2.31%下落し、日銀が201410月に追加緩和策を打ち出して以降の上昇分がほぼ帳消しとなりました。一方、円はここ1年余りの最高値付近で取引され、日銀の意図とは逆に安全逃避の動きが際立ちました。

 

 今回の日銀主導の取り組みは、程度の差はあれ、金融政策だけでなく社会全体のリスク志向を後押しするという意味でも中銀に依存している他の主要国への教訓となっています。それは、人々の心理を変えるのは金利を変更するほどたやすくはない、ということです。

 

 第一生命経済研究所の首席エコノミスト、熊野英生氏は、「アベノミクスはもう一度原点に立ち戻る必要がある」とし、「現在のマーケットの悪化を止めることはできない。ではセカンドベストとして何ができるのか」を考える時だとの見方を示しました。

 

 安倍首相が就任した1212月、株式・不動産バブルの崩壊から20年以上が経過した日本は、精彩を欠きつつも安定期に入っていました。経済は低成長で高齢化が急速に進んでいましたが、少なくとも都市部では衰退の兆候などほとんど目につかず、社会は依然として安全だったのです。

 

 しかし、安倍首相はそれでは不十分だとの認識を示し、金融緩和と財政出動、構造改革の「3本の矢」で経済再生を図り、物価・賃金を再度押し上げると公約したのです。

 

 3本のうち即効性が期待できるのは第一の矢だけです。第二の矢である財政出動は財務省の圧力を受け間もなく減少しました。第三の矢に盛り込まれた女性の雇用推進などの構造改革は、短期的効果を意図したものではなく、また、首相は外国人労働者への門戸開放といったより積極的な措置を真剣に検討することもありませんでした。

 

 このため全ての期待は、首相自らが指名した日銀の黒田東彦総裁の肩にかかることとなったのです。黒田総裁は大量の資金供給によって円安を誘導し、企業収益の大幅拡大に貢献しました。今月の講演では「追加緩和の手段に限りはない」とし、2%の物価上昇目標を達成する意気込みを示しました。

 

 ただ、黒田総裁が企業に対し、収益を賃上げや新技術への投資に回すよう強いることなどできません。また、円安でアジアからの観光客は増えたのですが、総裁が国内の消費者を小売店に向かわせ、より多くの物を買わせることができるわけでもないのです。

 

 代わりに黒田総裁と安倍首相は、国民の心理を上向かせるべく自信あふれる発言を行いました。安倍首相は132月の訪米中、ワシントンで「日本は復活した」と宣言しました。首相は講演のたびに企業収益の回復や、過去最多に達した海外からの観光客、20年ぶり低水準の失業率といった数字を頻繁に口にしたのです。

 

 しかし15年終盤になっても、日本の「アニマル・スピリット」が眠ったままである兆候が多く見られました。その一因は政府の矛盾した政策です。安倍首相は144月、コスト増が著しい社会保障の財源確保という名目で消費税率引き上げを実施しました。しかし、これで個人消費が冷え込み、倹約ムードが広がったのです。

 

 物価上昇率はゼロ近辺にとどまっていますが、黒田総裁はこれを2%に到達させる時期のめどを何度となく先送りしました。企業は内部留保に走っています。こうした状況は、バブル後の負の遺産の中で日本が90年代に経験した「借金のトラウマの深刻さ」を示すものだと、野村総合研究所の主席研究員、リチャード・クー氏は指摘しています。

 

 そしてここ数週間は、中国経済の成長減速、欧州銀行をめぐる懸念に加え、資源に乏しい日本には利益となる一方で世界経済を不安定化させた原油相場の急落など、海外発の逆風が吹き荒れました。

 

 景気の勢いを維持するため、黒田総裁は129日、前週は検討すらしていないと言っていた最後の手段に出ました。日銀は、市中銀行が日銀に預け入れる資金の一部にマイナス金利を適用すると発表したのです。これは、利息を払う代わりに実質的な手数料を課すことになるものです。

 

 当初は目論見通り、株式が上昇し、円が下落しました。しかし両市場ともほどなく反転し、元の水準よりも日銀の目標から一層離れてしまう結果となってしまったのです。

 

 安倍首相と黒田総裁は、計画が根本的に軌道を外れたわけではないと考えています。黒田総裁は今月の講演で、国内経済が「緩やかな回復を続けて」いるとした一方、企業収益の水準が高く労働市場が引き締まっている割に、賃金や設備投資など支出面への波及が「やや弱い」ことを認めました。

 

 消費者物価指数(CPI)の総合指数の上昇率はゼロに近いのですが、黒田総裁は、食品とエネルギーを除いたCPIが約1%の上昇を見せているとしていて、さらに、デフレに逆戻りするリスクはなく、エネルギー価格さえ安定すれば所期の目標から数年遅れではあるがインフレ率は2%に到達すると主張しています。

 

 15日発表される1510-12月期の国内総生産(GDP)速報値は小幅なマイナス成長を示すと見込まれますが、安倍首相は国会で10日、黒田総裁への信任そして景気回復に対する確信を引き続き持っているとし、アベノミクスが終焉段階にあるとみるのは間違いだとの見解を示しました。

 

 安倍首相にとって発見の一つは、有権者は力強い成長を期待しているわけではなく、それを得るのに必要な混乱を伴う変化を恐れているため、公約を実現できない政治家に制裁を加えるようなことはしない、ということです。米国、ドイツ、フランスでは有権者の怒りに訴えかけ、さらにそれを煽る政治家が混乱を生んでいますが、日本の政治は数十年来で最も安定した時期にあります。

 

 最近の世論調査で安倍内閣の支持率は50%以上に持ち直しており、連立政権は今夏の参議院選挙で勝利を収める見込みです。安倍首相の支持率が低下したのは、安全保障関連法の成立を強行した際だけだったのです。

 

 国内企業のトップも市場の混乱を冷静に受け止めています。サッポロホールディングスの上條努社長は、アベノミクス以降の「日本経済が非常に順調な成長軌道になっているというのが一つの評価ではないかと思っている」とした上で、ここ数日の市場動向は「わけがわからない」と話しました。

 

 ソフトバンクの孫正義最高経営責任者(CEO)はマイナス金利の導入で景気がいずれ上向くと見ており、「(金利は)ソフトバンクにとっては良い話」だと話しました。また、市場の動向が業績にもたらす直接的な影響はあまりないとしています。

 

 アベノミクスが失敗に終わっても日本経済が崩壊するわけではなく、安倍政権発足前の状態への回帰という穏やかな挫折にとどまるでしょう。日本の政府債務残高はGDP200%以上と膨大だが、金利低下のおかげでさほど差し迫った問題ではないように思えます。政府は目下、ほぼ無利息で借り入れができるばかりか、借金をしても投資家から収入を得ることすらできるのです。(ソースWSJ

2016年2月21日 (日)

アップルCEO、ロック解除問題で危険な戦術!

米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、瀬戸際戦術という危険な作戦で政府と戦っています。その過程で、私たちのモバイル機器全てのセキュリティーを脅かす政治・司法プロセスが形成される可能性があります。

 

 初めに言っておくと、私は裁判所の命令をはねつけたクック氏の公開書状の趣旨に賛成です。裁判所は、カリフォルニア州サンバーナーディーノ郡で起きた銃乱射事件の容疑者が使っていた「iPhone(アイフォーン)」のロックを連邦捜査局(FBI)が解除できるようにするため、アップルにアイフォーン用基本ソフト(OS)の新バージョンを作るよう命じていることです。

 

 クック氏は、アイフォーンのセキュリティーを克服する新たなソフトをアップルが作るよう求めたFBIの要請が前代未聞だとの当然の主張をしています。「米国企業が顧客をより大きな攻撃リスクにさらすように強いられた前例は見当たらない」といいます。

 

 やっかいなのは、FBIがアップルに作らせたいと言っているのは、サンバーナーディーノ事件容疑者のアイフォーンだけに使うソフトです。しかし、ソフトのコードが野に放たれれば――こうしたことはそうなりがちだが――あらゆるアイフォーンの暗号化が基本的に疑わしくなるでしょう。

 

 それでも、今回の問題のややこしさはクック氏の許容範囲を超えており、その詳細はアップルに有利とは限らないのです。アップルのクックCEOは、カリフォルニア州サンバーナーディーノ郡で起きた銃乱射事件の容疑者が使っていた携帯電話のロック解除を求める裁判所命令に異議を唱える意向を示しました。

 

 まず、状況の受け取られ方です。テクノロジーアナリストのベン・トンプソン氏の言うように、「今回のケースは、明確に悪人が絡んだ国内テロで、誰も反対できない令状があります。そしてアップルには要求に応じる能力がある」とみられています。次に、問題のアイフォーンが「5C」という比較的古い型である点です。新しい型とは違うことから、アップルがFBIによるセキュリティー迂回(うかい)用に作るソフトが新型のアイフォーンを危険にさらすことはないと、開発者でモバイル向け基本ソフト「iOS」のセキュリティー専門家のダン・グイド氏は指摘しています。

 

 最後に、今回のケースがどうなろうと、アップルは法廷でさらに大きな戦いに負けるリスクを負います。その影響で、アップルのほかグーグル、マイクロソフトなど他社も、一般の機器に強力な暗号化技術を投入するプロジェクトを後退させる恐れがあるのです。

 

 筆者は弁護士ではなく、本稿で法律の分析しているわけでもありません。しかし、一部の人たちは、令状に基づいた捜索から機器を守ろうとするアップルの戦いは、過去の判例からみれば不利であることを示唆しています。

 

 アップルはデータ保護をめぐりFBIとおおっぴらに争っていますが、同社が求められるのはせいぜい、旧型アイフォーンのセキュリティーを危険にさらすことです。アップルがこの件で原則を譲らない理由について論理的説明を思いつくとすれば、同社(そして消費者)にとって最悪の事態につながりうる命令の前例を作りたくないということでしょう。

 

 最悪の事態とは、アップルが全てのアイフォーンにセキュリティーの「裏口」を設けるよう強制される状況であり、その結果はアイフォーンから暗号化機能をなくすことに等しいのです。アイフォーンを保有する人全ての財産、健康、個人データをサイバー犯罪者、ハッカー、国家の手先に利用させたい場合は別として、われわれは文化として暗号化機能に裏口を作りたいとは思いません。

 

 しかし今回FBIは暗号化機能の裏口を、少なくとも明示的には求めていません。要求は特定のケースに対するものです。そして私は、アップルがこれほど大々的に協力を拒むことによって、ある状況を醸成しつつあると懸念しています。その状況の下で裁判所や議会はいつか、同社が今回降伏した場合よりもさらに大きな打撃を私たちの最も個人的な機器のセキュリティーに及ぼすことをアップルに命じるでしょう。(ソースWSJ

2016年2月20日 (土)

習主席の下、中国で復活する「自己批判」!

