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2015年10月12日 (月)

画期的な蓄電池を開発、住宅用にも 米ハーバード大!

太陽光発電のみで電力をまかなえる家に住みたいと願うなら、曇りの日用に電力を蓄えておけて、発火するおそれのない安全な電池が必要です。米ハーバード大学の研究者が、そんな蓄電池を考案したと科学誌「サイエンス」925日号で発表しました。

 

未来の電池を開発しようと世界中の研究者がしのぎを削るなか、今回開発されたのはフロー電池と呼ばれるタイプのものです。安価で無害、非腐食性かつ不燃性の材料でできており、しかも高性能であるといいます。

 

「誰でも使えるようになるという意味で、畜電池は大きく前進しました」。ハーバード大学の工学教授で、論文の共同執筆者であるマイケル・アジズ氏はこう説明します。腐食の心配がない安全な電池であれば、事業用にも家庭用にも適しています。「自宅の地下室にも安心して置いておける化学物質が使われています」

 

気候変動問題が深刻化し、太陽光や風力などのクリーンな再生可能エネルギーへの期待が高まるにつれ、5年ほど前から電力貯蔵技術の研究がさかんになってきました。理由は簡単です。太陽光発電や風力発電は出力の変動が大きく、太陽が出ていないときや風が吹いていないときに備えて電力を貯蔵する必要があるからです。

 

蓄電池のなかでもよく知られているのはリチウムイオン電池です。今から20年以上前に主に個人用電子機器向けに実用化されたものですが、特に大出力のものは高価で、発火の危険性があります。実際、電気自動車で発火事故が数件起きているほか、大量のリチウムイオン電池を輸送する貨物機で火災が発生したこともあります。

 

研究者たちは現在、リチウムイオン電池の改良に取り組むほか、まったく別の方式も模索しています。今回のハーバード大学の研究チームのように米国エネルギー省から資金を得て、新しい材料の組み合わせや、ナノサイズの電極の開発に取り組む研究者もいます。

 

アジズ氏のチームはフロー電池に注目しました。フロー電池は、電気が発生する電池セルとは別のところにあるタンクの液体にエネルギーを貯蔵するため、タンクを大きくすればより多くのエネルギーを貯蔵できることです。問題は、フロー電池のほとんどがバナジウムなどの高価で腐食する金属を使っていることです。

 

ハーバード大学の科学者たちは昨年、バナジウムの代わりにキノンという有機分子を使ったフロー電池を試作しました。この試作品はうまく機能し、欧州の企業に製造を許諾しましたが、材料に有害で揮発性のある臭素が含まれていました。研究チームは今回、臭素をフェロシアニドという無害な非腐食性イオンに置き換えることに成功したのです。

 

「フェロシアニドは青酸と同じシアン化物なので、毒性があると思われるかもれませんが、そうではありません」と、ハーバード大学のポスドク時にこの新しい素材を考えつき、現在は米コロラド大学ボールダー校に所属するマイケル・マーシャク氏は説明します。「青酸は体内の鉄イオンと非常に強く結びついて呼吸を阻害し、致死的な作用を及ぼします。これに対して、フェロシアニドは最初から鉄と結びついているので安全なのです」。フェロシアニドは食品添加物や肥料にも広く用いられています。

 

米アルゴンヌ国立研究所エネルギー貯蔵共同研究センターのジョージ・クラブツリー所長は、「この研究は、有機分子を電池に活用する新しい分野を開拓するものです」と言います。彼はこの新分野を「画期的で有望」と評価し、さらに多くの成果を生むだろうと予想します。

 

今回の研究には関与していませんが、米ケース・ウェスタン・リザーブ大学の工学教授で蓄電池の専門家であるロバート・サヴィネル氏は、「大容量化が容易で危険性がなく、製造コストも抑えられるでしょう」と、この電池の優れた性能を認めています。サヴィネル氏は、10年以内に商品化も可能だろうと期待を寄せますが、まださらなる検証も必要だと述べています。

 

アジズ氏自身も検証の必要性を認めています。研究チームは短時間の実験結果で寿命を推定しただけなので、「何千回、何万回の充放電サイクルを経ても劣化しないことを証明する必要があります」と言います。彼は1年以内にこのテストを始めるつもりですが、ハーバード大学はそれ以前に製造を許諾する可能性があります。

 

 アジズ氏は、すでに複数の企業からアプローチを受けていることを打ち明け、「そう遠くない時期に商品化が実現するかもしれません」と言います。具体的な時期は、製造を許諾される企業が新興企業か大きな電池メーカーかで変わるでしょう。

 

ほかにも、起業家イーロン・マスク氏のテスラ・ギガファクトリー(米国ネバダ州)などが、自動車用、家庭用、事業用に畜電池の大量生産をめざしています。太陽光や風力による発電能力が上がるにつれ、エネルギー貯蔵分野の競争がもっとさかんになることをアジズ氏は期待しています。

 

 しかし今後の電力貯蔵用電池の市場の巨大さを考えると、「最も安価な電池でさえ、需要をすべて満たすにはおそらく相当な時間がかかるでしょう」。(ソースWSJ

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