テレビで放映される「自白」のために、看守がピーター・ハンフリー氏を迎えに来たとき、彼は前夜に起こしたパニック発作の鎮静剤を飲んでいたといいます。 

 

 中国で調査会社を経営していた英国人のハンフリー氏は2013年に、顧客の英製薬大手グラクソ・スミスクラインの贈賄疑惑を調査していたかどで、米国籍の妻ユー・インゼン氏とともに中国当局に拘束されました。上海第一拘置所の警察はハンフリー氏にジャーナリストたちと会えると伝えました。ある警察官は「うまくやれば、寛大に扱ってもらえる」ことをほのめかしました。その意味は明らかだった。罪を認め、謝罪せよということです。

 

 薬のせいで足元がふらついていたハンフリー氏は、鉄の檻の中で手錠をかけられた姿で座っていました。ジャーナリストたちは彼の悔恨の言葉を記録しようと、檻のバー越しにカメラのレンズを向けました。こうした辱めは「自己批判」として良く知られています。

 

 その起源は旧ソ連のスターリン時代に遡ります。最高指導者だったヨシフ・スターリンは民衆を抑圧下においた恐怖政治のもと、敵対勢力だと考える人物にこのテクニックを使ったのです。そして中国の毛沢東は自身の敵対者を苦しめるため、この手法を借りたのです。

 

 現在の中国の最高指導者である習近平国家主席は、共産党内部や財界、非政府組織などの幅広い浄化を進めており、汚職や反対勢力に狙いを定める中でこの手法を復活させました。習主席は旧来の社会主義的な価値観と儒教の倫理観を混ぜ合わせて中国社会の浄化に取り組んでいますが、スターリン時代の手法が同時に実行されているのです。外国人もこの野心的な取り組みから免れる特権があるわけではありません。それどころか、彼らの「自己批判の時間」はこの手法の衝撃度を増幅させています。

 

 数百万人ものテレビ視聴者は現在、習主席の汚職撲滅キャンペーンの犠牲者たちが夜のニュース番組で、強制的に魂の重荷を下ろす姿を定期的に見ています。ハンフリー氏は多国籍企業の不正行為に関する取り締まりの中で拘束されました。グラクソ・スミスクラインは後に贈賄で有罪判決を受け、罰金が科されました。習主席が厳しい監視の目を光らせている中国の人権弁護士や社会活動家、ジャーナリストなども同様にニュース番組で自白しています。

 

 テレビで放映される「自己批判ショー」は基本的に中国国営中央テレビ(CCTV)と治安警察との共同制作です。ハンフリー夫妻の顔はデジタル処理を施してあったとはいえ、2人は公然と名誉を傷つけられた最初の人たちに含まれます。ここ数週間では、スウェーデンの人権活動家ともう一人の同国市民が、カメラの前に引きずり出されました。このスウェーデン市民は香港で書籍を販売しているのですが、専門に扱っているのは中国指導者たちに関するいかがわしい本だといいます。

 

 ハンフリー氏によると、彼の試練は檻に向かう廊下で始まった。テレビのレポーターたちの姿が目に飛び込んできたのです。見せ場を作るように、護衛官はオレンジ色の新しい囚人スモックを彼に渡しました。CCTVが放送した映像の中で、ハンフリー氏は違法に入手した中国人の個人情報から利益を得たことを深く悔いていると話し、中国政府に謝罪しました。「あれは完全にやらせだった」。ロイター通信の特派員だったこともあるハンフリー氏は昨年、健康上の理由で早期釈放された後、ロンドン近くの自宅でそう話しました。

 

 ハンフリー氏は自身の経験と、文化大革命時に三角帽子を被せられ、首に自分の罪を告白したプラカードをぶら下げて通りを歩かされた犠牲者たちの間に違いはないと話します。「これは退行だ」。ハンフリー氏と妻は当時、裁判にかけられませんでしたが、後に有罪判決を受けました。ただし、夫妻は無実を主張しています。

 

 悪い時には悪いことが重なるものです。ハンフリー氏によると、拘束されて間もなく医師らが彼の前立腺に異常があると診断しました。それはがん検査が必要な種類のものでした。ハンフリー氏が検査の実施を求めると、看守は自供書に彼が署名していないことを持ち出してきたといいます。健康を引き換えにした事実上の自白の強要だとハンフリー氏は言っています。最終的に中国当局は検査に応じて腫瘍が見つかり、ハンフリー氏は現在、放射線治療を受けています。

 

 「自己批判」の文化は、中国の社会主義国家としての過去の遺物とともに戻ってきました。例えば、プロバガンダの象徴だった雷鋒(らいほう)です。雷鋒は靴下を繕い、肥料を運んだ人民解放軍の模範兵ですが、最後は倒れてきた電柱で死亡しました。

 

 自己批判は共産党内部の会議では定番の議題です。ビジネス関係者も悲しい内省を助長しています。スキャンダルの煙が立つと外国企業は、公の場で謝ることに義務感を覚えます――たとえ、後で後悔することになったとしてもです。中国のテレビが2014年に、米食肉大手OSIが期限切れの肉をファストフードチェーンに販売していたことを報じた際、OSIの最高経営責任者(CEO)はただちに責任を認め、「大変間違ったことをした」と述べました。しかし今、破産に直面しているOSIは言い分を変えました。今週、上海の裁判所が「劣悪な製品」を販売した罪でOSIに罰金を科し、関係者10人を刑務所送りにした後、OSIは同社が言うところの「中傷キャンペーン」を攻撃し、テレビの報道はやらせだったと述べたのです。

 

 テレビ放映される自己批判は習主席が公に宣言している法の支配とはほとんど何も関係がありません。しかし、それは重要ではないのです。共産党は自らと社会の不届き者を幅広く浄化しており、従って模範となる社会的行動を判断する最高権威者として自らの正当性を磨き上げているという物語を示すことができればいいのです。

 

 香港大学のメディア研究機関「中国メディアプロジェクト」の研究員、デービッド・バンダースキ氏は「自己批判」を暗い文脈の中でとらえ、「服従を命令し、従順さを強要するための、権力の心理的な道具だ」と指摘しています。

 

 この戦略が成功しているかどうかはまったく不透明です。中国人のテレビ視聴者の間では広く、「自己批判ショー」は文字通りのものではなく、政治的な見世物として理解されています。しかし、公のスポットライトの中に引きずり出される者にとっては、このドラマは紛れもない現実なのです。(ソースWSJ

2016年2月19日 (金)

言葉の壁は崩壊寸前-翻訳ツールが切り開く未来!

 以前は海外を旅行するときには、よく使う表現や言葉の訳語が載った小さなポケット版の辞書を持ち歩いていました。文を作りたければ、5分間も辞書と格闘した挙句、語形変化を無視した動詞とこれが正しいとにらんだ名詞を使ってぎこちない表現を作り出したものです。今ではスマートフォンを取り出し、グーグル翻訳に文を打ち込めば、一瞬のうちに90種類の言語のどれにでも翻訳してくれます。

 

 機械翻訳は私がやっていたように辞書を使って翻訳する方法より飛躍的に速く、効果的ですが、正確さや実用性、話し方の点ではまだ不十分です。しかし、そんな状態も長くは続かないでしょう。私の予想では、あと10年もすれば、この記事を読んでいる全ての人が数十の言語で会話ができるようになって、言葉の壁という概念そのものがなくなると思います。

 

 現代の翻訳ツールは2億人を超す人々に向けて1日に10億を超える翻訳を行うことで向上しました。これほど急速にデータが増えれば、同じ分量の翻訳を午後だけで処理するのもそれほど先のことではありません。しばらくすれば1時間で処理できるでしょう。機械翻訳の正確性は飛躍的に向上し、細かいところまで構文を解析できるようになることでしょう。

 

 翻訳に間違いがあったときは、ユーザーがそれを知らせればそのデータもそれ以降の翻訳に反映されることでしょう。あとはデータ量の増加とコンピューターの能力向上、ソフトウエアの改善次第です。こうした問題は時間と共に解決され、音声による返答の解釈や発音を含めた領域でコミュニケーションギャップの解消に貢献することでしょう。

 

 非常に興味深いイノベーションが人間と機械をつなぐヒューマンインターフェイスのためのハードウエア開発の中で起きるでしょう。10年後には小さなイヤフォンを装着すれば、外国語で話しかけられても、相手が話すのとほぼ同時にあなたの母語でその内容を聞くことができるでしょう。その時間差は音速程度になると考えます。

 

 耳元でささやく声も「シリ」風のコンピューター音声ではなくなり、周波数や波長、音の強さなど声の特性を計測する生物音響エンジニアリングの進歩のおかげで、イヤフォンとつながったクラウド上のソフトウエアが相手の声をあなたの母語で再現するでしょう。あなたが返事をするときは、あなたの言葉が相手の言語に翻訳され、相手のイヤフォンに送られるか、あなたの電話や時計、または2025年の時点で使われている未来の個人用機器に内蔵されたスピーカーを通じて伝えられます。

 

 現代の翻訳ツールのもう1つの特徴は2つの言語の間でのみ機能することです。3つの言語で機械翻訳を行えば、支離滅裂な結果となってしまいます。将来的には、話される言語の数は問題ではなくなるでしょう。ディナーパーティーの席で8人が8つの異なる言語を話しても、あなたは常に自分が聞きたいと思った言語で話を聞くことができるでしょう。

 

 こうしたイノベーションの研究や商業化は民間部門と防衛・情報コミュニティーの交流によって実現しつつあります。シリも米国防総省・国防高等研究計画局(DARPA)が資金を提供した人工知能(AI)プロジェクトから誕生しました。シリの音声認識エンジンを開発したのはニュアンス・コミュニケーションズです。あまり知られてはいないことですが、この会社はフォーチュン100社の70%に音声ソフトを提供しており、音声生体認証の研究開発に年間で3億ドル(約363億円)を超える資金を投じているのです。

 

 米国家安全保障局(NSA)とイスラエルのシギント部隊は暗号化によってデジタル通信の分析が難しくなっていることを受けて、音声生体認証と翻訳の基礎研究に大量の資金を投じています。情報コミュニティーの研究は、プロの翻訳家が複雑すぎてアルゴリズムでは分類できないと言う現地の方言や音の抑揚、微妙な違いの解明に取り組むものが多いのです。この研究に取り組むイスラエル人はフルタイムの兵役を終え、国防や情報に携わる米国政府の職員は民間に移っているため、こうしたイノベーションはいずれ公開されるでしょう。

 

 あらゆる言語の機械翻訳が実現すれば、世界は加速的につながりを深めるはすです。グローバリゼーションは英語をビジネスの共通語として採用することで今の段階まで進みました。今では英語を母語とする人の2倍の人口が英語を話しますが、次の波がやってくれば、共通語が必要なくなり、コミュニケーションの開放が進むでしょう。今は、韓国語を話すビジネスマンがブラジルで開かれている会議で中国語を話すビジネスマンと話をするときには英語が使われていますが、今後はその必要はなくなり、エリート層には属さない人々や英語を話さない多くの人々に向けて国境を超えたビジネスの扉が開かれるでしょう。

 

 新しいテクノロジーで取り払われる言葉の壁はこれだけではありません。機械のおかげで重度の聴覚障害や言語障害を抱える数千万人の人々の社会的な孤立が緩和されることでしょう。私が最近ウクライナを訪れたときには、エンジニア専攻の学生グループが青と黒のロボット手袋を見せてくれました。「Enable Talk」と呼ばれるこの装置は指につけたフレキシブルセンサーを使って手話を認識し、それを翻訳してブルートゥース経由でスマホにテキスト表示する装置です。テキストは音声に転換され、耳が聞こえない人も言葉が話せない人もリアルタイムで「話して」意見を伝えることができるのです。そのうち、「話す言語」がスマホのドロップダウンメニューから選べるようになるかもしれません。

 

 この新技術がもたらす経済的な恩恵は一目瞭然となるはずです。機械翻訳は、開拓や開放は難しいとみられている市場をものにするでしょう。インドネシアのような場所を考えてみましょう。ジャカルタやバリには英語や中国語、フランス語を話す人たちが大勢いるますが、その他6000の島の多くには外国語を話す人はほとんどいません。こうした地方でビジネスをするのにジャワ語(またはインドネシアで話されているその他700の言語のどれか)を流暢に話す必要がなければ、より参入しやすい市場になるはずです。現地の人々にとっても外部の資本を利用しやすくなります。

 

 インドネシアの東にあるパプアニューギニアには鉱床、農業に適した土地、貴重な海産物に恵まれた海(世界のマグロ資源の18%が生息している)という豊富な資源があります。しかし、850種類もの言語が使われているために外国人投資家は及び腰です。

 

 ビッグデータが翻訳に応用されれば、こうした状況は一変するでしょう。経済的に孤立していた地域が世界経済に統合されることでしょう。理論的には、機械翻訳のおかげでわれわれ誰もがバベルの塔を意のままにできるようになるでしょう。(ソースWSJ

2016年2月18日 (木)

ワッツアップ、月間ユーザー数が10億人到達!

米フェイスブック傘下のスマートフォン向けメッセージアプリ大手ワッツアップは今や月間ユーザー数が10億人に達し、黒字化への道のりで大きな節目を迎えています。

 

 ワッツアップの1日の発表によると、同社のアプリでは1日に約420億件のメッセージ、16億枚の写真、25000万本の動画がやり取りされています。また、すでに10億のグループチャットが作成されています。

 

 フェイスブックは2014年にワッツアップを約220億ドルで買収しました。フェイスブックの創業者で最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグ氏はこれまでに、ワッツアップが同社の利益に貢献するのはユーザー数が約10億人に達してからになるとの見通しを示していました。

 

 ワッツアップはフェイスブックに買収されてからも経営の自律性をほぼ維持しています。ワッツアップの共同創業者ジャン・コウム氏は、フェイスブックと傘下の写真・動画共有アプリのインスタグラムの主な収入源である広告には今も背を向けています。

 

 しかし先月、新たなビジネスモデルを模索し始めたことを明らかにしました。2年目以降年間1ドルの利用料を廃止するとともに、企業がワッツアップのユーザーと交流できる方法を探ると発表したのです。

 

 コウム氏はブログで「ワッツアップはシンプルな発想から始まった。それは誰もが費用や落とし穴を気にすることなく、地球上のどこにいても家族や友人と確実に連絡を取り合えるようにするというものだ。今回の成果を祝ってはいるが、当社が目指すものは変わらない」と説明しました。

 

ワッツアップは、カリフォルニア州メンロパークにあるフェイスブックの本社に移転せず、同州マウンテンビューにとどまっています。ワッツアップの57人のエンジニアから成るチームは、機能を追加するのではなく、世界で最悪のネットワーク環境にも対応できるアプリの開発に力を入れています。(ソースWSJ

2016年2月17日 (水)

世にも奇妙な日本国債のマイナス利回り!

世界の国債市場は鏡の向こうの世界へまた一歩進んだ。日本の10年物国債の利回りは9日、史上初めてマイナスに転落しました。スイス10年物国債をはじめ、他にもこうした現象が見られる国はあるものの、先進7カ国(G7)では前例がありませんでした。欧州中央銀行(ECB)による債券買い入れが投資家を刺激し、ドイツの10年物国債の利回りは昨年4月にプラス0.05%まで下落しましたが、このマイナス圏すれすれで利回りの低下に歯止めがかかりました。

 

 日本の場合、これは注目に値する瞬間です。直接的な引き金は、9日の日経平均を5.4%安に沈ませたリスク回避志向と、市場を驚かせた日本銀行のマイナス金利導入だったのです。ただ、日銀が導入したマイナス金利は他の中央銀行のそれに比べて大胆さには欠けています。

 

 これまで長年、日本国債はいつ事故が起きてもおかしくないものと考えられてきました。政府の債務残高は国内総生産(GDP)の2.4倍と主要先進国で群を抜いて高い上、依然増え続けているからです。国際通貨基金(IMF)は2030年までに2.9倍に達すると予想しています。また、日本は1998年にはムーディーズのトリプルA格付けを失い、現在はA1です。

 

 それでも日本国債の価格の下落(利回りの上昇)に賭けると痛い目に遭います。日銀が自主的に金融政策の調整をできる上に積極的に国債を買い上げているほか、国債は国内投資家が大半を保有していることが価格を支えているからです。

 

 マイナス利回りの債券は、安定的な収入源という本来の位置付けから本末転倒ではあるものの、急成長する資産クラスの一つです。バンクオブアメリカ・メリルリンチの統計によると、世界では市場の21.1%に当たる87000億ドル(約900兆円)の債券がマイナス利回りで取引されています。国債利回りの多くも、たとえプラス圏にとどまっている場合でも歴史的な低水準にあり、ドイツ、米国、英国の10年債利回りはいずれも過去最低に近いのです。

 

 世界の中銀が望ましい経済効果をもたらす政策能力に市場が疑いを持ち始めているのは明らかです。しかし中銀が道半ばで諦める可能性は低く、マイナス金利は政策手段の王道となっています。このような金利は銀行にも長期投資家にも嫌われるかもしれませんが、しばらくは続く公算が大きいと思われます。

 

(ソースWSJ

2016年2月16日 (火)

世にも奇妙な日本国債のマイナス利回り!

世界の国債市場は鏡の向こうの世界へまた一歩進んだ。日本の10年物国債の利回りは9日、史上初めてマイナスに転落しました。スイス10年物国債をはじめ、他にもこうした現象が見られる国はあるものの、先進7カ国(G7)では前例がありませんでした。欧州中央銀行(ECB)による債券買い入れが投資家を刺激し、ドイツの10年物国債の利回りは昨年4月にプラス0.05%まで下落しましたが、このマイナス圏すれすれで利回りの低下に歯止めがかかりました。

 

 日本の場合、これは注目に値する瞬間です。直接的な引き金は、9日の日経平均を5.4%安に沈ませたリスク回避志向と、市場を驚かせた日本銀行のマイナス金利導入だったのです。ただ、日銀が導入したマイナス金利は他の中央銀行のそれに比べて大胆さには欠けています。

 

 これまで長年、日本国債はいつ事故が起きてもおかしくないものと考えられてきました。政府の債務残高は国内総生産(GDP)の2.4倍と主要先進国で群を抜いて高い上、依然増え続けているからです。国際通貨基金(IMF)は2030年までに2.9倍に達すると予想しています。また、日本は1998年にはムーディーズのトリプルA格付けを失い、現在はA1です。

 

 それでも日本国債の価格の下落(利回りの上昇)に賭けると痛い目に遭います。日銀が自主的に金融政策の調整をできる上に積極的に国債を買い上げているほか、国債は国内投資家が大半を保有していることが価格を支えているからです。

 

 マイナス利回りの債券は、安定的な収入源という本来の位置付けから本末転倒ではあるものの、急成長する資産クラスの一つです。バンクオブアメリカ・メリルリンチの統計によると、世界では市場の21.1%に当たる87000億ドル(約900兆円)の債券がマイナス利回りで取引されています。国債利回りの多くも、たとえプラス圏にとどまっている場合でも歴史的な低水準にあり、ドイツ、米国、英国の10年債利回りはいずれも過去最低に近いのです。

 

 世界の中銀が望ましい経済効果をもたらす政策能力に市場が疑いを持ち始めているのは明らかです。しかし中銀が道半ばで諦める可能性は低く、マイナス金利は政策手段の王道となっています。このような金利は銀行にも長期投資家にも嫌われるかもしれませんが、しばらくは続く公算が大きいと思われます。

 

(ソースWSJ

2016年2月15日 (月)

円高が止まらない理由とは!

アベノミクスは強烈なパンチ力を持っているはずだった。しかし、実は大した威力はないことが判明しました。週初からの猛烈な円高進行と日本株の急落は、安倍晋三首相の日本経済再生プログラムを好感したこれまでの株高の基盤がいかにもろいかをあらわにしたのです。

 

 円は11日の海外市場で一時110円台を付け、直近では、日本銀行がマイナス金利導入を発表した直後の水準よりも約7%円高・ドル安水準で推移しています。その直接の原因は、海外投資家が日本株を買う一方で円を売るという人気の投資戦略を解消したことです。

 

 海外投資家は日本株を売却するときに同時に円の売り持ち高を解消します。こうした動きが円相場を押し上げ、投資家はこれをさらに株を売却する合図と受け止めました。多くの日本企業は円安に依存して収益を維持しているからです。これが、相場の総崩れにつながる典型的なフィードバックループです。

 

 最近の日本市場では海外投資家の重要度が高く、東京証券取引所の取引の60%は海外の投資家によるもので、10年前のシェアは38%でした。

 

しかし、投資家の動揺を招いたそもそもの原因は何だったのか。日銀のマイナス金利政策は遠慮がちに急いで導入されました。マイナス金利の導入は、日銀の大規模な量的緩和が限界に達したことを認めることにもなったのです。日銀のタイミングが悪かっただけなのかもしれません。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げや中国景気減速、原油安をめぐる懸念が世界的な株安を引き起こしているさなかでの追加緩和だったからです。

 

 いずれにせよ、結果的に日本国民の蓄えが犠牲にされていることが問題です。アベノミクスの一つの目玉は、国内主要年金基金に対し、国内債券での運用を減らす一方で日本株や海外の株式・債券への投資を増やすことを求める運用改革でした。しかし改革は、2015年に株価がピークを打ち反落しつつある時期と重なったのです。

 

 約135兆円の資産を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は昨年9月末時点で保有資産の43%を株式で運用していました。3年前の株式の比率は24%でした。従って、GPIFは今回の大幅な株安で大きな打撃を受けたはずです。しかも、日本国債の歴史的な相場上昇に乗じることができませんでした。海外資産の割合が増えたため、円高による痛手も大きくなりました。

 

 従来退屈な運用に終始していた日本の投資マネーを経済の中でよりリスクの高い部門に振り向けることが、成長を加速する上で正しい行いであることはほぼ間違いないことだと思いますが、短期的な損失が生じることで、緩和政策全体への支持が失われる可能性もあります。

 

 相場のこれまでの上昇分が瞬く間に吹き飛んでしまいかねないことを考えると、投資家はアベノミクスが本当はどれだけ盤石なのか疑問を感じざるを得ないはずです。(ソースWSJ

2016年2月14日 (日)

マイナス金利で深まる景気減速懸念!

マイナス金利が銀行の収益を圧迫し、広範な景気減速懸念をかきたて、中央銀行は手出しがほとんどできなくなっています。

 

 中央銀行が市中銀行から預かる預金に金利をつけずに金利をとるというこの状況が、投資家を慌てさせ、警戒すべき難問を投げかけています。不良債権を抱えた銀行は、これほどの低金利には耐えられないかもしれません。だが足元のおぼつかない経済は金利上昇を容認できない可能性があるります。

 

 欧州や各地の傷を負った銀行にとって、最悪のタイミングでマイナス金利を迎えたことになります。金融危機以降に施行された規制で銀行経営は一段とシンプルで回復力が高いものになりましたが、収益の流れが閉ざされ、株式や債券、商品(コモディティー)の取引は収益力が薄れています。過去の悪しき行為に対し巨額の罰金を科された多くの銀行は、資本増強を差し控えています。

 

 いま、マイナス金利が銀行の最も伝統的な収入源を脅かしています。銀行が融資で得る金利と預金に支払う金利の差、つまり利ざやです。マイナス金利の導入で経済全般の他の金利も低下し、借り入れが安くなっています。

 

 投資家らは、欧州と日本の中央銀行がマイナス金利を導入したことが、世界中の銀行株に打撃を与えている懸念の重要な要素だと言います。欧州の銀行が最もリスクの高い債務に対する金利やクーポン(利札)の支払いをやめる可能性や、新たに増資する必要があるなどの懸念の中心には、銀行部門全体の収益力低下傾向が弱まる兆しを見せていないことがあります。

 

 11日は銀行株にとって悲惨な年の新たな恐ろしい一日でした。フランスのソシエテ・ジェネラルは業績見通しを下方修正し、株価が13%下落しました。クレディ・スイス・グループは弱い決算を手掛かりに8.4%安となり、年初来の下げは43%に達しました。イタリアの5つの銀行は11日に株価が5%以上も下がりました。米国市場ではシティグループが午後の取引で6%以上も売られたのです。

 

 投資会社パシフィック・インベストメント・マネジメント(ピムコ)の金融調査部門グローバルヘッド、フィリップ・ボドロー氏は、「銀行にとっての重要課題は、金利と金融政策に何が起きているかだ。投資家は、中央銀行が金利をさらに一段とマイナスに押し下げることを心配している。そうなると銀行の利ざやが損なわれ収益に影響するからだ」と指摘しました。

 

 JPモルガン・チェースのエコノミストらは今週、銀行はマイナス金利に対応して現金を抱え込み融資を減らす可能性があると警告を発しました。しかし、スイスやデンマーク、ユーロ圏諸国などマイナス金利の国々では、まだそのような事例はありません。

 

 欧州中央銀行(ECB)は12月、金利をさらにマイナス水準に引き下げました。日本銀行は1月にマイナス金利を導入し、スウェーデンの中央銀行が11日、主要金利をマイナス0.5%に引き下げるなど、経済規模がより小さい一部の国々でも金利はさらにマイナスになっています。

 

 一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は11日の議会証言で、米経済により強くてこ入れする必要が生じた場合に短期金利をマイナスに押し下げる実効性を研究していることを明らかにしました。

 

 ある意味で、金利をマイナスにするのは賭けです。その理屈は次のようなものです。マイナス金利で銀行は打撃を受けるが、経済を動かすことになります。経済が強くなれば、銀行の業績回復に役立ち、銀行が崩れ始める前に、景気が回復に向かう必要があります。しかし、この賭けはうまくいっていないようです。

 

 結果はかなり心配なものになっています。弱い銀行が経済のさらなる足かせになるかもしれません。そして、経済が弱く、賃金と物価下落の悪循環であるデフレが迫る中、マイナス金利を導入した中銀は渋々方針転換して利上げすることになるでしょう。

 

 さらに、中銀には低迷する経済を活性化する他の手立てがほとんどなくなり、成長回復に苦慮しています。ECBは債券買い入れ措置を延長しましたが、ドラギ総裁は先月、3月に追加緩和策を講じる構えを示しました。日銀は、20年にわたる低インフレと進まぬ経済成長に終止符を打つべく、3年間の積極的な金融緩和に続いてマイナス金利導入を決めました。

 

 金利をマイナス水準に押し下げることは、一種の通貨安競争も意味しています。誰もこの争いから手を引こうとはしていないようです。世界の経済大国はどうにかしてインフレを促そうとしています。その手法の一つが利下げです。利下げすると通常、その通貨の投資妙味は薄れます。通貨安で輸入物価が上昇し、輸出業者の利益は高まります。

 

 スイスとスウェーデン、デンマークはいずれも、自国通貨を押し上げる外国資金の流入を防ぐためにマイナス金利を利用しています。エコノミストらは、日銀が1月にマイナス金利を導入した目的は円安誘導にあると指摘しました。しかし効果はありませんでした。円相場は11日も続伸し、マイナス金利導入発表時よりも高くなっています。

 

 これらの国々では、マイナス金利で銀行の問題が悪化しました。銀行は従来、預金金利よりも高い金利で融資することで、いわゆる利ざやを稼いでいます。低金利ですでに利ざやは少なくなっています。一方、銀行が債券市場などから資金を調達するコストは今年急上昇しています。

 

 マイナス金利でこの圧力が強まりました。銀行は中央銀行に資金を預けると実質的に金利を支払うことになりますが、それを顧客に転嫁するのは難しいでしょう。預金者は、銀行預金に手数料を払うよりも現金を抱えておくようになるでしょう。

 

 ドイツ連邦銀行(中央銀行)の統計によると、ドイツの銀行は収入の約75%を預貸の利ざやで稼いでいます。連銀によると、金利低下でドイツの銀行の金利収入は2007年の4190億ユーロから14年には2040億ユーロに落ち込みました。ドイツの金融当局はマイナス金利が同国の銀行にとって深刻な問題になる可能性を警告しています。

 

 デンマークの銀行業界団体によると、マイナス金利は同国の銀行にとって昨年は10億クローネ以上の負担になっています。

 

 その影響は精彩を欠く銀行の業績に表れています。イタリアのUBIバンカは11日、金利純収入が予想を下回ったと発表し株価が12%下がりました。銀行アナリストらは、利ざやに関して投資家の期待はさらに裏切られる可能性があると述べています。HSBCホールディングスとスタンダード・チャータード銀行は米金利が上昇した恩恵を受けそうですが、FRBが追加利上げする可能性は少なくなったようです。

 

 今のところ、マイナス金利が銀行に有利に働いている要素は、バランスシート上のほんの一部にしか確認できません。銀行が中銀に資金を預けても、一連の規則でマイナス金利の適用から外れる部分がかなりあります。JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル市場ストラテジスト、アレックス・ドライデン氏によると、ECBのマイナス金利の対象となる預金はいまのところ、ユーロ圏の銀行資産のわずか2.2%です。日本については、たった0.9%です。同氏は、「指標金利をマイナスにすることは最終的な限界ではない。マイナス金利が消費者と実体経済に影響するようになって初めて、大混乱に陥るだろう」と語りました。

 

 金利がさらにマイナスになると、銀行は一つの選択を強いられるでしょう。利ざやのさらなる縮小に甘んじるか、顧客にマイナス金利を転嫁して銀行から遠ざけるリスクを冒すかです。いずれにしても銀行部門にとってはさらなる打撃を意味します。

 

 ピムコのボドロー氏は、ユーロ圏ではそうならないとみています。ECBは銀行部門の危機が実体経済に波及することを警戒しているからです。「ECBがもっとマイナス金利に踏み込めば、金融の安定性への懸念が高まるので、それはかなりな驚きだ」と述べました。(ソースWSJ

2016年2月13日 (土)

世界の市場で何が起きているのか-5つの背景!

株式、債券、為替、コモディティー(国際商品)の年初来のボラティリティー(相場変動率)上昇を受け、投資家は何が起きているのか慌てて見極めようとしています。

 

 もっともらしい答えが見つかったかと思うとすぐに市場は反対方向に動き、また説明がつかなくなるといった毎日です。少し前までは、原油価格の急落が株価指数下落の最大要因のように思えていました。しかし今では、SP500種指数の年初来下落率が業種別指数の「エネルギー」の下げよりも大きく、さらには「金融」がそれ以上に大きな下げ幅を記録しています。

 

 広く受け入れられるような包括的な理由を見つけるのは難しいことが分かったため、およそ十分とは言えない矛盾した説明が乱立しているありさまです。それでもアナリストやトレーダーは、前途に待ち受ける相場の山や谷に備えロードマップ(行程表)を作成したい一心で答えを求め続けています。

 

 コモンウェルス・フィナンシャル・ネットワークのブラッド・マクミリアン最高投資責任者(CIO)は「投資家の信頼感を大きく揺るがす悪材料が世界中で同時に発生した」とし、「足元のボラティリティーは極めて異例で恐ろしいと受け止められており、そうした側面が問題を悪化させている」と指摘しています。

 

 では市場の動きを説明する一番の方法は何か。以下に五つの理論を挙げると。

 

1.動きの速い投資マネー

 

 投資家は昨年、預貸利ざや(貸出金利と預金金利の差)が拡大することで銀行の利益が増えると予想していました。ほぼ1年を通じて米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げの構えを見せていたからです。しかし年が明けると、投資家は「より低い金利がいっそう長く続く」との見方に転じました。あと数年は金利が大きく上昇することはないという粛然たる投資家予想を背景に、銀行株は年初から急落しています。日本銀行が129日に発表したマイナス金利の導入は、すでに足元がふらついていた世界の金融部門に衝撃を与えたのです。

 

 こうした流れは世界経済に垂れ込める暗雲と、「マクロ(経済)の」主要問題を材料に大きな相場変動に振り回されてきたここ1年の取引を浮き彫りにしています。TCWグループのシニアポートフォリオマネジャー、ダイアン・ジャフィー氏は「動きの速い投資マネーは利上げを見込んで2015年末に銀行(株)へ流入したが、その後逃げ出した」と言います。

 

2.人民元への懸念

 

 現在の市場混乱の発端は中国だとの指摘もあります。中国が人民元相場の切り下げを余儀なくされるとみる投資家は多い。そうなれば、少ない輸出収入をめぐり国同士の競争が激化し、世界の景気懸念がいっそう深まる可能性が高いのです。中国当局は人民元を減価させる考えはないとしていますが、一部のヘッジファンドは数十億ドル規模の元売りを仕掛け、切り下げに追い込もうとしています。

 

 8月の人民元切り下げが世界株安の引き金となったこともあり、アナリストらはこうした攻防を注意深く見守っています。政府統計の信頼性が長らく疑問視されてきた中国の景気の弱さがいずれ露呈するとの懸念も強くあります。QSインベスターズのポートフォリオマネジャー、ウェイン・リン氏によると、多くの投資家は(中国の)最近の動向が「ハードランディング(硬着陸)」を意味すると案じています。

 

3.政府系ファンド(SWF)の売り

 

 原油価格が高かったときに産油国は数十億ドルもの資金を投資ファンドに注ぎ込みました。しかしこれらのファンドは現在、当時買った株式の売却を進めており、これが米国株の売りを加速させているとの見方もあります。

 

 ドイツ銀行のデータによると、産油国投資家の保有比率が特に高い米国株は、証券取引所を運営するナスダック、貴金属・宝飾品大手ティファニー、保険大手アメリカンファミリー生命保険(アフラック)、資産運用大手ブラックロックなどです。

 

 もちろん、実際に株を誰が売って誰が売っていないかが分かるデータはほとんどありません。また、これらのファンドがどれほど大規模だからといって本当に米市場に多大な影響を及ぼし得るのか、疑問視するのも一理あります。

 

 JPモルガンは、世界のSWFが今年売却を余儀なくされる株式の総額を750兆ドルと予想していますが、米国市場の時価総額は直近で209500ドルです。

 

 JPモルガン・アセット・マネジメントのマルチアセット・ソリューションズ部門グローバルストラテジスト、ベン・マンデル氏は「原油安の長期化が予想されますが、原油収入を原資とするSWFの投資動向が米国株や株式一般にとって致命的な脅威になるとは思わない」と指摘しています。

 

4.米景気減速への不安

 

 多くの投資家は、ここ数年にわたり先進国中最も堅調だった米国の経済成長がドル高などのさまざまな世界要因の影響で頓挫する、との不安を抱いています。米サプライ管理協会(ISM)が発表した1月の製造業景況指数が業況の拡大・縮小の境目となる504カ月連続で下回ったほか、1月の米雇用統計では非農業部門就業者数の伸びが鈍化したことが明らかとなり、連邦準備制度理事会(FRB)関係者らは懸念を示しています。

 

 UBSウェルス・マネジメント・アメリカスの株式シニアストラテジスト、デビッド・レフコウィッツ氏は「誰もが実際に気にしている最大のリスクは、新興国が大幅に減速し、その影響が米国に波及することだ」と言います。

 

5.需要低迷

 

 20146月以来の原油価格の低迷は、原油安をよそに世界の産油国が増産に走ったことによる供給過剰が主な原因ですが、最近では需要の鈍化も指摘され始めました。

 

 キングスビュー・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ポール・ノルテ氏は「コモディティー価格全体が低迷した場合、一般的に言えば、それは世界的に需要が弱いということだ」と話しています。(ソースWSJ

2016年2月12日 (金)

米大統領選に異変、序盤2戦で決定打出ず!

米国の政治システムの中で戦っている人の多くは長年、小さくて風変わりな2つの州(アイオワとニューハンプシャー)が大統領選の候補指名争いで果たす過剰な役割を減らせないものかと密かに願ってきました。そして、今年こそ、それが実現したかもしれない。

 

 ニューハンプシャー州の予備選の結果が明らかになり、あることが印象に残りました。それは、それまで先行していた候補者を地に落とし、新たなトップランナーを選び出すことが多かったこの2州が、いかにその役割を小さく落ち着かせてしまったかということです。

 

 共和党のドナルド・トランプ氏は同州予備選で納得のいく勝利を収めました。明らかなトップランナーとしての勢いを得て同州を出発することになります。同氏に代わる明確な候補者はおらず、混戦模様の4人がすぐその下に控えているという状況です。共和党は候補者の選別段階にはまだ遠く及びません。そして今や選挙戦は、アイオワでトランプ氏の勝利を阻止した保守派や福音派が大きな力を持つ州へと移行しつつあります。先行きは見えません。

 

 民主党サイドでは、バーモント州選出の上院議員、バーニー・サンダース氏が印象的な勝利を収めました。これはヒラリー・クリントン前国務長官に平穏かつ潤沢な資金で選挙戦を乗り切ってもらいたいと望んでいた同党指導者たちの多くを悩ませる結果です。だがレースはネバダ、サウスカロライナ両州へ移ります。ここはサンダース氏の主な支持層――白人、高い学歴のリベラル派、若者――の影響力が弱まり、代わりにヒスパニック系やアフリカ系の有権者が大きな割合を占めているところです。彼らはクリントン氏の強みであり、サンダース氏の弱みでもあるのです。

 

 つまり、全米各州の有権者たちが今、自分たちも候補者選びで影響力を行使できると考えるのも至極当然です。共和党は5人、もしかすると6人の候補者が選挙戦を続けるでしょう。ケーシック、クルーズ、ルビオ、ブッシュ、トランプ、そしておそらくクリスティーの各氏です。彼らの名前は少なくともあと数週間は取りざたされるでしょう。

 

 民主党候補の中でサンダース氏は、かつて大統領候補になるのは「必然的」だと言われていたクリントン氏を抑え、他の多くの挑戦者たちが持ち得なかった2つの特質を得て浮上しました。それはしっかりとした支持基盤と潤沢な資金です。よって、候補者選びのレースは当面、終わらないでしょう。

 

 もちろん、歴史を完全に無視するわけにはいきません。アイオワとニューハンプシャーの場合は、とりわけそうです。この2州で負けて党の指名を勝ち得た候補は1992年のビル・クリントン氏以来、誰もいないからです。これは、アイオワで勝ったテッド・クルーズ氏と、ニューハンプシャーで勝利したドナルド・トランプ氏が有利であることを意味します。サンダース氏とクリントン氏は2人とも試合に残こります。仮に歴史が何かの指針になるとしての話ですが。

 

 しかし今回の選挙戦は、これまでの伝統や前例にほとんど敬意を払っていないことをすでに示してきました。従来の秩序がここで戻ってくると考える正当な理由もありません。現時点ではニューハンプシャーの予備選が、両党それぞれの各候補者の相対的な強さや弱さについて何を教えてくれたのかを考えるのが良いでしょう。

 

 トランプ氏の強さについて、いまだに疑い続けている人は、ニューハンプシャーのあらゆる有権者層から、彼がどれだけ満遍(まんべん)なく支持を集めたかについて、じっくり考える必要があるでしょう。

 

米大統領選ニューハンプシャー州予備選の様子

 11月の米大統領選挙へ向けた民主、共和両党の候補指名争いは9日、ニューハンプシャー州で予備選が行われ、民主党はバーニー・サンダース氏、共和党はドナルド・トランプ氏が勝利しました。予備選の様子を紹介します。

 

 出口調査によると、トランプ氏は中道派や保守派からよく支持されました。しかも、共和党右派の多くから信用されないイデオロギーを持つ人物にしては、かなり保守的な有権者からも驚くほど支持されました。彼はほとんどすべての年齢層から支持されたのです。

 

 トランプ氏は大学の学位を持たない有権者の間で最も良く支持されています。移民問題を最優先課題だと考える人たちの間でも人気は急騰しています。しかし、一番印象的なのは、共和党有権者のすみずみに支持が拡大したことです。トランプ氏以外を推す有権者が他の候補者の間で分裂し続ける限り、彼は恩恵を受けるでしょう。 

 

 ただし、トランプ氏にとっては問題であり、すぐ後ろに控える4人にとっては希望となる、ある事実が存在します。再びニューハンプシャーの話に戻りますが、予備選のずっと前に支持する候補者を決めていた有権者に比べて、ぎりぎりになって決断した有権者からの支持があまり良くなかったということです。

 

 土壇場で決断した有権者の多くはケーシック氏に決めたと話しました。トランプ氏の支持者で最大の割合を占めているのは、1カ月以上前に投票を決めた有権者たちです。つまり、アイオワ同様、ニューハンプシャーでも、トランプ氏の支持者の中核をなしているのは忠誠心に厚い有権者であることが示唆されています。同時に、選挙戦が長引くに連れて、そうした中核支持層は拡大しないであろうことも暗示されているのです。

 

 ニューハンプシャーでの混乱が落ち着けば、民主党でも同じような展開になるでしょう。出口調査によると、サンダース氏とクリントン氏の激しい選挙戦にも関わらず、有権者の間にはほとんど変化が見られませんでした。支持する候補者を早々と決めた有権者と、ぎりぎりになって決めた有権者の間には、ほとんど違いがありません。サンダース氏の支持者は、トランプ氏同様、最初から支持が固い有権者たちなのです。

 

 しかし、サンダース氏にとって憂慮すべき問題――クリントン氏にとっては勇気づけられること――は、ニューハンプシャーでサンダース氏に投票した有権者の多くは「無党派」を自認する支持者だったことです。民主党本流の有権者の中ではクリントン氏の支持率はサンダース氏と拮抗していました。そしてクリントン氏の選挙戦の行方は、今や彼女のために支持を強化しつつある党の本流にかかっているのです。(ソースWSJ

2016年2月11日 (木)

低金利が米経済に及ぼす深刻な影響!

 2016年を迎えたとき、米国の人々は金融危機以降では初めての大幅な金利上昇に身構えていました。ところが、金利はまた落ち込み、金融市場を揺るがし投資家や消費者、企業などの計画を台無しにしています。

 

 米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利をゼロ近辺から引き上げてから1カ月余りたちますが、市場全般で金利が下がっています。住宅ローンや事業融資など貸出金利の指標となる10年物米国債の利回りは、過去1年間で最低の1.7%割れに低下しています。銀行の資金調達コストの目安とされる2年物米国債利回りも大幅に下がりました。

 

 金利は好景気の場合、消費者や企業の資金需要増加と銀行やその他の金融機関の利益拡大を反映して上昇する傾向があります。だからこの金利低下は、投資家の警戒感を呼んでいるのです。

 

 金融銘柄の株価は全般に、金利と平行して下がっています。KBWナスダック大手米銀指数は年初来18%低下しています。これに対し、SP500種指数は9.4%下げました。金融株が落ち込んでいる背景には、低金利が今後何年も続き、銀行の収益力を損ない、保険会社や運用会社、年金基金などの運用益を搾り取るとの見通しがあるからです。

 

 今のところFRB当局は選択肢をしぼらずにいますが、今年追加利上げする確率は徐々に低下しているようです。FRBのイエレン議長は10日と11日に議会証言を行いますが、そこで当面の政策見通しが明らかになる可能性があります。

 

 株式相場の下げは、低金利による恩恵の多くが摘み取られた最新の証拠です。一方、特に金融危機以降の低金利に悩まされてきた預金者にとっては、負担が増し続けています。

 

 投資家やエコノミストの多くは、低金利時代がしばらく続くとみています。5日に発表された1月の雇用統計では、米経済が、目覚ましくはないものの、息切れ気味の新興国からの逃避資金を十分集め続ける状態に依然として変わりないことが確認されました。欧州や日本など先進諸国では、中央銀行による緩和政策で債券利回りが消滅しつつあり、これもまた米国の利回り低下につながっています。

 

 金融市場が混乱から脱して米経済が成長を続け、雇用を生み、賃金を押し上げ、徐々にインフレを高めるというFRBの予想通りになる可能性もあり、そうなれば、FRB当局は利上げを続けることができます。

 

 しかし、成長の減速やインフレ低下圧力で、当局が景気見通しを下方修正し追加利上げを延期する可能性もあります。

 

 FRBのブレイナード理事は今月1日、ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、「最近の展開は、注意深く待つことの正当性を裏付けている」と語りました。

 

 FRB当局者らは12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、16年中に4回利上げする見通しを示しました。現在、先物市場では、FRBが年内にもう一度利上げする可能性さえ50%未満とみています。

 

 金利低下の悪影響を最も受けた一角が大手米銀です。金利低下により貸出金利と預金金利の間の利ざやが薄くなり、銀行の収益を圧迫しているのです。

 

 他の金融機関も損害を受けています。年金基金や保険会社など、将来の資金請求に備えて長期資産を保有する金融機関では、金利が下がると割引率も下がり、将来支払うべき保険金や給付金などの債務の現在価値が増えるからです。

 

 低金利は資金の借り手にとってありがたいことのはずですが、一部では融資基準が厳格化している兆しがあります。例えばFRB21日に発表した10-12月期の上席融資担当者調査では、商業及び工業融資の基準厳格化が明らかになり、16年も引き締めが続く見通しが示されました。

 

 もちろん、低金利は住宅金融業者や昨年過去最高の新車販売台数を記録した自動車メーカーにとっては、引き続き好材料となっています。

 

 しかし、自動車販売が現行のペースでもっと伸び続けるのは難しい、とみるアナリストや投資家は多いようです。また、自動車株は今年に入り下げていて、ゼネラル・モーターズの株価は年初来18%安、フォード・モーターは同19%安となっています。

 

 同様な動きが住宅市場でも根付きつつあります。連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、24日までの週の30年物固定住宅ローン金利は昨年4月以来最低の3.72%でした。

 

 アラバマ州モビールの住宅金融、モーゲージ・チームワンで融資を仲介するリンダ・マッコイ氏によると、住宅を手放す人たちが低金利融資を諦めることに痛みを感じていないため、低金利の長期化で一部の住宅購入が促されています。しかし、単に低金利を望む人はもうほとんどいないと言います。マッコイ氏は「大半の人がすでに借り換えたのだ」と指摘しました。(ソースWSJ

2016年2月10日 (水)

アマゾン株が決算発表後に売られた5つの理由!

米ネット通販大手アマゾン・ドット・コムが28日発表した10-12月期(第4四半期)決算を受け、アマゾン株が売られています。同社株は28日の時間外取引で終値比13.43%安となりました。

 

 その理由を以下にまとめてみると

 

1. 利益は出ているが十分ではない

 

 アマゾンの10-12月期純利益は48200万ドル(約570億円)、1株利益は1.00ドルだった。トムソン・ロイターがまとめたアナリストの1株利益予想は1.56ドルで、それを大きく下回ったためです。

 

 前年同期の1株利益0.45ドルからは2倍以上に増えたのですが、投資家はアマゾンがようやく高い利益を何四半期も連続計上できるようになったと示してくれることを期待していたのです。

 

2. 増収も予想を下回った

 

 売上高は3575000万ドルと、アナリスト予想の360億ドルをやや下回った。ただし、前年同期の売上高293億ドルからは22%増えています。

 

3. クラウドの売上高と利益も期待ほどではなかった

 

 投資家は利益成長のカギを握るのはクラウドコンピューティング事業のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)とみています。AWS部門の売上高と営業利益は共に大幅増となったのですが、いずれもアナリスト予想には届かなかったのです。

 

 AWS部門の売上高は前年同期比69%増の24億ドル、営業利益は同24000万ドルから68700万ドルに増加しました。しかし、アナリスは売上高が70%以上増えると予想していたのです。

 

4. 売り上げ成長のための支出が依然大きい

 

 営業費用は346億ドルと前年同期の287億ドルから20.5%増えました。

 

5. 過去1年の株価上昇率100%は行き過ぎだった

 

 アマゾンの28日終値は635.35ドルと、過去1年で2倍以上に値上がりしました。決算発表後の時間外取引で550.00ドルに下がったのですが、この水準でも過去1年の上昇率は約80%となかなかではあるのです。(ソースWSJ

2016年2月 7日 (日)

米大統領選2、過去と異なる10のこと!

今回の米大統領選挙は、アウトサイダーの登場やカネの価値の変化など、際立った特徴を持っています。何が2012年の前回選挙と違うのだろうか。以下はその10の特徴です。

 

1. 希望を国民に売るのは難しい

 

 共和党候補のジェブ・ブッシュ氏は、「幸せな戦士」になることを誓いました。その瞬間から、世論調査での支持率が落ち始めました。民主党候補のヒラリー・クリントン氏は、自らが進歩主義者であり、物事を着実に成し遂げようとすると述べています。これとは対照的に、バーニー・サンダース氏は大手銀行から健康保険制度に至るまでのあらゆるものをぶち壊すことを誓い、多数の聴衆を集めています。そして、ドナルド・トランプ氏は「米国はもう勝者ではない」と言った後、世論調査で上位を維持しています。

 

 バラク・オバマ氏は8年前、希望のメッセージで大統領の座に登り詰めました。それは若者、マイノリティー(少数派)、無党派のほか、一部の共和党員の心にさえも響きました。現在の世論調査を見ると、有権者たちはワシントンと大手企業に怒りと不満を抱いており、これがトランプ氏やサンダース氏のようなアウトサイダーを後押ししています。彼らは有権者たちを窮地に追いやった連中にその痛みを負わせることを約束しています。

 

2. 本流を脅かすアウトサイダー

 

 ミット・ロムニー氏は12年の前回大統領選において、いわゆるエスタブリッシュメント(主流派)のお気に入りの候補でした。他の候補者たちは、もっと保守的になって取って代わろうとしました。ただ初期の段階で、彼らが成功しないことは目に見えていました。

 

 しかし、今回の共和党有権者たちは、さまざまな主流派候補をめぐって分裂しており、最有力候補であるトランプ氏に対する保守的な代替候補をまだ決めかねています。この代替ポストに最も近いのはテッド・クルーズ上院議員です。

 

 民主党では、サンダース氏への支持は、一部の民主党員が本流に対して持つ不満の表れです。依然としてクリントン氏が指名を獲得する公算は大きいものの、サンダース氏はとりわけアイオワ州およびニューハンプシャー州で、クリントン氏に迫っています。

 

3. 歴史に残る女性候補の存在

 

 クリントン氏が民主党の指名候補になれば、主要政党から指名を獲得した米国史上初の女性となります。この見通しは比較的高齢の女性など、一部の層を勇気づけています。それはまた、オバマ氏が08年にアフリカ系米国人として初めて主要政党の指名を獲得したときと同様に、米国全体の見解をも試しているのです。

 

 クリントン氏は、オバマ氏と戦った08年当時よりも、自分が立候補する歴史的な意義を前面に出して選挙を戦っています。クリントン氏は今回、サンダース氏を支持する民主党員や、クリントン王朝に批判的な有権者たちから支持を取り付けるという難題にも直面します。

 

4. レガシー候補2人の存在

 

 クリントン氏と同様にブッシュ氏も、自身の名字が指名獲得の足かせになることを心配しています。ブッシュ氏はある意味、より苦しい立場にあります。なぜなら、父と兄に次ぐブッシュ家で3人目の大統領になるからです。クリントン氏の夫であるビル・クリントン元大統領は今も民主党支持者の間で人気です。しかし、ジョージ・W・ブッシュ氏が弟ジェブ氏の人気をかさ上げする公算は小さい。たとえ共和党支持者の間であってもです。

 

5. 現職のオバマ氏が資産に

 

 08年と12年の大統領選で、ジョージ・W・ブッシュ氏と顔を並べたがった共和党候補は1人もおりませんでした。イラク戦争への反対意見が強まり、ブッシュ氏の人気が落ち込んでいたからです。16年現在、オバマ氏に対する全体としての支持率は最近の外交政策に関する問題で低下しているものの、民主党支持者内での人気は安定的に推移しています。オバマ氏はアフリカ系米国人の支持を獲得する上でとりわけ有効であり得ます。ホワイトハウスとクリントン陣営との連携はほぼ常になされているのです。

 

6. 外交政策と国家安全保障が経済を凌駕

 

 国家安全保障が再び最優先課題となりました。経済が支配的テーマだった2008年と2012年からのシフトです。これはパリとサンバーナディーノ(米カリフォルニア州)での銃乱射事件などを受けて、テロに対する恐怖が再燃したためです。

 

 12月のウォール・ストリート・ジャーナル/NBCニューズ共同世論調査では、国家安全保障とテロリズムを政府の最優先課題にすべきだとの回答が全体の約40%に達しました。同調査ではまた、この問題を優先課題のトップ2つに入るものだとの回答が61%に達し、昨年春の39%から急増しました。

 

7. これまでとは違うカネの価値

 

 ブッシュ氏は、スーパーPAC(パック)と呼ばれる特別政治活動委員会の資金を最も多く調達しましたが、敗れつつあります。そしてトランプ氏は、スーパーPACに頼らず、それほどカネも支出していませんが、支持率でリードしています。これは、有権者が今や、カネでは買えない何かによって動くことを示唆しています。トランプ氏が最初にテレビ宣伝に乗り出したのは、新年が始まった直後だったし、それまでは自身の爆弾発言などを取り上げる報道に大きく依存していました。彼はまたツイッターも利用しています。

 

8. 小口の寄付者が登場

 

 オバマ大統領の選挙対策本部は2008年と12年に小口の寄付をユニークな特徴にしました。サンダース氏は今回、記録的なペースで100万人の個人寄付を集め、現在は200万人以上になっています。共和党候補者で元神経外科医のベン・カーソン氏もまた、小口の寄付を通じて相当の金額を調達してきました。

 

9. 大きくなる有権者の怒り

 

 有権者の怒り、主として経済をめぐる怒りは、前回2回の選挙で定番でした。16年には、有権者たちは一段と怒っています。エスクワイヤーとNBCニューズの調査によれば、1年前よりも怒りが増している米国人は半数に上っています。他の調査は、WSJNBCニューズの調査を含め、怒りの理由が変化したことを示しています。それは経済をめぐる怒りだけではありません。政治システムへの不満と、共和党員にとっては、同性婚の合法化など最近の社会変化への怒りです。

 

10. 短い予備選と長くなる本選

 

 16年の予備選はこれまでより短く、討論会の数もはるかに少ないのが特徴です。予備選の投票は1月初めではなく21日に始まります。そして終わりも早い。これに対し、候補者を指名する全国党大会は過去の選挙サイクルよりもほぼ1カ月早めで、その結果、本選のサイクルは長くなります。(ソースWSJ

2016年2月 6日 (土)

NH州民主党予備選、サンダース氏が圧倒的優位!

9日の米ニューハンプシャー州大統領選予備選を控え、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBSニューズ、世論調査機関マリスト・ポールが同州で行った最新の世論調査によると、民主党候補指名争いではバーニー・サンダース上院議員(バーモント州)がヒラリー・クリントン前国務長官を20ポイント差と大幅に引き離していることが分かりました。

 

 先週実施された前回の世論調査結果とほとんど変わりはなく、サンダース氏は圧倒的優位を保っています。1日行われたアイオワ州党員集会では、クリントン氏が1ポイント以下の僅差でサンダース氏を抑えて辛勝した。サンダース氏は、自分は敗者ではなく事実上の引き分けに持ち込んだ勝者だと主張しています。

 

 今回の調査は23日の両日ニューハンプシャー州で行われたもので、サンダース氏は2000年前後に成人となったミレニアル(千年紀)世代からの強い支持を受けて、支持率が58%と、クリントン氏の38%を大きくリードしています。アイオワ州党員集会前の先週の世論調査では57%対38%でした。クリントン氏もサンダース氏も、アイオワ州の党員集会の結果から弾みをつけられないでいます。

 

 ニューハンプシャー州の世論調査では、サンダース氏は隣接のバーモント州選出であることが大きな利点となっています。サンダース氏の問題は、ニューハンプシャー州での絶対的な強さが、同氏にそれほど好意的ではない今後の他の州の予備選の躍進につながるのか、それとも失速してしまうのかどうかです。次に予備選と党員集会が開かれるサウスカロライナ、ネバダの両州では、マイノリティー(少数派)の有権者がニューハンプシャー州よりはるかに多く、世論調査ではクリントン氏が大差でリードしています。

 

 今回調査では、サンダース氏はほぼすべての有権者層でクリントン氏を離していますが、中でも若者の間の支持が厚いのです。30歳代未満の投票に行く公算が大きい有権者の間では、サンダース氏支持が76%、クリントン氏が24%でした。サンダース氏は、クリントン氏が支持を広げようとしている若年女性層でも強く、45歳未満の女性層の支持率では、サンダース氏が64%、クリントン氏が35%。一方46歳以上の女性の間では、逆にクリントン氏がサンダース氏を9ポイント上回っています。

 

 クリントン氏の支持者らは、ニューハンプシャー州予備選ではサンダース氏が勝利するだろうとしながらも、クリントン氏との差を一ケタ台に抑えたいと希望しています。20日に予備選が実施されるサウスカロライナ州は、黒人の有権者の比率が高く、クリントン氏は有利な立場にあり、クリントン陣営は大差で勝利すると見込んでいます。ニューハンプシャー州の民主党予備選の有権者に占める黒人の比率は1%以下、ヒスパニック系は1%となっています。(ソースWSJ

2016年2月 5日 (金)

アップル株、もっと敬意を払われるべき!

米アップルが現在抱えるトラブルの中心にあるのは、「iPhone(アイフォーン)」の成長鈍化です。ただ状況は一部の投資家が考えていると思われるほど悪くありません。アイフォーンに代わって成長をけん引する大型新製品のないアップルについて、投資家は全盛期が過ぎたと懸念しています。このことは、同社株が過去半年に約20%下落した一因になっています。

 

 それは、高成長株から退屈なバリュー株への、数年越しの変化の仕上げとなりそうです。そうした変化は通常、良くない兆しとなります。世紀の変わり目にマイクロソフトやシスコシステムズに起きたことを見るといいでしょう。しかし、今はバリュー株としてのアップルの魅力を見極めることが重要です。26日発表の10-12月期(第1四半期)決算に対する反射的な反応がどうであれ、長期的にみると同社は同業者の轍(てつ)を踏むには程遠いことが示唆されます。

 

 2000年、シスコとマイクロソフトの時価総額はバリュエーション拡大を受けて一時5000億ドル(現在のレートで約591800億円)を超えました。200002年の予想PER(株価収益率)はそれぞれ平均3234倍でした。その3年間、両社の1株利益は1桁とはいえ成長が続いたのです。ITバブルの後退とともに、両社の時価総額も大きく減少し始めました。シスコの予想PERは、利益が依然として成長しているなか3年で75%縮小。マイクロソフトは60%縮小しました。

 

アップルは全く違います。予想PERは約10倍と、歴史的平均やナスダック銘柄全般からかなり割安な水準で取引されています。膨大な保有現金を加味すると、PERはさらに控えめにみえます。これは、他の巨大IT企業を見舞ったのと同じバリュエーション面の障害にアップルが直面していないことを意味しています。

 

 さらに、アナリストらは向こう3年について、依然として年平均成長率1桁での伸びを見込んでいます。過去数年の足元にも及ばないとはいえ、アップルの現在の株価には見合っていません。アナリストたちは10-12月期の1株当たり利益について、前年同期の3.06ドルから3.23ドルに増加するとみています。たとえアップルが躍動感を失ったのだとしても、その核は十分に力強いようです。(ソースWSJ)

2016年2月 4日 (木)

人工知能、日銀との心理戦に敗北!

日本銀行の黒田東彦総裁は先週、初となるマイナス金利の導入を決定してエコノミストや投資家に衝撃を与えましたが、同時に総裁は、人工知能(AI)にも肩すかしを食らわせました。

 

 野村証券とクレディ・スイス証券は昨年、予想される金融政策変更の手掛かりを得るために日銀の声明を分析するAIを開発しました。このプログラムでは、日銀の声明や景気判断の文言を分析するテキストマイニング手法が用いられています。「インフレ期待の低下」や「物価の上昇」といった文言を数値化し、その結果を基に日銀の「センチメント」を測る指数を算出します。そして日銀が景気支援に動く可能性を検討する際にアナリストらがこの指数を参照するのです。

 

 こうしたAIプログラムが予測に用いるデータの期間は非常に短いのですが、野村とクレディ・スイスは先ごろ、10月の分析結果について、AIに客観性と有用性がある証拠であると指摘しました。両社の指数はいずれも、当時エコノミストの間では追加緩和期待が比較的高まっていたにも関わらず、日銀が行動するリスクは限定的だと示唆していたのです。そして実際に、日銀は10月の金融政策決定会合で政策を現状維持としました。

 

 しかし、先週29日の政策決定会合の結果は予想が外れました。日銀政策委員が追加緩和の必要性を感じていることはいずれの指数にもほとんど表れていなかったのですが、結果的に日銀は、予想外のマイナス金利導入で金融市場に揺さぶりをかけたのです。2社のAIプログラムが黒田総裁に裏をかかれたことから、当面は人間の予測がコンピューターに取って代わられることはなさそうです。

 

 学界や報道機関、さらには英中銀イングランド銀行に至るまでがセンチメントを見抜くためにアルゴリズムを利用しており、こうした傾向は強くなっています。野村とクレディ・スイスが採用したテキストマイニングもその一環ですが、両社はいずれも人間の分析の代わりとしてではなく、補強として指数を用いています。

 

 クレディ・スイスのエコノミスト、塩野剛志氏は、日銀の先週の政策判断を受け、AIプログラムに微調整を加えることにしたと述べました。原油価格や株価、黒田総裁の直近の発言など、最新のデータを取り込んだ新バージョンを試験しているといいます。

 

 クレディ・スイスと野村は従来、毎回の日銀政策決定会合後にのみデータを更新していました。つまり、黒田総裁の数週間分の講演や国会答弁は除外されていたのです。クレディ・スイスの「日銀テキスト・インデックス」を開発した塩野氏は、先週の政策決定を予想する上で「1カ月前の文章までしか読み込んでいなかった点が力不足だった」と述べいます。

 

 野村のシニアクオンツアナリスト、山本裕樹氏によると、同社も日銀が今年から年4回公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」や、政策会合の約1週間後に公表される「日銀金融政策決定会合における主な意見」を取り入れる形で、AIに改良を加えています。野村も総裁の講演や国会答弁の読み込みを検討しているといいます。

 

 人間にとってもアルゴリズムにとっても事態を極めて複雑にするのは、黒田総裁が明らかに市場に最大のインパクトを与えることを追求した結果、指示を誤ることです。黒田総裁は201410月と先週の政策決定会合の直前まで、追加緩和の必要はないと主張していましたが、日銀は結局追加緩和を発表しました。ここ数週間は日銀がマイナス金利導入を検討しているとの観測を繰り返し否定していたのです。

 

 塩野氏は、自社のAIが黒田総裁の策略に何度も引っかかることはないと自信を見せています。「何回か嘘をついているとAIも学習していく。他のデータとの相関が低いとAIが学んで発言のウエイトを落としていくだろう」と語りました。(ソースWSJ

2016年2月 3日 (水)

米大統領選、様変わりするかもしれない6つの理由!

選挙が偉大だと思う理由の1つは、最終的には有権者の意思が反映されることです。そしてそれは時に驚きに満ちたものとなり得るのです。

 

 このことは心に留め置く価値があります。今のところ異様な様相を呈している今年の大統領選で、最初に民主、共和両党が投票を行うアイオワ州党員集会までちょうど1週間となったからです。

 

 両党ともここに来て選挙戦の構図が明確になってきました。共和党ではドナルド・トランプ氏が全米でリードし、アイオワ州ではテッド・クルーズ上院議員と競り合いになっています。民主党はヒラリー・クリントン氏が全米的には相当優位に立っているものの、アイオワ州と次の投票が行われるニューハンプシャー州ではバーニー・サンダース上院議員に厳しく追い上げられています。

 

 しかし、過去の大統領選を思い起こせば、2004年の1月下旬、民主党指名争いは後に失速したハワード・ディーン前バーモント州知事が最も人気がありそうだったのです。08年には最終的に共和党指名候補となったマケイン上院議員が、この時点では立候補表明さえしていなかったのです。同じ年の民主党の争いでは、この時点では参戦したばかりで足元のおぼつかない泡沫(ほうまつ)候補だったオバマ氏が、徐々に人気を集め、最終的には各候補が必死に挑もうとしたフロントランナーになりました。

 

 要は、この先23週間で選挙戦の様相はがらりと変わる可能性があるということです。そして急速に変わり得る理由は次の6つです。

 

 まずは有権者が誰に投票するかを決めるのは間際に迫ってからだという点です。特に予備選の第一グループの州でその傾向があります。最近の選挙の出口調査によると、アイオワ州では有権者の40%は投票前最後の一週間で態度を決めるのが普通との結果でした。また、ニューハンプシャー州でも有権者の半分がそうでした。最終段階での各候補者の主張が重要なのです。

 

 第2に、ウィンドーショッピングと実際の買い物は違うということです。予備選早期開催州でも全米でも、有権者は明らかに今回の選挙戦の序盤を、現在の政治体制に対する不満を発散させ従来と違う選択肢がないかを探ることに費やしています。ちょっとした例を挙げれば、最新のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCテレビの共同世論調査では10人のうち6人が、これまで試練をくぐり抜けてきたベテラン候補より、大きな変革を進めそうな候補の方を好むと回答しています。しかし、その考えは投票所へ行くまで持たないようです。調査に応じた民主党支持の有権者の半数以上は、経験の豊かな候補の方が良いと回答しました。

 

 これは現時点で選挙戦を支配している反体制ムードにもかかわらず、民主党支持者が実際に投票する時は、クリントン候補のこれまでの経験がプラスに働く可能性があることを示唆しています。

 

 有権者は心変わりするものです。この時点でWSJの記者がインタビューした有権者らは、クリントン候補かトランプ候補かのどちらかを、あるいはサンダース候補かトランプ候補のどちらかを選ぶなどという普通では考えられない、一貫性のない選択を口にしています。

 

 WSJ25日のアイオワ発の記事では、トランプ候補に乗り換えるかもしれないと話すヒューレット・パッカード前最高経営責任者(CEO)カーリー・フィオリーナ氏の支援者が取り上げられました。これらすべてが現時点である特定候補を支持するといっている有権者が簡単にそれを撤回して他の候補に乗り換える可能性を意味しているのです。

 

 さらに未知の要因も作用してきます。世界情勢も選挙戦の材料です。パリの大規模テロ事件は、その後程なくカリフォルニア州サンバーナディーノ郡で銃乱射事件が起きたことから、国家安全保障を突然、選挙戦のテーマにしてしまいました。今月に入っての株価の大幅下落はまだみえる形で選挙戦心理に影響していませんが、その可能性はまだあります。08年の選挙戦の性格は、各金融市場を激震させた9月のリーマン・ブラザーズ破たんによって変わってしまいました。

 

 印象が現実になる場合もあります。1992年の選挙では最終的に民主党指名を獲得し大統領に当選したビル・クリントン候補のアイオワ州予備選での得票率は3%にも満たなかったのです。しかし続くニューハンプシャー州予備選では、有力候補だった故ポール・ソンガス上院議員に次ぐ2位の投票を獲得しました。これにより、クリントン元大統領はアイオワ州の惨敗にもかかわらず、その後の予備選で巻き返しが可能になったのです。ニューハンプシャー州の2位獲得によって「カムバック・キッド(挽回少年)」という印象が形作られ、その後の南部州の予備選勝利と党指名獲得に結び付いたのです。

 

 何らかの試練に見舞われた際に候補者がどう対処するかも重要です。そしてわれわれは、今まさに候補者が本当の試練をどう乗り切るかを見極めようとしています。うまく乗り切れないこともままあります。04年のディーン候補は事前の予想に反してアイオワ州予備選で3位に終わった晩に、支持者を奮い立たせようとして絶叫交じりの演説を行いました。

 

 これが「ディーン・スクリーム(ディーン絶叫)」として有名になり、同候補は自己抑制に欠けるきらいがあると評価され、指名争いでの失速を早めたのです。これと対照的だったのが、1988年に当時副大統領だったジョージ・H・W・ブッシュ元大統領で、アイオワ州でやはり予想外の3位に終わった後、選挙スタッフを招集して冷静に戦略変更がないことを伝え、非難することもありませんでした。

 

 そして、ニューハンプシャー州の知事だったジョン・スヌヌ氏に選挙運動を任せ、同州での予備選勝利に結びつけました。そしてこれが後の共和党指名、大統領選本選での勝利の道を開いたのです。ということはつまり、大統領本選挙のような一つの目的地を目指した長期の戦いと違い、各予備選挙はあっという間に山と谷が相次ぎ、それを乗り切るのも予想するのも難しいということです。(ソースWSJ

2016年2月 2日 (火)

iPhone減速、アップル株上昇に必要なことは!

昨年はアップルの顧客がiPhone(アイフォーン)に飛びつきましたが、今年はそうはいかないようです。こうした懸念がここ数カ月、アップル株の重荷となっていました。そして、26日の市場取引終了後に発表された10-12月期(第1四半期)決算と1-3月期(第2四半期)見通しによって、この懸念は裏付けられたのです。

 

 アップルの売上高と利益の3分の2を占めるiPhoneは、同社の見通しに重くのしかかっています。iPhoneの販売台数は、人気のiPhone 6が売上高を46%押し上げた前年同期と比べて横ばいとなりました。売上高はわずか2%の伸びにとどまったのです。ただし同社によると、為替変動によるマイナス影響を除いた増収率は8%だといいます。

 

 注目すべきは、1-3月期は実際に減収になるとの見通しを示したことです。売上高は500億〜530億ドルになる見通しで、その中間値は前年同期比で10%減少です。アップルは20033月以降、四半期で減収を計上したことはありません。03年当時はまだ事業の大半をパソコン「Mac(マック)」に依存していました。

 

 1-3月期減収の主因も為替変動によるマイナス影響とiPhoneだです。アップルは製品ごとの見通しを示していませんが、ウォール街は1-3月期のiPhoneの販売台数が前年同期比11%減少すると既に予想しています。

 

 見通しは悲観的に見えますが、悪いニュースを出し切ることにはいい面もあります。アップルの市場価値は過去半年で既に1500億ドル以上減っています。これは世界の3分の2の国の国内総生産(GDP)を上回る金額です。ネットキャッシュを除いたアップルの予想株価収益率(PER)は約7.5倍と、依然としてテクノロジー大手で最も割安な水準にあります。

 

 ただ、割安なバリュエーションと悪材料の出尽くしでだけで株価が自動的に反発するわけではありません。過去に照らしてみても、アップルの株価は新製品をめぐる騒ぎを受けて動く傾向があります。

 

 4月にiPhoneの低価格帯の新機種が発表されると報じられていることが一助になるかもしれません。アップルにとって効果的なやり方は、スマートフォン市場のシェアを失うことなく、こうした新機種でiPhoneの販売を拡大できると証明することです。そうすれば再び株価の上昇が期待できるでしょう。(ソースWSJ

2016年2月 1日 (月)

アップルへの支払いで露呈したグーグルの弱み!

米グーグルが2005年に初の株主向け年次報告書に記載したリスクは今も存在します。同社はこう指摘していました。「PC以外の通信機器向けのテクノロジー」を開発しなければ、「わが社はオンラインサービス市場で拡大しつつある分野の高いシェアをつかみ損ねるだろう」と。

 

 2014年には、グーグル検索にアクセスする主要な手段が携帯電話になりつつありました。検索はグーグルにとって最も収益率が高いサービスです。収入の高いスマートフォン所有者はアップルの「iPhone(アイフォーン)」を使ってグーグルの検索サービスを利用することが圧倒的に多かったのです。

 

 ブルームバーグ・ニュースは今週、米オラクルの代理人の証言として、グーグルが2014年にアップルに10億ドル(約1200億円)を支払って自社の検索エンジンをiPhoneに標準搭載していたと報じました。オラクルとグーグルは長年、法廷闘争を続けており、証言は14日の審問で飛び出しました。グーグルは現在、持ち株会社アルファベットの傘下にあります。

 

 グーグルがアップルに多額の支払いをしていたことで、収益性の高いオンラインサービスへのアクセスではスマホが鍵を握っていることが明確になったのです。グーグル、アップル、オラクルはいずれもコメントを差し控えました。

 

 グーグルは2005年の年次報告書の発表直後、携帯端末向けの基本ソフト(OS)のアンドロイドを買収し、ユーザー数が10億人を超える世界最大の携帯向けOSを育て上げました。

 

アンドロイドは当初、マイクロソフトへの防衛策として構築されたのです。しかし、2007年にiPhoneが登場したあとは、グーグルはアップルの端末に足がかりを残しつつ、アンドロイド端末経由でサービスを提供することを狙うようになったのです。

 

 ブルームバーグの報道によると、オラクルの代理人は、アンドロイドによるこれまでの売上高が310億ドル、利益が220億ドルに上ることも明らかにしました。売上高の内訳ははっきりしませんが、おそらくアプリやメディアを扱う「プレイ」ストア経由の売り上げのうちグーグルの取り分や、アンドロイドのユーザーに表示された広告の収入も含まれているとみられます。グーグルにとってはアンドロイド端末で表示されたほうが広告の収益性は高いのえす。アップルに収入の一部を渡す必要がないからです。

 

 アンドロイドがなければ、グーグルは検索エンジンを利用してもらうために今より大幅に高い金額を機器メーカーなどに支払わなければならなかったでしょう。

 

ブラウザ「ファイアーフォックス」のメーカーのモジラで最高技術責任者(CTO)だったアンドレアス・ガル氏はアンドロイドのおかげでグーグルの検索エンジンが「携帯電話で質問するのに最初に訪れる場所となり、優位に立った」と話しています。「彼らが独自の携帯端末用OSの開発に何十億ドルもの資金を投じるのはそのためだ」。

 

 グーグルがアップルに金を支払って検索エンジンを搭載してもらうのは、検索結果の近くに表示される広告をユーザーがクリックするたびに広告主がグーグルに料金を支払うからです。ゴールドマン・サックスの推計では、グーグルは2014年に携帯端末からの検索で約89億ドルの広告収入を確保。このうちアップルの端末からの検索はおよそ75%を占めるとみられています。

 

 グーグルは最も使用頻度の高い検索ワードを入手して、検索結果の向上に役立てることも望んでいます。

 

 ガル氏は「検索して結果をクリックするたびに検索結果のランク付けを手伝っていることになります。みんながクリックする答えが一番いい答えだから」と言います。「グーグルがこれほど高額を支払っても検索で提携する理由はここにある」のです。

 

 グーグルは今も、アップルのiPhone向けウェブブラウザ「サファリ」上で標準の検索エンジンに採用されています。ただ、アップルはiPhoneでアプリ内の情報を検索できるようにしてグーグルへの依存度を下げる動きを進めています。

 

アップルの「アップストア」が提供するアプリは100万種類以上で、累計のダウンロード数は1000億を超えます。アプリを発掘する新興企業ボタンの共同創業者のクリス・マダーン氏によると、アップルはこうしたアプリを活用して、検索サービスでリードするグーグルを追い上げる可能性があるといいます。(ソースWSJ

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